お姉ちゃんは下を見ない。   作:果実味

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第二話 お姉ちゃんの妹

 

 

 

 

「話があります」

「そうきたか……」

 

 入学式があった翌日の放課後、帰り支度をしていると隣の席の紗夜ちゃんが真剣な眼差しで話があるときた。

 ひぇ~これ絶対に昨日の続きじゃん! もう面倒なのは確定してるからこの場から立ち去りたいよぉ──あ、そこのクラスメイト! 私も遊びに誘って! 一生のお願いですから! 

 

「あぁ〜昨日の続き、だよね? 悪いんだけどもう冷めちゃったから無しでもいい? あ、またポテト食べに行こうよ! ねっ?」

「ポテトはありませんがお菓子ならここに。差し上げます」

「これほどまでに無駄な気遣いされたの初めてだよ?! ね〜もういいじゃん、あとは紗夜ちゃんが考えるだけだよぉ」

 

 とか何とか言いながら紗夜ちゃんから貰ったポテェイトチップスをムシャムシャと口に頬張りながらこの場から立ち去る手段を模索する。お、この味美味しい……え、ハバネロ? チョイスが微妙──だけど美味しいから良しとしましょう。

 

「雫さんの言う通りあれから家に帰って考えました。ですが今まで妹を避けてきた私がいまさら……」

「うま〜い!」

「危機感があったんです、今まで真似されてきて残ったものがギターしかなくて……そのギターすらも取られてしまったら私にはもう何もなくなってしまう、そんな危機感が」

「ハバネロ味、悪くない。激辛系のお菓子ってこんなにも美味しんだね!」

「それは良かったです……って、人の話聞いてましたかっ?!」

「聞いてた聞いてた〜今度一緒に激辛ラーメン食べに行こ?」

「そうですね──じゃなくて!」

「冗談だよぉ〜ちゃんと聞いてた。つまりギター真似されちゃったらどうしよーって思い詰めてたんでしょ?」

「……そうです。はぁ、本当に雫さんの相手をするのは疲れますね」

 

 完食したお菓子の袋をゴミ箱に入れてから席に戻り、お菓子を貰った事だしちょっと真面目に話そっかな。

 

「いいじゃん、真似されても」

「でもそれじゃあ私は……」

「真似されても紗夜ちゃんの真似は妹ちゃんにできないと思うよ?」

「私の、ですか?」

「そうそう。例えば同じ事ができる二人がいたとして、どっちが凄いと思う?」

「それは比べられないのでは? 同じ事ができるならどちらも凄いということになるはずですから」

「じゃあギターで考えてみよう! もし紗夜ちゃんがメジャーデビューするくらいの売れっ子ギタリストだったとして同じプロ、しかも同じ技量のギタリストと比べたらどちらがより観客を引き込めると思う?」

「それは……難しい質問ですね。同じ技量というのなら半々になるのでしょうか?」

「ぶっぶ〜! 不正解! 大不正解!」

「そこまで強く言わなくても……なら正解は?」

「え? そんなのないよ」

「正解がない……?」

「だって同じ立場で同じ技量なら観客を魅了するのはその人の持つ唯一無二の『自分だけの音』じゃない?」

「──っ!!」

 

 お、これはきっかけを掴めそうな予感がビンビンするよ! 紗夜ちゃんもお目々パチクリさせて驚いてるしこれはあとちょっとでこの拷問から抜け出せそう! 

 

「だからさ、妹ちゃんがギターやったって紗夜ちゃんには関係ないじゃん。技術は努力でなんとでもなるかもしれないけど同じ曲を弾くにしても力を入れるタイミングとかリズムとか、それこそ千差万別でしょ? 自分だけの音、それを見つける事が紗夜ちゃんの目標に繋がると私は思うけどなぁ〜」

「自分だけの……そんなこと考えもしなかったです。また妹に取られてしまうとばかり思い焦って」

「解決しそうかな?」

「はいっ。全てというわけではありませんが一歩踏み出せたように思います」

 

