お姉ちゃんは下を見ない。   作:果実味

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 初投稿です。
 見切り発車なところがありますけど伏線は一応、子供騙し程度ですけど考えてあるので矛盾があるとすれば各キャラクターの設定ですかね。
 バンドリ、楽器はにわかなので間違っていれば直していきます。
 タグの「キャラ崩壊」は念のためです、なるべく原作に遵守します。







第一話 お姉ちゃんの悩み

 

 

 

 入学式というイベントは友達作りのターニングポイントである。

 教室に案内されて自己紹介が始まるまでの短い時間でいかに話しかけられるかが勝負の分かれ目でありこの機を逃せば向こう一年はボッチちゃんになる確率が高い。  

 いやまあ自己紹介してから〜というのもあるけど同じ共通項を見つけても話しかけられるかは別問題だしそんなコミュ力あるなら友達百人くらい余裕でできてる。

 というわけでまだ名も知らぬこのときが最大の好機! 先手必勝、私はリア充になる! 

 というわけで隣の席にいる淡い水色が特徴的な長髪美人さんに狙いを定めて話しかけたら──

 

「ヘイそこの彼女〜! 私と話さないかいっ?」

「結構です」

「アッ、はい……」

 

 一蹴された、それはもう息を吸って吐くかのごとく自然に。

 いやいや早くない?! ここはもっとこう、『元気な人だねぇ』とか『なにそれナンパ〜?』とか聞いてくる展開じゃないの? それをこの子は『結構です』──なんでやねん! 斜め下すぎて反応できるかいな! 

 

「ところでさぁ〜君はもう部活動何にするか決めたの?」

 

 でも諦めない。ここで臆していたら何事もマイナスに考えちゃうから、ていうか意地でも話しかけて友達になってやる! 

 

「あの、私のことは気にかけなくていいですよ? 他の人と話してください」

「私の第六感が告げているんだよ、君と友達になりなさいってね」

「意味が分からないのですが……」

「そんなのは後付だよ! ほらほらっ、部活動は何するの? あ、それともアルバイトしちゃう感じ?」

「ち、近いですっ……部活は弓道部に所属することにしました。春休みを利用して体験入部していたのでその流れで」

「ほうほう弓道部! こう……ぐっと引いてバンっ! だよね! かぁっくいいぃ〜!」

「はぁ……疲れる」

 

 あれ、なんか呆れられてる? 弓道やってる真似してみたんだけどウケが悪かったのかな? 

 

「あ、そうだ名前! 私は雫っていうんだぁ〜」 

「そうですか」

「いや『そうですか』──じゃなくて! あなたのお名前は?」

「氷川といいます」

「氷川さん……氷川……え、名前は?」

「紗夜です。あの、読書がしたいのでもういいですか?」

「そっかそっか紗夜ちゃんっ! えへへ〜カッコいい名前だね!」

「全く嬉しくないのですが……」

「私のことは『雫ちゃん♡』って呼んでね!」

「雫さん、読書するのでもういいですか?」

 

 うぉぉい! この子の中で読書>私って構図ができてるの?! 本に負ける人間ってなにそれ私弱すぎじゃない? しかもしれっとスルーされたし。むむむ……ここは人間らしく話題を振って紗夜ちゃんの意識をこちらに向けよう。 

 

「紗夜ちゃん、私にはね──妹がいるんだよ、しかも二人! とーっても可愛くて良い子なんだぁ」

「それは良かったですね」

 

 チッ、これじゃまだ弱いか。視線すらこっちに向けず読書してるし……うーんこれさ、普通なら心折れるよね? ここまで塩対応されたら私以外はプッツンするかもだよ。でも安心して紗夜ちゃん、私は諦めが悪いから☆

 

「でねでね、その内の一人は双子で〜この学校なんだよ? 姉妹揃って同じ高校に進学って嬉しいよね! さらにさらに妹は()()なんだっ!」

「っ……天才?」

 

 お、今ピクってしたよ? しかもついに紗夜ちゃんが私の方を向いてくれた! これは私の妹がどれだけ凄いかを語る時がきたようだね……いいよ、存分に聞かせてあげよう。

 

「そう、天才! 何をやっても──」

「妹なんて、邪魔なだけですよ」

「……へぁ?」

 

 語る気満々だったのに紗夜ちゃんの鋭い言葉に出鼻を挫かれ素っ頓狂な声を出しちゃった。もしかして地雷踏んじゃったのかな? ということは紗夜ちゃんにも妹がいるとか? 

