『一番星』は『天使』の手を掴んで離さない   作:ネマ

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アイとミクとゴロー。またはミクとゴローのファンサ

感想……感想……(完全に乞食)


from A to M

 

 

アイの妊娠がわかった直後。ミクはそのまま事務所に休止の旨を伝えた。

休止の理由?そんなのアイと蜜月を過ごすためだと言ったら認めてくれた。事実、世間一般でのアイの休止の延長はどうやらミクと蜜月を過ごすためだという面白話‥風評が流れている。そこに乗っかった形だとスムーズに行くだろうというのが両事務所の見立てだ。

 

「それでどうすればいいの?」

 

「うーん‥‥?」

 

ミクとしては病院の付き添いや家事ぐらいは自分がアイの分もこなしたら良いと考えているが、アイにとってはミクがずっと一緒にいてくれる。家の事は2人でゆっくりやれば良いと考えている。

 

……………あっ。そうだ。と不安そうにお腹を見てくるミクに何かを思いついたのだった。

 

「後は指輪をくれたら良いよ!」

 

エンゲージリング〜みたいな?と左手の薬指に、右指で作った輪を通す素振りをアイはしてみる。そんなアイにミクは成る程と深く頷く。

 

「分かった。買いに行こうか」

 

「……………えっ」

 

アイにとってエンゲージリングは冗談交じり、笑い話のつもりだった。だというのにそれをミクは本気で受け止めたらしい。既にスマホでそういう系のお店を探している。

 

「うん。こことかどう?」

 

そう遠くないし、服をいい感じに着込んでるようにしたら妊娠だとバレないだろうし。

あ。ならいっその事私も似たような服装にしてペアルックみたいな感じでどう?

 

そう聞くミクの目は真剣だった。本気で、本気でアイと結婚する気であったらしい。アイはそんなミクに自分の思いが決して一方通行のものではない事に破顔する。

 

ああ。やっぱりミクも私と同じ考えだったんだ。

 

これは運命などという言葉でさえ無粋な愛そのもの。ずっと昔からアイとミクは愛し合っていたんだってアイは瞳の中の星が輝く。今までより、いや今までで一番美しい一番星以上の輝きで。

 

「うん!………うんっ!!」

 

 

 

その後。嬉しさのあまりアイはミクを寝室に引きずり込み(意味深)、翌朝一緒に入った朝風呂の直後にはもう指輪を買いに出たという。勿論、結構良いところで選んだ指輪はミクがアイの薬指に嵌め、アイがミクの指に嵌めあったのだった。

 

これは全くの余談であるが、その後2人してSNSに指輪を嵌めた片腕を見せた写真を載っけた事で一時期トレンドがミクとアイの結婚関連で染まり、気ぶりファンたちは大歓声を上げるという事がニュースでも報じられ問題(笑)となった事で斉藤が直々にお叱りの電話を受ける事になるとはまた別の話。

 

 

 

 

「と、言うわけでー!」

 

付き添いはミクでーす。とジャーンという声と共にアイとミクは、アイが通う産婦人科のアイの担当医の前に立つ事になった。…今まで付き添いに来ていた斉藤は運転手としてアイとミクを連れてきた。

 

「はじめまして。Dr.雨宮。会えて光栄です。」

 

完全な私服に特徴的な長髪が上手く隠され、何処にでもいるような少女が果たして吾郎の推しであるミクだったとは誰が思うだろうか。その感動と驚愕は並大抵のものではなかったようで、吾郎はただひたすらに口をパクパクと動かすことしかできない。

 

「……あはは。せんせー。驚いて声も出ないみたい」

 

予想通り…いや予想より驚いた吾郎を前にアイは満面の笑みで笑う。

あの日のせんせの目はミクに目を焼かれたファンの目をしていたと覚えている。

勿論、賄賂というつもりはないがミクと私の子を取り上げてもらうのだ。ミクというアイドルが1人のファンにファンサさせてあげる事ぐらいは許そう。とアイは微笑み、ミクと吾郎の行く末を見守っていた。

 

 

(ヤバいって…ヤバい。マジヤバい。何から何までヤバい……って……)

 

吾郎の脳内は今、そんなことしか考えていない。

何故なら自分の推しが目の前にいるのだ。しかも完全に私服。ライブを全部鑑賞し、ありとあらゆるミクが出ている作品媒体を一度は目に通している吾郎が言うのだ。…つまりミクは完全にオフの状態でアイと共に自分のところに訪ねてきたという事。

 

あ゛…顔よ……肌がすごい潤ってる……み゛顔が良すぎるって……

 

完全に限界オタクになっている吾郎だがそれも止む無し。

昔、彼女が一度だけした握手会でもこういう限界者が続出しミクがファンの手を握っただけでみ゛という声だけ発し、倒れる人が続出したのだから。

 

「はじめまして。初音さん。……あなたのファンです。」

 

「ふふ。ありがとうございます。」

 

あ゛微笑みが自分にだけ向けられているこの感覚。

吾郎はまるで夢の中にいるかのような満足感と幸福感に襲われる。…いつも周囲全て、言うなら“人間全体”に微笑んでいるミク(尚、そんな人外味も天使らしいとファンからは熱狂的だ)が自分を見て微笑んでくれるのだ。これ以上嬉しい事はない。

 

「………アイの事、よろしくお願いしますね」

 

「はい!…必ず。」

 

ミクに頭を下げさせたファンなんて自分ぐらいじゃ無いだろうか。

もはや吾郎は菩薩のような悟った清々しい心意気でミクに頭を下げる。

単に脳内がバグりきって情報が処理できていない訳では無いのだ。多分おそらく。

 

 

 

 