 い〜い笑顔するね紗夜ちゃん! ついでに私もとってもハッピー! こんなシリアス展開好きじゃないしどうせ会話するなら面白おかしい方が人生楽しいもの。

 紗夜ちゃんの人生相談も終りようやく高校生らしい青春ができそうな気がしてきた。いやほんと入学初日からヘビーすぎるぜまったく……

 

「そんじゃ帰ろっか」

「ええ。今日はどこか寄り道するんですか?」

「ん? 真っ直ぐ帰るよ」

「そ、そうですか……」

 

 およ? およよ? なぁ〜んか膨らみのある言い方するね紗夜ちゃん! もしかして遊びに誘ってほしかったとか? どんな狂犬も愛情を与え続けると懐くもんなんだね──まぁ二日しか絡んでないけど。

 

「紗夜ちゃんは? またSPACE行くの?」

「今日はやめておきます。日々の積み重ねは大事ですがたまには息抜きも必要かと」

「あ、それなら商店街に美味しいパン屋さんがあるから寄ってみるといいよ!」

「……雫さんのオススメなら行ってみます」

 

 なんで元気なさそうにしてるのぉ〜! これって『じゃあ一緒に行こっか』って言ったら喜んでくれる流れですか? いやいやまだ出会って二日だし。あの塩対応を見たあとにデレ出されたら逆に怖いわ! む〜言ってみる? うん、試しにかる~くジャブ入れてみよっか。

 

「紗夜ちゃん紗夜ちゃん」

「なんですか?」

「一緒に……行く?」

「──!! あっ……ま、まぁ雫さんが行くのなら私も同行しますよ。ええ、はい」

 

 え……何この可愛い生き物。めっちゃ嬉しそうにしてたのに『あっ』とか言っちゃって真顔になりましたよ? これが本物のツンデレというやつなの? 現実にいたら面倒くさいランキング上位に食い込む(偏見です)あのツンデレってこんなにも破壊力のある可愛さだったんだ! 

 

「な、なんですか人の顔をジロジロ見て」

「紗夜ちゃんって素直じゃないよね〜よしよぉし、頭なでなで〜」

「や、やめてください雫さんっ! 撫でられるような歳でもありませんしそれに……恥ずかしいです」

 

 両手で頭をガードする姿もなんか可愛い。一回でも可愛さを見つけたら仕草一つで可愛く見える──それを恋というのならこの気持ちは間違いなく恋っ! 

 

「何歳になっても私は妹の頭は撫でる予定だよ? それも愛情表現の一つだし。紗夜ちゃんはね、何だか妹みたいで可愛いの! だから構いたくなるしこうやって〜頭なでなでしちゃうのだ〜」

「もっもぅ……強引ですね」

 

 二度目の頭なでなでは許してくれた。なんならちょっと気持ちよさそうにしてない? 私の中の母性が疼いてる……これは終わらない! 

 

「あ、そろそろ行かないとパン屋閉まっちゃう」  

 

 ──そんなことはなかった。

 

 名残惜しそうな顔してるけど行かないと閉まっちゃうから! フォローしたのが無駄になっちゃう。

 そんなわけで紗夜ちゃんの手を握って商店街までの道のりをギターの話をしながら歩いた。

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 そして場所は商店街。

 晩御飯の準備の為に買い物カバン片手に主婦の皆様が沢山いらっしゃる。他にも同じ花咲川女子学園──通称『花女』の生徒や近くの女子校、羽丘女子学園の生徒もちらほら見かける。

 

「そういえば日菜ちゃん、だっけ紗夜ちゃんの妹。その日菜ちゃんは花女じゃないの?」

「羽丘に通ってますよ。私が花咲川にすると言ったら真似されるだろうと思って黙っていました」

「ひゅ~徹底してるね」

「今にして思えば、あの頃の私は少し気が立ちすぎていました」

「え……今もそうじゃない?」

「それはどういう意味ですか雫さん」

「あはは〜なんだろうね〜」

 

 笑顔が怖い。ちょっとした冗談なのにそんな顔しなくても……

 

「とはいえ、雫さんとの会話で少しだけ日菜に対する見方が変わりました。真似されてもいい、私は私だけの一を極める。それで良いのだと」

「随分とあっさり答え出せたね。私はてっきりもっと悩むかと思ってたけど」

「ふふっ難しく思う問題こそ意外と近くに答えはあるものですね、灯台下暗しです」

「ふぅ〜んそういうものかぁ──羨ましいね」

「え?」

「あっ! パン屋さんあったよ。ほら行こ、紗夜ちゃん!」

「は、はい……」

 

