闇の戦士達は神殺し   作:紙の子

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16話:怒りと旅立ち

ハジメ達がハウリア族と特訓している中、恵里率いる勇者組はオルクス大迷宮で訓練をしている。

しかし、現在攻略組の人数は減り最初の頃より半分は離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

攻略から6日が経つ。

現在は60層に到着した。

後5層登れば過去最高記録だと言われている。

そして目の前には何時かのものとは異なるが同じような断崖絶壁が広がっていた。次の階層へ行くには崖にかかった吊り橋を進まなければならない。それ自体は問題ない。

しかし数人はあの日のことを思い出してしまう。

 

「大丈夫? 辛そうな顔してるよ?」

 

「……うん。大丈夫だよ」

 

恵里出来るだけ心配させないように、笑顔で返す。鈴も結構無理をしてるはずだ。

恵里よりももっと心配な人がいる。

 

「香織……」

 

「大丈夫だよ、雫ちゃん」

 

「そう……無理しないでね? 私に遠慮することなんてないんだから」

 

「えへへ、ありがと、雫ちゃん」

 

一番心配しているのは香織の方だ。

ハジメの恋人であり、恋人であるハジメが奈落に落ちたのを目の前で見てしまったのだから。

生きているとは分かっていても心配なのは分かる。

 

とここで、天之河光輝がやって来る。

 

「香織、恵里……君達の優しいところ俺は好きだ。でも、クラスメイトの裏切りに、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ」

 

「ちょっと、光輝……」

 

「今はそっとしてあげなよ!」

 

「雫と鈴は黙っていてくれ! 例え厳しくても、幼馴染であり仲間である俺が言わないといけないんだ。……香織、恵里、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は裏切ったりしない。もう誰も失わせはしない。香織も恵里も悲しませたりしないと約束するよ。そしてもし、南雲が俺たちの前に立ちはだかったら、俺がこの手で倒す」

 

「…うるさいよ」

 

「君なんかが傍にいてくれたところで僕は全然嬉しくないんだけど? 君みたいな偽善者と一緒にいたら、偽善が移っちゃうよ。君”お兄ちゃん”を仲間だなんて思ってなかったんでしょ? だから

お兄ちゃんの腕を斬ることや殺す事に躊躇いがなかったんだね!」

 

「お、俺は殺すなんて……」

 

「というか恵里、お兄ちゃんって……?」

 

自分が言った事に恵里はどうしたのもかと思ったが、諦めて話すことにした。

 

「もうこの際暴露してあげるよ。ハジメ君は、僕のお兄ちゃんだったんだ。血は繋がってないけどね」

 

「どういうこと!? エリリン!」

 

「僕の家族はちょっと訳アリでね。毎日のように虐待されてた僕は、一度自殺を試みたんだ。でも、お兄ちゃんが助けてくれた。お兄ちゃんとその両親は、僕にこれ以上ないほどの愛と幸せをくれた」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! それが本当だとして、何で俺たちに話してくれなかったんだ!?」

 

「はぁ?何で君達に言わないといけないの?」

 

「俺たちは仲間だ! 仲間に本当のことを話すのは当然じゃないか!」

 

「仲間ぁ? 君たち僕に本気で信頼されてるとでも? 残念。僕は君たちのことこれっぽっちも信頼してませーん。仲間だとも思ってないし」

 

「とにかく、お兄ちゃんを見殺しにした上に勝手に裏切り者だと決めつけて、殺そうとしてる君たちを僕は絶対に許さない。君たちに魔法を撃つことも厭わないから。言動には気を付けた方がいいよ」

 

恵里は右手に青黒い雷を見せつけながら警告する。

 

「恵里、南雲が裏切ったことを信じられない気持ちは分かる。でも、現実を見るんだ。奴は魔人族側に寝返って、俺達を裏切ったんだ。だから奴がこの世界の人々に危害を加える前に、俺達が倒さなきゃならないんだ」

 

遂に我慢の限界が来た恵里は天之河に向けて雷を放つ。

もちろん本人にではなく目の前に落としただけだ。

 

「現実を見ろ? その言葉、そっくりそのまま返すよ。そもそも君は何でそんなに割り切れるの? お兄ちゃんが敵として出てきた訳でもないのに、何で裏切ったって確信してるの? お兄ちゃんが裏切ったって証拠はどこにあるの?」

 

「それは、教会の人達が……」

 

「君、教会の人間が言ったことなら何でも信じちゃうの? 君は人の言うことを100%鵜呑みにしちゃうようなバカなの? 君は「俺の仲間が裏切るわけがない!」とか言うかなと思ってたけど、本当は邪魔なお兄ちゃんを殺せる理由を見つけることができて、喜んでるだけじゃないの? つくづく最低な野郎だね」

 

「そ、そんなことは!」

 

「はぁ…もういいや。さっさとここを出てお兄ちゃんを探しに行かないと」

 

「そ、そんなの俺が許さないぞ! 大体、俺達は「仲間じゃないって何度言ったら分かるんだよ!」ッ!?」

 

天之河の言葉を遮り怒鳴る恵里、更には涙を流しながら殺気を立てる。

 

「君、僕の話を全く聞いてないね! 僕とお兄ちゃんの関係を話したよね? なのに君は、『お兄ちゃんは裏切った、だから俺と一緒にお兄ちゃんを殺そう』って。頭おかしいんじゃないの!? 

