闇の戦士達は神殺し   作:紙の子

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17話:ブルック

遠くに町が見える。周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町だ。街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。おそらく門番の詰所だろう。小規模といっても、門番を配置する程度の規模はあるようだ。

 

 

 

 

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

門番に止められハジメはステータスプレートを渡す。

 

「目的は素材の買取と食料確保だ。後ろの女とガチムチの男は魔物と戦闘中に無くしたらしくてな、亜人族は…分かるだろ?」

 

 

その言葉だけで門番は納得したのか、なるほどと頷いてステータスプレートをハジメに返す。

 

「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか?…まぁ良し行け」

 

「ああ、どうも。おっと、そうだ。素材の換金場所って何処にある?」

 

「それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」

 

「おぉ、そいつは親切だな。ありがとよ」

 

門番から情報を得て、ハジメ達は門をくぐり町へと入っていく。門のところで確認したがこの町の名前はブルックというらしい。

門を潜ると活気溢れる街だった。

ただ、シアだけは先程からぷるぷると震えて、涙目でハジメを睨んでいた。怒鳴ることもなく、ただジッと涙目で見てくるので、流石にハジメもシアに視線を合わせて伝えた。

 

「シア、そろそろ機嫌を直してくれないか?」

 

「うぅ〜、でもこの首輪! これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですか! ハジメさん、わかっていて付けたんですね! うぅ、酷いですよぉ~、私達、仲間じゃなかったんですかぁ~」

 

シアが怒っているのは、旅の仲間だと思っていたのに、意図して奴隷扱いを受けさせられたことが相当ショックだったようだ。もちろん、ハジメが付けた首輪は本来の奴隷用の首輪ではなく、シアを拘束するような力はない。それは、シアもわかっている。だが、だとしても、やはりショックなものはショックなのだ。

 

「それについてはすまないと思ってるだが奴隷でもない亜人族、それも愛玩用として人気の高い兎人族が普通に町を歩けるわけないだろう?」

 

「うぅ〜そうですけど」

 

「嫌なのは分かっているが我慢してくれ」

 

「……ん、シア我慢」

 

「そうだぞ。俺だって動きづらい人間の姿になっているんだ、我慢しろ」

 

「うぅ〜分かりましたぁ」

 

ハジメとユエとバルロスの言葉でなんとかシアは首輪の事は納得した。

 

「あとな、その首輪だが、念話石と特定石が組み込んであるから、必要なら使え。直接魔力を注いでやれば使えるから」

 

「念話石と特定石ですか?」

 

「ちなみに、その首輪、きっちり特定量の魔力を流すことで、ちゃんと外せるからな?」

 

「なるほどぉ~」

 

「……ん、流石ハジメ」

 

「じゃあ、ギルドに向かうとするか」

 

ハジメ達はメインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。

ハジメは看板を確認すると重厚そうな扉を開き中に踏み込んだ。

 

 

 

ハジメ達がギルドに入ると、冒険者達が当然のように注目してくるがスルーしカウンターに向かった。

そこには笑顔を浮かべたオバチャンがいた。

ただ、視線はバルロスの方を向けている。

 

(もしかして…バレてるのか)

 

「少し良いか?」

 

「おや、珍しい受付がこんなオバチャンなのに残念と思わないんだね〜」

 

「あんまり見た目で人を判断しない性格でな…それにアンタは相当の熟練に見える」

 

「そりゃ嬉しいねぇ〜そこのお嬢ちゃん達も良い男を捕まえれて良かったねぇ〜」

 

「……んっ」

 

「はいですぅ〜」

 

「さて、じゃあ改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」

 

「ああ、素材の買取をお願いしたい」

 

「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

 

「ん? 買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」

 

ハジメ疑問に「おや?」という表情をするオバチャン。

 

「あんた冒険者じゃなかったのかい? 確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

 

「そうだったのか」

 

オバチャンの言う通り、冒険者になれば様々な特典も付いてくる。生活に必要な魔石や回復薬を始めとした薬関係の素材は冒険者が取ってくるものがほとんどだ。町の外はいつ魔物に襲われるかわからない以上、素人が自分で採取しに行くことはほとんどない。危険に見合った特典がついてくるのは当然だった。

 

「他にも、ギルドと提携している宿や店は一~二割程度は割り引いてくれるし、移動馬車を利用するときも高ランクなら無料で使えたりするね。どうする? 登録しておくかい? 登録には千ルタ必要だよ」

 

ルタとは、この世界トータスの北大陸共通の通貨だ。ザガルタ鉱石という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜることで異なった色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われている。青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類があり、左から一、五、十、五十、百、五百、千、五千、一万ルタとなっている。驚いたことに貨幣価値は日本と同じだ。

 

「ならせっかくだ登録しておくかな。悪いんだが、持ち合わせが全くないんだ。買取金額から差っ引くってことにしてくれないか? もちろん、最初の買取額はそのままでいい」

 

「可愛い子二人もいるのに文無しなんて何やってんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させんじゃないよ?」

 

はいはい。

 

「男なら頑張って黒を目指しなよ? お嬢さん達にカッコ悪いところ見せないようにね」

 

「わかったよ。それと、買取はここでいいのか?」

 

 

「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

 

オバチャンは受付だけでなく買取品の査定もできるらしい。優秀なオバチャンだ。

宝物庫から魔物素材や鉱石を引っ張り出し並べていく。

カウンターの受け取り用の入れ物に入れられていく素材を見て、再びオバチャンが驚愕の表情をする。

 

「こ、これは!」

 

恐る恐る手に取り、隅から隅まで丹念に確かめる。息を詰めるような緊張感の中、ようやく顔を上げたオバチャンは、溜息を吐き俺様に視線を転じた。

 

「とんでもないものを持ってきたね。これは…………樹海の魔物だね?」

 

「ああ、そうだ」

 

「……あんたも懲りないねぇ」

 

オバチャンが呆れた視線をこちらに向ける。

 

「何のことかわからん」

 

「樹海の素材は良質なものが多いからね、売ってもらえるのは助かるよ」

 

 

「やっぱり珍しいのか?」

 

「そりゃあねぇ。樹海の中じゃあ、人間族は感覚を狂わされるし、一度迷えば二度と出てこれないからハイリスク。好き好んで入る人はいないねぇ。亜人の奴隷持ちが金稼ぎに入るけど、売るならもっと中央で売るさ。幾分か高く売れるし、名も上がりやすいからね」

 

オバチャンはチラリとシアを見る。おそらく、シアの協力を得て樹海を探索したのだと推測したのだろう。樹海の素材を出しても、シアのおかげで不審にまでは思われなかったようだ。

 

「これでいいかい? 中央ならもう少し高くなるだろうけどね。」

 

「いや、この額で構わねぇ。それと、門番がここで地図が貰えるとか聞いたが?」

 

「あぁ〜ちょいと待ちな…ほらこれだよ」

 

「助かる」

 

「いいってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、その二人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね」

 

 

オバチャンは最後までいい人で気配り上手だった。ハジメは苦笑いしながら「そうするよ」と返事をし、入口に向かって踵を返した。バルロスとユエとシアも頭を下げて追従する。食事処の冒険者の何人かがコソコソと話し合いながら、最後までユエとシアの二人を目で追っていた。

 

「ふむ、いろんな意味で面白そうな連中だね……」

 

後には、そんなオバチャンの楽しげな呟きが残された。

 

 

 

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