1話でもしもカフカが入隊を断っていたら?   作:刀持ちの烏

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7:調整の心得

「あれ?カフカは休みか、めずらしいな」

 徳さんはいつもの調子で尋ねる。さっき言ったとおり、いつも早番で仕事熱心な日々野が休むのは彼にとっては意外なことだったため、内心少し驚いていた。

「なんか体調悪いから有給とったみたいですよ」

 市川もいつも通りに答える。ただ、今のところ彼は心底ヒヤヒヤしていた。日々野が今日休んでいる理由は、怪獣の力を調整する特訓と怪獣から戻る方法を探す事だからだ。もしそれがバレたら…言うまでもないだろう。

「ふうん、まあ少し前には病院にいたからな。仕方ないか」

「あ、それと…」

 市川は思い出したように言った。

「今日解体するのは胃みたいですよ」

 徳さんは気が滅入るように立ち上がった。

 

 

 

 その頃、日々野は怪獣の力に慣れるための特訓を始めようとしていた。場所は奥多摩の山奥、人通りはほとんどない。とりあえずここなら変身したり力出したりしてもバレたりすることはないだろう。

 彼はあたりを見回す。人?は、自分と古金以外いない。

「それでは日々野さん、まずは変身してくださーい‼︎」

 古金は5mぐらい離れたところから叫んだ。変身した時になんか来るかも、となったため一定の距離離れている。

「ほいよ」

 日々野は安全確認をすると、グッと力を入れる。彼の毛穴などから液体が出てきて身体を覆っていく。

「うわぁ…」

 古金は少し引いているようだった。

 3秒も経たない内に装甲のように装着された。顔面は歪んだドクロに、身体は黒く硬い皮膚と人間の骨のような外骨格に覆われた。

「よし、いけた」

 日々野は満足そうに言う。

「まさかこんな感じに変身してたんですね…イメージと違った」

「文句言わないでくれ。好きでなったわけじゃないんだから」

 日々野は少しムッとして言う。自分も内心毛穴から装甲出るってどうなんだ、とも感じてはいるが。

 古金は気を切り替えてこう叫んだ。

「よし、では次ですよー‼︎次は人間に戻ってみてくださーい」

「わかったー‼︎」

 日々野は再び力を入れた。

 

 

 

「どうしたんですか、急に呼び出して」

 鳴海はそう言って不敵な笑みを浮かべていた。彼らのいるよみうり臨海基地の執務室は、防音対策をはじめとする各種の傍聴対策が行われているため、情報が外部が漏れるなんてことはほとんどないと言っていい。

「君を呼んだのは他でもない。君の委員会に怪獣8号の調査をお願いしたい」

「怪獣8号…まさか、7号が出てきてまだ一カ月しか経ってないのにもう新しいやつがでてきたんですか?」

 鳴海はわざとらしく顔をしかめる。

「そのまさかだ。なに、常識なんてすぐ破られるものだ。今は慣れるしかない」

 日本防衛隊長官の四ノ宮イサオはそう言って机に身体を預けた。まるで表情筋が全て死んでいるかのように無表情だ。他に冷静なやつを鳴海は知っていたが、これほどの人は彼以外見たことない。

「それで、その怪獣8号とやらはいつ現れたんですか?今の時点私が知ったんだとすると昨日あたりに フォルティチュード計が感知した感じですか」

 四ノ宮は首を振った。

「合っているがそれだけじゃない。奴は実際に目撃されている。もっとも、写真はないがな」

「目撃された…では被害が出たのですか?」

「いや、周辺の被害こそあるが、病院の壁が破壊されたのと F2級の怪獣一体が殺されただけだ」

 鳴海は疑問を覚えた。識別怪獣が現れて、被害が壁と雑魚の怪獣一体だけだと。そんなに少ない事ってあるのか?

 彼は5年前、6号討伐作戦に参加していたため識別怪獣がどれほどのものか熟知していた。何度も誘導弾を浴びてもかすり傷にしかならないその体表、一撃で十人程度の隊員が吹き飛ぶその拳、現在不敵な態度をとっている彼ですら恐怖していた。だから、そんなに被害がないのが疑問に思っているのだ。

 四ノ宮は懐から一枚の紙を取り出した。

「ただし、写真はないが見た人がいたらしくイメージ絵がある」

「見せてください」

 鳴海は四ノ宮が持っている紙を覗き込む。紙には大きく、歪なドクロのような顔が描いてあった。

「こいつの身長は?」

 鳴海はまだ疑問を覚えながら聞く。

「2mほどだな。大体それぐらいじゃなきゃ被害がこれで済むはずがない」

「こいつ本当に怪獣なんですか?私からすると怪人の方が似合う気がしますが」

「まあ最初はそう思っても無理はない。だが、フォルティチュード計に反応している以上こいつも怪獣なのだろうな」

 四ノ宮はやはり表情を変えずにそう言った。

「あ、あと、その怪獣8号に助けられたやつもいるらしい。まだ10歳を過ぎた頃ぐらいだと思うが…まあ、一人の発言を見逃すわけにはいかんからな」

 鳴海は顔をしかめた。

「ふーん、人助けですか。そんな事してるのなら私だったら怪獣とは認めたくはありませんね。そんな人類の敵、みたいな名称で呼びたくないですから」

 

 

 

「ヘックシーン‼︎」

 日々野は大きくくしゃみをしてしまった。現在三月で、時間が5時半ぐらいだったためか、かなり寒かったためそうなってしまった。

「日々野さーん、大丈夫ですか‼︎」

 古金がそう言って駆け寄ってきた。寒いと感じていないのかと思うぐらいに元気そうだった。

「大丈夫、というと嘘だな。今結構寒いから、このままいると風邪ひきそうだからな」

 古金は彼に自分のティッシュを手渡す。

「これ、良かったら使ってください」

「あ、いや、別に大丈夫だぞ。自分はティッシュもってるから、人間に一回戻れば鼻かめるし」

「いや、人間に戻ってからだと面倒な気がしますし、それに私もう使わないんで…あ、いらなければいいんです。無理に押し付けるの悪いですし」

 日々野は、これ貰わないといけないやつだ。と思ったため、だったら貰うよ。と言って貰う。

「さっき言ったけど、このままやると風邪引きそうだからあとやめとくわ。次の休みの時にしよう」

「わかりました。次は体調万全で行きましょう」

「あ、あと人間に戻るから離れてくれる」

 古金が慌てて離れていくと、彼は人間に変化していった。戻るときの副作用的なものかは知らんが同時に蒸気が噴き出した。彼は人間に戻ると移動に使った車に戻り、エンジンをかけた。今日は変身してから人間に戻るまでとか、力加減は完璧に出来たし、装着みたいに変身することもわかった。あとは力の使い方とかだな。

 日々野はそう思いながら車を走らせたいった。

 そして、この特訓は休みの日などに行い、彼が怪獣の力に慣れるまでは、市川が入隊試験を受ける3月まで続いていくことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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