 紗夜ちゃんの気持ちが前に向いたのは良い事だ。そして、微弱ながら力になれたのだとしたら私も嬉しい。

 

 ──そう、本当に嬉しい……はずだ。

 

「色々な種類があるんですね」 

「むふふん! どれもオススメできる最高のパンだから間違いはないよ?」

「雫さんが言いますかそれ……しかし本当に美味しそうです。こうなると何を選べばいいか迷ってしまいますね」

 

 ──『でしたらメロンパンはいかがでしょうか?』

 

 私と紗夜ちゃんがパンとにらめっこしていると後ろから声をかけられる。

 そこにいたのは髪を止めるシュシュが印象的なポニーテールの店員さんだった。

 

「さっき出来上がったばかりなので食感も最高だと思いますよ」

「ほぇ~ねね、店員さんイチオシのメロンパン買って二人で半分こしよ?」

「いいですよ。他にも日菜に買っていこうと思うので選んでもいいですか?」

「あ、じゃあ私も家族に買っていこ〜」

 

 五人家族だから出費は多いけど私が芸能界にいた頃の貯蓄があるからそこまで痛手じゃない。むしろそのお金を全部残してくれた両親に感謝してるからお返しはしないとね。

 

「あの、お二人は高等部ですか?」

 

 パンを選んでいるとさっきの店員さんが話しかけてきた。お客さんも他にいないし会話しても迷惑にはならないよね? 

 

「ええそうですが……なぜ?」

 

 ここは切り込み隊長の私がっ……て思ったんだけど一瞬早く紗夜ちゃんが聞いちゃったから黙るしかない。

 

「あ、私は花女の中等部三年の山吹 沙綾っていいます」

「これはご丁寧にどうも。私は高等部一年の氷川 紗夜です」

「──え、あの氷川さんですかっ?!」

「あの……というのがよく分からないのだけど」

「あ、ごめんなさい! その、氷川さんのことが中等部で話題になっていて」

「それはどんな──」

「そりゃアレでしょ、おっかない先輩がい──ぃひゃひぃっ! ふぉふぉひっふぁっふぁひゃやめー!!」

 

 最後まで言わせてもらえずさらに頬を引っ張られる。毎日毎日洗顔をして保湿もしっかり、お手入れを欠かしていない大切なお肌に何てことをっ! 後で絶対にやり返すっ。

 

「で、どんな話題ですか?」

「は、はいっ! その……ギターがとっても上手だって」

「あぁ……そういえばライブのときに結構いるものね、ウチの生徒」

「それで私も話は聞いてたんですけど顔は知らなくて。なので今日会えて光栄です!」

「そんな大袈裟な……」

「まぁまぁ、紗夜ちゃんの演奏はたしかに凄いんだから素直に受け取ったら? ほら握手握手っ」

 

 紗夜ちゃんと沙綾ちゃんの間に来て互いの手を握手させる。この子も私達の後輩になるんだしここで親睦を深めるのも無駄じゃない。

 ……あれ? 私もここには何回か来てるけど何で声かけてくれなかったんだろう。入学式の前の春休み中に気分で花女の制服着てこのお店に何度も来たのに何も言ってくれなかったんだけど……え、もしかして私嫌われてる?! 

 

「ちょっと待った沙綾ちゃん! 何で私がここに来たときに話しかけてくれなかったの?!」

「え……う、ウチはよく花女の生徒も利用してくれるので特定の誰かと話すっていうのはちょっと。それに接客もあるので──」

「でも今日は話しかけたじゃんっ!」

「あはは……それはその、氷川さんの顔は知らなかったですけど特徴とかは教えてもらったので勇気を出して聞いてみたって感じです」

「くっ……紗夜ちゃんに負けたっ」

「いつの間に勝負になっていたんですか」

 

 いや、いいんだよ? 別に話しかけられなくても。でもさ、これでも四日連続とかで来てたのに今日初めて来た紗夜ちゃんが有名だったから声かけられるって……へへっ、凡人には辛い人生だぜ。

