「マキュリア1よりイーグル1へ、目標は視認できるか?」
鳴海はイーグル1に対して聞いた。かなり誘導弾を喰らったため倒せるとまではいかないがある程度の傷は負ってるかもしれない、と考えるとその場から離れていないはずだ。
すぐにイーグル1から連絡が入る。
「From Eagle1 to Macuria1,there is currently a lot of smoke at the explosion site,and we are also at a high altitude so we are cannot see the target.Sorry.(イーグル1よりマキュリア1へ、現在爆発地点は煙が多く、こちらも高度をとったため目標を視認できない。すまない)」
「こちらマキュリア1、大丈夫だ。見えなかったなら仕方ない。こちらが直接向かう。送レ」
「From Eagle1 to Macuria1,understood.Please be very careful.(イーグル1からマキュリア1へ、了解した。くれぐれも気をつけてくださいね)」
「こちらマキュリア1、こちらも了解した。無事に帰ってくる。終ワリ」
鳴海は通信を切ると素早く部下たちに命じた。
「これから僕は9号の捜索に向かう。君たちは8号の捜索および付近の警備を行ってくれ」
部下たちは頷いて移動した。そう言って彼は9号の着弾地点まで向かった。不意打ちを喰らうとまずいのである程度警戒する。
爆心地は粉々になっていた。半径7m程度が吹き飛び瓦礫が散乱している。だが、9号の姿は見当たらない。
逃げたか、と鳴海はその場を後にしようとした。その時だった。何か柔らかいものを踏んだ。ハッとした彼はすぐに専用武器を構える。
怪獣ではない。人間だ。男性なことは体つきからわかるが、私服のため職業はわからない。しかし、ここにいるとすれば防衛隊関係なことは間違いない。あるいは…
彼はそんなことを考えながら、すぐに救護班を呼んだ。
2時間後、結局は怪獣8号および9号はどちらも発見されず捜査は打ち切られた。
4時30分、横須賀市での全ての戦闘が終結した。
「まったく面倒だなぁ」
その2日後、日々野たちは今回倒した水竜2025型の処理を行っていた。今は5分休憩で少し休んでいる。彼はこれなら戦っていた方が楽だったとため息を吐く。
というのも防衛隊としてみればほぼ無傷の怪獣、それも陸上ではなく海中だから珍しい。そのため防衛隊の生体研究部隊はなるべく状態良くこちらに送ってくれと要求してきたのだ。
一応強制ではないが、会社落とすのはを何があっても避けたいため、死体を腐らすなんてことがあればこちらとしても困る。
そのため水竜2025型は体をバラさずに運ばなければならず、徳さんらもどうしたもんかといった表情をしていた。
一応やり方としては、海竜2025型の尻尾やひれの関節部分を折り畳んでからヘリなどで引っ張って解析場に運搬するらしいが、ある程度の重さがあるため最低でも4機ぐらいはいるだろう。
それまでにある程度の防腐処理をすればいいのだが、水竜2025型の図体はそこそこ大きいため面倒だ。
彼の姿を見て古金が駆け寄ってくる。
「日々野さん大丈夫ですか?」
日々野はああ、と言って頷いた。
「面倒ではあるがこんな作業は仕事やってきて数回は体験した。大丈夫だよ」
「でも、疲れは体に悪いですよ。ほら、出勤の時にこれ買ってきましたから」
彼女はそう言いながら彼にボトルコーヒーを渡す。
「お、ありがとな。昼にでも飲んでおくよ」
「礼には及びませんよ」
彼は少し笑みを浮かべてボトルを荷物にしまった。
穂高は横浜南部病院の病室で目が覚めた。防衛隊の人から話を聞くとどうやら横須賀市金沢区でぶっ倒れていたらしい。幸いにもほとんど怪我はしていなかったが。一応1週間程度入院することになった。
親族やモンスタースイーパーの先輩方がお見舞いに来てくれたため、周りにはいくつかのお見舞い品が置かれていた。
やはり今回もおかしい。穂高はそう思いながらむくりと起き上がる。前回は車に跳ねられて無傷だったし、今回も怪獣同士、それも識別怪獣2体、大型怪獣1体の戦いに巻き込まれても無傷、普通なわけがない。
彼は目を擦りながら外を見た。何気ないいつもの風景だ。怪獣の姿もなければビルも崩れていない。だが今の穂高にとっては以前見た時とは違っていた。
やることのない彼は今度は新聞を広げた。内容としてはまあ当然ではあるが、やはり怪獣8号や9号に関することがでかい見出しで載っていた。彼としては別に他の記事を見たかったためささっと社会面ページを捲る。社会面ではこれまた怪獣が影響してるのか、現在の自衛隊がどこまで防衛隊と協力して対処できるかとか自衛隊の装備がどれぐらい怪獣に効くのかとかが書いてあった。穂高はまあまだ興味あるし、なによりも気を紛らわせるしいいかと読み進める。
やはり見た感じだと自衛隊は中ソの対応に追われてるみたいでなかなか防衛隊の援護までは手が回らないようだ。なんせ日米だけでなく相手側も大型空母で洋上に睨みを効かせているのだ。あまり戦力を割くわけにはいかない。
穂高は個人的な意味で兵器について詳しかったため中ソの空母についてある程度理解していた。
まずソ連が配備しているのは、ソビエト連邦太平洋艦隊旗艦の[ヴァリャーグ]だ。本級はソ連が二番目に開発した大型空母で、全長は300mをゆうに越す大型艦だ。搭載機数も70機と日本の軽空母[すおう]が最大でも18機と比べるとその差は歴然だ。それ以外にも、多少は旧式だが大型空母一隻や、時代錯誤とも言えるかもしれない誘導弾搭載型重巡洋艦も保有しており単体でも自衛隊と互角に戦える戦力を持っていた。
そして中国は主に北海艦隊と東海艦隊がこちらに対立するように戦力を固めていた。北海艦隊は[ヴァリャーグ]の同型艦を買い取った[河北]を、東海艦隊は独自に建造した[天津]をそれぞれ配置しておりソ連の戦力と合わせればこちらの航空戦力と同等レベルと考えて良い。
それとと彼が思っていると、タイミング悪くドアがノックされた。穂高としてはもっと読んでいたかったのだがお見舞いを断るわけにもいかないためすぐにドアを開けた。
「お邪魔するよ」
そう言いながら1人の男性が入ってくる。髪型、声質、顔、どこかで見覚えがある。
たしか、第1部隊の隊長だった。
これで横須賀の戦いは終わり