天之河と試合した後、ハジメは自室に籠り武器を組み立てていた。
ベッドでは幸利が寝っ転がりながらハジメの作業を見つつ図書室でパク…借りた図鑑を見ている。
「オルクスの大迷宮ねぇ…」
「そう。お前が天之河をボコった後、メルド団長が伝えようとしていたのにお前がさっさと帰るから」
「それは悪かったな」
オルクスの大迷宮
それは、全百階層からなると言われている大迷宮。
七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。
にもかかわらず、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気があるらしい。
それは、階層により魔物の強さを測りやすいからということと、迷宮の外に出現する魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。
出現する魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。
ちなみに魔石とはこの国で日常的に使われる備品や魔法陣を描くのに必要なアイテム。
良質な魔石を持つ魔物ほど、強力な固有魔法を使う。固有魔法とは、魔力はあっても詠唱や魔法陣を使えないため多彩な魔法を使えない魔物が使う唯一の魔法。
一種類しか使えない代わりに、詠唱も魔法陣もなしに放つことが出来る。
魔物が油断ならない最大の理由。
「それで、完成しそうか?」
「あぁ、荒削りだが魔物を倒す位の威力はある。ただし燃費は悪いがな」
組み立てを終えて壁に向けて構える。
悪くなかったのかそのままケースにしまう。
「まさか異世界で銃を作るとはな」
「今のままではこれが限界だ。もっといい素材があればいいのだが、そうなるとこの国から出る必要だ」
そう考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「ハジメくん、起きてる?白崎です。ちょっと、いいかな?」
香織が来たのでハジメは迎えようとドアを開けた。
しかしその姿は周りの人に見せるわけにはいかないと自分が着ていた羽織をかける。
「夜に来るのはいいが、その姿はどうにかしろよ」
「う、うん!」
お茶を用意して香織に渡す。
幸利は香織のお願いで2人で話したいと言うので仕方なく部屋を出て行った。
「それでどうした?」
「明日の迷宮だけど……ハジメくんには町で待っていてほしいの」
「無理だ」
「即答!?」
「そもそも何故俺が?何かやらかしたか?」
「いえ、そうじゃないの」
聞くと何でも俺が巨大な魔物と戦い何かの拍子で俺は奈落に落ちるらしい。
そしてその後を追う香織だが、俺は段々と遠くなり気付いたら俺は黒い何かに変わるらしい。
「だからお願い!団長や皆には私が説明するから、ハジメ君はここに残って欲しいの!」
真剣な眼差しで見つめてくる香織。
その目からは嘘偽りはないと感じられた。
なのでハジメも真面目に答えることにした。
「…悪い香織、それは聞けねぇや」
「?!どうして?」
「俺は確認しないといけない事がある。
安心しろ!俺は死にはしねぇよ」
そう言いながら香織の頭を撫で、その勢いで香織にキスをした。
不意にされたので香織は顔を真っ赤にしながら驚く。
「例え奈落の底に落ちようが溶岩の中に落ちようが、俺は絶対香織の元に帰ってくる。そして元の世界に帰る」
「…うん!」
「それとコイツを渡しておく」
俺はズボンのポケットから指輪を渡した。
「…プロポーズ?」
「生憎それならもっと良いのを渡すよ。
それは魔力上昇させるアーティスト」
香織はありがとうと言いながら嬉しそうな顔をする。
気持ちが楽になった香織は笑顔で部屋から出て行き、同時に幸利が戻ってきた。
それも浮かない顔をしていた。
「どうした幸利?」
「あぁ、ちょいと部屋戻る前に廊下歩いていたら…檜山を見つけてな」
どうやら香織が俺の部屋から出て行ったのを檜山が見ていたらしく、それも相当やばかったらしい。
「多分オルクスでお前を殺す可能性がある」
チッ!面倒な事になりそうだな。
「…幸利。俺に何かあったら香織を頼む」
「…分かったよ」
そして次の日…
俺たちは運命の場所、オルクス大迷宮へ向かった。
そして香織と幸利の予測は的中した。