 

「あの〜私もしかしてマズイこと言っちゃいました?」 

「気にしなくていいですよ山吹さん。いつものことだから」

「いいもーん! 私、これでも芸能界にいたときはちやほやされてたからもうお腹いっぱいなのー!」

「不貞腐れないでくださいよまったく……ほら、山吹さんの邪魔になりますから早く買って帰りましょう」

 

 紗夜ちゃんに押され買うパンをトレーに乗せてお会計する。その時に『いつも塩パン買ってくれてますよね、ありがとうございます』って沙綾ちゃんが言ってくれた。

 そう、私がこの『やまぶきベーカリー』で一番好きなパンが塩パンだった。一度好きになるととことん追ってしまう性格だから無意識に買ってたけどちゃんと覚えててくれたんだぁ。もう嬉しい、いやうれぴい! 明日中等部に突撃しようかな? 

 

「さっきは不機嫌だったのに急に元気になりましたね、何かありました?」

「えへへ〜内緒! 明日さ、中等部行かない?」

「は? え、なぜ中等部?」

 

 お店から出て質問は無視しして勝手に手を繋ぐ。抵抗されるかと思ったけどすんなり握らせてくれた。

 小学生の低学年くらいの頃はこうやって姉妹で仲良く手を繋いでいたのに……いつからか繋がなくなっちゃったっけ。

 紗夜ちゃんはお友達、だけどこうやって握っていると手を通して優しい温もりと懐かしさを強く感じる。

 

「ねぇ紗夜ちゃん」

「なんですか?」

「お姉ちゃんは……我慢するのがお約束だよね」 

「はい、お約束ですね」

 

 ちょっぴり本音が漏れた。けどいいや、今はこの居心地のいい余韻に浸っていたい。

 

「おねーちゃん?」

「「え?」」

 

 ところがどっこい! そうそう上手くいかないのが人生というもので。

 またしても後ろから声をかけられ二人同時に振り返って見てみるとどこのとな~く紗夜ちゃんに似てるようで似ていなくてでもよく観察してみると似てなくもない羽丘の制服を着た女の子がそこにいた。

 

「ひ、日菜っ?!」

「やっぱりおねーちゃんだぁ! どうして商店街いるの? あ、もしかして買い物? じゃーあたしも一緒に行くー!」

「ちょ、ちょっと日菜! 少し落ち着きなさいっ」

 

 ……私はいったい何を見せられているのだろう。声をかけられたと思ったらすぐに近寄ってきて紗夜ちゃんに猛アピール、しかも質問して自分で終わらせちゃうってなにこの暴走列車。姉妹は変なところで似るというけど氷川姉妹はなんか真逆って感じ。

 

「……? ねぇおねーちゃん、この人だれ? 知り合い?」

「雫さんよ。私のクラスメイトで()()

「「え?」」

 

 今度は妹ちゃんとハモった。そらこれは予想できまへんわ、だってあの紗夜ちゃんがですよ? 私との関係を『友達』ですと?! ふぉぉー! 今日がエイプリルフールじゃなくて良かった〜! 

 

 ──しかし喜ぶのはここまで。

 

 なぜなら私はあまりの異常事態に素で生返事してしまったのだ。これは友達だと思っていた子に他の子には『あ〜あいつは知り合い』と言う現場に遭遇してしまった時ぐらい気まずいやつ。

 ここは紗夜ちゃんがオロオロする前にフォローせねばっ! 

 

「そう私たちは──」

「えぇっ?! おねーちゃん友達いたの?!」

 

 おぉぉいっ! ちょっと黙っててくれませんかね暴走列車! 操縦席どこいったのぉー?! 

 しかもめちゃくちゃ失礼ですねあなた。姉妹だってそんなこと言わないよ? なに、紗夜ちゃんに拒否られて辛辣モードになってるの?  

