これはあり得たかもしれないイフ。夢想の絵画。
感想……嬉しい嬉しい……(乞食)
貴方はミクオ。という存在を知っているだろうか。
それは数多ある初音ミクの亜種の1つ。初音ミクの性転換…つまりは初音ミクが男性体だったらどうだろうか?として生み出された存在。
そしてそんなミクオになってしまった少年が1人。
とても数奇な運命を辿るとはまだ誰も知らない事だった。
「みく……みくか?」
転生した。前世のことはぶっちゃけ何一つ覚えてない。どんな奴だったかとか(かろうじて男だったのは何となく分かるが)名前だとか住所だとか仕事だとか、家族だとか覚えていない。…ただ何となく前世の記憶があって、この現象が転生だなって。
2つか3つ年を越え、初めて鏡で自分の全体像を見た時気がついたのだ。
あれ?……自分これ初音ミクじゃね?と。初音ミク…その解説は省くが絶対なる電子の歌姫で、今も尚輝き続ける永遠の歌姫。
と言いたいが、股間には男のブツが付いている。性別上は男だが…外見は初音ミクと。……ああ。そういえば初音ミクの亜種の1つにそう。確か…
「ミクオ……だったけ?」
初音ミクオ。初音ミクの男性verとして存在していた亜種。
前世、ボカロ廃だった自分にとってミクオの存在は知っていたがいざ自分がこうなると感慨深い物がある。
「……じゃあこのせかいにはMEIKO、KAITO、ルカ、リン、レン……」
拙い言葉と指折りで数える。ミクと同じように時代を作った5人がいると言う事になるかもしれないと考える。……もしかしたら自分と同じように性転換した姿で存在しているかもしれないし。なら、話は簡単だ。
「えーっと…まずは発声練習して……!」
自分が初音ミクオだと言うのなら………!それに恥じないように……!!
小学生になる頃。初音ミクの声のキーを少し下げたような声だった自分は問題なくミクの歌を歌えるほどに成長はした。……勿論、その歌に合わせるためのギターだとかには手を出して見ているけど。まあ要成長というべきだろう。
「ねー!ミクー!ミクー?」
ちなみに名前は“未玖”でした。そこはミクオで無いのねと少し落胆したのは内緒。
まあそれは置いといて、小学生生活。というか幼稚園の時からそうだったが音楽にしか興味がない子供が周囲に馴染めるだろうか?……まあご想像の通り友人らしい友人は自分が作った1人以外は出来ず。
「どーしたの?アイ」
そう。紹介しよう。彼女の名前は“星野アイ”。
この少女を見つけられたのはただの偶然だ。連れられた公園の端っこに座っている少女。まるで巨大なダイヤモンドの鉱脈みたいな少女。瞳に小さいけど星を携えた美しいまでの黒髪の少女。壊れる寸前の機械のような蠱惑さが垣間見えた少女。
自分が初めてミクという存在を知った時と同じぐらいの衝撃。
この天賦とも言える才があるのなら、この才ならば自分がもっと初音ミクオという存在に近づけるのでは無いか?という欲望に負けて彼女の手を引いてしまった。
「んー。ミクがまた変な顔してたから?」
そう言ってアイはミクの頬を指でツンツンと指差す。
隣の席から(万年隣だ。マジでなんなんだこれ)顔を覗き込むようにアイはミクにまるで構って欲しげな子犬のようにちょっかいを出す。
家でも、外でも、なんならお風呂やベットでも。アイはこうやってミクの身体にボディタッチを繰り返す。ミクはそれを子犬みたいだな…と見ているが果たして。
「ふーん......あ。そうそうこれ歌ってみて?」
「いーよ。じゃあいくね?」
そうする無言の時間の後。ミクは一枚の楽譜をアイに手渡す。
いつもしている様にアイはノータイムで受け取り歌を歌う。楽譜が読めるように、そして歌い方も全部ミクが調k……教育していたせいで今のアイは下手なアイドル以上に歌唱力を持っている。
