「じゃあ、改めて僕は
「あんたが教師なら世も末だな」
「この状況でそんなこと言えるなんて君って凄い肝が座ってるよね」
勧誘以前にそもそもこの少年は話を聞き入れるのかすら疑問だと五条は思った。70人もの呪術師を相手取り、過半数は殺害しているこの少年が何故、五条が事態の収拾に駆けつけた時に反抗もせずに拘束されたのか...少年には何か別の目的があるのでは無いかと五条は考えた。
「君ってさ人のことを舐めてるの?」
「舐めてるって言うか...そもそも興味が無い」
「だから殺しても問題ないって?生憎だけど君はもう39人もの呪術師を殺害し、生存した人達も今までの生活を送れない状態になっている。この業界は常に人手不足だ、数少ない呪術師を更に減らした君の罪は君が考えている以上に重いよ?」
この言葉は嘘ではない。マイノリティな存在である呪術師は存在が秘匿されている。一部の警察や政治家は存在を知っているがそう多くはない。そもそも、呪霊を感知できる人も少ない上に呪霊が視認出来る人も稀。その中で呪霊を祓うことの出来る人は更に稀だ。
呪霊を視認し、呪術高専などの呪術機関に報告するのが
窓から報告を受けた高専は
窓から報告を受けた補助監督から斡旋された任務をこなすのが呪術師だ。呪術師は呪霊を祓うための術式と呪力を持っている。術式とは言わば特殊能力だ。守りに特化した術式から攻撃に特化した術式、はたまた攻守ともにこなせる万能な術式まで千差万別にある。
呪術に関係する人は意外と多いが呪術師と違っていくらでも変えが効く。人手不足が常の呪術界ではたった一人の呪術師が死亡しただけでも呪術界では大打撃となる。特に治療系の術式を持つ術師は貴重だ。戦闘に特化した呪術師は多いが治療となるとまた話は変わる。自身を治癒出来る術師はいるが他者を治すことの出来る術師はほぼいないのだ。
「常に人手不足だって言うのに俺にじゅじゅつし?ってのを送る余裕はあるんだね」
「良いとこ突くね。今の呪術界は腐ったみかんが大半を占めているんだ。特に上層部なんて呪術界の魔窟だ。術式の相伝と自己保身ばかり考えている老害どもの集まりでね、強力な術式ほど後世に残そうと躍起になってるんだよ。女は子供を産めるのなら死んでもいい、相伝の術式を持っていないと冷遇される...そんなのが当たり前な世界だ」
「男尊女卑ってヤツ?今時でもそんなのってあるんだね」
无月は率直に"くだらない"と思った。いくら強力な術式を持っていようと使いこなせなければ宝の持ち腐れ、術式を相伝させるにしても必ず受け継ぐとは限らない。何度も子を産ませ、挙句体調を崩し死亡してしまえば意味が無い。約40人もの呪術師を殺した无月だが一般常識というものを知ってはいる。
「こんな感じで呪術界って言うのは古い因習に取り憑かれている。僕はこの現状を変えたいと思っている。その為に僕には強く聡い呪術師が必要なんだ。だから君にも協力してほしい」
「...」
无月は迷った。元々、わざと拘束されたのは呪術師の本拠地を突き止め、根絶やしにする為だった。だが、自分の考えていた以上に高専の仕組みは複雑で拘束されていた无月はその全容を全て知ることが出来なかった。
そして、何より五条の発言によって単に高専を破壊しても意味が無いことが分かった。トカゲが尻尾を千切って生き延びるように直接、頭を潰さなければ意味が無いことを知った。五条の言っていた上層部は无月が考えるよりも深く根っこが張られている。茎や葉だけを千切っても何度でも伸びる雑草のように根を取らなければ意味が無い。
「あんたの協力者になったらその上層部を根絶やしに出来るのか?上層部が消えればあの鬱陶しい呪術師が送られることも無くなるのか?」
「あぁ」
「なら決まりだ!あんたの協力者になってやる!やりがいが...面白みがないとすぐに協力関係は破棄だ!」
「任せなさーい!なんせ僕は最強だからね!君を楽しませてあげるよ!ようこそ
无月は伸ばされた五条の手を取った。