『一番星』は『天使』の手を掴んで離さない   作:ネマ

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今話ではミクあんまり出てこないっす。ゴローとアイの会話中心。
感想は偉大だ…執筆意欲を伸ばす鍵だ。もっとくだせぇ。(乞食)


ハロー、ツインスター

 

 

 

突然だが、雨宮吾郎という男は産婦人科医だ。

東北の片田舎の病院の主治医。一日に数名も患者が来るか来ないかというほど平穏な病院の主治医をやっているがそれがゴローにとっては天職だったらしい。

 

何故なら……

 

「うぉぉぉぉおおお!アイー!!ミクー!!」

 

こうして病室のテレビで患者と一緒にペンライトを振ることなんて出来なかっただろうから。

長閑な青空が外では広がっていると言うのに、この部屋だけは暗幕まで下ろされ挙句電気まで消され、そこにはテレビとペンライトの淡い光だけが光っていた…はずだった。

 

「………健康に悪い!!」

 

「「あ゛〜!!?目がぁ…目がぁ……!!」」

 

音もなく影もなく看護師がその部屋に入り凄い勢いで暗幕を開ける。

勿論そんな事をすると外の光が入り、暗いところに慣れていた目が眩む。

それは医者も患者も同じで似たようなアクションと共に騒ぎ出すのだった。

 

 

 

「……それでセンセ。またアイドルですか?」

 

仕事にも一段落付き昼休憩という事で息抜きとして屋上まで黄昏に来た。

空を見上げる吾郎の後ろで看護師が声を掛ける。…先ほどのテレビは何処かのライブみたいだったと。そして吾郎は自他共々認めるアイドルオタクである事も鑑みて看護師はアイドルかどうか聞いた。

 

「ああ。ミクとアイな」

 

「ミク…と言うとあの初音ミク??」

 

アイドルにも興味がないような人でもミクの名前なら知っているか。と吾郎はミクの知名度の高さに感心する。……初音ミク。その人を一言で言うならば“歌姫”。翡翠色のような瞳と青緑色の長髪という特徴的な姿に、そんな第一印象を大幅に塗り替える圧倒的な歌唱力。そしてその上作詞作曲まで出来るという天は彼女に多くの物を授けた。

彼女の事をよく知らなくても、その姿やその音楽は耳にしたり目にする事が多々あるのである。

 

 

看護師の問いに吾郎は深く深く頷く。

アイドルオタクには二種類居ると吾郎は考えている。…それはつまりミク×アイ派かアイ×ミク派の二種類。この二種類は日々論争に明け暮れているのだ。え?ミク単推しとか居ないのかって?……ミクの事を知れば必然とアイのことを知っている。逆も然りの状態でこのカプに脳が焼かれないわけがあるのか。いやない。

 

何を隠そう。このゴローもミク×アイ派の1人である。

暇さえあれば異教徒であるアイ×ミク派と日々論争を繰り広げていたほどの過激派の中での穏便派であった。

 

「つまり…センセはロリコン?」

 

「おい、おい」

 

確かに、単推しはどちらかと言えばミク派である吾郎であるが断じてロリコンの誹りは受け入れられないと声を上げる。美しい物と美しい物が交われば究極に美しいモノが生まれるに決まっている。アイミクのせいで性癖がめちゃくちゃ歪みまくった中高生も多いと聞く。

 

「………まあそれにあの子もそうだったしな」

 

吾郎は良い好敵手だった少女を思い出す。アイが単推しだったあの子を。

ミクの歌で生きたいと思えたと言っていたあの子を。…まあ次第にミクを追っていく内にアイにも詳しくなっていったと不思議な顔をしたのは今でも思い出せる。

 

享年12歳。まだまだこれからだった少女は息を引き取った。

来世にはアイドルの子になりたいだとか突拍子の無いことも言っていた一際…吾郎が目を掛けていた患者だった。

 

「まあそんなんだから重ねてんだろうなぁ……」

 

「とか言って、センセ。そのアイドルたちに男が出来たなら……」

 

「あの2人は夫婦だからセーフ」

 

 

 

 

 

「はーい。お待たせしましたっと」

 

昼休憩を終え、吾郎は診察に来た患者と向き合う。患者は十代後半。完全に訳ありでお腹の大きさから推測するに20週辺りと判断。……初診にしては多少遅いぐらいか。

 

「えーっと…星野さんは初診ですね」

 

「はい。」

 

帽子を深く被っていたその貌が顕になる。

その貌は…その美貌はアイその人だった。

………ん!?アイ?………え゛?アイ……?