 

なら君はどれだけ殴られ、傷だらけになっても僕を守ってくれるの?」

 

「落ち着け恵里! 君が南雲を兄だと思っていても、血の繋がりはない他人じゃないか! 本当の兄妹じゃないだろう!」

 

 

「だから何だっていうのさ! 血の繋がりがなかったら兄妹って呼んじゃいけないのか! 僕はお兄ちゃんに会いたいだけだ! 例え血は繋がってなくても、僕を家族と迎えてくれる大切な兄だよ!なのに何で邪魔するんだよ!」

 

「恵里、話はまだ」

 

「いい加減にしろ。光輝」

 

「エリリンに近づかないで!」

 

恵里に近づこうとしてきた天之河を阻んだのは、メルド団長と鈴だった。

更に恵里の隣に香織が近付き抱きしめてくれた。

 

「退いてくださいメルドさん。恵里と話をしないと。鈴も退いてくれ」

 

「話をすると言っておきながら、お前は一切こいつの話を聞いてなかったがな」

 

「エリリン泣かせといてまだやる気? これ以上は光輝君でも許さないよ!」

 

その後メルド団長のおかげです天之河は恵里に話しかけるのは禁止になり無理やり休憩を切り上げた。

天之河は今だに納得いかないと表情にするがメルド団長に叱られながら先導する。

 

 

 

 

 

 

その後何事もなく65層に到着した。

 

「気を引き締めろ! ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 

メルド団長の声が響く。全員表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れた。

 

 

広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上がった。赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣。

 

「ま、まさか……アイツなのか!?」

 

天之河が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他の奴等の表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。

 

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな!」

 

いざと言う時、確実に逃げられるように、まず退路の確保を優先する指示を出すメルド団長。それに部下が即座に従う。だが、天之河がそれに不満そうに言葉を返した。

 

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

 

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

やれやれ、どっからそんな自信が出てくるんだろう。

 

(ねぇトレギア。ここら辺で使ってもいい?)

 

”構いませんよ。よろしいのですか?”

 

(そろそろ頃合だし)

 

”そうですね”

 

「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――〝聖絶〟」

 

恵里と天之河達の合間に障壁を展開する。

 

「なっ!? 恵里、何してるんだ!」

 

「おい、早く戻ってこい!」

 

恵里に気づいた天之河とメルド団長が呼び戻しに来るが、障壁に阻まれる。

 

「君たちはそこで見ててもらおうか。こいつは、僕達の獲物だ」

 

恵里は胸元からトレギアアイを手にして目の前に重ねる。

すると恵里の姿はみるみる変わり青に胸元にはX字のプロテクターの様なもので覆われており、腕や足の部分にベルトの様な鎧を纏っている。

 

「はぁ…掛かっておいで!」

 

そして、遂に魔法陣が爆発したように輝き、再びベヒモス前に現れた。

 

「グゥガァアアア!!!」

 

 

 

咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスが恵里を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む。

 

 

 

「それくらいじゃ僕は怯まないよ。先ずは小手調べと行こうかぁ!!」

 

恵里はベヒモスに青黒い雷を放つ。

 

「グゥルガァアア!?」

 

余程の威力で皮膚が焼けたのか、悲鳴を上げるベヒモス。

しかし、ベヒモスが踏み込みで地面を粉砕しながら突進を始める。

 

「いいねぇ〜!もっと僕を楽しませてよ」

 

突進してくるベヒモスを避ける事無く片手で受け止める。

多少後ろに下がったが、それだけだった。

 

「グゥ?!」

 

「何だい?君の突進はその程度なのか?」

 

ベヒモスの肩角を握り振り回しながら放り投げる。

体が重いベヒモスはそのまま床に引きずられながら壁に激突する。

 

「ほらほら〜次行くよ〜」

 

恵里は野球ボール並の青い球体を作ってベヒモスに向けて放ち続ける。

 

「ガァアアアアアアアアアアアア!!!!?」

 

ベヒモスの悲鳴が響き渡る。

 

「さっさと終わらせよ」

 

指先から放たれた10枚の斬撃がベヒモスを襲い貫かれたベヒモスはサイコロステーキ並に粉々にされる。

そして、再生が始まる前に魔法陣の中に消えていった。

同時に、魔法陣も消滅する。

 

 

変身を解除した恵里はクラスの方を見るとまるで化け物を見るような目で見られる。

 

「何なのその目。せっかく僕が奴を倒してやったってのにさ、感謝とかできないの?」

 

「そんなことはどうでもいい」

 

恵里の前に歩いてきたのは、またしても天之河だった。

それもハジメの時と同じように聖剣の剣先を向けているということだ。

 

「さっきの姿はなんだ!」

 

「何故君達に教えないといけない?

僕は君達を仲間と思った覚えはないと言ったよね?」

 

恵里はそう言い天之河を横切りメルド団長の前に立つ。

 

「約束通り僕はこのパーティから抜けます」

 

「そうだったな。あれ程の力を持っているんだ。止めても無駄だろう」

 

「分かってくれて何よりです。それでは」

 

恵里は鈴と香織、雫に別れの挨拶をして上の階段を登って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい…はい。分かりました。必ず”イレギュラー”を排除いたします」

 

目の前ではシスターが石像の前で喋っていた。

彼女の名はノイント。

エヒトによって作られた神の使徒である。

ノイントはエヒトからの命令でイレギュラー(ハジメ)を処分しろと命令を受けた。

 

 

「はぁ…面倒な使命を要求してくる」

 

本来神の使徒達は感情と言う概念は備わっていない。

なので無感情なはずのノイントはため息しながら愚痴を言う。

 

「さて、私もそろそろ動くとしますか」

 

ノイントは何処からか取り出した黒と灰色のアイテムを手にして胸元に構えると先端が開き光り輝く。

 

そして姿が変わり、グレーの全身に胸もとが黒、金、赤に青い瞳をした姿へ変わった。

 

「さらばです邪神よ!そして復讐の時は近い」

 

そのままノイントは飛び出し姿を消した。

 

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