1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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14:漆黒の骸骨男

 そのころ、直間アキラは自分の第1小隊を率いてロボットの無力化を行なっていた。装備品などは正規の隊員のために受験生よりも潤沢で、アサルトライフルはおろか、手榴弾やロケットランチャーなどの武装もある程度備えていた。

 隊員のうちの1人が、ロボットの脚部に手榴弾を投げ込む。爆発とともに足が吹っ飛んで、機体はバランスを崩して仰向けに倒れる。

 ロボットは起きあがろうとするものの、そこを別の隊員が、所持していたパンツァーファウスト3をロボットの剥き出しの腹部に命中させた。凄まじい機械音を出しながら爆発する。直間は散らばった部品の一つを拾い上げた。

「なんだこれは」

 否、それは部品ではなかった。彼が持っているものは、黄金虫かカナブンのような金色の甲虫だった。近くにはこれと同じような虫が数匹散らばっていた。その大きさは彼の手のひらより大きく、爆発が起こったにも関わらず体に傷一つついていなかった。彼が持って反応しないあたり、この虫は気絶しているのだろう。

「まさか・・・こいつが怪獣なのか」

 直間は息を呑む。一体一体はあまり攻撃力を持たないかもしれないが、副隊長の話だとおそらくこんな奴が最低でも100体近くは居るからかなり恐怖である。

 彼は、ふと演習場沿いにある、破壊されてしまった基地本体の壁を見た。

 そこには、30代くらいの男性と20代前半ぐらいの女性の男女2人がいた。女性の方は尻餅をついており、男性の方はポカンと立っていた。

 

 

 

「大丈夫ですか」

 そんな声が聞こえて、日々野と古金は目を覚ました。目の前には声の主と思われる、防衛隊員、それも小隊長だろう、目にクマがある若い男性が立っていた。2人はすぐに立ちあがろうとする。

 古金は、自分が腰が抜けたことに気づいた。

「あっ、すいません。なにしろ急に壁が壊れたんで焦りまして・・・」

「構いませんよ」

 先程の隊員がやさしい声で応じてくれて、軽々と背中におぶってくれた。ありがたいと思いつつ、彼女は何か違和感を感じた。

 古金視点から見ると、目のクマなどを除けばこの隊員はかなりイケメンな方だ。だが今の自分は彼に少しもドキリと感じていない。一体なぜだ?

 そう考えた時だった。大きなものが突進する音が聞こえる。これは、さっき聞いたロボットが動く時に出す音だ。ということは・・・

「これはまずい・・・君、しっかり捕まっててください!」

 そう言って、彼女を背負ったまま隊員は避けようとする。しかし運悪く彼女を背負ったばかりに動きが鈍ってしまった。結果的に、彼はロボットに吹き飛ばされてしまった。かろうじて古金に傷はなかった。

 部下たちも反撃したが、焦って攻撃してしまったために、思うほどダメージを与えられないまま蹴散らされてしまった。人間に擬態したままの日比野も同時に吹っ飛ばされる。

「日比野さん‼︎」

 古金は日比野を助けるために動こうとする。だが、腰が抜けてるのでまともに動けない。彼女は悔しながらも、地面を足掻くしかなかった。しかし、非常にもロボットは迫ってくる。

 何か大きな声が聞こえた。

「うちの部下に何しやがんだこのポンコツロボットがァー‼︎」

 ロボットはくの字になって折れて、折れた腹の部位から動くための部品が飛び出てくる。

 古金はすぐに気づいた。これは先輩の声だ。ということは・・・

「日比野さん‼︎無事だったんですね」

「あたぼうよ‼︎怪獣がこんな事でくたばってたまるか」

 日比野は黒いドクロ顔の怪獣姿でニヤリと笑った。

 

 

 