 

「と、とりあえず検査してみましょうか」

 

準備しますね〜と吾郎は立ち上がり姿を消す。

アイじゃん……アイドルじゃん……。しかも妊娠じゃん…

と吾郎は脳内で情報が完結しないとついには崩れ落ちた。そうしていると中から声が聞こえてきてしまった。

 

「アイ…どうして何も言わなかったんだ……」

 

「え?ミクが全国ツアー中だったから?」

 

そういえば…真っ先に気がつきそうなミクはと吾郎は考えたが、そうだった。

今、ミクは全国の主要都市での全国ツアー中だ。その人気も相まって数ヶ月にも及ぶと聞いている。言うなら…丁度初期症状(悪阻など)が出た時にはアイは1人だったと言うことになる。

 

ちなみにアイはミクが全国ツアー中は活動停止をしている。何が何でもミクの応援をすると言わんばかりの執念にどちらのファンもアイのミクのガチオタクさに戦慄したのはいい話だ。

 

「待て。一体何の関係がある。」

 

「え?だってこれ最後までミクには秘密にするつもりだったし」

 

私が気がつかなかったら勝手に死のうとしていたミクには良い薬だよ。

そう軽々しく呟くアイだが、それを聞いている斉藤も吾郎も初耳も初耳だ。

特に吾郎なんて崩れ落ちるのをやめて、完全に息を殺して聞く体勢に入ってしまった。勿論、その場で聞いていた斉藤は凄い表情でアイを見ている。

 

「待て待て。ミクの死?……ああ。良い嫌な予感がする」

 

「懸命だね。社長。」

 

もうその時点で嫌な予感を察したのか斉藤は首を横に振る。

どうやら情報量の限界に来てしまったようである。

 

「ちなみに……あえて聞くが父親は?」

 

「?不思議なことを言うね」

 

斉藤さんも知っているはずだけど…とアイは指を頬に当て微笑む。

 

「…………………?まさかミク…とは言わねぇだろうな」

 

「正解。ミクだよ?この子のお父さんは」

 

そう言って愛らしそうに膨らんだお腹を撫でるアイの姿にはどこかもう母性が産まれてきているのだろう。

アホか。と斉藤は苦々しく呟く。てめぇら同性だろうが。と吐き捨てる。

 

「あー…でもミクはお父さんというよりお母さんかもね。」

 

「…………その意味は……?」

 

もう満身創痍なのか全身を脱力させていた斉藤は小さくアイに問う。

そんな斉藤の問いにアイは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせる。

 

「だって…いつも夜は私が上だもの」

 

「そんなもんだと思ったよ!畜生!!」

 

さもありなん。

 

 

 

 

少し時間が経ち。(その間にミクアイ派の永遠の難題が明らかになったが)検査の後、アイのお腹には双子の赤ちゃんが宿っていることが分かった。その後どうするかという話になったが……

 

(………最終決定権は本人にある。)

 

そう言うのは簡単だ。そう吾郎は普段より苦々しいコーヒーを啜る。

だが彼女は、アイは“一番星の生まれ変わり”。“唯一、天使に並び立つ者”として“天使(歌姫)の寵愛を一身に受けるアイドル”という声も高い。

 

はるか昔からそうだが天使の寵愛を裏切った者にまともな末路は与えられない。

……いや。例え天使にその気はなくともこの事実を知れば民衆は彼女を裏切り者だと石を投げるであろうと言うことは想像に難しくない。

 

「…………医者と、してはね」

 

 

