『一番星』は『天使』の手を掴んで離さない   作:ネマ

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後は後日談書いて終わりかな?

文中に出血描写があります。苦手な方は注意してお読みください。


BAD Ending

 

 

「それでは!かんぱーい!」

 

アイとミクは二十歳になった。それでも二十歳とは思えぬほど若々しい姿でありながらその演技も歌唱力も年齢と容姿に見合わぬほど深みに至っていた。

日に日に惹きつける様な魅力が高まっていく2人にはそのまま歌手やアイドルとして置いておくのには惜しいという事で結構節操なく色々端役としても出させて貰っていたりした。

そんな多くの経験によりAngel’s ☆は頂点にて輝く不動のアイドルとなったし、今となっては昔称された“歌姫”や“一番星”という称号の方が名劣りするとまで言われる始末だ。

 

勿論そんな2人にドーム。言わば武道館という本当に一流として認められているライブに出演しないかと何度も何度も熱烈なラブレターを受け取っていたがミクもアイも色々な理由をつけて辞退していたが、今回20歳の節目ということでそのオファーを受けることになった。

 

「すごい飲んでるね。社長」

 

アイの隣でチビチビとお酒を飲んでいた(舐めていた)ミクが一言呟く。

そうだった。とアイはミクの背を自分側に少し倒してあすなろ抱きする形でミクを抱き込む。

ミクはこれまで単独で全国ツアーライブとか年末の歌番組。ミクのための年に一度の舞台で開催される“マジカルミライ”だとか今回の武道館にも負けず劣らず大きなライブの常連どころか主演だ。今更身構える必要なんて無いんだろう。

 

ま。そういうなら私も一緒か。とアイはミクの髪を撫でながら考える。

ミクの付き添い…というかデュエットとして何度もライブをこなしてそしてようやくAngel’s ☆としてもライブをこなして来た。今回はそれの規模が大きくなっただけとアイは認識している。

 

「うーん。確かにね」

 

確かに遠いところまで来てしまったな。という感覚はアイにもある。最初はミクの姿への憧れだった。誰よりも歌を愛し愛され、音楽を愛し愛されていたミクとライブで隣で歌えたら幸せだなぁという意志で斉藤社長の手を取った。

 

きっと、私はミクと会わなかったら愛を知らなかっただろう。世界は嘘ばかりで私も嘘がとびっきりの愛なんだと信じていただろう。

でも今はミクとあったあの日から私の世界にはミクが居た。“歌姫”と呼ばれても“天使”と呼ばれてもミクはずっと私を見てくれていた。

 

「?どうしたの?アイ」

 

過去への想いを馳せるままのアイにミクは振り向き首を傾げる。そんなミクにえも言われぬ感傷が胸の中に満ちる。ミクのその瞳。その眼差し。緑色にも見えるその瞳にはいつも燃え盛る様な炎が渦巻いている。星明かりにも、いやまるで太陽の様な神々しい輝き。

きっとアイは生まれ変わってもミクを見つけるだろう。ミクがどんな姿になろうとも。これが愛という感情ならば…アイはなんて幸福なんだろうとアイはミクに満面の笑みでこう答える。

 

「ミクが大好きだってこと!」

 

 

 

 

あまり遅くならない内に宴会は終わりを迎え解散となった。

一杯ぐらいじゃ酔ったことにもならないミクはただ少し目がトロンとして眠気眼になってアイと共に帰宅する事になった。(勿論、アイは飲んでいない)

 

「ルビーとアクア寝かせて来たよ」

 

「…………ん。お疲れ様」

 

水の入ったグラスを傾けるミクの前にアイも腰を下ろす。

月がよく見えるこのマンションではカーテンを下ろさなければ月明かりが存分に入ってくる。今日の天気は快晴。まるで明日の成功を祝福するかの様に三日月と多くの星々が瞬いているのが見える。

 

「……………………………ね。アイ」

 

一体どれほどの時間を無言の内に過ごしたのだろうか。

この静寂を裂くようにミクが体を乗り出しアイに近づく。そんなミクの眼差しには酔っている感じは全く無く、これはいつものミクが言っているんだと理解した。

 

「どーしたの?ミク」

 

「アイはさ……………」

 

言いにくそうに揺れるミクの瞳。何を言いたいのだろうか、この大事な時にとアイは首を捻る。もうそろそろミクと一緒にお風呂に入って一緒に寝ようと思っていたのに。

 

「今まで、後悔していない?」

 

「…………………………………………後悔?」

 

哀しむように哀れむようにミクの唇に言葉は紡がれる。

アイにとって“後悔”とはなんだ?と考えてしまった。今までの人生に辛かった事がないと言われれば嘘になる。でもその辛さがあったから私はミクと出会えてここまで来たのにその道を今までの思い出をミクの手で苦しみに変えられるのは大分癪だった。

 

「後悔かぁ……」

 

アイはそういえば。と考える。今まで好きだとか大好きだとか好意をミクに言い続けて来たし、夜のお陰でミクの身体について知らない事はない。ああ。でも1つ言ってなかった言葉がある。

 

「ねえ。ミク。」

 

「………何?」

 

アイはミクの頬を撫でる。相変わらずスベスベでモチモチなミクの肌だとアイは感じる。アイは静かにでも今までの感謝を、好意を、愛をありとあらゆるミクに向けての感情を込めて口にする。

 

「愛してるよ。未来」

 

