■■■の呪術師   作:ノワールキャット

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第六話 初任務

「人払いは済ませております。周囲に人がいないことも確認済みです」

 

「分かりました。帳(とばり)をお願いします」

 

「はい、【闇(やみ)より出て闇(やみ)より黒(くろ)くその穢(けが)れを禊(みそ)ぎ祓(はら)え】」

 

ドーム上に黒い結界が降ろされ、廃ビルを包んでいく。

 

无月は担任である五条から任務を言い渡され、任務に赴いていた。

 

『无月〜、手頃な任務を持って来たから幾つか受けてみなよ。无月はソレ(・・)の制御もある程度出来てるから多少等級が高い任務でも特に問題は無いと思うよ』

 

五条の言っていたことを頭の中で反復し、任務の内容を整理する。

任務内容は廃ビルに巣食う2級呪霊の祓除(ばつじょ)。窓が確認し、そこから調査をした所、複数体の4級、3級の呪霊を確認し、低級の呪霊を取り巻くように2級の呪霊が居るとのこと。

 

「数が曖昧なのが唯一の不安要素か...一箇所に集めて一気に叩けばいいだろう」

 

呪霊の等級、数の確認ミスはよく起きることでもし任務を受けるならば自身の想定より格上の相手だと思って臨んだ方が良いらしい。特に私は秘匿死刑らしいので上層部が意図して危険度の高い任務を寄越してくると忠告してくれた。

 

「来い」

 

─────トプン!

 

无月の影が揺れ、姿を現したのは皮膚が爛れ落ち、骨を剥き出しにした巨大なトカゲ。八重歯以外の歯は歯並びが悪く背中からは背骨が飛び出した醜悪な怪物。

 

「グゥオォオオオ!」

 

「【錬成(アルケミー)】」

 

─────グチャッ!

 

怪物に手を翳し、肉と骨が揺れる。

 

─────バキン!

 

肉と皮で持ち手が作られ、骨で芯が作られる。骨が捏ねくり回され、刀身が作られる。

 

─────【骨刀(こっとう)】

 

トカゲの怪物の肉体から生成されたのは一本の刀。刀身は鋭利の尖り、脊髄骨が浮き出ている。鍔はなく持ち手は肉で構成され、皮の布で巻かれた刀とは到底呼べない矛盾を孕んだ一本の剣。

 

刀を生成するにあたってトカゲの身体は大きく抉られた。抉られた影響により、内臓はずり落ちて大量の血を出していた。トカゲは苦しみに悶えることはなく、欠損した身体はみるみる再生していき、吹き出した血も、ずり落ちた臓物も元のあった位置に戻って行く。

 

「この階の呪霊を殲滅しろ。いくらでも喰え」

 

「グガァァァア!」

 

甲殻に覆われた頭部の間の瞳が残虐、獰猛、憎悪の感情が宿り、牙を見せ、屯する呪霊の群れに襲い掛かった。

 

「私は上を処理するか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンクリートが剥がれ落ち、鉄筋が剥き出しになった壁に配線が垂れ下がっている電球。

 

─────ザシュ!

 

「これで6体目...呪力が充満しているせいで呪霊の気配が分かりづらいな」

 

无月は呪霊を祓いながら廃ビル内を徘徊していた。特に危なげなく呪霊を祓い、呪霊の居場所を探知しにくいと言う問題があるが確実に一体ずつ処理していっている為、特に問題はなかった。

 

「コイツだな」

 

発見したのは扉が壊れた会議室のような部屋。そこで佇んでいたのは口角を上げ、牙を見せている狼のような獣の呪霊。体長は2m強で四足歩行型だ。

 

「2級、いや...1級か?」

 

无月は呪力の質、気配から目の前の呪霊が1級と差し支えない呪霊だと見抜いた。複数の呪霊が居ることは情報通りだが廃ビルの主と言うべき呪霊の等級は2級とされていた。しかし、无月の目の前に居る呪霊は1級と言ってもいい、それほどの圧と呪力が滲み出ていた。

 

(取り巻く低級の呪霊と2級の呪霊と聞いていた。だが、目の前の呪霊は1級に届かなくとも準1級は間違いない...と言うことは上層部絡み。補助監督も恐らくグルだな。私に取り憑いているトカゲは特級と遜色ないが術者本人である私はまだまだ未熟だ)

 

「グルルル...」

 

─────ダッ!

 

「!?」

 

─────ザギン!

 

─────ぶしゅっ!

 

呪霊が突進し、无月の右腕の肉を抉った。

 

(速いな...目ではギリギリ追えるが体が反応出来ない)

 

呪霊の速度はとてつもなく速かった。その速度から来る攻撃は脅威で当たればひとたまりもないだろう。

 

「グオォォォオ!」

 

─────ガキン!

 

呪霊の突進を刀で受け止め、床に手のひらを当てる。ドドドと突起物が生成され、呪霊に襲い掛かるが後方へ飛ぶことで簡単に避ける。それを見て手榴弾を生成すると呪霊に投げ飛ばす。

 

─────ドガン!

 

「呪力を帯びない物理的な攻撃は呪霊には無意味だが...それは、私が生成した物。故に呪力を帯びている、爆弾ならばそれなりに効くだろう」

 

呪霊に呪力を纏った攻撃以外は基本通用しない。その為、ナイフ、銃火器、爆弾なども効きはしない。しかし、呪力さえ纏っていれば(・・・・・・・・・・)木の棒でも祓うことは理論上可能である。術式で生成した手榴弾は本物とは程遠く、足りない部分は无月の呪力で補填している。

 

「グルルル!」

 

(流石にこれで祓えるほど柔ではないか。速度に対応出来ない以上、対応は全て後手に回ることになる。カウンターで仕留めるしかない)

 

「グガァァァア!」

 

呪霊はまた无月へ突進して来る。

 

(何度も攻撃し、呪力を枯渇させるにしてもどれだけの回数を重ねればいいか検討が付かない。こちらは相手の攻撃を食らっても耐えなければいけない)

 

「【八星異形(はっせいいぎょう)の紋章(もんしょう)】」

 

无月の頬に八芒星の星型多角形が刻まれ、内側にウロボロスの入れ墨が刻まれる。

 

「来い、呪霊」

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