闇の戦士達は神殺し   作:紙の子

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21話:ウィルと黒竜

朝靄が立ち込める中、ハジメ達はウルの町の北門に向かう。そこから北の山脈地帯に続く街道が伸びているのだ。馬で丸一日くらいだというから、魔力駆動四輪で飛ばせば三、四時間くらいで着くだろう。

 

ウィル・クデタ達が、北の山脈地帯に調査に入り消息を絶ってから既に五日。生存は絶望的だ。ハジメも、ウィル達が生きている可能性は低いと考えているが、万一ということもある。生きて帰せば、イルワのハジメ達に対する心象は限りなく良くなるだろうから、出来るだけ急いで捜索するつもりだ。幸いなことに天気は快晴。搜索にはもってこいの日だ。

 

ちなみにユエとシアは園部率いる女子生徒達に捕まり昨夜は色々話をしていたのか寝不足気味である。

 

 

 

標高千メートルから八千メートル級の山々が連なるそこは、どういうわけか生えている木々や植物、環境がバラバラという不思議な場所だ。日本の秋の山のような色彩が見られたかと思ったら、次のエリアでは真夏の木のように青々とした葉を広げていたり、逆に枯れ木ばかりという場所もある。

 

また、普段見えている山脈を越えても、その向こう側には更に山脈が広がっており、北へ北へと幾重にも重なっている。現在確認されているのは四つ目の山脈までで、その向こうは完全に未知の領域である。何処まで続いているのかと、とある冒険者が五つ目の山脈越えを狙ったことがあるそうだが、山を一つ越えるたびに生息する魔物が強力になっていくので、結局、成功はしなかった。

 

ハジメ達は、四輪を降りて冒険者達も通ったであろう山道を歩き進む。

 

 

 

しばらく歩き続けたハジメ達は川に到着して休憩をする。

その際にハジメは無人偵察機を7機を展開して周辺の調査の為と飛ばす。

 

「……これは」

 

「ん……何か見つけた?」

 

 ハジメがどこか遠くを見るように茫洋とした目をして呟くのを聞き、ユエが確認する。

 

「川の上流に……これは盾か? それに、鞄も……まだ新しいみたいだ」

 

ハジメ達が到着した場所には、俺が無人偵察機で確認した通り、小ぶりな金属製の盾と鞄が散乱していた。ただし、盾は、ひしゃげて曲がっており、鞄の紐は半ばで引きちぎられた状態だった。

 

「相当強い魔物がここにはいるのか」

 

ハジメ達は、注意深く周囲を見渡す。すると、近くの木の皮が禿げているのを発見した。高さは大体二メートル位の位置だ。何かが擦れた拍子に皮が剥がれた、そんな風に見える。高さからして人間の仕業ではないだろう。

 

「おいハジメ。こんなのあったぞ」

 

先へ進むと、次々と争いの形跡が発見できた。半ばで立ち折れた木や枝。踏みしめられた草木、更には、折れた剣や血が飛び散った痕もあった。それらを発見する度に、特に愛子達の表情が強ばっていく。しばらく、争いの形跡を追っていくと、バルロスとシアが前方に何か光るものを発見した。

 

「ハジメさん、これ、ペンダントでしょうか?」

 

「ん? ああ……遺留品かもな。確かめよう」

 

シアからペンダントを受け取り汚れを落とすと、どうやら唯のペンダントではなくロケットのようだと気がつく。留め金を外して中を見ると、女性の写真が入っていた。おそらく、誰かの恋人か妻と言ったところか。大した手がかりではないが、古びた様子はないので最近のもの……冒険者一行の誰かのものかもしれない。なので、一応回収しておく。

 

 

「…?!ユエ!」

 

「!……ハジメ?」

 

ユエが直ぐ様反応し問いかける。ハジメはしばらく、目を閉じて集中した。そして、おもむろに目を開けると、驚いたような声を上げた。

 

「気配感知に掛かった。感じから言って人間だと思う。場所は……あの滝壺の奥だ」

 

「生きてる人がいるってことですか!」

 

シアの驚きを含んだ確認の言葉にハジメは頷いた。人数を問うユエに「一人だ」と答える。

 

「ユエ、頼む」

 

「……ん」

 

ハジメは滝壺を見ながら、ユエに声をかける。ユエは、それだけで意図を察し、魔法のトリガーと共に右手を振り払った。

 

「〝波城〟 〝風壁〟」

 

すると、滝と滝壺の水が、紅海におけるモーセの伝説のように真っ二つに割れ始め、更に、飛び散る水滴は風の壁によって完璧に払われ、滝壺から奥へ続く洞窟らしき場所へ踏み込んだ。洞窟は入って直ぐに上方へ曲がっており、そこを抜けるとそれなりの広さがある空洞が出来ていた。天井からは水と光が降り注いでおり、落ちた水は下方の水溜りに流れ込んでいる。

 

そして空間の一番奥に横倒しになっている男を発見した。傍に寄って確認すると、二十歳くらいの青年とわかった。端正で育ちが良さそうな顔立ちだが、今は青ざめて死人のような顔色をしている。

 

「寝ている所悪いが、俺達も急いでいるんだ」

 

ハジメは手っ取り早く青年の正体を確認したいのでギリギリと力を込めたデコピンを眠る青年の額にぶち当てた。

 

「ぐわっ!!」

 

悲鳴を上げて目を覚まし、額を両手で抑えながらのたうつ青年。

 

「お前が、ウィル・クデタか? クデタ伯爵家三男の」

 

「いっっ、えっ、君達は一体、どうしてここに……」

 

状況を把握出来ていないようで目を白黒させる青年に、ハジメは再びデコピンの形を作って額にゆっくり照準を定めていく。

 

「デコピンはすまないが、質問に答えてくれ」

 

「えっ、えっ!?」

 

「お前は、ウィル・クデタか?」

 

「えっと、うわっ、はい! そうです! 私がウィル・クデタです! はい!」

 

「そうか…俺はハジメだ。南雲ハジメ。フューレンのギルド支部長イルワ・チャングからの依頼で捜索に来た。君が生きていてよかった」

 

「イルワさんが!? そうですか。あの人が……また借りができてしまったようだ……あの、あなたも有難うございます。イルワさんから依頼を受けるなんてよほどの凄腕なのですね」

 

ハジメはウィルの生存を確認ができて少し頬が緩んだが、すぐに平常に戻り問い掛けた。

 

「ならここから早く出るぞ。その後、何があったか話をしてもら…?!」

 

ハジメは下山はしようとしたが…ハジメは突如、強大な魔物の様な存在が近くにいることを感知した。

 

それは、再度、ユエの魔法で滝壺から出てきた一行を熱烈に歓迎するものがいたからだ。

 

「グゥルルルル」

 

「……黒竜」

 

低い唸り声を上げ、漆黒の鱗で全身を覆い、翼をはためかせながら空中より金の眼で睥睨する……それはまさしく〝竜〟だった……。

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