アイの検査を一通り終えた吾郎が心配になってきたのは母体の安全だ。

こうして2人並んで見てみると若干ミクの方が背が高い。それぐらいアイというアイドルは小柄なのだ。……最悪このままだと帝王切開になるだろうと伝えるとアイは自分とミクの子は小顔になるだろうからヨシ!と特に気にも掛けない。

そういう問題なんだろうか。確かにミクとアイは小顔だが。と吾郎は考えるのをやめた。

 

「……はぁ……」

 

特にアイの双子に大きな問題はなく、このまま行くと正期産で産めるだろうというのが吾郎の見立てだ。正直に言うなら複雑極まりない。ミクのファンとして、どうも後ろ足を引かれる感覚にたまに陥る。

 

「………あれ。雨宮先生。」

 

「!?……初音さ、ん」

 

そうしていつものように空を見上げているといつかアイと同じように後ろからミクが吾郎に近づく。隣に立つとミクは空気が綺麗。とポツリ、アイと同じようなことを呟くのだから吾郎は吹き出した。

 

「初音さん。貴方、星野さんと同じ事言ってますよ」

 

「そう。アイと………」

 

吹き出した吾郎をおかしそうにミクは見るのだから笑い混じりでミクに伝える。

ミクはまるでそれを噛み締めるように一度深く瞑った目を開けて吾郎に向き合う。

 

「私は……きっとアイの子どもまで愛せるとは思えない」

 

「…………………それは」

 

いつものような微笑とはかけ離れたミクの憂うような姿に吾郎も声に詰まる。

……言いたい事は理解できる。それはアイの子供であってミクには一切血筋的な関係は無いから。

 

「アイがようやく自分の幸せを見つけられたのはとても嬉しい事だと思う。」

 

今までミクに付き合わせてきたアイがようやく自分の幸福を求めて、それが花開いた事。とても嬉しいとミクは言う。だが、そのミクには嬉しそうではなく、とても憂いにも似た感情が浮かんでいるようだった。

 

「でも星野さんは楽しみにしていそうでしたよ」

 

「…………そう、ね」

 

吾郎の励ましもぬかに釘と言わんばかりにミクの表情は冴えない。

……言うなら、アイとミクはすれ違っているのだ。アイがどうだろうかはミクにとって知りようが無いが、ミク自身はこうしてアイが子を宿したのは嬉しい事だと思う。ただそうなるとアイと赤子の間に……ミク自身があまりにも邪魔だとミクは身勝手ながら考えてしまったのだ。

 

「………あまり好き勝手には言えませんが……」

 

そんなミクの内心をなんとなく察したのか。吾郎も言葉を重ねる。

アイがどれほどミクを愛しているのかよく知っている。何故ならいつも健診に来た時は決まってミクの話しかしないのだから。

今ここで不安になっている推しを励ませる。……ファンとしては最高のシチュエーションだ。

 

「星野さんが初音さんを大好きなのは伝わっていますよ。」

 

というか世論でもようやく、くっついたか…なんて言われてんだ。ここで破局だとか絶対にファンとして許してはならないと吾郎が考えに考えた末の言葉だ。

間違いはない。というか真実みたいなものだ。ミクを語らせたいならアイに聞け逆もまた然り。とはよく言ったものだ。マシンガントークにも並んで劣らないほどアイはずっとミクの話をしている。(それを喜んで聞いている吾郎も吾郎だが)

 

「そっか………うん。ありがとうね。ゴローくん」

 

「!?……い、いえ!こ、光栄ですっ!!」

 

一回深く考えた後にミクの顔から憂いは消えていた。感謝をして去っていくミクの姿に吾郎は名前が呼ばれた!?とそれを飲み込むのに時間がかかった。

まさか推しのアイドルと会えるどころかその推しの名前から名前で呼ばれるなんて…あ゛一生推す…絶対推す……

 

「ああ。それと…これまだ秘密なんだけど。」

 

「?」

 

ミクはすれ違うように屋上から出て行こうとする時ふと後ろを見た。

その時、ミクは独り言のように呟いた。

 

「……全部良い感じに行ったら、私とアイ、2人だけのユニットを作るよ」

 

「!?……………マジか………」

 

 

 

 

 

【その夜の話】

 

「ねえ。アイ」

 

「んー?どしたのー?ミク?」

 

「私、頑張って父親役やるからね」(グッ)

 

「……………………………ふーん。」

 

「あ、あれ??アイさん??」

 

「ねえミク。誰かと2人っきりになった?」

 

「え?……そんな事無いけど……」

 

「そ。……例えば、今日だとせんせ?」

 

「雨宮さんと?……ああ。それなら2人で話したよ?」

 

「何話したの。聞かせて」

 

「んー?ただアイが私を愛してくれてるって」

 

「……………そっかぁ。想定外だなぁ…

 

「?どうしたのアイ?」

 

「……ううん?でもさ。ミク。パパやるなら……」

 

「?」

 

「こんな敏感じゃダメだよね?」

 

「────────────!、!……ア、イ怒って、る?」

 

「ううん……でも少し良い気はしないかなぁ」

 

「にゃ、なんでぇぇぇ………!!」

 

「んー?内緒。でも今日はキツくいくよ?」

 

「」

 

 






初音未来(初音ミク)

この後延々寸止めを食らったせいで次の日の昼までパーになってたらしい


星野アイ(アイ)

鬱憤を晴らすと言わんばかりにミクを寸止めした。
途中から泣きながら縋り付くミクの姿はぶっちゃけめちゃくちゃ犯罪臭がしたとの供述です。
アイにとっては永遠、ミクが隣に居てくれるだけで良い。そんな簡単な事なのだ。



雨宮 吾郎

過剰なファンサで死にかけたファン。
この後、白衣にはミクのサインの色紙が入っていたせいであやうく天に召されるところだった。

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