闇の戦士達は神殺し   作:紙の子

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6話:大迷宮とトラップ

オルクス大迷宮。

 

 

 

この世界に存在する七大迷宮の一つ。

全100階層から構成されており、階下に進めば進むほど手強い魔物が待ち構えている。

 

先頭にメルド団長率いる王宮の騎士団、天之河、龍太郎、香織、雫。

その後ろに幸利、恵理、あとクズ共が並んでいる。

俺?俺は1番後ろで鉱石鑑定しながら錬成に使えそうな鉱石を回収している。

 

 

 

しばらく何事もなく進んでいると、それなりに高いドーム状の広間に出た。

 

その時、物珍し気に辺りを見渡している俺たちの前に、壁の隙間と言う隙間から灰色のムキムキマッチョな2足歩行のネズミが湧き出てくる。

 

すると、メルド団長が俺たちに命令してきた。

 

「よし、光輝たちが前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうから、準備しておけ!あれはラットマンと言う魔物だ。すばしっこいが、大した敵じゃない。冷静に行け!」

 

メルドさんの言葉通り、ラットマンたちが結構な速度で飛び掛かってくる。正面に立つ雫の頬がひきつっている。気持ち悪いようだ。

 

間合いに入ったラットマンを天之河、雫、龍太郎の三人で迎撃し、その間に、香織と恵里と谷口鈴が詠唱を開始。

 

魔法を発動する準備に入る。クラスメイト達が何度も行ったフォーメーションだ。

 

「南雲、後ろ!!」

 

どうやら俺の後ろにラットマンが2匹いる事にメルド団長は叫びながら伝える。

 

 

ドンッドンッ!!

 

 

発砲音が迷宮内に響き俺の目の前にラットマンは頭を貫かれ地面に落ちて行った。

そして生徒達は俺が握っている武器を見て驚きている。

 

「南雲…その武器は…」

 

「あぁ、銃だが?」

 

「銃なんて卑劣な道具を使うんじゃない! 正々堂々と戦うんだ! それを早くこっちに渡せ!」

 

天之河は馬鹿げたことを言うので呆れながらホルスターに仕舞い天之河を睨む。

 

「おい天之河。この間言ったよな。二度と俺に指図するなって。

大体な、これは俺が二週間汗水垂らして作り続けて漸く完成した物だ。それをはいそうですかって簡単に渡すわけねえだろ」

 

そろそろ我慢の限界で殴ろうとした時、メルド団長が間に入り仲裁する。

 

「辞めんか馬鹿者!

…それと南雲。その銃と言う武器は生産可能なのか?」

 

メルド団長は今の威力に魔力が少ない人間にも扱えると把握したのか生産を頼もうとしている。

 

「設計図は俺の頭の中だが…俺はあの国の為に作る気はねぇ」

 

「な、なんだと?!」

 

「誰も知らねぇから教えてやる!

俺はステータスが分かったあの日、王宮の錬成師に工房と鍛冶場の提供を頼んだ。

そしたらそこの偉いさんは拒否したよ。

そんな余裕があるわけねぇ!ってさ。

次に頼んだのはリリアーナ姫に頼んだら見事に使わなくなった工房と鍛冶場を貸してくれたよ。

 

それからはリリアーナ姫と王都の冒険者にだけ武器や防具を提供していた」

 

お陰で懐も厚く、素材になる皮や骨何かも無償で提供してくれたから感謝しかねぇよ。

 

 

 

 

一階層で一悶着あったものの、そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調に階層を下げて行った。

勿論俺は参加してないがな。

下に降りるに連れてレアな鉱石がチラホラ見つかるからトラップでは無いことを確認してから回収する。

 

そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている20階層にたどり着いた。

 

現在の迷宮最高到達階層は65階層らしいのだが、それは100年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で40階層越え、20階層を越えれば十分に一流扱いだという。

 

もっとも、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。

 

この点、トラップ対策として”フェアスコープ”というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

メルドのかけ声がよく響く。

 

小休止に入り、ふと前方を見ると香織と目が合った。あいつの薬指には俺がやった指輪をしている。

更に少し遠いが俺を目の敵の様に睨みつける檜山が見えた。

幸利の言う通り何仕出かすな。

俺は深々と溜息を吐く。そうこうしてる間に小休止が終わり、二十階層の探索が始まった。

 

 

 

二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。

 

そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に帰らなければならない。俺達は、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。

すると、先頭を行く奴等が立ち止まった。そして明らかな戦闘態勢に入る。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

メルドの忠告が飛ぶ。

その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。

どうやらカメレオンみたいに擬態能力があるみたいだ。

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

その直後、

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。これは多分、ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だな。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させるという効果だ。

まんまと食らってしまった前衛組が一瞬硬直してしまった。

 

ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、仲間のロックマウントを持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。

空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。その姿は、さながらル○ンダイブだ。

あんな気持ち悪い顔を見たら詠唱も途中で放棄してしまうのも分かる。

 

 

 

「悪いな。あの中に俺の女もいるから死ね」

 

俺は飛び込もうとしているロックマウントの顔面を両拳銃で撃ち抜く。

頭に風穴を開けられたロックマウントはズズン! と地に倒れ伏す。

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

どうやら気持ち悪さで香織達が青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。遠くから見ても分かるほど怒りをあらわにしている。それに呼応してか奴の聖剣が輝き出す。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」

 

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

メルドの声を無視して、天之河は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。

 

その後メルド団長に説教された天之河。

その時、ふと白崎が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい。宝石の原石みたいなものでな、特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが大人気でな、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるんだ。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップに入るとか言われてる」

 

「素敵……」

 

この場の空気を変えようとメルドが簡単に説明すると、香織がそれを聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。

取ってやりたいのは山々だが、あんな所にそんな鉱石が生えているのは怪しい。

 

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

だが、それにすら気づかないバカはどこにでもいるもんだ。

唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルドだ。

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

 

メルドは、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

「団長! トラップです!」

 

「ッ!?」

 

しかし、メルドも、騎士団の奴の警告も一歩遅かった。

檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がりあっという間に部屋一体を包み込み魔法が起動した。

 

 

 

俺達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。

 

橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。俺達はその巨大な橋のど真ん中にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

それを確認したメルドが、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出すカス共。俺はその前に移動してる。

しかし、迷宮のトラップが転移させるだけで済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が現れた。

 

その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルドの呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

「まさか……ベヒモス……なのか……」

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