 

「いつもいつも後を付いてきては真似されて……本当に、邪魔な存在です」

「ちょいちょい待った! 家族を蔑ろにするのは悲しくない? そりゃちょーとイラッ☆とすることもあるけど裏を返せば可愛さ余って憎さ百倍ってやつだよ?」

「それ、フォローになっているのか分かりませんが……もういいですか? これ以上は話したくないので」

 

 それからは自己紹介が始まるまで、いや今日の授業を全て終えても本当に何も話してくれなかった。私がいくら話しかけても『はぁ』『そうですか』のみ、何この修行? 精神力を鍛える場なのここは……ともあれ放課後になったけどまだお昼頃。教室の子たちは親睦を深めるためにカラオケ行こーとかカフェ行こーとか盛りがってるけど私は紗夜ちゃんとの会話に全振りしてたから輪の中には入れていない。

 いや声はかけてもらえたよ? でもなんというか誘ってくれた子がね〜『紗夜ちゃんの相手してるから無理かな〜』的な雰囲気があったから気を使わせるのも申し訳ないしここは丁重にお断りしておいた。

 

「紗夜ちゃん、このあと遊びに行かない?」

「行きません」

「あ、部活? ……ていうかその大きな鞄は?」

 

 帰り支度をする紗夜ちゃんは片腕に黒くて大きな荷物を引っ掛けていた。弓道部って道具をそんな豪快な物に入れるの? 

 

「これはギターケースですよ。ここ数日は新入生確保の為に先輩たちが出払っているのでお休みです」

「紗夜ちゃんギターやるんだ! カッコいいなぁ〜あっ! 紗夜ちゃんのギター弾くところ見てみたい!」

「嫌です」

「なんでっ?!」

「なんでって……見ていても楽しくないですよ?」

「それを決めるのは紗夜ちゃんじゃないよ。その人の演奏を聴く人間が何を思いどう感じるか、音楽に携わる人間ならその考えが大事だと思わない?」

「……雫さんは何か楽器に触れているんですか?」

「いんにゃ? 私は音楽じゃなくて芸能の方。まぁ実力がなくてすぐに辞めちゃったけどさ、でも本質は同じじゃないかな? 魅せる者同士、観客がいなくちゃ評価は得られないでしょ?」

「まぁ、一理ありますね」

「でしょでしょ? だから聴かせてほしいな〜紗夜ちゃんのギター」

「はぁ……分かりました。ですが期待はしないでくださいね」

「むしろ期待しかないっ!」

「やっぱり面倒ね、この子……」

 

 また呆れられたようだけど気にしない! だって私は元気だけが取り柄だからねっ。

 善は急げ、二人で仲良く下校して途中で寄ったジャンクフードのお店で色々買ってから紗夜ちゃんがよく通うと言っていた『SPACE(スペース)』へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

「ほうほう、これがSPACE……」

 

 お店から出て少し、ちょっと広い敷地にカフェテラスがあって寄ってみたいなぁ〜と思っているとどうやらここが目的地らしい。

 

「雫さん、行きますよ」

「あっ待ってよ紗夜ちゃ〜ん」

 

 演奏を聴き終わったらここで仲良くお茶するのも悪くないかな。でもカフェにポテトフライって組み合わせはちょっとな……さっきのお店で大盛りポテト頼んでた紗夜ちゃんに『え、それ一人で食べるの?』って聞いたら『普通サイズですよね?』とか言ってたからもう触れないようにしようって私は思いました、まる。

 

「いらっしゃーい、ってあれ? 氷川さん珍しいね、お友達を連れてくるなんて」

「いえ、友達では──」

「はいはーい! 今日から紗夜ちゃんとマブダチになった雫っていいまーす! もう紗夜ちゃんとはラブラブでバージンロードを歩く予定です!」

「あの……無視していいですから」

「あはは〜これまた愉快な子が来てくれたね」

 

 カフェに併設された施設に入ると座っていたスタッフ──月島 まりなさんが私達の対応をしてくれた。

 色々と手続きをしてから部屋番号を聞かされて紗夜ちゃんは慣れた足取りでカラオケボックスのような作りの奥の各部屋の番号を見ている。

 

