闇の戦士達は神殺し   作:紙の子

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8話:帰還と怒り

「皆! 今は、生き残ることだけ考えるんだ! 撤退するぞ!」

 

その言葉に、クラスメイト達は動き出す。トラウムソルジャーの魔法陣は未だ健在だ。続々とその数を増やしている。今の精神状態で戦うことは無謀であるし、戦う必要もない。

天之河は必死に声を張り上げ、クラスメイト達に脱出を促した。メルド団長や騎士団員達も生徒達を鼓舞する。

 

 

 

 

 

 

そして全員が階段への脱出を果たした。

 

 

上階への階段は長かった。

 

先が暗闇で見えない程ずっと上方へ続いており、感覚では既に30階以上、上っているはずだ。魔法による身体強化をしていても、そろそろ疲労を感じる頃である。先の戦いでのダメージもある。薄暗く長い階段はそれだけで気が滅入るものだ。

そろそろ小休止を挟むべきかとメルド団長が考え始めたとき、ついに上方に魔法陣が描かれた大きな壁が現れた。

メルド団長は扉に駆け寄り詳しく調べ始めた。フェアスコープを使うのも忘れない。

 

その結果、どうやらトラップの可能性はなさそうであることがわかった。魔法陣に刻まれた式は、目の前の壁を動かすためのもののようだ。

メルド団長は魔法陣に刻まれた式通りに一言の詠唱をして魔力を流し込む。すると、まるで忍者屋敷の隠し扉のように扉がクルリと回転し奥の部屋へと道を開いた。

扉を潜ると、そこは元の20階層の部屋だった。

 

「帰ってきたの?」

 

「疲れたぁ……」

 

クラスメイト達が次々と安堵の吐息を漏らす。天之河達ですら壁にもたれかかり今にも座り込んでしまいそうだ。

 

ハジメを殺した張本人である檜山は、邪魔者を殺せたことに頬が吊り上がっていた。

 

その様子に、清水と恵里は耐え切れなくなった。

 

「ハジメを殺した気分はどうだ? 人殺しさんよ」

 

その言葉に一瞬で静まり返るクラスメイト達。

 

「は……? な、何言ってんだよ!」

 

「見られてないとでも思った? 残念。ちゃんと見たよ。君がハジメ君の方を見て、魔法を撃つとこ」

 

目撃者がいたことに分かりやすく動揺する檜山。

 

「い、いい加減にしろよ! お前らあいつと仲が良かったからって、言いがかり言いやがって! 大体、俺は火球なんか撃ってねえよ!」

 

「俺はお前が何の魔法を使ったか、までは聞いてないぞ。語るに落ちたなこのバカが」

 

檜山は慌てて訂正しようとする。しかしそこに待ったがかかる。

 

「待ってくれ清水、恵里。檜山がそんなことをするわけないじゃないか。何かの誤解じゃないのか?」

 

天之河だ。

 

「君は聞いてなかったの? こいつ、幸利君が何でハジメを殺したんだって聞いたら、ご丁寧に何の魔法で殺したのかまで喋ってくれたんだよ。っていうことは、こいつで間違いないでしょ?」

 

「それに光輝。お前もハジメが魔人族と関わっていると確定した訳でもないのによくハジメの左腕を斬り落としたな!」

 

「檜山は仲間だ。そんなことするわけがない。それに見ただろ、ベヒモスを超えるあの力を」

 

光輝の言葉に大半のクラスメイトが頷く。

いい加減我慢出来なくなった幸利は天之河を殴ろうとした。

 

『ヒャハハハハ!人間はつくづく愚かだな〜』

 

何者かが撤退してきた道から声が聞こえ振り向くとそこには

 

「ハジメ?!」

 

黒い姿をしたハジメだった。

 

「悪いがこれはアイツの体を真似した霊体だ。本人は奈落の底で生きてるぜ」

 

生きていると知った途端、香織達は良かったと安心し、光輝や檜山は喜ばしくない表情をしていた。

 

『まぁそんな話は置いといてだ。俺様が知りてぇのはそこの人殺しをどうするつもりだ?』

 

黒ハジメはメルド団長に檜山をどうするか聞く。

 

「あの一大事に命令違反は死に直結するから・・・神の使徒と言えど謹慎は確実だろう」

 

「そ、そんなっ!?」

 

あまりにも惨いと感じた天之河は、それに反対する。

 

『そうかい。ならそっちできちんと捌けよ。次会ってそこの中にいるようなら…ハジメが殺すかもな』

 

「「「?!」」」

 

「な、何故そんな事を!俺たちは仲間だろ?」

 

仲間と言うワードに黒ハジメは高笑いしながら天之河の目の前に向かう。

 

『ほぉ〜何も話を聞こうとせず攻撃し

人の腕を斬り落としたお前がその言葉を言えるのか?』

 

「くっ…それでも殺す必要は無いだろう!」

 

『甘いねぇ……甘すぎる。お前らも見ていた筈だぞ。そこの奴が俺を殺そうとしたことを』

 

「ち、違う! あれは事故だ! わざとじゃ無い!」

 

「そうよ!無能なアンタがベヒモスを倒せたからって調子に乗りすぎよ!」

 

ついには次々と黒ハジメに対して文句を言い始めた。

これにはメルド団長は沈めようにもどうにも出来なかった。

 

『そうかい…なら後悔する事だな』

 

「ま、待って!」

 

黒ハジメが戻ろうとした時止めたのは香織だった。

 

「ハジメ君は…ハジメ君は今も奈落にいるの?」

 

『そうだな。アイツは奈落にいる魔物と戦ってる。左腕を失っても生き残るために戦っている。

それと言っとくが今のお前らが着いてきても魔物に殺された終わるだけだ。

奈落の魔物はベヒモス並に強いのがうじゃうじゃいるからな』

 

そう言い黒ハジメは姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜魔物肉クソまずい…」

 

奈落に落ちたハジメは目を覚ますと早々に仮拠点を作った。

その途中で壁から妙な気配を感じ錬成で壁を削ると”神結晶”を見つけた。

しかも垂れている水滴を試験管に入れて飲むと消費した魔力や体の痛みが回復した。

そのためガラス瓶を作り何本か回復薬として常備して神結晶は回収した。

左腕を失い不自由になったが、それでも香織の元に戻るため、近場にいた魔物を奇襲して倒し何とか生き延びてはいた。

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