1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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エピソード1 大怪獣になった男
4:裏方の男達


「今、新しい情報が入ってきました。現在発生した怪獣は討伐された模様です。被災地のみなさんは引き続き余獣、二次災害にご注意ください。繰り返します…」

「ひでぇな、よくこんなに派手にぶちまけたもんだ」

 日々野カフカは、ハンバーガーを食べながら顔を歪めた。周りも彼に同情するような目で見つめる。

 彼の言ったように、怪獣の亡骸の様子は映像越しでも酷い有様だった。腹部には大穴が開き、中から小腸や肝臓などの臓物が飛び出されている。目も垂れ下がり、中の脳味噌もシェイクされているようだった。

 日々野はこれを見ながら、内臓の処理だけは勘弁願いたいなと感じた。こんなに臓器が垂れ下がっているようじゃ処理がしずらいし、なによりも臓器の方が臭いが酷いからであった。

 

 

 

「お邪魔しま〜す」

 二日酔いでズキズキする頭を抱えながら、日々野は職場に入った。彼は前日、腸作業に行かせられた腹いせと、今、第3部隊になっている幼馴染との劣等感と開き直りでヤケ酒をあおっていた。結果的に今でも頭がいいガンガンするほど痛い。

 彼が職場に着くと、中から機嫌のいい声がする。

「来た来た。おいカフカ、こっちに来い」

 そこには彼の先輩である徳さんと、見知らぬ若い男女2人がいた。女性の方は快活そうで、男性の方は少し冷たい印象をうけた。

「ほら、討伐大の生徒が体験に来るやつ、毎年あるでしょ。おっ、お前らこいつは俺の後輩の日々野カフカっていうんだ、お前らも自己紹介しとけよ」

 先程徳さんが言ったが、モンスタースイーパーなどの怪獣専門の解体業者にはよく討伐大学の生徒が来る事が多い。理由としては、防衛隊は公務員のため、仕事の体験はできないが、怪獣の解体業者であれば、防衛隊ほどではないが怪獣に触れる機会が多く、防衛隊志望以外の人でも入れるからであった。

「はい、現在20歳で怪獣大学に通ってます!古金アオです」

「市川です、防衛隊志望で、現在清原討伐大学に通ってます」

 2人はそれぞれ自己紹介した。徳さんは、市川の肩を手加減して叩きながら言う。

「そうそう、こいつ防衛隊目指してんだってよ。市川、この男も入ろうとしてたんだけどな、もう諦めちまったらしくて、もうすっかりここの常連よ」

「ちょっと先輩、日々野さんに失礼ですよ」

 古金が頬をむすっとさせながら抗議する。徳さんは必死に彼女を宥めていた。

「どうして、入るの諦めたんすか」

 市川は日々野を少し睨む。

 日々野は少し考えてからこう言った。

「そうだな、まずは君の志望動機というのを言ってほしい。防衛隊に入るうえでな」

 市川は口調を変えずに続ける。

「怪獣によって家族や友人がやられました。周りで生き残ったやつは誰ひとり居ませんでした。だから失わないために怪獣を斃す、そう考えたからです」

「暗いですよ、初日なんですからもっとこう明るく」

 古金は慌てていた。正直彼女の言うように結構暗いな、と日々野は志望動機から察したため、話を一回切ることにした。

「君の志望動機は分かった。俺から話振って悪いが、一回仕事しよう」

「俺は、諦めませんから」

 市川は力強くそう言った。

 

 

 

 昼休憩、日々野は幕の内弁当を食っていた。最近はあまり食ってるのを見かけないが、自分が好きだから食べている。

 辺りを見回した。市川が気持ち悪そうに顔を青くしていた。

「初日から腸作業なんて、上は正気なのか?」

 徳さんは、信じられないといった顔でそんなことを呟いていた。日々野は同情した。腸作業は臭いとグロさではかなりキツい部類だ。市川がこうなっている事からもその理由が分かる。

 だが、古金は平気そうだった。というか解剖とかに結構慣れているようで、結構作業もできていた。

「古金さん…よく平気ですね…」

「そりゃ、伊達に怪獣大学に通ってますから、解体ぐらいできますよ」

 大変だなあ、と日々野は彼女には悪いが市川の方が感情移入できそうな気がした。彼をチラリを見てみた。全く手の付けられてない弁当が放置されていた。

「それ、食べないのか」

 市川は、体調が悪そうな顔のままで言う。

「ちょっと、食えそうにはないっす」

 まあそうだわな、と思った日々野は彼にチアパックに入ったビタミンとかが入ったゼリーを手渡し、こう言った。

「食えるもんでも食っとけ。いかに今食欲がなくても貯めるだけ力貯めとかないと午後からやってけないからな」

 市川はゼリーを受け取り、チビチビとだが食べていた。

 日々野は満足そうにすると同時に、まだ彼にできることがないかなと考え、自分の荷物を漁る。

「あ、あった」

 彼は荷物の中にあった、四つの鼻栓のうちの二つを、自分の鼻に付け、残りの二つを市川に手渡そうとする。

「これを付けとけ」

 日々野はそう言った。

「いや、それはちょっと、いいです」

 やはり市川もこれはキツいと感じたらしい。

「いいから付けとけ、仕事してる時に吐かれちまってはシャレにならん」

 日々野は彼に鼻栓を押し付ける。

「いやいいです、あとこれパワハラですよ」

 市川は後退りした。

 モンスタースイーパーの昼はこうして流れていった。

 

 

 




出せました。いや、書ける時間あってよかった。
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