la〜la〜!!と声を出すアイにミクは集中するかのように瞳を閉じて聴きに入る。
ただ手慰み程度、アイがミクと同じことをして見たいと言うから軽く教えただけなのにここまでモノにした。正しくアイは天才なんだろうとミクは思う。
人は少しずつ。大人になっていく。
それは“成長”という自然の摂理。
だけど時にそれは────────
─────────人に牙を向く。
「?..................l゛a..................!?」
中学生。ある日突然ミクは出せていたはずの高音が出なくなった。それを意味するのはただ1つ二次成長期。つまり声変わりがミクに襲いかかってきたというのだ。
分かっていた。分かっていた。次第に、次第に掠れて消えゆく様な高音域。自分はあくまで紛い物に過ぎないという事をまじまじと見せつけられている様で。
「がっっ...........く、そが……」
初めて吐く悪態。初音ミクとは思えないほど表情を歪ませて呟いたそれには人間味というにはあまりにも荒々しい感情そのもの。今までの対外の鉄壁と言われた微笑ともアイに見せる親愛の面とも違う、吐き捨てるかのような忌々しいと言わんばかりに吊り上がった表情。
喉を潰した。血反吐を吐きながら歌った。日に日に劣化していく高音帯。
気が狂いそうになる狭間。自分が自分であると保てなくなるようなアイデンティティの崩壊の前に、初音ミク…いや。初音未玖の才能は開花してしまった。
ミクの瞳の中で星が瞬く。その刹那、その星は堕天するかのように奈落に落ちる。
次ミクが瞬きした後にはまるで宇宙の深淵をそのまま宿したかのような暗い星の光がミクの瞳の中で輝いていた。
その後。初音未玖…改め、“初音ミクオ”はアイドルでもシンガーでもなく俳優として活動を始める。その見目麗しい容姿と、人を異様に惹きつけるまでのカリスマ性は彼を齢15歳を満たぬまま“実力派俳優”として一躍時の人となった。
ほぼそれと同時期、芸能界の片隅で星野アイ…改め“アイ”というアイドルが頭角を表し始めたのだった。その見目麗しい美貌。まるで“ミクオ”の様なカリスマ性。そして異常なまでの歌唱力を持った彼女が“歌姫”…“一番星の生まれ変わり”とまで讃えられるまで………
16歳。一躍時の人となったミクとアイは久々に同じ席に座っていた。
誰も彼も知らないだろうがこの2人は幼馴染で昔からの付き合いがあったという事は両事務所の社長レベルの人しか知らないトップシークレットである。
ミクは年齢にそぐわぬ演技と魅力で“氷の貴公子”だとか“銀幕の王”と讃えられ、アイも年齢にそぐわぬ魅力と歌唱力で“歌姫”、“一番星の生まれ変わり”などと讃えられる国民的スターだからこそ小さな火種になる事実は徹底的に葬り去られている。
幼少期、互いが互いにしか興味がなかった事が逆にこうして葬りやすかったのだろう。
そんな2人が、今日ミクの家でパーティをしているだなんて誰が想像出来るだろうか。数品ミクとアイが2人肩を並べて作った料理とアイが持ってきたジュースを片手に乾杯となった。
チーン。と小綺麗なガラスが当たる音を鳴らして2人は乾杯する。
芸能界に多少は揉まれたのか2人とも無粋な真似をすることなく一度飲み物に口をつけて、アイが口を開いた。
「というわけで!」
ほぼ毎日、というより空いている時間は大体いつも通話を繋いでいる2人だがそれでも実際に会いたいという要求はあった。……並び立とうと有名になればなるほど要求から遠ざかっていったのは皮肉な話だ。
「次、共演だったっけ?」
「そう。……確か軽いバラエティの1つ。」
アイの質問に軽々答えるミクは気がついているだろうか?
