闇の戦士達は神殺し   作:紙の子

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12話:異端と残された者の覚悟

ハジメがオルクスの大迷宮を攻略している間、勇者一行は、宿場町ホルアドで一泊し、早朝には高速馬車に乗って一行は王国へと戻った。無能扱いだったとは言え勇者の同胞が死んだ以上、国王にも教会にも報告は必要だった。

 

帰還を果たしハジメの死亡が伝えられた時、王国側の人間は誰も彼もが愕然としたものの、それが”無能のハジメ”と知ると安堵の吐息を漏らしたのだ。

 

国王やイシュタルですら同じだった。強力な力を持った勇者一行が迷宮で死ぬこと等あってはならないこと。迷宮から生還できない者が魔人族に勝てるのかと不安が広がっては困るのだ。神の使徒たる勇者一行は無敵でなければならないのだから。

 

だが、国王やイシュタルはまだ分別のある方だっただろう。中には悪し様にハジメを罵る者までいたのだ。

もちろん、公の場で発言したのではなく、物陰でこそこそと貴族同士の世間話という感じではあるが。やれ死んだのが無能でよかっただの、神の使徒でありながら役立たずなど死んで当然だの、それはもう好き放題に貶していた。まさに、死人に鞭打つ行為に、清水と恵里は憤激に駆られて何度も手が出そうになり、魔法を発動しそうになっていた。

 

しかしメルド団長が迷宮でのハジメの功績と檜山の裏切りを話し、光輝が激しく抗議したことで国王や教会も悪い印象を持たれてはマズイと判断したのか、ハジメを罵った人物達は処分を受けたようだが……

逆に、光輝は無能にも心を砕く優しい勇者であると噂が広まり、結局、光輝の株が上がっただけで、ハジメは勇者の手を煩わせただけの無能であるという評価は覆らなかった。

 

 

そして勇者一行は神殿の中央に集められた。

イシュタルはとある書籍を天ノ河達に見せる。

 

「勇者様達が見られたあの姿は、かつてエヒト様に反逆された闇の巨人その者です」

 

イシュタルの話を鵜呑みにした勇者一行は「ハジメは裏切り者」、「あのステータスもその闇の巨人のお陰で彼は無能」

だのと口々に言い続ける。

 

「では彼、南雲ハジメを異端者認定とさせて頂きます」

 

イシュタルの宣告に皆が賛成した。

 

 

 

 

 

 

 

白崎香織は自室で八重樫雫に励まされながらベッドで横になっていた。

そして雫はメイドに呼び出され部屋を後にする。

 

「ハジメ君…」

 

香織はハジメから受け取った指輪のアーティファクトを見つめる。

ハジメが生きているのは知っている。

しかし何処か抜けた様な感情が湧いてくる。

 

 

「あらあら。彼がいなくて恋しいのね」

 

「ふぇ?!」

 

香織はベッドから起き上がり見ると、白髪のシスターが立っていた。

どうやって入って来たのか気になるが、

それよりも聞きたいことがあった。

 

「あなたは?」

 

「私はカミーラ」

 

「カミーラ…」

 

カミーラはゆっくり香織に近付き瞳を見つめる。

少し見つめると満足したのか距離を取る。

 

「やっぱり。あなたには強い愛があるわ。

それも黒い黒い底知れぬ愛が」

 

「愛…ですか?」

 

「あら、貴方は自覚はないの?

彼の部屋に行って、彼が部屋から出た途端枕に顔を沈めて匂いを嗅いだり、Yシャツをお持ち帰りしたりしてるじゃない?」

 

「えっ!?な、なんで知って……」

 

カミーラの言葉に顔を真っ赤にして慌てる香織。

そんな香織を見て楽しげに笑うカミーラ。

 

「それはあなたをずっと見ていたからよ」

 

そしてカミーラは胸元から1つのアイテムを手にして香織に渡す。

香織は疑問に思いながらアイテムを手に取る。

 

「貴方が愛する彼の隣に立ちたいと思った時、その力を使いなさい。

それとこの事は誰にも言わないこと。

教会の人に知られれば何されるか分からないから」

 

カミーラはそう言い部屋から出て行く。

慌てて香織は部屋を飛び出すもカミーラの姿は見当たらなかった。

 

しかし香織の手にはカミーラから受け取った金色のアーティファクトがしっかりとある。

 

「…ハジメ君」

 

香織はギュッと握りして彼に再開するためにと力をつける為訓練所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「幸利…今の話本気?」

 

「済まない恵里。僕も本当は前線にいたい。けど、ハジメがもし行くならそっちに行けって」

 

 

 

 

 

オルクスに向かう前日。

香織と話を終え就寝する前だった。

 

「幸利。仮に前線を抜けるなら愛ちゃんの所に行け」

 

「…それはどう言う事?」

 

「もし愛ちゃんがここを出て別の街に向かうとする。下手したらそのタイミングを魔人族は狙ってくる」

 

ハジメが言ってた愛子の天職は天之川より遥かに有能で、失ってはいけない人材。

 

「…僕は恵里を見捨てて前線を降りる訳にはいかないよ」

 

「そうか。なら恵里としっかり話して考えろ」

 

 

 

 

 

 

「そうだったんだ」

 

幸利の話を聞き恵里は納得した表情をする。

 

「…わかった。香織の事は僕に任して。

それに鈴も残るみたいだから、親友を置いてはいけない…あいつが残るみたいだから」

 

恵里はハジメを奈落に落とした檜山を恨みながら呟く。

幸利はありがとうと言い恵里を抱きしめる。

 

「愛ちゃんを頼むよ」

 

「あぁ!」

 

 

 

 

幸利が部屋を出た後、周りを見渡して人がいない事を確認し恵里はベッドに身を投げる。

 

「お兄ちゃん…」

 

幸利には見せれない泣き顔を浮かべる恵里。

例え血が繋がって居なくても自分が怪我しようと守り家族と教えてくれたハジメが奈落に落とされた事にショックを隠せない。

 

 

 

 

”人間とは実に面白い”

 

 

 

「誰!?」

 

恵里は慌てて立ち上がり杖を構える。

すると扉をすり抜け青黒い炎が現れる。

 

”初めまして。私はウルトラマントレギア”

 

「ウルトラマン…トレギア?」

 

”そう。貴方の兄と同じ星から生まれた元光の戦士…そして闇に呑まれた巨人”

 

「お兄ちゃんが異星人」

 

”おっと失礼。正確には力を引き継いだと言うのが正しい。

私達は力を失い、その力に相応しい器を探している”

 

「それでお兄ちゃんが選ばれたと」

 

”そう。最強最悪のウルトラ戦士。

一度は生まれた星をも壊滅させ、1つの銀河を侵略した闇の戦士…ウルトラマンベリアル”

 

恵里はそんな最悪な化け物が兄であるハジメの中にいる事が信じられなかった。

しかし、ベヒモス戦で変身したあの姿。

あれがベリアルなのだと何故か理解してしまう。

 

”そして私が来た理由は1つ。貴方は私の器に相応しいと思った”

 

「僕が?」

 

炎の中から何かが落ちる。

恵里は拾うと六角形の形をした青黒い物だった。

見てみると後ろにボタンがあり押すと表面の方が開き仮面に変わった。

 

”私の力が必要な時はその仮面を被りなさい。そうすれば私はあなたに力を貸しましょう…勿論私の力を制御出来ればの話です”

 

炎が徐々に小さくなりトレギアは姿を消した。

恵里は仮面を閉じてポケットの中にしまう。

 

 

 

そして翌日、幸利を率いた園部達は愛子がウルに向かう為護衛として向かうことになった。

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