いつの間にか吾郎の足は屋上に向かっていた。

絶対なる歌姫。普段の花が綻ぶような笑みと歌っている時のギャップさ。さらにミクに年相応の笑みを浮かばせることが出来るのはアイだけである。

だからミク推しはアイも推す。アイ推しもミクも推す。

 

「あっ。せんせ。」

 

「身体冷やしますよ。星野さん」

 

そう考えているとアイが屋上に姿を表す。どうやらこの夜空に感動している様だ。東京では中々ここまで澄んだ夜空は見られないと無邪気に喜んでいる。

 

「……こんな田舎まで来たのは、東京周辺ではどんな目があるか分からないからか

?」

 

「あれ?私の仕事って知ってたっけ?」

 

「ああ。自分はミクファンクラブ会員No.37291だからな」

 

あーなるほどね。と言わんばかりにポンッと自分の手のひらを拳で叩く。

なら同志なら話は速いと言わんばかりにアイは笑みを浮かべる。

 

「……君は、アイドルを辞めるのか?」

 

「どうして?」

 

そんなアイに吾郎は聞きにくそうに問う。アイドルが妊娠だなんてアイドルを辞める事になるだろうと吾郎は睨んでいる。だというのにアイは不思議そうに首を傾げる。

 

「……だってお腹の子はミクとの子だよ?」

 

2人の家に新しく2人で4人になるならもっと賑やかになるねと未来の展望を疑う事なくアイは口にする。その一片も疑っていないミクとの子という有り得ない現実をあたかも事実の様に口にするアイに背筋に冷たいものが走るが、まあそこまで言い張るならなんとかなるかも知れないと吾郎は考えてしまう。

 

……ミクに目を焼かれたアイドルとファンが集まればあらゆる道理が覆されるという理が生まれた瞬間だった。

 

 

「………分かった。僕が君とミクの子を取り上げよう。」

 

どんな欺瞞も嘘もみっくみくにしてしまうのがミクだというなら。

ミクへの愛の殉教者ファン2人が揃ったのなら嘘ぐらい覆してみせる。

 

 

「うん。よろしくね。せんせ」

 

そんな完全に目が焼かれた吾郎の姿を見てアイはニヒルに笑う。

 

「星野アイっていうアイドルは欲張りなんだよ?」

 

ミクの愛も。ミクとの愛の結晶も。アイドルとしての生き様を。

アイは傲慢にも貪欲にも全部を求める。……そうそれはまるで究極のエゴイスト。

そんなアイの姿に吾郎はふと考えてしまった。

 

もし…ミクに出会う前に君に会っていたら君のファンだっただろうな。と。

 

 

 

 

 

【少し先の未来】

 

「………アイ。アイはせめて安静にしないと……っ!」

 

「ミクったらそんな心配しなくても…大丈夫だよ。もう安定期?には入ってるらしいし」

 

「そうでも……ね?椅子に座って……」

 

「………ね。ミク」

 

「な、何かな?」

 

「ムラムラしてこない?」

 

「………こない!アイの性欲が強いだけ!……お腹に子どもが居るんだから自重しなよ」

 

「えー?…お腹が大きい時もまた格別だろうけどなー?」

 

「絶対嫌!」

 

「そんな授乳プレイしようだなんて考えてないのに〜」

 

「そもそも初乳は赤子にあげるものだよ」

 

「え?……じゃあ授乳プレイは産まれてからかなぁ……」

 

「絶対しないからね」

 

「……うーんじゃあ仕方ない。やりたいことが出来ないから仕方ない」

 

「仕方ないって言いいながら寝室に引き摺り込むなぁ!?」

 

「はいはーい。じゃあ今日は少し乱暴しよっか。」

 

 

 






初音未来(初音ミク)

現在、全国ツアー中。妊娠なんて知らない。
未来では授乳プレイの未来まで定められた。ちなみに乱暴された翌日はマジで足腰が立たなかったらしい。



星野アイ(アイ)

父親はミクです!!(クソデカ声)
未来では授乳プレイ出来なかった腹いせにミクに全身開発計画を始めた。



雨宮吾郎

いずれ未来の……?
ミク推しのミク×アイ派。

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