 

「っ……私に友達がいたらおかしい?」

 

 ほらぁ紗夜ちゃん怒ってる。横目で見てるけど眉間にシワ寄ってるよ……面倒くさい、これはひじょーに面倒くさい展開ですよ。

 

「あ、そうじゃなくて。その〜おねーちゃんいつも話してくれないから学校で一人になってないか心配で……ほら、おねーちゃん厳しいから」

()()()に対して、が正しいわよ。それより日菜、私は雫さんと買い物しているから邪魔しないでもらえる?」

「あぅ……でもでもっ! 久しぶりにおねーちゃんとお外で一緒になったからるんってして、だから……」

「いつもいつもそうやって訳の分からない擬音使って何が言いたいの? 私には全っ然分からないわっ」

 

 おぉ……紗夜ちゃんが感情剥き出しにして怒っていらっしゃる。SPACEでの会話はここまでじゃなかった。怒っているというより困っていると言ったほうが正しいかな、とにかく今の紗夜ちゃんはマズイ。何がマズイってここ商店街、さっきからめっちゃ視線感じるんですけどぉ! 

 

「ま、まぁまぁ二人とも落ち着いて。ほら、他の人も見てるからこの辺にしとこ?」

「……すみません、熱くなりすぎました」

「いいのいいの! 姉妹で喧嘩なんてよくあることだしさ」

「喧嘩ではありませんよ、ただの世間話です」

 

 いやそれは無理があるでしょ紗夜さん。あそこまで激昂しておいて世間話ってあんた、そんなこと言ったら世紀末に突入するよ? 

 

「えーと、日菜ちゃんだよね? ここはお姉ちゃんに従ってもらえる? また喧嘩されると困るし」

「──あなた誰?」

 

 おい、人の話聞いてたのこの子? 危ない、もう少しで紗夜ちゃん以上に私がブチ切れるところだった。並外れた精神力を持つ私でも不意打ちはどうしようもない、堪えたのを褒めてもらいたいレベル。

 

「私のことはどうでもいいから帰ってもらえる?」

「なんであなたの言うこと聞かなくちゃいけないの? あたしはおねーちゃんと話してるんだけど」

「そのお姉ちゃんが情緒不安定だから代わりに私が言ってるの。高校生なら分かるでしょ」

「ちょっと雫さん、情緒不安定ってなんですか。私は普通ですよ」

「紗夜ちゃんはちょっと黙ってなさい! 話がややこしくなるから!」

「……分かりました」

 

 氷川姉妹、恐るべし。一人でも扱い方を間違えたら面倒なのにそれが二人になったら過労死しそうな勢いだよ。

 

「あのおねーちゃんが素直に聞いてる……」

 

 私の必死の言葉に紗夜ちゃんは後ろに下がって不満顔ではあるけど大人しくしてくれている。そして正面の暴走列車は紗夜ちゃんが素直に言うことを聞いたのが珍しいのか驚いている。

 え、紗夜ちゃんもしかして不良娘だった? 昔はヤンキーで今は更生して真面目ちゃんにジョブチェンジしたとかそんなエピソードあるの? なにそれ私も聞きたい。

 

「ねぇ、あなた名前は?」

「ん〜教える理由もないから言わない」

「なんでっ?!」

「なんでって、()()()()()()()に構ってあげるほど私は暇じゃないの」

「んなっ?!」

「そんなに驚くことじゃないでしょ。だってさっき紗夜ちゃんが私の名前呼んでたから自己紹介しなくても分かってたんじゃない? だけど自分には関係ない、興味ないから覚えなくていい……そう思ったんでしょ?」

「そ、それは……」

「それと同じで私もあなたに興味ないから言わないの。分かってくれたかな?」

「うぅ……うぅっ!」

 

 やばっ、ちょっとやりすぎたかな? なんか俯いて唸ってるけど大丈夫? このまま突っ込んできて刺されたりしないよね私? 

 

「あの日菜をここまで追い詰めるって雫さんあなた……」

「いやあの、これはですね……うん、ごめん」

 

 まさか姉の前で他人の私が妹に毒を吐くってそうそうないよね。紗夜ちゃんなんてこの世の終焉みたいな顔してるしこれどうやって終わらせたらいいの? 

 

「っらい……」

「へ?」

「っ──アンタなんてだいっっきらい!!」

 

 はい、最低最悪の酷評をもらって騒ぎは治まりました。

 

 

 

 

 

 

 




  



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