1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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39:恐怖の戦場を突っ走れ!

 

(待っていろ。今行くからな)

 直間はそう思いながら四ノ宮小隊が居るところまで走りつつ、手にした小銃で射撃する。

 あくまでも彼は臨時の中隊長のため、彼自身はAMSGRをつけていない。そのため、現在の彼は四ノ宮をただ助けるのではなく、攻撃することでこっちに注意を引きつけておこうとしていた。

 射出された多数の弾丸はそのすべてが宙へと弾かれるが、どうやら当たった感触自体は伝わっていたらしい。怪獣はこちらへと体を向ける。

 彼はよし、こっちだと思いながら怪獣を誘導するため引きつけるように移動した。

 

 

 

「なんとか助かった…の?」

 四ノ宮は息を切らしながら周囲を見渡した。見たところ敵はこちらとは別の方向に移動しているようだった。

「みんな無事?」

 彼女はゆっくりと警戒しながら立ち上がった。付近にいた部下に部隊の現状を聞く。

 意識が残っていたらしい部下の1人が、服についた土砂を払いつつ立ち上がる。

「ええ、自分はなんとか大丈夫です。しかし、現状はあまり良いとは言えんでしょう。敵の注意は別の方向へと向いていますが、早いところ動かなければこっちはやられてしまいます」

 やっぱそうよねぇ、と四ノ宮は思う。

 確認の結果、小隊の損害は死者こそいなかったが、重症者が2名、他負傷者が5名程度出ていた。あまり大きいというわけではないが、慎重に行動せねばならないだろう。

 送話機に通信が入る。

「こちら直間小隊。そちら援護しに来た。聞こえていたら返事をしてくれ。送レ」

 通信が入ってきた。聞いた感じ中隊長が助けに来たようだった。彼女はすぐに返答する。

「こちら四ノ宮小隊。そちらは何人で来たのですか?送レ」

 通話機から失笑の声が漏れる。

「そっちはもう勘付いてるかもしれんが、こっちは1人で援護しに来てる。だから早いとこ逃げないとこっちがもたなくなるぞ。送レ」

 四ノ宮は大したものだと感じた。まさか1人でここに助けに来るとは。

 彼女はすぐに返答する。

「こちらは大丈夫です。よければ現在そちらがいる場所を教えてください。送レ」

「了解した。僕が現在いる位置は、そちらから約100キロの地点。大学のグラウンドのあたりだ。終ワリ」

 彼女は考える。

 100キロのあたりならまだこちらからもいける距離だし、仮に負傷者の対応を優先したとしても多分間に合えるはずだ。

 四ノ宮は部下に指示を出した。

 

 

 

 直間は時間稼ぎのための戦闘を続けていた。

 彼の今持ってる武装は、炸裂弾頭のユニグレネードを付けた96式小銃と腰部につけた手榴弾。相手がF5以上の実力であれば確実に正面から勝つことはできないと言える程度の武装だ。

 だが気を引くためだと考えればこれで十分だ。アクシデントこそあったとはいえ依然作戦は継続している。

 彼は敵の方向に首を向けた。

 現在彼は敵の周囲を旋回するように引き付けており、なるべくここから動かないようにしつつ気を引こうとしていた。

 だが、体力が無限に持つわけがないため当然途中で息が切れてくる。それに弾も有限だ。次第に戦うのが厳しくなってくる。

「クソッ、支援はまだか」

 彼はそう言いながら数発の5.56mm弾、ユニグレネードを怪獣に撃ち込む。グレネードの爆発で敵の視界を奪ったものの、特に効果はない。

「こちらオメガステーションよりルナリエ1へ、現在、先程まで支援を行っていた一個機甲小隊がそちらに向かってます。巻き込まれないように注意してください。機甲小隊の任務符牒はピーパー3。送レ」

「こちらルナリエ1、了解した!!」

 本部から通信が入る。

 その時すぐに何か大きいものが地面を叩く音がし、後方から戦車のようなものが見える。間違いない。味方だ。

 彼は聞こえていてくれよと心の中で祈りながら通信を入れる。

「ルナリエ1よりピーパー3へ。繰り返す、ルナリエ1よりピーパー3へ」

 送話器に声が聞こえてくる。

「こちらピーパー3、受信した」

「ルナリエ1よりピーパー3へ、現在ルナリエ1は敵怪獣から300mの位置をマークしている。送レ」

「こちらピーパー3、了解した。ピーパー3は今から3分後に攻撃をかける。それまでに安全な場所まで退避してくれ。送レ」

「こちらルナリエ1、了解した。終ワリ」

 彼はすぐに離脱する用意をした。

 

 

 

「目標、射程位置に入りました」

「今は砲撃開始時刻まで何分だ?」

 戦車長は部下に聞く。

「あと1分20秒です。あと少し待ちましょう」

 戦車長は了解と言って頷いた。彼の乗っている76式戦車改は彼のものも含め6両が展開していた。

 ここには戦車長を含めて3人がなっていた。最新ではないため車内は窮屈であるが、任務に支障が出るほどではない。

 部下の声が聞こえた。

「時間です」

 彼は咄嗟に小隊全車両に通信を繋げた。

「ピーパー3より全車両に次ぐ。全車両射撃開始。繰り返す、全車両射撃開始」

 戦車の砲身が上に傾き目標へと砲口の向きを変える。

 戦車長は内部から敵を確認した。76式改は改修により強力なYAGレーザーを使用したレーザー測遠機を装備していた。そのためか主砲の照準などは以前よりも良くなっていた。

「前方、敵怪獣脚部、対榴、撃て!」

「発射!」

 命令と同時に砲手はトリガーを引いた。

 反動とともに焼けた砲弾が目標に向かう。

 今回は足止めをするため、撃つのはあくまで榴弾を選択していた。

 榴弾は運動エネルギーで目標を破壊するのではなく、内部の火薬が広範囲で拡散することにより目標に打撃を与える砲弾だ。威力自体は高くないが今回のような足止めをするためなら非常に有効な砲弾だ。

 砲口から発射された砲弾は全車計6発が目標の下半身に殺到した。

 先に命中した1〜4発目は目標の足元に命中。敵の足元を崩し、進行速度が下げることに成功した。

 残りの5、6発目は直接敵の足に命中させることによって、バランスを落とさせ、敵は前のめりに突っ伏すようにして倒れた。

 しかし、敵は倒れてはいたが、黒くなりつつある金色の体表のおかげか、足の部分が少し焦げた程度でまともな傷はまったくついてなかった。

「第二弾装填。次が来るぞ」

 戦車長はすぐに命じた。おそらく敵は損傷を受けてないことを考えるとまた前身してくるはずだ。彼らの任務はなんとしてでもここで食い止めることだ。だから敵に動く隙を与えず火力でこのまま押し留める。

「装填完了!!」

「小隊、目標同じ、撃て!!」

 再び爆音が響き、車体が少し揺れた。

 しばらく戦闘を続けた時、本部から通信が入った。

「オメガステーションよりピーパー3へ、まもなくアーチャー1の攻撃が始まります。その場から離れてください。送レ」

 そろそろかな、と彼は思いながら小隊全車両に繋げた。

「ピーパー3より全車両へ、もうすぐアーチャー1による攻撃が開始される。全車ここから退避しろ」

 まもなく後方から地鳴りのような音がした。射撃を開始したのだ。

 




お久しぶりです。刀持ちの烏です。
今回は約3ヶ月ぶりに本作を更新しました。これからも精進してまいりますので引き続きよろしくお願いします。
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