1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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16:戦闘の終わりに

 遠くで爆発が起こり、同時に煙幕が発生する。亜白は、それを避難したビルの屋上で見ると、小さく頷いて送話器に言葉を送る。

「アーチャー1よりカムイステーション、こちら初弾命中、続けて、第二弾発射する」

 彼女は澄ました顔をしながら大型の銃火器を持っていた。その銃火器の名は、試製110mm対獣狙撃砲(sk-20)、今年開発されたばかりの、隊長用の携行型大口径無反動砲で、大きさは装備開発課の本岩マンゲツを開発主任として設計された。

 この砲は、外部からユニソケット(怪獣に付いてるユニ器官を応用した小型バッテリー)が装着可能とされており、その電力を使用したレールガンという作りになっていた。そのためか、欠点として、砲身摩耗の影響や、本体に対する砲弾の重量の問題で、一回3発しか連射ができず、打ち終わっても砲身の冷却をしなければならない。そのうちの弾の少なさを補う為に、彼女は予備の弾倉を身体中に付けている状態だ。

「こちらカムイステーション、了解しました。あくまで撃退が目的という事を忘れずにお願いします。送レ」

「こちらアーチャー1、承知した。終ワリ」

 彼女はそれを言い終えると、瞬時にトリガーを引いた。

 

 

 

「こいつは何が起こってるんだ。何も見えないぞ」

 日々野は不審がる。こっちに当たった砲弾はガスを出して視界を遮った。彼が言ったように何も見えない。

「そうか、この煙幕を使えば・・・」

 日々野は、瞬時に煙幕の中を掻い潜って脱出する。おそらく7号だろう尻尾が襲いかかってくるが、それもすぐに振り払う。

 そんな事をしてるうちにもう2発目の砲弾が来た。この砲弾も手前に命中し、煙幕が張られる。

 ふと、日本語の声が聞こえた。彼は瞬時に身体を隠す。

「よし、今のうちやな。狙撃班、迫撃砲小隊はありったけの弾をぶち込め。その中を僕が掻い潜る。受験生さんたちも、すまんが射撃を行なってくれ」

「了解」

 そう言うと、保科の周囲にいた隊員たちは、L16 81mm迫撃砲や60mm迫撃砲Bを組み立てると、ありったけの砲弾を煙幕に向かって発射する。それは狙撃銃なども同様だ。腹ばいになった狙撃班の隊員達がが次々と弾丸を発射し、市川たち新人も小銃をばら撒く。そして、そこを保科が勢いよく潜り抜けていき、怪獣に対して斬りかかった。

 硬すぎる。まるでダメージが入ってる気がしないほど硬い。彼はそう思って顔をしかめる。彼は7号の体を蹴って飛び上がると、今度は、射撃を避けつつ勢いよく蹴りを入れる。やはり、さしたるダメージは入らなかった。

 怪獣7号は、保科の攻撃に対して慌てて身構えた。それ以外からもあちらこちらから攻撃が来る。その攻撃は物理的効果はそこまで期待されていなかったが、心理的な効果は十分だった。7号は、見えない大勢の敵と8号がいては不利だと感じてしまったのだ。

 結果的に、怪獣7号は体を分裂させて、追撃してくる防衛隊員を振り払いながら撤退した。その後は土に潜ったようだ。もちろん、身を隠していた日々野も変身を解除して撤退していた。

 

 

 

「はぁ〜。終わった」

 小此木はオペレーター室の椅子に身体を傾けた。ため息をつく。

 彼女、いやオペレーターの仕事はこれからが本番だ。オペレーターは、防衛隊の戦力配置や怪獣の特性分析以外に、被害の集計という最もめんどくさい仕事がある。

 この被害の集計は、それぞれの損害報告を集めて合計するだけで、死亡した人数を見て心は痛んだりはするが、作業そのものが面倒なわけではない。

 問題は被害総額、および損害の報告書作成である。これも、装備品の損害、住居被害(今回は演習場の損害)、そして慰謝料などの合計を行わなくてはならない。正直これが一番疲れる。何故か、怪獣災害というのは地震や津波とは訳が違う。殺したら怪獣の遺体は残るし、ほっとけば腐って被害は広がるしで復興がより面倒になるからだ。そして、その報告や復興予測などは、ほとんどオペレーターの仕事に回される訳である。

 彼女は、面倒そうながらもパソコンを動かして、被害報告書を作成する。それでも今回は楽な方だった。防衛隊の演習場に出現したことで民間人が少なかったこと、そして6号討伐作戦の教訓で防衛隊が迅速な対応ができたこと、そして怪獣は2体とも撤退したので遺体が残らなかったことで、識別怪獣の被害にしてはなるべく抑えられているし、彼女の仕事も楽になっていた。

 小此木は死者数の統計を見つめる。

「・・・できれば弔った方がいいですよね。再来週あたりに龍寧神社にでも行きますか」

 彼女はそう言うと画面に向けて手を拝んだ。

 損害は、死者が3人、負傷者が21人、演習場の被害は全壊が1、半壊が10棟で、受験生に死者はいなかった。

 

 

 

 それから1週間後、市川、古橋および四ノ宮は防衛隊第3部隊に入隊した。

 

 

 

 一方、3月の夕方、穂高タケミチは自宅のアパート部屋で、机に突っ伏していた。あまりいい顔ではない。

 彼は最近、自分が何か自分じゃなくなってしまったような、気持ち悪い感じがしていた。肉片に襲われたあの日から。

 穂高はその事件があった1週間後に目が覚めた。関係者に言わせると、彼は特に外傷はなく、むしろあの中では軽い方だったらしい。

 彼としてみれば妙だった。彼は、自己犠牲を覚悟で、あの怪物から部下を逃す為に誘導しようとしていたのだ。それなのに今の彼には目立った傷跡はないし、それに、彼は自分の味覚なども変化していた。以前は普通に食っていたキノコが苦手になったのである。なんか食べるときに嫌な感じがするのだ。

 そんな訳で、穂高は自分が変わってしまったのではないかと感じていたのだ。もちろんこれしか証拠がない以上、そうじゃない可能性もある。しかし、今の彼は何故かそんな気がしていたのだ。

 彼は休日、久しぶりに遊びに出かけた。

 

 

 

 昼の東京は夜より人口が少ないと言うが、穂高にはその違いが分からない。どっちにしろ、多勢の人たちでわちゃわちゃしてごった返しているということは変わらない気がする。

 彼はそう思いながら丸の内仲通りを歩いていた。本来なら大勢がいるところは好いていないのだが、気分転換ということで行ってみた訳である。

 だが、やはりというべきか、元々好きではなかった為に思った以上に良くはならなかった。むしろ前来たときよりも気分は晴れず、なにもしていないのにクラクラと目眩がする。

 彼は憂鬱そうに横断歩道を歩いた。自分の事に気にしすぎた結果、周りをよく見ていなかった。

 彼は赤信号になった事に気づかずに、車に轢かれてしまった。車の運転手が慌てて110番通報をし、周囲がざわつき始めた。穂高は地面に横たわっている。

 しかし、奇妙な事に、思いっきり跳ねられた彼の身体は、傷一つついていなかった。

「僕は、本当に人間なのか?」 

 彼は、怯えながら宙に向かってつぶやいた。

 

 

 




次は番外編です‼︎
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