1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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エピソード2 夜明けの相模原防衛作戦
<設定集-2>日本の怪獣対策について


<戦前>

 怪獣という存在が災害と同じ扱いのため、日本は地震や津波と同じような形で怪獣災害が多発している。(最近の研究では地震などの地殻変動が怪獣の出現に関与していると言われている)ただ、怪獣災害は普通の災害とは異なっていて、ただ大きな被害が出るだけではなく、大きな生物によって引き起こされるもんだから、待っていれば収まってくれるものではない。当然そのことは昔の人間でもわかっており、平安時代の時点で対策できるように研究や訓練がされており、室町時代には最古の対怪獣組織「討伐隊」が組織され、現代でいうF5(現代でいう大型爆弾で倒せるレベル)程度ならば対応できらようになった。それでも明暦の大怪獣のような大規模なものには対処出来ず、大きな被害を出してしまったが。

 大政奉還後の明治時代になっても、防衛上の観点から討伐隊は残り続け、むしろ都市部に出現した場合の被害を抑えるため、刀を使う機会も多かったために仕事がなくなった士族らが加わり、さらには、助けてくれた恩などで臣民からの支持を受けた結果、討伐隊は大規模な組織へと変化していった。なお、室町時代からずっと討伐隊に所属していた一族らは旧家と呼ばれ、現在での防衛隊でも影響力を持っていくことになる。(また、怪獣対策装備の製造メーカー、出雲テックスの元となった会社がこの時代に誕生している)

 しかし、そんな栄華も長くは続かなかった。昭和16年12月7日、太平洋戦争が始まり、討伐隊はズタズタにされることになった。戦争初期の段階では優勢だったために討伐隊が関わることはなかった。だが、戦況が悪化するにつれて討伐隊の人々も戦闘に参加する羽目になった。軍部としてみれば化け物と戦える程の戦闘能力を持っているのだから戦闘においても使えるとみなしたのだろう。もっとも、彼らはその期待通りに多数の連合側兵士を返り討ちにすることに成功したが、雪崩のように押し寄せてきた連合軍を相手に戦局を変えるには至らず、ただただ勇敢に血を流して倒れていったに過ぎなかった。

 それだけでは終わらなかった。連合軍、とくに米国による大空襲がはじまったのである。これにより大量の怪獣資料が失われた。

 1945年、戦前には全国に配備されていた討伐隊の姿はかけらも残っていなかった。そのため、戦後の怪獣対策は国民が一から始めねばならなかった。

 

<戦後>

 まず在日米軍は怪獣対策を警察予備隊(自衛隊)に任せることとした。彼らは怪獣とほとんど戦ったことがなく最善の対策が取らないこと、まず冷戦により怪獣対策まで気にしてはいられないことなども合わさって、悪く言えば、やり方に口出ししておいて、戦闘においてはほとんど日本人に丸投げするという身勝手なやり方だった。とはいえ米国側も、元討伐隊の日本兵士により自国の大量の兵士が亡くなったため、国民がこころよく思っていなかったという事情があった。

 なにがどうあれ、結果的に対人戦まで考慮した自衛隊が最初から怪獣相手に戦えるわけがなく、戦後初の識別怪獣、怪獣1号が出現した際にもまともな対応が出来なかった。怪獣1号は後年の研究により、どうやら網膜のユニ器官により、未来を予測する能力を持っていたらしく、そんな事を知らなかった自衛隊は討伐の際に隊員のほとんどがなぶり殺しにされてしまった。最終的に倒すこそできたが、その時点で民間人と隊員含め10万人が死亡し、東京都は蹂躙されていた。誰の目から見ても大損害だった。

 その結果、自衛隊には批判が相次ぎ、国民の大多数から討伐隊の復活が求められた。政府は当初は黙っていたがやはり不味いと思ったらしく、1966年、事実上の討伐隊の後進として「日本怪獣防衛隊」(のちに日本防衛隊と改名)が発足された。その後、防衛隊は目まぐるしい活躍を見せた。まずは1972年に札幌で起きた怪獣2号災害では、まだほとんど部隊が揃っていなかったにも関わらずわずか2日間で戦力の大半を集結させ、そして素早く討伐することに成功したのである。(なお怪獣2号災害時の被害は、死傷者547名で、1046棟の建物が全壊し、2004棟が半壊した。一見多いように見えるが、当時の識別怪獣災害としてはこれでも少ない方である)

 実戦における活躍だけはなかった。防衛隊では技術部などで1980年代から怪獣の部位などを転用した装備の研究が行われ、1996年、防衛隊内で、ユニ器官など識別怪獣の部位を使用した武器、通称No.s(ナンバーズ)が、2000年には怪獣部位を使用した特殊装甲服、AMSGRが誕生したのである。No.sは実際、完全に識別怪獣と同等の戦力というわけではなかったものの、人間側の装備としてかなり強力なことに変わりはなかった。上手くいけば戦車や戦闘機などの兵器に乗せれて、さらに強力な兵器が生まれる…はずだった。

 というのも、そのことに対して各国、特に米国やソ連は焦りを見せ始めたのである。それほど怪獣の兵器化というのは彼らにとって由々しき事態であったのだ。第一、怪獣の部位を使用せねばならないのだから怪獣の出現件数の少ない米国などでは生産が必然的に少なくなってしまうし、日本などの件数の多い国から買おうにも、それでは必然的に日本が豊かになり自国の言うことを素直に聞かなくなるかもしれない。米国などの大国はそう考えたのだ。

 そのため、米国は、日本を含め各国に無人兵器や大量破壊兵器、そして怪獣兵器の使用を制限する条約を結ばせた。俗にいう「広東条約」である。本条約での怪獣兵器については、「怪獣の部位などの生態部位は戦車や戦闘機などの機動兵器に組み込んでははならない」と明記された。つまりは、搭載できるのは携行武器か固定兵器、スーツに限られるというわけだ。もっとも日本は怪獣の部位を悪用しようなどかけらも思っていなかった。そんなことをしたら国内でかなりの批判が来るのは目に見えているからだった。結果的に本条約は結ばれることとなった。

 それから先は特に何もなかった。2014年に起きた怪獣6号災害の際は大量の犠牲者と、被災地域である小田原が現在でも住めなくなるほどの被害が出たものの、国際政治に与える影響はそこまででもなかった。2020年に怪獣7号、8号による初の怪獣同士の対決を見るまでは、日本国内は安定していた。

 

 

 

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