時代の双璧とも言えるアイとミクが共演するバラエティが簡単なモノでは無いということを。まあそこら辺はアイもあんまり知らないからおあいこかも知れないが。
そうして何気ない雑談へと転じていると時間が経つのは早い。
日暮れだった外は既に真っ暗になり、明日には仕事が待っている2人ももうお開きかなと背を伸ばした所だった。アイが口を開いたのは。
「………ねえ。ミク。」
「?どうしたの?」
「ミクはさ………どうして、私を置いていったの??」
その声色はいつものアイの明るい声ではなく何処か底冷えする様で、それでもなおアイの瞳は嘘偽りを許さないとミクの顔を注視し続ける。そんなアイにミクは特に動揺することもなく一度目を閉じて聞き返す。
「置いていった?」
「……………そっか。覚えはないんだ。」
ミクにとっては馴染みのない言葉だ。置いていったなどとアイから言われる事は。
ただ確かに声変わりで自分の解釈違いを起こした時は少しばかりアイへの対応が辛辣になった時があった気がする。……けどそれ以降は自分は歌の伝手…というより歌から離れたがってたのを気がついた同業人どもの伝手を使い、芸能界という変わった世界にのめり込んだ。
まあその時点で家には帰らなくなったことが多いけど……もしかしてそれか?
そう思いついたミクには目の前でアイがハイライトを完全に消した目でミクを見ているだなんて気がついていなかった様だ。
「ああ……帰らなくなった事?」
「……………………………」
そんな軽々しいミクの一言にアイは小さく頷く。
図星か……という安堵となんでそんな些細な事を……というミクの冷徹さに感情は分かれた。この時、もしミクがアイの心を少しでも測ろうとしたのならきっとこの先の言葉は出なかっただろう。
「んー…
「は?」
それは…つまりミクにとってアイと過ごした時間も。アイと共に笑った記憶も。
アイにとってはかけがえの無い宝石の様な日々の記憶はミクは履いて捨てる程度の存在だったという事、になる。
アイが呆然と見るミクの顔にはまるでそれが当たり前だと言わんばかりの表情についにアイはキレた。
「………………そっか」
「うん。そういえばもうこんな時間……あれ?」
顔を下に背けているアイを前にミクは立ちあがろうと席を立った瞬間。何故かふらつく様な目眩がしてしまい席に座ってしまう。
「どうしたのミク。……もしかしたら疲れが出たのかな?」
そんなミクにアイは心配そうに駆け寄る。特に倒れたという感じではない。
どちらかといえば突然眠気が襲いかかってきたかの様な………
ああ。そういえば飲み物を準備したのはアイでは無かっただろうか。
「……ごめんねミク。」
ミクの身体は男性の同い年というのに結構軽い。
けどそんな動かしていると目的が果たせないし、違和感もないソファーに寝かせる。
「もし、もしミクが少しでも置いていった事を思い出してくれたら良かったのに」
アイにとって、幸せというのは“ミクの隣にいる事”ただそれだけ。ただそんな側から見ればちっぽけな事でよかった。
「ごめんねミク」
もう一度アイはミクへの謝罪をし、ミクの身体に手を伸ばす。程よい感じに筋肉で引き締まっていてどれほど日々鍛錬を積んでいるかよく分かる。
アイの身体も健康的というには魅力的に育ち、肌にシミ1つない様にしてきた。そう全てはこの時のために。……ああでも。本来望んだ姿とは違ってしまうけど。
「愛してる大好きだよ。ミク」
誰も、彼も知らない宴が始まった。
初音未玖(初音ミクオ)
なんの因果か男として生まれたミク。姿はミクオそのまま
最近、双子の父親になった。(無自覚)
星野アイ(アイ)
幼少期のミクとの出会いのせいで完全に脳が焼かれ切ってしまったアイドル。
関係ない話だが、アイが産んだ双子は髪の色が黒をベースに抹茶色にも似た光沢を帯びるかもしれない。
ちなみにこの世界での「推しの子」という物語は、双子の転生者が父親であるミクに母親であるアイの認知と復縁を求めるため芸能界を駆け上がるハートフルコメディになります。
本編終わったらこっち書いて見たくなったかも……