1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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エピソード0.5 新生第3部隊
1:短刀と怪獣


 第6部隊第3普通科中隊長の保科ソウシロウは、しくじったとでも言いたそうな様な表情をした。手には通信隊員からの送話器を強く握りしめられている。

 彼らは今回の作戦で、ガンシップの航空支援で敵にダメージを与えた後、スパーク8、もとい第1機甲科中隊と共同で攻撃するという段取りになっていた。

 だが、敵の怪獣の能力、技も把握しないで慌てて立てたこの作戦は、半ば失敗したと言ってもよかった。その証拠に、支援する予定だったガンシップは撃退されたし、スパーク8とも先ほどから連絡がとれていない。

 保科は現在の戦力を確認する。

 彼の第3普通科中隊は60人全員揃っていた。防衛隊内での一個中隊は、自衛隊と異なり、AMSGR、日本語言えば対獣特殊装甲、を着て専用武器をもった中隊長の個性に合わせた編成になっていた。保科の場合、近接戦に特化した彼を援護しやすくするため、迫撃砲小隊と誘導弾小隊の比率を通常より増やしていた。

「そして、こいつやな」

 そう言って、彼は緊張しながらも、腕にある短刀の入った腰の鞘を撫でる。正確には0式対獣振動刀改と呼ばれるこれは、通常だと短いタイプを2、3本程度だが、遠距離戦が苦手な彼は、長い改型を予備合わせて6本までも装備していた。もしもの為だが、短機関銃も二丁足に装備している。ここまでくると多少重いかもしれないが、AMSGRの恩恵により、この装備でも身軽に素早く行動する事ができた。

「中隊長、スパーク8と通信がつながりました」

「僕がでる」

 保科は冷や汗をかきながら送話器に出た。たとえ彼の戦力がほぼ無傷とはいえ普通科だけでは対処は難しい。やれることはやれるが犠牲が多すぎる。

 彼はスパーク8の戦力が可能な限り残っていて欲しいと祈る事しか出来なかった。

 

 

 

「マルス9より連絡。現在スパーク8は機動戦闘車7両を残し壊滅。残存戦力はマルス9の指揮下に入る様です」

「ひでぇもんだな」

作戦本部、デルタ・ステーションのなかで、上司のオペレーターは吐き捨てるようにつぶやいた。先程、スパーク8の壊滅を伝えた若い女性のオペレーターも冷や汗をかいている。

 隊長が前線に出ることが多い防衛隊は、全体の戦力配置を確認する仕事としてオペレーターを使用している。楽だが責任は伴う。

「航空支援はどれぐらい出せる?」

「現在、エリアル・ベースからはFS-2が二機出せるようです」

上司のオペレーターは考え込む。エリアル・ベース、神戸航空基地から発進したとすると、22km離れているわけだから、約11分で着く。

「よし、そいつらを出せとエリアル・ベースに伝えおけ。なるべく早くな」

「わかりました。こちらデルタ・ステーションよりエリアル・ベース、敵の場所は浪速区日本橋、そのまま北上中。エリアル・ベースは待機中の2機を直ちに発進させてください」

 出雲FS-2支援戦闘機が発進したのは午前8時19分の事だった。

 

 

 

 後方から大小様々な砲撃音が響いた。それぞれ、14式機動戦闘車および重MAT、軽MATによる攻撃だ。無数の曲線を空に描きながら目標に向かってゆく。

 保科はそんな砲弾の雨を避け、両手に持った0式で、怪獣の片目を切りつける。黒目の部分から血が溢れていき、あまりの痛さに顔を押さえる。

 通常保科流、いや、全ての刀伐術は二つの短刀によって討伐する。この由来は諸説あるが、言ってしまえば刀での居合い切りよりも、手回しのよい短刀のほうが翻弄できて怪獣相手ならより効果的だ、ということだった。

 事実、今回の彼は自分が敵の気を引いているうちに、砲撃で背中の結晶体を破壊しようと考えていた。近距離で攻撃するこの方法は、少なくとも、この僅かな戦力、そして彼の得意な攻撃を存分に生かしてはいた。

 保科は敵の後ろ足を横切ると同時に斬撃を浴びせる。AMSGRのおかげか、怪獣よりも早く攻撃できる。怪獣は片手で振り払おうとするが、逆に彼はその手を駆け上がっていき、もう片方の目を切り裂く。

 もちろん、敵もやられたばかりではない。まだ残ってる結晶体からビームを放つ。当たると同時に、地面に爆発が起こり重MAT数台や十人以上の人員が吹き飛ばされる。

 そして、その数秒後、保科も怪獣の結晶の破壊と引き換えに、ビルに背中を叩きつけられた。いくら特殊装甲を着て電子バリアを張ることができるとはいえ、本体にダメージは入る。

 彼の場合、バリア発生ユニットが破壊されてしまい、ビルの強打によって背骨がやられてしまった。頭こそ動かせたが、身体が思うように動かせなくなってしまっている。心なしか意識が薄らいでゆく。

 突如轟音が響いた。彼は力を振り絞って空を見上げる。同時に一人の隊員が駆け寄ってきた。

「中隊長、援軍です。支援戦闘機が来ました」

保科は安堵した。つまり任務は達成したということだった。彼は脱力したように目を閉じた。

 

 

 

「This is hawk15.shoot a missile now(こちらホーク15、これから誘導弾を発射する)

そう言うとホーク編隊は見えるほどの高度へと下げ、両翼合わせて4発ずつ備えられているAMM-1を発射した。AMM-1、正式名称を91式空対獣誘導弾というこの兵装は、砲弾で言うところの徹甲弾のような存在であり、ある程度敵にめり込んでから爆発するように、遅延信管を使い、先端を鋭利に尖らせていた。

 結果、怪獣は全弾命中したAMM-1により息を引き取ることとなってしまった。命中した誘導弾の内の3発が痛ましい傷口から体内に踊り込んで、そこで信管を作動させたのだ。内蔵や筋肉などを内部から吹き飛ばされ、前のめりになって倒れる。怪獣はもう動かなかった。

 

 




めちゃくちゃ疲れた。誤字ってたらすいません。あと、FS-2の設定です。
出雲FS-2支援戦闘機
全長:15.52m
全幅:9.48m
最高速度:マッハ2
武装:J/LAAU-3ロケット弾ポッド
  LR-4ロケット
  AIM-9L空対空誘導弾
  AAM-3空対空誘導弾
  AMM-1空対獣誘導弾
JDAM爆弾など
概要:第4.5世代にあたる支援戦闘機。米国のF-20を大柄化したような機体である。初期の頃は独自開発の予定だったが、政治的な都合で米国との共同開発となった。また、怪獣との戦闘も考慮した結果、出雲テックスが主契約企業となっている。(元々出雲テックスは太平洋戦争中に航空機製造を行なっていた)
計140機が導入された。


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