日々野は同僚たちに会社に道具忘れたから取りに行くに行くと言ってその場から離れ、近くのスーパーマーケットに向かった。正直こんな嘘で大丈夫か?とヒヤヒヤしたが、周りはまああいつにもそんな時があるでしょと言って見逃してくれた。彼は怪獣7号の対抗策を考えていた。
まず怪獣7号の弱点は以下の通りだ。
・遠距離戦ができない
・かといって近距離では尻尾しか使えない
これから分かるように、この怪獣は戦闘が苦手だ。防御力こそ高いが攻撃手段が限られている。ただし、体の分離が出来たり土に潜れたりと逃がしてしまう可能性も大きい。それに自分も近接戦しかできないのだ。ならばどうするか?
格闘で敵を消耗させてあとは防衛隊に任せる。今こいつを倒すにはこの方法しかあるまい。なんせさっきも言ったように自分は近接戦しかできないのだ。
少し彼は立ち止まった。本当に戦っていいのだろうか。防衛隊とも完全に協力できるといった保証はないし、そして何より防衛隊の弾薬などがすぐに補給できるわけではない。時間はかかるはずだからそこまで自分は持つだろうか?
いや、日々野は首を横に振りながらこう言った。
「こんなところで落ち込んでどうすんだ。もしかしたら救える命もあるかもしれないんだ。やってみないとわからないだろ」
彼は決心して現場へと向かった。そうだ、今の俺は怪獣なんだちょっとやそっとでは死ぬことはないだろ。だったら、自分よりも危険にさらされている人を助けることさえ出来ない。
いや待てよ。そもそもあの怪獣は…そうか‼︎この作戦ならば自分でとどめをさせるから持久戦に持ち込む必要もない。
彼は走りながらスーパーマーケットを出た。
保科は7号との戦いに苦戦していた。現在は彼率いる第1中隊や鳴海率いる中隊、そして機甲中隊が相手をしているが、なかなか効果がない。
彼は敵に飛び移り両手を交差させるようにして切り裂く。またも効果
なし。それどころか刀もそろそろ限界が来ようとしている。彼は予備にあと4本の0式を持っているが、このぶんでは数時間は持たなそうだった。
「伏せろ‼︎」
怒鳴り声の後から追うように射撃音がした、恐らく鳴海の専用武器の大型銃剣による攻撃だ。射出された砲弾は7号の体表にぶつかり炸裂する。
「チッ、これでも効かねぇのかよ…」
後半から射撃した鳴海は額を拭う。今の所は町屋付近までは誘導できているがこちらの被害も大きくなっている。進んだところに巻き込まれたりして、多分50人近くがやられた。それに弾薬もほとんどない。早いところ射撃地点に誘導しないとまずい。
お返しとばかりに7号が飛びかかった。短時間なら飛べるらしく離れた場所にいる14式機動戦闘車を押し潰した。見た感じ3両がやられたようだった。
「ディグ6よりマキュリア1へ、現在指揮車がやられた。これより中隊の指揮はディグ6が担当する」
「了解した」
鳴海は再び舌打ちをした。このままでは仕方ない。やるしかない。
彼は送話器を耳に押し付けた。
「マキュリア1よりカムイステーションへ。マキュリア1は作戦を変更し現在7号のいる地点に一斉攻撃を要請する」
「こちらカムイステーション、いいんですか?市街地に被害が…」
「そんな事言ってる場合じゃない‼︎このままじゃこっちがやられる」
一瞬沈黙が流れた。
「…わかりました。現在の7号の地点を伝えてください」
「現在7号は目標地点からおよそ1km離れた場所にいる。こちらもすぐに隊員を逃すから少しだけ待ってくれ」
「了解しました」
よし、彼は送話器を全周波数に切り替える。
「マキュリア1から全部隊へ。予定を変更しここで一斉攻撃をすることになった。全部隊はすぐに現在いる地点から離れろ。以上」
鳴海の周りも慌ただしく動き出した。彼もすぐに現場から離れる。上空には黒いヘリが音を立てて7号に向かっていた。
7号の上空に到着したAH-84が攻撃を開始した。
「ブルーサンダー1より全機へ、噴進弾攻撃開始。目標500m前方、発射」
小さな音を立てて少し細長い筒から噴進弾が発射された。命中すると瞬く間に7号の体を包み込んでいく。
「まだだ、誘導弾に攻撃を切り替えろ。ヘルファイア全弾発射」
今度は先ほどよりも大きな白煙を立ててヘルファイア対戦車誘導弾が発射された。同時にFS-2がAMM-1体中誘導弾を、そして残存している14式や中隊長らの攻撃が一斉に発射される。
凄まじい爆発が起きた。もはや一般人ならば気絶してしまうほどの有様だ。半径30m以内が焼けこげ建物がボロボロになっている。
そのすぐ後に上空から偵察ヘリが地面を観察する。コールサインはアルファー1で機種はOH-1だった。
「こちらアルファー1よりカムイステーションへ。目標に全弾命中、目視できるほどの損傷を確認、されどまだ行動可能とみられる。送レ」
7号は再び進撃を開始した。
「全弾命中しても倒れないのか…」
市川は驚愕の表情で目標を見つめた。なんてやつだ、ミサイルが40発以上当たったんだぞ。それでこのぐらいの損傷なんて、識別怪獣は格が違うと言うことか。
彼は同時にまずいなと思う。なんせ今彼は運悪く敵の進路上にいるのだ。すぐに逃げようにも攻撃される恐れがある。慎重に行かなくてはならない。
彼は、気づかれないよう抜き足差し足で移動する。ここまではうまくいっており敵は気づいていない。あともう少しだ。
しかし、現実は非情であった。市川は怪獣と静かに歩くことにに集中しすぎて地面の状態がほとんどわからなかったのである。結果、派手にコケてしまった。すさっ、と小さい音が鳴る。7号は彼に反応してこちらを向いた。
やばい。
反応がそう感じている。今のやつは明らかにこっちに気づいている。すぐ逃げなければ倒されてしまう。彼は必死になって計画を立てぬまま逃げ出した。ただ、少しは冷静だったようで、銃は捨てて逃げていた。普通だったら持っていたほうが良いのでは?と感じるかもしれないが、そもそも敵に効かない銃をそのまま持っていても意味がないし、それに小銃となれば重いのだからデットウェイトになりかねない。つまりは身軽にして逃げたと言うわけだ。
市川は必死に走った。特に敵が見失いやすいよう車の入れないほどの細い道を通りながら逃げる。7号もイライラしたらしく今度は押し潰そうとボディアタックの体制で飛び込んできた。市川は目を瞑った。
「え、」
彼の身には何も起こっていなかった。周りを見渡す。向こうには怪獣7号がありえないところに横たわっていた。そして…正面にはあの骸骨顔が7号の方を睨みつけている。市川は自分の身に起こったことを理解した。
「また変身させてしまった…」
彼はその骸骨頭な怪獣に駆け寄った。
夏休み満喫中です。