「ここがライブハウス……」

「雫ちゃんはライブハウス来るの初めて?」

 

 部屋を探している紗夜ちゃんを横目に私は改めて初めて訪れるライブハウスなる施設の中をぐるりと見渡しているとまりなさんから声をかけられた。

 

「ですです! なんかバンドマンになった気がしてちょっとはしゃいじゃってます!」

「雫ちゃんは何か楽器はやってないの?」

「ないですね。触れたこともないのでやってみたい気持ちはあるんですけど……」

「それなら体験って形で触ることできるよ? なにしろウチはライブハウス、だからね」

「おお! それなら紗夜ちゃんと一緒に弾けるかも!」

「ん〜それは厳しいかも。あの子、ギターの腕は確かに良いし努力家なのは間違いないんだけどその……」

「? 何か問題があるんですか?」

 

 まりなさんは困った顔で俯いている。紗夜ちゃんと演奏できたら楽しいと思うんだけどなぁ……まりなさんの表情からしてあまりいい感じの答えは返ってこなさそう。

 

「ギターを弾くって事はつまりバンドを組む流れになるのが自然なの。もちろん全ての人がそうじゃないんだけど大半はね。で、音楽を愛する者同士が集まって音を紡ぐ、あの子も例に漏れずバンドを組んでいたんだけど……長続きしないの」

「長続きしないってバンドを抜けるってことですか?」

「そうそう。さっきも言ったけどあの子はギターを持たせたら人が寄ってくるくらい上手で努力家なんだけどそれが他の子達とは理解し合えないみたいで」

「……つまり熱中しすぎて周りがついていけないって事です?」

「そういうこと。だから私としても早く花開く日が来るといいなって願っているんだけどね」

「ふむ、なるほど」

 

 まりなさんの話を聞いて、以前バンドを組んでいた名前も顔も知らない子達に同情した。だって学校での私への塩対応なんてまさにそれですよ! 加えて一人で突っ走る暴走機関車の如きギターへの執着心! これはもう理解し合えないのも納得のいく話ですわ。

 

「雫さん、部屋に行きますよ。時間は限られていますから」

「ほいほーい今いくー!」

 

 紗夜ちゃんからお呼びがかかったのでまりなさんに挨拶してから部屋の中へ入る。

 初めて入ったレッスン場所は学校の音楽室をそのまま持ってきたかのような造り。そこに専用の機材が丁寧に置かれている以外は普通の防音部屋だ。

 

「紗夜ちゃんはいつもここで練習してるの?」

「空いていればそうですね」

「ふぅ〜ん、一人で?」

「……ええ」

 

 目を逸らした。別に隠すことでもないと思ったけど原因が紗夜ちゃんにあるって自覚しての反応なのかな? 個人的には才能ある人が価値観を共有できなかったり距離を置かれる事なんてざらにあるんだから負い目を感じる必要ないと思うんだけど……紗夜ちゃんはどうなんだろう。

 

「バンドは組まないの?」

「今は一人で練習するほうが効率がいいですから」

「紗夜ちゃんがそれで良いなら私もこれ以上は聞かないけどさ……そ・れ・よ・りっ! 早くギター弾いてるところ見せて!」

「今準備しますね」

 

 ギターを肩にかけてギターに繋げた線を端に置いてある大きな箱(ギターアンプと言う物らしい)と接続する。

 

「今回はエフェクターを持ってきていないので無しで弾きます」

「えふぇ、え……ん?」

「エフェクターです。簡単に言うとギターの音を変化させる事ができるんですよ、ライブで聴くような」

「あれってそのギター、アンプ? から出てるんじゃないの?」

「ふふっ、違いますよ。アンプはギターの音の上げ下げ、そしてエフェクターはギターとアンプの間に繋げて足でスイッチの入れ替えをすると音が変わるんです」

「……勉強になりました」

 

 紗夜先生による授業でギターとはなんぞや、というのを教えてもらった。その時の表情はまるで無邪気にボールを追いかける少年のように輝いていてあの塩対応っぷりが嘘のよう。

 

「それで……何を弾きましょうか?」

「え、リクエストしていいのっ?!」

「弾ける曲でしたら」

「んーとね、クラシックはどう?」

「……クラシック?」

「そう! 私、小さい頃からコンサートに行くくらいクラシックが大好きでさ〜」

「少し意外です……もっと騒がしい曲が好きなのかと」 

 

 これはアレですね、意地を張って紗夜ちゃんにアタックしまくったからうるさい人認定されているということですね分かります。

 しかぁーし! 私はこれでも静寂を愛する一面を持ち合わせておりましてよ? オホホホッ! 

