「なぁ、バルロスはこの大迷宮の下を知ってるのか?」
「あぁ?…確か神に挑もうとした解放者がつくった迷宮らしい」
「解放者…書籍では反逆者と記されていたが…どうやら何か裏があるな」
「さぁな。俺は人間が何を考えているのかさっぱり知らねぇな」
そうかと納得したハジメは更に下の層に歩き50層を到着した。
階下への階段は既に発見しているのだが、この層には明らかに異質な場所があったのだ。
「なぁ?お前以外にも封印された奴いるのか?」
「知らねぇな。俺はあの場所以外から出れない様にされていたからな」
バルロスも知らないと言うので気になり部屋の前に向かう。
扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。
扉に手をかけて押したり引いたりしたがビクともしない。なので、いつもの如く錬成で強制的に道を作る。ハジメは右手を扉に触れさせ錬成を開始した。
その途端、
バチィイ!
「うおっ!?」
「ハジメ?」
扉から赤い放電が走りハジメの手を弾き飛ばした。
更に扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた。いつの間にか壁と同化していた灰色の肌は暗緑色に変色している。
どうやら扉に魔力を注ぐとコイツらが動くように仕組まれていたみたいだ。
まぁ、顔面を殴ってサイクロプスは絶命した。
その後サイクロプスの肉を解体していると宝玉のような物が出てきた。
バルロスにもう一体の方を聞くと同じような宝玉が見つかり窪みのある扉にはめ込むと見事に扉は開く。
ハジメは中に入りバルロスは外で待機することにした。
扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。
夜目と中の明かりを頼りに中を見渡す。
中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。
「…だれ?」
かすれた、弱々しい女の子の声だ。ビクリッとしてハジメは慌てて部屋の中央を凝視する。
「人…なのか?」
上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗いている。年の頃は12.3歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。
流石に予想外だったハジメは硬直し、紅の瞳の女の子も俺をジッと見つめていた。そして、ハジメは彼女の悲しい顔を見て、気付くと彼女の前に向かう。
「た……助け…てくれ…るの?」
「助けはしたいが…アンタ何者だ?」
「わ…私の…こと?」
「あぁ、素性が分かんねぇ奴を簡単に助ける訳にはいかない」
「……私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」
「お前、どっかの国の王族だったのか?」
「……(コクコク)」
「殺せないってなんだ?」
「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」
「……そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」
「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」
「…」
そう言ってハジメは少女を捕える立方体に手を置いた。
「あっ…」
少女は本当に自分を助けてくれると分かり大きく目を見開く。ハジメはそれを無視して錬成を始めた。
”おいおい。そんな餓鬼を助ける必要があるのか?”
頭の中でベリアルが問いかける。
確かにこんな厳重な部屋に魔物2体をトラップとして封印されているぐらいだ。
誰だってそんな奴を助ける必要はないだろう。
けど何でだろう。
彼女を見ていると無性に腹が立つ。
「邪魔すんなよ」
錬成をしながら、一言呟く。その言葉には怒りが込められていた。
錬成を終えた瞬間、パキンという音と共に立方体が崩れ落ちる。ハジメはゆっくりと手を差し伸べ、その手を少女がギュッと握った。弱々しい、力のない手だ。小さくて、ふるふると震えている。
「…ありがとう」
「あぁ、どういたしまして」
そう言葉を返すと少女は、再びギュギュと握り返してきた。
「……名前、なに?」
少女が囁くような声でハジメに尋ねる。そういえばお互い名乗っていなかったと苦笑いを深めながらハジメは答え、女の子にも聞き返した。
「ハジメだ。南雲ハジメ。お前は?」
女の子は「ハジメ、ハジメ」と、さも大事なものを内に刻み込むように繰り返し呟いた。そして、問われた名前を答えようとして、思い直したようにハジメにお願いをした。
「……名前、付けて」
「は? 付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」
「もう、前の名前はいらない。……ハジメの付けた名前がいい」
「……はぁ、そうは言ってもなぁ」
おそらく、前の自分を捨てて新しい自分と価値観で生きる。少女は自分の意志で変わりたいらしい。その一歩が新しい名前なのだろう。だが、ネーミングセンスに自信がないハジメとしては安易に了承できないでいた。
「…じゃあユエだ。どうだ?
何となくお前の綺麗な髪が香織と見た月と似ているからな」
「……んっ。今日から私はユエ…それと香織って誰?」
「香織は俺の愛した人だ。今は離れ離れだが…絶対に再開して故郷に帰る」
ユエが、故郷に帰るというハジメの言葉にピクリと反応した。
「……帰るの?」
「うん? 元の世界にか? そりゃあ帰るさ。……色々変わっちまったけど……故郷に香織達と……家に帰りたい……」
「……そう」
ユエは沈んだ表情で顔を俯かせる。そして、ポツリと呟いた。
「……私にはもう、帰る場所……ない……」
「なるほどな。なら俺達の故郷に来るか?まぁユエからしたら、普通の人間しかいない世界だし、戸籍やらなんやら人外には色々窮屈な世界かもしれないけど……今や俺も似たようなもんだしな」
しばらく呆然としていたユエだが、理解が追いついたのか、おずおずと「いいの?」と遠慮がちに尋ねる。しかし、その瞳には隠しようもない期待の色が宿っていた。
キラキラと輝くユエの瞳に、苦笑いしながらハジメは頷く。すると、今までの無表情が嘘のように、ユエはふわりと花が咲いたように微えみ、ハジメも微笑みかえした。
「…なら香織に会って2番目の座をもらおう」
ユエが小言を言っている中、頭上からサソリモドキが落下してきたのはマジで空気が読めてない。
ムカついたのでベリアルの姿に変身して40%のパンチでサソリモドキが散乱して体は周りに飛び散った。
流石のベリアルの姿にユエは
「…闇の巨人…」
どうやらユエはベリアルの事を知っているみたいだ。
とりあえずここを出ようと外に出る。
「おぅ、戻ってきたか」
「…魔人族?」
ユエは何故魔人族がここにいて、何故ハジメと一緒にいるのか疑問に思っていた。
ハジメが何故一緒にいるのか説明をしてユエはバルロスに謝罪をして仲良くなった。