1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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27:オイル怪獣現る‼︎

「人型怪獣…か」

 よみうり臨海基地の隊長室で鳴海はそう呟いた。隊長室とは言うもののその内情はゴミ屋敷と大差ないほどひどかった。周囲にはゲーム機やプラモデル、ソフビなどの物や、カップ麺、ペットボトルの空などが散乱している。

 彼は保科の「体術のような動きをしていた」という言葉から、怪獣8号は人間がなんらかの事情で怪獣になったものと仮定していた。それも武術ができるとなれば生半可な人間が元になっているとは考えにくい。とすれば…

 鳴海は、そう考えていると近くで大きな音がした。何事かとそちらを向く。彼は唖然とした。そこには長身の禿げた男性か立っており、部屋のドアが吹き飛ばされていた。

 彼は散らかっているゴミの上に立ち上がり、ドアのあった場所にいる男性に怒鳴りつける。

「おい、ハゲ。どういうつもりだ‼︎これじゃ俺のガンプラやプレステ2のソフトがぶっ壊れちまうじゃねぇか。それに今はもう2時だぞ‼︎」

「相変わらずだな。さっき連絡があった。沖縄近海で怪獣の目撃情報が入った。どうやらタンカーの船員が発見したみたいだが、そのタンカーとはその後連絡がついていない。上はお前が主導でやってる委員会ってのですぐに対策を打ち出して欲しいんだとさ」

 長身の男性、第1部隊副隊長長谷川エイジは呆れたような顔でそう言った。

 鳴海の目の色が変わった。

「他の対応は今どうなってる?」

「まだ進行ルートを絞り込めてないから海上部隊が護衛艦を出しているとしか聞いてない」

「わかった。すぐに召集をかけておく。僕は会議室に行くから業務はお前に任せる」

「了解した」

 長谷川は隊長室を後にした。

 

 

「さて、急に集まってもらってすまないが緊急の作戦会議を行う」

 現在進行形で被害が拡大しているからか、いつもの会合よりも張り詰めたような空気をしていた。

「小此木君、現在の情報はどうなっている」

「はい」

 小此木は手に持った書類を見ながら答える。

「怪獣、命名後は"水竜2025型"は、タンカーを襲ったあと沖縄沖からそのまま九州のあたりにいると思われます。佐世保海上部隊所属の護衛艦や哨戒機等が捜索していますが以前として発見できておらず、そろそろ引き返すものと思われます」

「ふうん…」

 鳴海はどうしたものかと口を押さえる。

「おい、矢沼君。海自は今護衛艦を出せるか?」

 海自出身の矢沼は肩をすくめながら答えた。

「無理でしょうね。呉にいる第4護衛隊や横須賀にいる第1護衛隊はアメリカの対中ソ演習のために舞鶴に出かけてます。それに、防衛隊との連携も不足しており完全に対処は出来ないでしょう」

「わかった。小此木君。また質問してすまないが防衛隊の艦艇の稼働数はどれだけだ?」

「大半が古い[あわゆき]型護衛艦ですので呉にいる艦は改装を受けていて使えませんね。なので使えるのは横須賀に配備されている同じ[あわゆき]型ですが、[もりゆき]と[はなゆき]が使えると思われます。現在すでに2隻は出航準備に入っております」

「わかった」

「すいません」

 藤沢が手を挙げた。

「質問があるんですが、その海竜2025型はタンカーを襲ったんですよね。そのタンカーは無事なのですか?」

「損害こそあったが中破程度に済んでいるな。石油が漏れ出して航行がうまくいっていないようだが」

「私としては敵はタンカーを標的として襲ったのではないでしょうか?」

「ほう」

 藤沢は続ける。

「ええ、海上なんですからタンカー以外にも見つけようとすれば船は見つかるでしょう。ですが、彼らはあえてそこでタンカーにしています。それには何かしらの意図があるのだろうと私は考えました」