 

「ふふ〜ん、紗夜ちゃんもまだまだだね。私の事を知りたくばもっと親密にならないと永久に分からないままでっせ?」

「そこまで興味ないのでこのままでいいでしょう」

「辛辣すぎっ?! もっと私に興味持ってよ!」

 

 魂の叫びを無視して着々と準備を始める紗夜ちゃん。顔は真剣そのものでギターの弦を弾いて音を調節してからこちらに視線を向ける。

 

「では私が弾けるクラシックで。演奏することになったからには全力で弾きますから感想をいただけるとありがたいです」

「ぅおっけい!」

 

 パイプ椅子を持ってきて座り正面の紗夜ちゃんは一度目をつむり深呼吸。覚悟ができたのか目を開け、スマホから聞き慣れたクラシックの名曲が流れ始める。

 ふむ、ピアノみたいに始めから音を出すわけじゃないのはちょっと意外だったけどすぐにギターを構えて音が交わった瞬間、私の心は一気に音楽の世界へ引きずり込まれた。

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 

 

「どう、でしたか?」

「すっっごく良かったよ紗夜ちゃん! 私、猛烈に感動しちゃった!」

「ありがとうございます」

 

 演奏を終えた紗夜ちゃんはスッキリした顔をしていて満足に弾くことができたと聞かなくても伝わってくる。

 いつも聴くクラシックとはまた一味違う重奏感、ヴァイオリン等の弦楽器には出せないギターならではの重厚感。正直舐めてたね、ギターって凄いじゃん! 

 

「あ、でもごめんね〜演奏してるときに拍手しちゃって。感極まっちゃって気持ちがセーブできなかったよ」

「ライブではそれ以上に声を出したりしますから慣れてます。むしろ気持ちを表現してもらえるのは演奏者として光栄ですよ」

「ならいいんだけど……」

 

 今もまだ胸の高鳴りを感じる。指が高速で動いてたけどあれ指つったりしないのかな? とても真似できそうにないけど見ている分にはそれもギタリストのアピールポイントなのかも。

 演奏し終えた紗夜ちゃんは再び弦を弾いて様々な音をだす。エフェクターって機材があったらこれ以上の演奏ができるのかとライブを見に行くのも悪くないかなって思う。

 

 ──そう……確かにギターは良かった、素人が感動するほどに。

 

 だからこそ嫌なところを見つけてしまうのが人間の性なのか、はたまた私の悪い癖なのだろうか。

 

「紗夜ちゃんはさ、ギターやってて楽しい?」

「楽しい、ですか? 私にとってギターは極めるもの、楽しいとか嬉しいなんて余裕はありませんよ。ただ全力でギターを弾く、それだけです」

「そっかそっか。ギターの腕は凄かったけど……()()()()()()だね、紗夜ちゃんは」

「──は?」

 

 紗夜ちゃんの素晴らしい演奏を聴くことができたし今日はもうぐっすり眠れそう。あ、そうだ! 外のカフェテラスで優雅にティータイムしてから帰るのもアリだね。

 

「それじゃ紗夜ちゃん! まだ残って練習するんでしょ? 無理しない程度に切り上げて帰るんだよ〜」

「ま、待ってください! さっきのはどういう意味ですか!」

 

 今後の予定を考えながらドアに手をかけると紗夜ちゃんが思いっきり引っ張ってきてバランスを崩して倒れそうになるのをなんとか堪えた。

 

「──ととっ。どしたの紗夜ちゃん、そんな怖い顔して」

「い、今の……つまらないってどういう意味ですか! 私の演奏に感動したって言ってくれたじゃないですか、それなのにどうして」

「えぇ……どうも何もそのままの意味だよ? 演奏は良かったけど紗夜ちゃんはつまんない人だったんだって思っただけ」 

「だからそれは──」

「紗夜ちゃんさ、何でそんな苦しそうにギター弾くの?」

「っ?!」

「やりきった感は私にも伝わってきた。でもギターを弾いてる時の紗夜ちゃん、酷く苦しそうだったよ? 必死に何かから逃げるみたいなそんな顔」

「逃げる? ……私が?」

 

