1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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12:運命の試験

「そろそろ第3試験ですか」

 古金ははしゃぎながら防弾ガラスの向こうを見つめた。現在、市川は第2試験も突破して、最後にある実戦試験、第3試験に参加するのだ。

「受験生じゃないが、俺は少し緊張しちゃうな」

 日々野は少し顔をしかめている。

「前にも言ったが第3試験は実戦を想定した訓練だ。いつ何が起こるか分からないんだぞ」

「そういえばなんですけど、第3試験はどういうのと戦うんですか?」

「俺の時代だと小型の怪獣だったが、安全性が疑問視されたから今は怪獣の動きを模したロボットで行っている。まあ、絶対安全ではないと思うがな」

「そのために防衛隊がいるんじゃないんですか?」

 古金は疑問を持ってそう聞いた。日々野は以前のように憂鬱そうな顔

をしながらこう言った。

「あくまでもしもの時の話だ。絶対失敗するってわけじゃない」

「なるほど…」

 彼女は話を聞きながら頷いた。日々野がまた憂鬱そうな顔をしたため、これ以上の言及はしなかった。

 日々野は、表情を変えぬまま自分の腕時計を見た。現在午前7時55分、始まるまであと5分後だった。

 

 

 

 そろそろ始まるんだな、市川はそう感じて緊張していた。周りには、彼と同じような心境をした関東の防衛隊受験生かいる。

 彼は自分の両手を見つめる。手にはアサルトライフルが握られていた。正確な名称を96式対獣型5.56mm小銃と呼ばれるこの銃は、米国のM4アサルトカービンを原型としながら、出雲テックスによる、対怪獣用に特殊弾頭を発射するための銃身の改良や高性能サプレッサーの追加、さらに同じ出雲テックスか開発した特殊スコープを設置している、などの改良が行われていた。また、今回は装着していないが、対怪獣用グレネードの装着も可能である。

 彼は、そんな事を考えながら気を休めて、自分を落ち着かせていた。そうでもしないと平静を保てなくなりそうだ。

 しばらくそうしていると、ドアが開きマッシュルームヘアの試験官?らしき人物が入って来た。

「よーし、全員おるな。ほな、始めよか」

 マッシュルームヘアの教官、保科はそう前置きをして、試験の説明を行った。

「この第3試験は実戦を想定した試験となっとる。まあ、流石にモノホンの怪獣と戦ってもらうってのはキツイから、あえて怪獣の動きをインプットしたロボット10体に戦ってもらうことになる」

 彼は一つコホンと咳払いして、続けた。

「あと、死にはしないが、死亡判定になったら自動的に判定くらったやつを攻撃しないように作っとるから安心や、もちろん死亡判定になると脱落やから、せいぜい、気は抜かないように頑張ってくれや」

 彼はそう言って部下に扉を開けさせた。

 

 

 

「始まりましたね」

 古金と日々野は、演習場を再び眺めていた。日々野は10体のロボットのうちの一体を見つめる。

 彼は、一目でなんの怪獣の動きをモデルにしているか分かった。あれはモンスタースイーパーの同業者であるイイダ解体と共同で処理した、八王子で暴れたやつだ。まさかデータを取られていたとはな。そう感じて彼は動きを見ていた。

 荒々しくはあるが、やはり生物的と言うほどではない。怪獣ではよく見られる殺気が不足しており、恐怖を感じづらかった。

 まあ、そこは機械だし仕方ないか。そう思いながら彼はロボットではなく、受験生の動きに注目した。

 

 

 

「やはり小銃では簡単にはやれないか・・・」

 その頃、市川はロボットに対して小銃による攻撃を行なっていた。数発を命中させたが、結果的に全て弾かれてしまう。

 彼は攻撃体制を整えるために少しずつ後退する。それを感づいたのか、ロボットは一気に距離を詰めるためにそのまま飛びかかってきた。

 市川は、舌打ちしながらも再び小銃を構えた。

「危ねぇ‼︎」

 そんな声がしたと思うと、市川は後方に大きく吹っ飛ばされた。

 飛ばされた方を見ると、赤い髪をリーゼント風にした市川と同じ防衛隊受験生が、ロボットに対して小銃を連射している。見た目に反して戦闘スタイルは洗練されており、素早い身のこなしで攻撃を避けると、ロボットの頭部に弾丸を叩き込んで沈黙させた。

 男性は市川の方に向く。

「お前‼︎まだ敵がどんなやつか分かんないんだから、無闇やたらに挑みかかるじゃねえ。せめて避けろ」

「すいません」

 市川はすぐに謝る。自分の事で相手の迷惑をかけてしまったと少し落ち込んでいた。

「いや、別に謝らなくてもいい。同期生に謝られることは嫌いだからな・・・そういえば、唐突で悪いんだが名前は何て言うんだ」

「市川レノです」

「俺は古橋イハル、喋る時はタメ口にしてくれよ?同期に敬語使われるは嫌いなんだ」

 2人は互いに挨拶を交わした。古橋は市川の手を持って起こす。

 その時だった、急にさっき倒したはずのロボットが再び攻撃してきた。頭部は破壊されており、本当ならば動けないはずだ。だが、このロボットはさっきに増して荒々しい動きで、飛びかかったり、ひっついてきたりしながら2人に襲いかかってきた。彼らは動きを受けし流しながらも、あまりにも予測不可能だったために困惑する。

「一体どうなってやがんだ」

 古橋は目を丸くした。

 

 

 

「現在1体目が撃破判定になりました。現在の時点で脱落者はゼロ」

「すごいですね。前までとは段違いです」

 小此木は感嘆した表情を浮かべていた。彼女は3年間オペレーターとしての仕事をやってきたが、まさか脱落者ゼロで一体撃破できると思っておらず、まさかここまでとは、と感じていた。

「本当ですよ、ここまでやれる奴とは誰も思っていませんでしたからね。あっ、今2体目と3体目が撃破判定になりました」

「保科副隊長はええ人ばっかりとか言ってましたけど、まさかここまでとは・・・」

「一応、今年はエリート揃いって言われていましたからね」

 彼女の部下たちも、感心した態度で画面を見つめる

「ん?」

 なにか違和感にでも気づいたのか、1人の若いオペレーターの声がした。

「何かありました?事故とか不具合とか」

 小此木は、真剣そうに部下のオペレーターに聞く。

「不具合なんですけど、どういうわけか先ほど破壊されたはずのロボットが再び動いてるんですよ。ほら、」

 そう言って部下は画面を見せる。確かに再び稼働している事になっている。彼女は腕を組んで呟く。

「おかしいですね、機体の誤作動でしょうか」

 彼女は、疑問に思いながらも確かめようとしていた。

 ドアが思いっきり開かれたて、また違う彼女の部下が入ってきた。急いで来たのかかなり息切れしている。

「どうしました、そんなに急いで」

「大変なんですよ‼︎現在試験場に怪獣反応があるんです」

 オペレーター室は騒然とした。

 

 

 




今回出て来たアサルトライフルの設定

96式対獣型5.56mm小銃
 96式は72式7.62mm小銃の後継として開発され、1996年に正式採用された。出雲テックスによって開発されている。
 開発においてはM4アサルトカービルを元に設計されており、西側共通規格である5.56×45mm NATO弾に対応している。M4からの変更点は、対怪獣用の特殊弾頭(冷凍弾やガス弾など)に対応するための銃身の改良、サプレッサーの設置、国産スコープの設置などである。
 現在防衛隊だけでなく、かなり安価だったために自衛隊や海上保安庁、警察の特殊部隊などでも一部使用されており、かなりの数が生産されている。
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