1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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21:怪獣7号相模原を襲撃

7月17日、相模原はほとんど要塞都市と化したと言ってもいいほど様変わりしていた。

 市街地には住民がほとんど避難していない代わりに、黒っぽい防護服(中隊長から持てるAMSGRとは違う)を着た防衛隊員がそこら中を歩いており、あちらこちらでは白いテントが張ってあったり、指揮通信車や機動戦闘車、はてまたや上空を戦闘機が飛び交っていたりと、昭和の戦時下を思わせるほど緊迫した状況だった。

 小此木は、そんな光景を窓から眺めながら感心していた。彼女のいる場所は、作戦本部を兼ねた本作戦の指揮所であるロイヤルホームセンター2階の窓際、そこで周囲を観察していた。

 建物自体の高さがそこまでもなかったため、先程言った緊迫した光景を全て見たというわけではないが、駐車場のあたりには、すでに救護用なのだろう大量のテントが置かれている。

 事実、日本防衛隊東方方面隊は、実質その中核戦力を素早く展開していた。特科による援護こそなくなったが、現在の戦力でも4個普通科連隊と2個機甲連隊、つまり砲科などを含めた普通科の人員で言えば3200名、機動戦闘車は140両と字面だけ見れば過剰戦力とすら思える。

 本作戦は、特科がいなくなってしまった事により急いで第2作戦に以降することになった。進行はこうだ。最初はまず前の作戦と同じように、怪獣7号を傷つける為に地下に何個か設置した爆弾を起爆し地上に出す。そのあと第1部隊および第3部隊普通科が少しずつ攻撃しつつ山岳部へと誘導して、そこをAMM-1対獣誘導弾をフル装備したFS-2支援戦闘機や14式機動戦闘車、亜白隊長などの遠距離射撃武器を持った中隊長たちの攻撃を集中する事で対象である7号を撃破。という流れで決定した。

 第火力を叩きこむ事自体は楽だとはいえ、普通科のみで、それも近距離武器しか持たない中隊しかない状態で誘導するのは難しい。誘導できたとしても大規模な被害が出てしまえばかなりの損害が出てしまう。もし敵が山岳部から遠くに出現した場合は、それこそかなりの被害が出てしまうからなおさらだ。このように、急に立ててしまったため、本作戦は無理が多い作戦となってしまった。つまり、あとは運頼みというわけだ。

 彼女は息を呑む。その時だった。彼女の部下の1人が慌てて報告する。

「7号が目標に食いつきました。現在7号は相原中央公園付近にいます」

 ついに来たか、そう思った彼女は矢継ぎ早に部下に命じた。

「全部隊に繋いでください。怪獣7号出現、全部隊は行動開始せよと。航空部隊にも出動要請を出してください」

「了解しました。怪獣7号が相原付近に出現、全部隊は怪獣7号への攻撃を行え。航空部隊も急いで出動せよ」

 爆弾を喰らったという訳だった。そして、怪獣7号は進行を開始した。

 

 

 

「始まったな」

 第5中隊中隊長である斑鳩は、先程まで見ていた8倍×26mmの双眼鏡を下ろし部下に命じる。

「第5中隊行動開始、最初は俺に着いてこい。他の中隊とひとまず合流する」

「了解」

 第5中隊は迷う事なく彼に着いて行った。集結したとはいえどどこに敵が出現してもいいように中隊を相模原周辺にそれぞれ分けて配置していた為最初は他の中隊と合流せねばならなかった。

 怪獣7号の方は分離した一体か爆弾を喰らった為に慌てて集合、合体しているらしい。おそらく自分たちが着いている頃には敵は侵攻しているだろう。

 しばらく移動すると、おそらく彼らと同じ普通科である一個中隊と合流した。斑鳩はそこの中隊長だろう人物と一言二言話して戻ってきた。

「よし、全員聞け。今回俺たちこの第1部隊第7普通科中隊と共同で作戦にあたることになる。俺たちがやるのはこの第7中隊が誘導してきたのを叩く役割だ。全員行動開始」

 斑鳩がそう言うと、第5中隊は誘導した敵を叩くために町田付近に移動を開始した。ある程度のダメージを与えるために81mm迫撃砲などの小型迫撃砲を組み立て小銃も打てるように用意する。

 向こうで爆発が発生した。第7中隊による攻撃だ。小銃の弾が当たっていると見え7号の体表を何かがパチパチと弾いている。効果こそなかったようだが、敵の気を引くことは成功していた。今のところはうまくいっている。

「怪獣7号こちらに接近、まもなく迫撃砲の射程に入ります」

「よーし、近づいたらありったけをぶち込むんだ」

 斑鳩は目を細めながら7号を見つめた。だんだんと7号も迫ってくる。射程距離である100mを切ったあたりで、彼は部下に命じた。

「迫撃砲発射始め」

 号令と共に筒から一斉に弾が打ち出された。砲丸投げのような弾道を描きながら7号に殺到する。確実に命中する距離で打ったため全弾が命中した。効果がないと見るとすぐにまた装填し発射する。だが、それでもなお敵には傷一つつかなかった。

 小銃の射程に入ったため、市川は思いっきりトリガーを引いた。少なくともないよりはマシだと彼は思っていた。

 

 

 

「ひゃー、ドンパチやってるな」

 徳さんは素っ頓狂な声を上げながら呟く。遠くには怪獣に対して防衛隊が大砲で攻撃してるのが見える。正直あまりにも命中しすぎて粉微塵になってるんじゃないかとすら感じる。だが、傷は付いていない。

「ものすごい体表ですよね。ここまでの砲弾喰らって無傷だなんて。最低でもかすり傷くらいはついてると思うんですけど」

「いや、俺が見た時でも怪獣8号の攻撃を受け付けなかったからな。この程度でやられているはずがない」

 日々野は、古金がある程度自分に対して彼女なりにアドバイスしてくれたおかげで、以前よりかはいつもの調子を取り戻していた。まだ変身するかには迷っているが、少なくとも最後まで戦いを見送るのだろうなとは感じていた。なんせ、防衛隊が防衛線を張ると分かった時から、解体を行いやすくするためにモンスタースイーパーが先に現場に来ていたのだ。

「ですね、私も日々野さんと行っていたのでよく分かります。確かに8号が苦戦するほど防御力は高かったです」

 古金も日々野に同調するように頷く。

「そんな強い奴に勝てるんかな、防衛隊は?」

 日々野は徳さんの発言に対してギクッとした。そう、7号がここで倒せない可能性はなくはないのだ。なんせ相手は識別怪獣、怪獣6号と同じような強さを持った怪獣なのだ。この戦力で勝てるか?と聞かれても彼は自信を持って勝てるとは思えない。

 つまり、そんな時は自分が変身するしかないわけか、彼はそう思って手のひらを見つめた。




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