「これは・・・小此木さん、緊急事態です。第1小隊が向かった施設付近に怪獣反応あり。フォルティチュードは、9.7‼︎」

「9.7ですって、それは本当なのですか?」

 小此木は半信半疑ながらもモニターを見る。確かに9.7だ。彼女はすぐに副隊長に連絡した。

「カムイステーションよりルナリエ1、先程そちらの第1小隊が送った所に怪獣が出現しました。フォルティチュードは9.7、識別怪獣です」

 ルナリエ1、第1中隊の指揮をとってる保科は、冷静そうに通話に出ていたが、少なくとも心の底では驚いていたらしかった。

「なんやと、測定計がぶっ壊れたんやないか?今まで9.7なんて怪獣出てこなかったんやで」

 通常、怪獣の強さ判定であるフォルティチュード(略称F)は、マグニチュードを地震計で計るように、専用の測定計で計る事になっていた。大怪獣はF8から、識別怪獣はF9からである。

「壊れているかどうかは分かりません。が、私としては、これぐらいの振動ではフォルティチュード測定計に不調は起きないと思っております」

「フォルティチュード9.7、識別怪獣だとすれば都市が2個くらい壊滅するほどやな・・・」

 彼は、おいおいとでもいった感じでこう続けた。

「もしそうだとしたら・・・こいつは歴史に名を残すほどの識別怪獣の1体になるで」

「ええ、ですがもうすぐでヘリ中隊が着くはずなので、何かあったらそちらに聞いてもらうと助かります。何せ防犯カメラがないのでこちらからは見れませんから」

「了解や」

 通話を切った後、彼の耳にはすぐにローターの回転する音が聞こえた。

 彼は、受験生を含めた演習場にいる全員に、先程の甲虫とは異なる識別怪獣が出現したことと、そしてヘリ中隊が到着したことを伝えた。

 

 

 

「フォルティチュード9.7?こいつはまずいですね」

 市川は、驚きのあまり素っ頓狂な声を出した。他2人も息を呑んでいる。ここは演習場にあるビルの内部、一応コンクリートなどの材質を使用しているために一応の耐久性はある場所であった。

「それだけじゃないのよ。こいつはあくまで今回出現した二体目の怪獣なのよ」

「そう考えると、なおさら相手が悪くなるな。こいつら2体がいたら埼玉の下半分なんて更地になっちまうぜ」

 市川は、またも違う心配をしていた。おそらく、ここに出てきたのは識別怪獣だと考えると、その怪獣が先輩の可能性が高い。なんせ今日古金さんと一緒に見に行ってたからな。

「ちょっと、聞いてるの」

 彼はハッと我に返った。

「すまん、驚いて放心状態になってた」

「しっかりしてよ。一応3人で協力するんだから」

 四ノ宮は少し怒っているらしかった。市川は申し訳なさそうに謝る。

「おい、何だありゃ?」

 そこには、黒いドクロの顔をしたのを、大量の甲虫が覆うように周りを飛んでいた。

 

 

 

「どうしてこうなったんだ」

 日比野は頭を抱えながら呟く。

 彼はさっきロボットを倒した後に古金を逃したんだが、そのすぐ後にでかい黄金虫みたいなのに囲まれてしまったのである。彼は振り払おうとするが、何十匹もいるためまとわり付いてくる。

 その時、どこからか分からないが轟音が聞こえた。

 

 

 

「こちらスペリオル1、目標を視認、直ちに攻撃体制に入る」

 そう言いながら、AH-84スレービーの操縦士はヘリ中隊を散開させた。彼のヘリ中隊は総勢20機、そこそこな戦力であった。

 彼はすぐに機関砲の発射を指示した。しかし、固いのか弾丸が全て弾かれたり避けられたりしてしまう。

「こちらスペリオル1よりカムイステーションへ、機関砲は対象に効果なし、誘導弾の発射を求める」

「こちらカムイステーション。了解、誘導弾による攻撃を行ってください」

「了、こちらスペリオル1よりスペリオル全機へ、誘導弾発射開始」

 白線を描きながら誘導弾が命中した。しかしそれは効果がなく。逆に甲虫達は集まり始めた。日々野にも命中したが、これと言って効果はなかった。

 

 

 




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