 そりゃ何言ってんだこいつ、みたいな顔するよね。だけどそれが事実だし現に間違えず弾いた時は喜びよりも安堵の表情だった。そんなものを見せられても私は何一つ嬉しくない。

 紗夜ちゃんはギターを『極める』と言った。それすなわち観客を魅了する高みへ上がろうとしている。ならば失敗すら演出に見せる事もまた実力、それがプロフェッショナルと呼ばれる領域。そして喜びを共有できるからこそ人は惹きつけられるのだから。

 

「いるんだよねぇ〜たまにそういう人が。なまじ自信があるから突っ走るけど失敗しちゃって次の失敗を恐れて何もできなくなる、今の紗夜ちゃんはそんな感じ」

「っ……私は失敗を恐れてません、失敗したのなら次に活かす糧になるのですから」

「ありゃりゃ。せっかく遠回しに諭してあげたのにこの子はもう……じゃあハッキリ言ってあげる。紗夜ちゃん、あなたのような人を『器用貧乏』って言うんだよ」

「なにを、言って……自分で言うのはどうかと思いますけど私は勉強も運動も、それこそギターだって他の人よりもできていると自負していますっ! その為の努力を──」

「努力で願いが叶うなら()()はこの世に存在しないよ?」

「なっ?!」

 

 今までの紗夜ちゃんとの会話で最も濃く残った話は妹の愚痴。ある程度は予想できていたけどここまであっさり当たりを引いちゃうとなんだか消化試合みたいで退屈だ。

 でも私のお願いを叶えてくれたし悩みのさわりくらいは肯定してあげようかな、なんだかんだで紗夜ちゃんは放っておけない妹みたいで可愛いし。

 

「紗夜ちゃん、あなたには才能がある。器用貧乏と言ったけど何でも人並みにできるのは才能だよ。大成できないわけじゃない、妹を理由に上ばかり見るのはやめたら? きりがないしさ」

「あなたに何が分かるんですか……いつも後から始めたのに簡単に追い抜かされる人の気持ちが分かるって言うんですか!」

「分かるよぉ〜わかる! もうこれでもかってくらい味わった!」

「……え?」

 

 思えば小学生の頃からその片鱗を見せていたかな。姉妹揃って縄跳びを練習してて私だけがぱぱっと技覚えていって妹は何度も縄に引っ掛かって泣いてたっけ。一週間くらいしてようやく一つだけ技を出来るようになったけどその時にはもう興味がなくなっちゃって。

 適当に声かけていたけど一ヶ月、二ヶ月と月日が流れていくにつれて技のレパートリーが増えて、終いには私が覚えていない技すらもマスターしちゃって……いやぁ~あの頃のやりきった妹の笑顔は可愛かったな〜。

 

「言ったでしょ? 私の妹は天才なの、『努力の天才』。人が三日で出来ることを妹は倍以上練習しないと平均に並べない。その代わりに継続力が異常でさ、これがまた厄介なんだよね〜だからそんな超絶頑張り屋な妹がいたらどうなるか……同じ姉として紗夜ちゃんも分かるでしょ?」

「いつか自分以上に出来るようになっている、ですか?」

「That's right! だけど私は何一つ不満はないよ? ──あ、今こう思ったでしょ? 『私とあなたは違う』って」

「当然ですよ。私の気持ちが理解できないように雫さん、あなたの気持ちも理解できません」

「そうだよね、だからこの話はこれでおしまい。それじゃ! 今度こそ帰るからまた明日ね!」

「え、あちょっとっ──」

 

 このまま話していても平行線のままだし、とりあえず義理は果たした。あとは紗夜ちゃんが何を思うかだけど……他人を気遣うほど私もお人好しじゃないし長居し過ぎたからすぐに家に帰って晩御飯の準備でもしましょうかね。

 そろそろ妹のあーちゃんが練習から帰ってくる頃だろうから仲良く料理するのも悪くない。

 

 ──こうして私の入学式は今日も無事、平穏に終わることができたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 



 誤字脱字がありましたら知らせてくれると直しますのでよろしくです。
 稚拙な文ですが最後まで読んでくださりありがとうございます。

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