翌朝、昨夜話した通り、シアとバルロスは2人で街に出かけた。
「バルロスさ〜ん!早く早く!」
「はいはい。あんま先に行くな」
「はーい!」
シアはバルロスの隣に戻り一緒に歩く。
「それで?シアはどこに行きたい?」
「水族館に行ってみたいです!」
「ならさっさと行くぞ」
そう言いバルロスとシアは目的の場所に行こうとする。
しかし、目の前にスーツ服の男が4人立ち塞がる。
狙いは明らかにシアとわかったバルロスはシアを自身の後ろに隠す。
「済まないが兄ちゃん。
その亜人を俺たちに売ってくれないか?」
「生憎だが、俺はそう易々と仲間を売れない主義だ」
「そう言うと思ってたぜ!」
スーツ男はバルロスの返答を聞くと、後ろに立っていた2人の男が剣を抜く。
「ハジメには問題行動を起こすなって言われたが…これは無理だな」
ため息をつきながらバルロスは目の前に襲いかかるスーツ男の顔面を殴り飛ばす。
勢いよく飛んだスーツ男は壁際に積まれていた木箱にぶつかり、木箱をいくつか落としながら倒れる。
男たちは一瞬呆然としていたが、すぐに顔を怒りに染め剣を構える。
しかし、男たちはバルロスの後ろにいたはずのシアが消えたことに気づくことはなかった。
シアは男たちの死角から移動し、男たちの背後に立つと1人の男の頭を掴み、地面に叩きつける。
その衝撃は凄まじく、叩きつけられた男は地面にヒビを入れながら埋まる。
そして、もう2人の男もバルロスが殴り飛ばし気絶させる。
「さて、どうやらこの街にコイツらのボスがいるみたいだな。
ついでに潰すか!」
「はいです!せっかくのデートが台無しです!」
シアはドォルケンを回しながら、倒したスーツ男からアジトを聞き出し凸りに向かった。
「ここがフューレンだね」
エリセンから旅立った恵理はフューレンの門番を通り抜け到着した。
ここに来た理由は、ミュウを助けた時倒した盗賊の残党がこの街に居ると話していたのでついでに処分しようとここに来た。
「さ〜て!場所は把握しているし向かおうかな〜」
(恵理。どうやらこの街に凄まじい力を感じます。数は3)
[敵?味方?]
(1つはこの地下で暴れてます。2つは…街を歩いてますね)
「なら、地下の方に行こうか」
恵理は走ってアジトの方に向かって行った。
「ふざんけてんじゃねぇぞ!アァ!?てめぇ、もう一度言ってみやがれ!」
「ひぃ!で、ですから、潰されたアジトは既に五十軒を超えました。襲ってきてるのは2人組の男女と1人の女です!」
「じゃあ、何か?そんな3人のクソ共にフリートホーフがいいように殺られてるってのか?あぁ?」
「そ、そうなりまッへぶ!?」
室内で、怒鳴り声が止んだかと思うと、ドガッ!と何かがぶつかる音がして一瞬静かになる。どうやら報告していた男が、怒鳴っていた男に殴り倒されでもしたようだ。
「てめぇら、何としてでも、そのクソ共を生きて俺の前に連れて来い。生きてさえいれば状態は問わねぇ。このままじゃあ、フリートホーフのメンツは丸潰れだ。そいつらに生きたまま地獄を見せて、見せしめにする必要がある。連れてきたヤツには、報酬に五百万ルタを即金で出してやる!一人につき、だ!全ての構成員に伝えろ!」
男の号令と共に、室内が慌ただしくなる。男の指示通り、組織の構成員全員に伝令するため部屋から出ていこうというのだろう耳をそばだてていたシアは背中から戦鎚を取り出し大きく振りかぶった。
そして、室内の人間がドアノブに手をかけた瞬間を見計らって、超重量の戦鎚を遠心力と重力をたっぷり乗せて振り抜いた。
ドォガアアア!!