 彼は一旦言葉を切って周囲を見渡す。

「ただタンカーを気になったから襲ったのであれば、中途半端に破壊せずに撃沈ぐらいはするはずです。ならばなぜタンカーを襲ったのか。それはその水竜0422型がタンカーを襲うなんらかの理由があると考えたわけです」

「たとえばどんな理由がありそうだ」

「そうですね、石油を食べるとか?ですかね。たしか前に石油をエネルギー源とした怪獣がいたと書籍にも書いてありましたし」

「石油を食う…ですか。そんな怪獣もいるんですな」

 保科が感心したようにそう言った。今回は海の戦いだし彼の出番は少ないだろう。

「特撮とかではわりと見るぞ。とにかく、まあ石油を狙っていると分かれば狙いはタンカーやコンビナートだな。よし、[もりゆき]と[はなゆき]には船舶航路付近を重点的に捜索しろと伝えろ」

「わかりました」

 鳴海の言葉を聞いた小此木は、小さく頷くとすぐに両艦に連絡した。

 

 

 

「連絡が入った。本艦と[はなゆき]は国際船舶の航行付近を警戒しろとだ。よし進路を0-4-5にとれ」

 護衛艦[もりゆき]艦長山中ヒロシは冷静な顔でそう言った。すでに対潜ヘリは飛ばしてあり怪獣を見つける気は満々だ。

「了解、針路を0-4-5にとれ。面舵5°」

「ようそろ。面舵5°」

「それにしても…

 航海長がぼやく。

「かなり大雑把ですなぁ。国際の航行付近を警戒しろだなんて。捜索するにしても本当に見つかるんですかね?」

「陸の連中の話だと、石油を食べる怪獣らしくてタンカーを襲っているみたいらしい」

「石油を食べるんですか?もはや生物として成り立ってるんですかね。怪獣ってのは」

 山中はため息を吐く。

「知らんよ。だが昔から怪獣はそんなのが多いからな。俺はそんなに気にしなくなったよ」

 航海長はそうなんだな、といった顔をしながら海上を見つめた。右斜め後ろには[はなゆき]が見える。

 彼らの乗っている艦、[もりゆき]と[はなゆき]は、防衛隊が持っている艦の中でも最強と言われる火力を誇っていた。もっとと、防衛隊海上部隊というのは、海自から護衛艦のお古をもらっているだけなので性能自体はさほど高くない。しかも現在保有している[あわゆき]型は誘導弾を使う金がないと言って、横須賀に配属されている[みずゆき]、[もりゆき]、[はなゆき]を除き主砲とCIWS以外武装を取り外されているし、まともな装備を持ったやつでもDE(沿岸用護衛艦)の[あばしり]型護衛艦や[るもい]型護衛艦しかいない。つまりほとんどまともな戦力を備えていないのだ。

 報告が入った。

「対潜ヘリより連絡、ソノヴイに大型生物の航行音を探知、怪獣と思われます。本艦から左20°、距離不明」

 間髪入れずに命じた。

「対潜戦闘用意、総員配置につけ!!航海長、操艦を頼む」

「了解」

 さて始まるぞ、山中はそう思いながら艦のCIC(戦術指揮所)へと向かった。

 

 

 




設定
[あわゆき]型護衛艦[もりゆき]
全長130m
全幅13m
兵装
76mm単装砲×1
シースパロー短SAM8連装発射機×1
高性能20mm機関砲×2
74式アスロックSUM発射機×1
3連装短魚雷発射管×2
12.7mm機銃×6
概要
 [もりゆき]は[あわゆき]型護衛艦の4番艦で、1982年4月22日に竣工され、1982年10月21日に進水、1984年2月15日に就役し、横須賀の第41護衛隊に配備された。
 2013年4月1日に退役し、防衛隊横須賀海上部隊に鞍替えとなった。改装と同時に対艦誘導弾を撤去して機銃を増設しており、対怪獣戦が行えるようになっている。また、予備戦力としても残しているため他の[あわゆき]型と異なり武装を可能な限り残している。
※モデルは[はつゆき]型護衛艦で、リアルでの4番艦は[さわゆき]である。


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