異世界に転移された翌日。
朝から訓練と座学が始まった。
集まった生徒に銀色のプレートが配られた。
プレートの説明を騎士団長メルド・ロギンスがする。
「よし、全員に配られたな?こいつはステータスプレートと呼ばれる文字通り、自分の能力を客観的に数値化してくれるものだ。最も信頼できる身分証明書だ、失くすなよ?」
実にフランクな話術でこちらは気を緩める。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに一緒に渡した針で血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。『ステータスオープン』と言えば自分のステータスが表示される。原理とか聞くなよ?神代アーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
「アーティファクトっていうのは今じゃ再現できない魔法道具のことだ。まだ神やその眷属が地上にいた頃に創られたと言われている。ステータスプレートもその一つだ」
ステータスプレートは人によって色が違うらしい。
俺は血を一滴ステータスプレートに垂らしてステータスを確認する。
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師 闇…人
筋力:80
体力:80
耐性:75
敏捷:110
魔力:200
魔耐:200
技能:錬成(+多重錬成)・鉱石鑑定・魔力操作・気配感知・言語理解
多重錬成…同じ武器に更に錬成を掛けるとより強力な武器になる。
ただし、武器の強度や素材によっては崩壊、消滅する可能性あり。
なるほどなぁ〜。
それに魔力操作?
へぇ…無詠唱で魔法が使えるのか。
だが、技能に魔法関係がないからもしかして才能ない?
そう考えていると周りが騒がしくなり、その中心にいるのは勇者様である天之河だった。
天之河光輝 17歳 男 レベル1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
まぁチートみたいなステータスしてるな。
「ほお〜さすが勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外なやつめ!頼もしい限りだ!」
しばらく他の人も見せていき、ついに俺の番なる。
「ふむふむ……錬成師か……その割には勇者並にステータスがあるな。それにこの文字が読めない天職…」
あっ、俺の天職は非戦闘向けの職なんだな。
「もういいっすか?」
その場を去ろうとするとメルド団長に腕を掴まれる。
「なんすか?」
「もうひとつ。この魔力操作は周りに誰にも言うな。この技能は本来魔人族しか取得出来ない技能だ」
なるほど、もしこの技能がバレると俺は魔人族のスパイと思われるんだな。
メルド団長の言葉を聞いて調子に乗る奴らが現れた。
「おいおい南雲。非戦闘職なのか?それでどうやって戦うんだよ?メルドさん、錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持ってる。お抱えの職人は全員持ってる」
「ギャハハ!お前どうやって戦うんだよ!」
「そうだな〜…錬成!」
俺はバカ笑いしている檜山の足元を錬成して大穴を作る。
まぁ物の見事に穴に落ちていったよ。
「馬鹿だな〜そんな落とし穴に落ちるとかプププっ〜」
「南雲てめぇ!!」
「何ならこのまま閉じて肥料にしてやってもいいんだぜ?」
高みの見物をしていると天之河が俺の前に近づく。
「南雲!檜山を早く出すんだ。そして謝るんだ!」
「はぁ?喧嘩を売ってきたのはコイツだぜ?」
「それでも良くない!これから一緒に戦う仲間なんだ!」
あーはいはい。
正義感が強いね〜天之河くんは。
でもね、こういう性格の主人公にありがちな展開だよそれ。
正直ウザイ。
そして、天之河は前に進み出た瞬間、愛子先生が俺と天之河の間に入り止めにきた。
「ケンカはダメですよ 二人共! 後、南雲君も安心してください。私も貴方と同じ非戦闘職なので」
そう言いながら愛子先生はステータスプレートを見せて来た。
畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
「…」
「どうですか!」
俺は先生が自分の重要さに気付いてなかったので伝えることにした。
「先生。はっきり言うがこの技能は天之河なんかより遥かに重宝される技能だ。
言うなら砂漠のど真ん中に畑を植えて先生が魔法使えば野菜ができる。ある意味勇者よりチート技能なんだよ」
なんか疲れて喧嘩する気も萎えた。
「団長〜明日から工房に籠るから〜」
メルド団長は俺を止めようとするが無視をして訓練場から去った。
翌朝に錬成師がいる工房にお邪魔して一角を使わせてもらおうと交渉したが…拒否されたよ。
ステータスプレートを見せても貸す気がねぇとか言われた。
仕方ねぇと晩餐会の時に仲良くなったリリアーナ姫の所に行って使ってない廃工房とそこにある資材を使わせてもらった。
「使わなくなったとか言ってたがあの工房よりも資材あり過ぎだろ…」
早速俺は武器を錬成に取り掛かる。
「こ、これは…」
「頼まれた剣50本、盾20個」
リリアーナ姫から工房を使わせてもらう代わりに武器を作ってくれと言われたので物試しにゲーム内にもあるブロンズソードを錬成した。
最初は数時間集中して漸く完成したが、新しい技能『脳内設計』のお陰でその後はポイポイと完成した。
「す、凄いです…まだ半日も経っていないのにこれだけの量の武器を錬成させたのですか」
えっ?!お宅の技師たちはどれだけ時間かけているの?
「後はコイツもやるよ」
実はリリアーナ姫に渡す前に王都の武器屋に行き俺の錬成した剣と売られている剣の強度を商人に試してもらった。
結果、俺の方が軽く強度も違うと評価され王都の技師ではなく俺の造った武器が欲しいと言われたので手持ちの20本の剣を販売して何割かの金をもらった。
その帰り際に赤い透明な宝石を見つけたので購入してその場で花の形をした髪飾りに錬成させた。
「その金は工房を借りたお礼と髪飾りは俺からのプレゼントだ」
「そ、そんな受け取れません!」
「いいんだよ。貰ってくれ。それに俺の国じゃ男から女に贈り物をする風習があるんだぜ?」
「うぅ……」
「受け取ってくれないなら捨てるけどいいのか?」
「い、いただきます……」
リリアーナは頬を赤らめて受け取った。
その後、俺は王都に出向いては何でも屋みたいに故障した物を見ては治し、新しい武器や鎧を納品させた。
更にはお礼と冒険者から宝玉や素材を貰ったのでそれで新しい武器を考えたり役に立つアイテム開発に浸っていた。