目が覚めた。
彼方此方に痛みを感じつつも、彼は起き上がった。今までの記憶が飛んでおり、自分が何をしていたのか思い出せない。
彼はボケっとしながらもあたりを見回す。
どうやら病室のようだった。彼の横にはバイタルを表示する機械や点滴、テレビなどがあった。病室の白い清潔感は、彼の心を落ち着かせていた。
「やっとお目覚めですの。待ちくたびれましたわ」
そんな声がして、ドアが勢いよく開かれた。そこには不機嫌な顔をした20代くらいの女性と、若いスーツ姿の男性が立っていた。
「まあまあ、岩本さん。彼は背骨を折って手術までしたんですよ。倒れてしまうのは仕方ないでしょう」
男性は何故かニコニコ顔で女性を諌める。彼は、はっきり言って読めない奴やな。と、感じた。男性は自己紹介をする。
「ああ、申し遅れました。私は出雲テックスの職員をやっております。出雲ハルイチと申します。彼女は、防衛隊武器開発課の課長をやっている本岩マンゲツです。我々は今回、訳あってご報告へと参りました」
「その報告ってなんすか?なんか事件とか、それとも移動とかですか?」
出雲は頷く。
「昇進ですよ。保科ソウイチロウさん、貴方はこれより第3部隊の副隊長をやってもらうことになります」
「それまたいきなりですなぁ。そんな重要な職だと、僕はかなり扱いずらいっすよ」
保科は訛りの抜けない言葉遣いで尋ねる。第3部隊はかなり初期の頃からある部隊で、西東京やな名古屋などの都心を防衛するため、練度などもそれなりに高い。保科は練度は高かったが、近距離に能力を振っているために戦場での役割が原型されてしまう恐れがあった。
「そこは、新隊長が遠距離が得意なんで、そこらへんを組み合わせて補ってくれ、といった感じです。あとは、ここですね」
出雲は、ニコニコした表情をまま顔を叩いた。保科は僅かに顔をしかめる。
「そろそろ次の話題に変えません。私ほとんどほとんど会話に入っていんですけど」
本岩は不機嫌そうにしている。保科はキョトンとした顔で尋ねる。
「その、次の話題ってなんすか?」
「よく聞いてくださいましたわね。これよ‼︎」
そう言って、彼女は保科に薄い書類を手渡す。表紙には「7号対策委員会」と書かれている。保科は書類のページをめくり、内容を確認する。
内容を端折りつつ言うと、初の群体集合型怪獣である怪獣7号が現れた。防衛隊も現場に行っては逃げられてきまった為、それに対抗するために対策委員会を設置した。というものだった。
「なるほど、僕が寝てる間にこんな大層なことが起こっとったんすね」
「そうよ、しかもただの怪獣じゃないて識別怪獣なんだから、本ッ当に迷惑よ」
保科は同情しながら頷く。通常、怪獣の強さはF(ファルティチュード)の1〜9までで表される。F1レベルだと、対戦車ミサイル1発あれば倒せるぐらいだが、この7号、と呼ばれている個体も含まれるF9からは出現順に番号が振られている。これらは識別怪獣、防衛隊内では番号付き、と呼ばれ、反応兵器、それも融合弾ほどでもない限り一撃では倒せないぐらいの脅威として認識されていた。
「こいつに僕が入れと?」
出雲が口を挟む。
「絶対とは言いません。ただ、人数が一定まで行かないと承認されないんですよ。なにしろ我々のリーダーも一応防衛隊に入っていますが、最近ではあまり戦っていないようですし」
保科は少し考え込んだ。
「わかりました。入ってみましょう」
彼は続ける。
「ただ、気に入って入ったわけではありません。怪しいから気になって入ったんですよ。ところで…そのリーダーというのは」
「貴方も知ってる人ですよ。たしか小田原で会ったとか言ってましたよ」
まさか、保科は顔をしかめながら聞く。
「鳴海さんか」
「そうです。うちのリーダーは鳴海弦隊長ですね」
保科は苦笑いした。そして、彼はなおさらその委員会が、胡散臭く見えてきた。さっき出雲が言ったように、彼と鳴海は小田原で起きた怪獣6号討伐作戦まで同じ部隊に配属されていたから、彼の事は知っていた。
鳴海は、正直実力こそ高いのだが、性格面ではどうにもとっつきにくく、そしてなにより変な男であった。
「上手くいきましたね」
出雲が眉筋ひとつ変えないで言う。
「やはり我々のリーダーが彼を知っていたからでしょうかねぇ?」
「知らないですわそんな事。あの男だって話が合うとはいえよくは知りませんもの」
本岩は憂鬱そうにする。二人は、話し合いながら病院の階段を降りた。スマホが鳴った。
「あっ、リーダーですね。確認でしょうか」
そう言いながら出雲は着信に出る。
「もしもし、なんでしょうか」
「その前に合言葉をいってくれ。ナポレオンの切り札は?」
「ダイヤのA。毎回思うんですけど、これどう言う意味なんです」
出雲は少し不思議そうな顔で尋ねる。
「知らん。なんせ特撮番組からとったからな」
本岩が口を挟む。
「そんなことより、通常の連絡はLINEでいいんじゃないのかしら?」
電話越しの声は、怒鳴り声で言う。
「LINEでやっちゃうと楽にバレるじゃねぇか、このバカ女‼︎」
「バカは貴方じゃないの。ただかっこいいからって自分でも分からない合言葉使うなんて、この特撮バカ‼︎」
「特撮バカは褒め言葉だね‼︎」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いてください」
出雲は、内心電話でも傍受されたりするしさほど変わらんのでは?と思いつつも二人を宥める。
「ともかく、あのオカッパ頭を入れたのは本当に良かった。これで委員会として活動できるからな」
「ええ、ようやくですよ。本当」
「本当ですわ」
二人はそれぞれ同意を示す。
「ま、あのオカッパにはよろしくぐらいは言っといてやれ」
その言葉を最後に、電話は切れた。少なくとも二人は、これからまた一波乱起こるんだろうなと感じていた。
11月30日。秋の終わりであった。
ゴールデンウィークだからいつもより出せる。かも?あとタイトル変えました。