爆音を響かせて、扉が木っ端微塵に粉砕される。ドアノブに手を掛けていた男は、その衝撃で右半身をひしゃげさせ、更に、その後ろの者達も散弾とかした木片に全身を貫かれるか殴打されて一瞬で満身創痍の有様となり反対側の壁に叩きつけられた。
「探す必要はありませんよ。既にここにいますからね」
「骨ごたえがありそうな奴はいなさそうだな」
バルロスはそのまま男の前に立ち胸元を掴みあげる。
男は悶えながら抵抗するが、バルロスの力に及ばない。
「答えろ。ここに捕獲されている奴らは何処にいる?」
「がぁ…誰が、言うか……!ゲフッ!」
バルロスはため息をつくと男を頭から地面に叩きつける。
男は勢いよく血を吐き出すが、気を失わずバルロスを睨みつける。
「…もう一度聞く。捕まった奴らは何処にいる!!!」
今度は殺気を飛ばしながら男に問いかけ、地面がひび割れる程の脚力で地面を踏みつける。
「ガアァア!!や、やめ、ギャアアア!!」
バルロスの殺気に耐えきれず男が気絶した。
「ちっ!シア、コイツは用無しだ!
他の所を回るぞ!」
「はい!「その必要はないよ!」?!」
他の場所に向かおうとした時、女性の声にバルロスとシアは振り向く。
「…テメェ…何者だ?」
「僕?僕の名は”南雲恵理”」
「南雲恵理。って事はハジメの妹か?」
「?!お兄ちゃんを知ってるの?!」
ハジメの名を聞いた途端、恵理の様子が一変する。
「はい!ハジメさんは私達と旅をしています!」
「じゃあ、私もついて行ってもいい?」
「はい!ですがまず、ここに囚われている人達を探さないと」
「それなら僕が見つけて、外に避難させてるよ。
何ならもう時期兵達が来るからこの闇オークションと裏組織はもうお陀仏だよ」
恵理が言った通り、警備兵達がやってきては捕らえられた人々を避難させていた。
そして、最後の1人を避難させた所で警備兵の1人が
「ギルド長がお呼びですので、少しお時間よろしいですか?」
3人は大丈夫と頷き警備兵の後を追いかける。
バルロスとシアと恵理が到着すると、先にハジメ達が席に座っていた。
そしてイルワの視線は到着したバルロス達に向ける。
「倒壊した建物二十二棟、半壊した建物四十四棟、消滅した建物五棟、死亡が確認されたフリートホーフの構成員九十八名、再起不能四十四名、重傷二十八名、行方不明者百十九名……で?何か言い訳はあるかい?」
「喧嘩売られたからカッとなってやった。反省もしなければ後悔もしない!
「はぁ~~~~~~~~~まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私達も裏組織に関しては手を焼いていたからね……今回の件は正直助かったといえば助かったとも言える。彼等は明確な証拠を残さず、表向きはまっとうな商売をしているし、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りでね……はっきりいって彼等の根絶なんて夢物語というのが現状だった……ただ、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね……はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」
「唯の反撃で、フューレンにおける裏世界三大組織の一つを半日で殲滅かい?ホント、洒落にならないね」
流石にイルワが可哀想なのかハジメは1つ提案する。
「一応、そういう犯罪者集団が二度と俺達に手を出さないように、見せしめを兼ねて盛大にやった。支部長も、俺らの名前使ってくれていいんだよ?何なら、支部長お抱えの『金』だってことにすれば……相当抑止力になるんじゃないか?」
「おや、いいのかい?それは凄く助かるのだけど……そういう利用されるようなのは嫌うタイプだろう?」
「何、どうせこれからもこの街には世話になるからな」
「ではありがたく使わせて頂くよ」
「それはそれとして、何故恵理もあの場にいた?」
ハジメは何故ここに恵理が居るのか問う。
「まぁ色々あってあのメンバーから抜けて、エリセンで誘拐されそうになっていた海人族の子供を助けて、その組織がこの街にいるのを聞いたから潰そうと来たんだ」
恵理の話を聞いてハジメは納得したように頷く。
「それとこれからはお兄ちゃん達と一緒に行動するからね」
「あぁ。これから頼りにするぞ」
「うん!」
この話は終了となり、宿に帰還後恵理の事をユエとティアに紹介、幸利に関しては驚いていたが、今後は一緒に行動すると伝えると喜んでいた。