1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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36:来たぞ!代理小隊長

「私が…小隊長ですか?」

 四ノ宮は少し面食らったような表情でそう言った。それに対して隊長である亜白はすぐに頷く。

「そう、前回の戦闘で我々は保科をはじめとする大きな隊員が負傷してしまい、その穴埋めをしなければならなかったんだ。保科の分は斑鳩に任せ、中隊長には小隊長から代理をやらせるつもりなのだが、それでは戦力が不十分だからな」

 確かにその通りだった。四ノ宮は、討伐大学の中でも難関のつくば討伐大学を卒業しており、新人隊員の中でもかなりエリートな方だ。それに一番最初の試験でも優秀な戦績を出しており、並の熟練隊員よりも優秀な人物と言えた。そんな彼女が臨時の小隊長に任じられるのはさほど珍しいことという訳ではなかった。

 とはいえど彼女も緊張しないわけではない。実戦で小隊の指揮を行うのはこれが初だし、小隊のメンバーはまだわかるが、他の小隊の人々は顔を合わせたことがないからどうなるかわからないのだ。

 亜白は再び口を開く。

「もちろん強制はしない。君はまだ新人だし君以外にもベテラン隊員はいるからな」

「いや」

 四ノ宮は首を振る。

「やらせていただきます。実戦経験を積んでいかなければ私も上達しません。こんな機会滅多にありませんので、これから上手く指揮をするためにもやらせていただきたいと思ってます」

「わかった。だがくれぐれも無理はするな。何かあったら他の小隊長たちからも手伝ってもらえ」

「はい、それでは失礼しました」

 彼女はそう言って隊長室を出た。

 

 

 

「僕が中隊長代理かぁ。荷が重いな」

 自室にいた直間アキラは、ため息でも吐きそうな顔をしながらそう呟いた。彼は昨日、四ノ宮が小隊長代理を任じられる前に中隊長代理の任を受けていた。

 だが、彼は四ノ宮ほど気は乗らなかった。仕方ないと思ってやってみたが正直言って彼からして面倒だった。

 直間は小隊長をやっているため実戦での指揮経験はあるが中隊長となると勝手が違うと考えてるいる。中隊長だと率いるのは小隊5つ、つまり実質今までの5倍だしその下には普通科だけでなく兵科の違う迫撃砲小隊も付くことになるのだ。正直相当めんどくさい。彼は後方支援を頼んだ経験はあるが詳細なことはさほど詳しくはないし、それに二つの兵科をそれぞれに指示しないといけないためある程度の戦況を確認しておく必要があった。(戦況の報告等はオペレーターを通して行われる)そのため、彼は憂鬱そうにため息をついていたのだ。

「あ、確かあなたが代理の中隊長の方でしたっけ」

 ん、と彼は後ろに振り向いた。歳的な髪型としてはまだギリセーフなのかはわからないが金髪のツインテールをして、背はそこまで高くはない凛々しい女性が立っていた。彼はその顔と姿に見覚えがあった。

「君は確か今年入ってきた…」

 ええ、といいその女性が近づいてくる。

「今年入隊した四ノ宮キコルといいます。3日前の戦闘による戦力の補充のため今日より臨時小隊長に任命されました。今回、臨時中隊長と面識を合わせるのをかねてご挨拶をしにきました」

「ああ、すまなかったね。僕が今回臨時中隊長に任命された直間アキラだ。よろしく頼む」

 彼は表情を少し緩めてすぐに挨拶した。しかし、内心では入隊してまだ1年なのに小隊長なのかと少し面食らっていた。なるほど、噂ではかなりのエリートだとか言われていたがまさかここまでとはな。もっとも亜白隊長や第1部隊の鳴海隊長も20代なんだもんなぁ。今の時代それぐらいの人が居てもおかしくないのかもしれんな。

「それにしても大変だな。君まだ入隊したばかりだろう?」

 彼女は首を横に振る。

「いえ、大丈夫です。こっちも伊達に討伐大学に通った身ですから。これからのためにも経験を積んでいかないと」

 話を聞いて、こいつなかなかすごいやつだな。と直間は感じた。自分ならこんな任務を続けていく精神力はない。これからのため、なんてこと考えながらこんな仕事を引き受けることはできない。今回だって自ら乗り気でやったわけではないのだ。

 直間はだが、と言って続ける。

「それでも君はまだ入隊したばかりだということには変わりない。無理をせずにな。問題があったら僕たちも協力する」

「そうですか、ありがとうございます」

 四ノ宮は笑顔で頷く。

「まあ、もっともこんな目にクマができてるようなヒョロヒョロな男性なんて心許ないだろうがね」

 彼は自嘲気味に笑った。

「私もその目のクマ気になったんですけど大丈夫ですか?ちゃんと生活できてます?もっとも筋力はついてると思いますけど」

「まあ夜間パトロールとかやってたからな。規則正しいかと言われれば嘘になるね」

 彼はそう言って顔を顰めながら自分の頭を撫でた。

「そうですか、あなたもそんなに無理をしないでくださいね。助けてもらうのはありがたいですけど身体を痛めてしまっては元も子もないですし」

「労いの言葉、感謝するよ。まあこっちもなるべくは無理をしないようにする」

「では、失礼しました」

 彼女はそう言って直間の部屋を出た。

「本当に、無理しないようにしなければな」

 彼はそう言いながらインスタントコーヒーを淹れようと立ち上がった。

 

 

 

「おい、また怪獣警報が来たぞ」

 車で伊勢原付近の高速を走っていた男性が顔を顰めてそう言った。彼がまたと言うように最近は怪獣災害が増えている。特にF5〜6の怪獣の出現頻度が多くなっていた。原因はわからない。TVに出てる学者とかは地震などが増え、その振動で怪獣災害が進んだのではないかと分析してた気がする。

「おいおい、今度はどこだよ。まさかここらへんじゃあないだろうな」

 そう言って助手席に座っていた男性が横に身を乗り出す。避難指示が出ているのは秦野市、厚木市、そして…伊勢原市、ここら辺どころかすぐ近くだった。

「おいおいマジかよ、勘弁してくれよ」

 助手席の男が本当に嫌そうな顔をした。有給取ってこれから東京にいくつもりだったのにここで怪獣かよ。こんな時運がないなぁ。

 運転席の男は仕方ないと言った表情になった。

「有給取って休暇に行くつもりだったがここまで来たら仕方ねぇ。何かあったら車捨てる覚悟せんとダメだな」

 まもなく耳障りな警報が付近一帯に鳴り出した。その数秒後、窓から見える山が崩れ大きな甲殻類が姿を現した。

 

 

 

 




うまいぐらいには進んだかな?
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