ああ。やっと言えたのだ。この言葉をミクに素直に伝えるのに十数年という月日は長かった。満面の笑みでようやくアイはミクのためにずっとずーっと溜めていた言葉を言えたのだ。

 

「………なぁんだ」

 

そんなアイの様子にミクも微笑む。愛の言葉は口にしなければ届かない。

その意味が理解できるまで随分遅かったけど。そうだった。私の本当に大切なモノは一番星はずっと身直に居たのだ。

 

「私もだよ。アイ」

 

 

ね。アイ。月が綺麗だね

 

 

…………ミクと一緒に見る月はいつでも綺麗だよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………うーん」「………ん。おはよう」

 

今日は武道館ライブ当日。いつものようにアイとルビーを挟んだ大きなベットからアラームが鳴る前に2人はほぼ同時に飛び起き、準備を始める。

ミクの髪はいつものように2人一緒に整え、今日は久々に互いが互いのメイクをしてルビーとアクアも着替え終わり、後は車が来るまで待機となった。

 

「あれ?チャイム?」「少し早い?……見てくるね〜」

 

そうして服に皺を作らない程度にくつろいでいた所で家のチャイムが鳴る。

迎えに来ると知らされている時間にしては少し早い。首を傾げながらも出ないわけにはいかないとアイは素早く立ち上がり玄関に向かう。

その後ろからミクが着いていき(ついでに起きていたアクアも着いて来た)、そして玄関の戸は開かれる。

 

「こちら、初音様のお宅でしょうか?」

 

「ええ……どちら様でしょうか?」

 

そこに立っていたのは若い男性。ニコニコと胡散臭い笑みを浮かべて手には白い花のブーケを持っている。何かの催し物だろうかとアイもミクも無警戒で玄関前に立ってしまう。

 

「………ああ。ようやくだ」

 

「………………??」「…………あの??」

 

小さくとても小さな声でその男はブーケを両手に口籠る。

勿論、アイにはその声が何を言っているか聞こえていないしミクもなんと無く読唇術で微かにわかる程度だ。何かがおかしい。そう2人が思った瞬間だった。

 

「その身で罪を贖え。塵芥」

 

「アイッ!!危ないっ!!」

 

そのブーケの中から白銀に危なげなく光るモノが一瞬見える。ナイフだ。

そう理解した瞬間、そしてあの男のいう塵芥という吐き捨てる言葉と共に強い憎悪。どう考えてもこちらを害しに来ているのは明白。

 

 

(………あ。これ─────────死)

 

 

目の前で振り上げられたナイフが目に入らないほどアイの目は悪く無い。

まるで走馬灯が走るかの様に全ての感覚がスローモーションになりナイフが自分のお腹に刺さろうと振り下ろされているのが分かってもアイの身体能力では何も出来ない。……せめてものと瞳を閉じた瞬間だった。

 

 

 

ズッ

 

 

 

ナイフが肉に刺さる嫌な音が響く。……でもアイの身体にはいつまで経っても痛みはない。むしろ健康なままだ。どういう事だと目を見開いた瞬間だった。

 

「は?……な、なぜあな、た、が??」

 

「ミ、………ミ、ク??」

 

そこにはナイフに刺されたミクの姿があった。

そう。ミクはアイが刺される瞬間、その身1つでアイの前に立ち自らの急所となる腹でナイフを受け止めた。

 

男にとってはこのミクの身代わりは想定外の行動だったらしい。目を大きくまんまると見開いてナイフを地面に落としてしまう。男にとってミクは絶対にアイを庇わないと思っていた。何故ならミクは天使だから人を塵芥を庇うことなどしない筈だったというのに。

 

「違う…違う!違う!!あなたは庇わないはずだ!!」

 

「………ふ、ふ。……ああ、見誤ったな。」

 

現実を認めたく無いと言わんばかりに男は首を振る。その男にとって、ミクとは歌姫であり天使である。そんな至高の存在にアイという不純物が付いているのが納得できなかった。しかもその不純物が妊娠しているというでは無いか。余計ミクの側にいてはならない塵芥である。……でもその男の想像とは違い2人はツインボーカルユニットとして活躍してしまう。歌姫に、天使に並ぶ存在として塵芥が認められるなど許して良いものか。

 

だから今日という特別なライブの日に殺す事にした。

だというのになんだ?現実は。ミクがアイを庇ってしまったのだ。

 

「君はきっと気に食わなかったんだね」

 

「ああ……ああ!そうだ!!何故、何故歌姫とあろうあなたがそんな塵芥などと─────!!!」

 

支離滅裂に騒ぎ立てる男を横目にミクは崩れ落ちそうになる身体を気合いで耐え、今も発狂しそうになる激痛と流れ落ちていく血液にもう自分に残された時間は少ないのだと悟る。

 

「ああ。でも……私は君を愛せない」

 

きっとアイならこんな状態になったとしても彼を愛そうと手を伸ばすのだろう。

けど到底、ミクにはそんな事が出来なかった。それだけの話。

 

「あぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁああ!!???」

 

これは男にとって愛だった。ミクに捧げる不純物アイを殺してミクを絶対なる神さまにする為の愛だと言うのに、その肝心のミクに愛を否定されるということは何を意味するか。つまり自分のやって来た事が無意味になるという事。現実を理解できないと言わんばかりに男は叫び、逃げ出していく

 

 

「ミ、ミク!!きゅ、救急車呼んだから!!」

 

ついに耐えきれなくなったのかミクはその場に崩れ落ちる。

血が止まる感触も無く服は既に真っ赤になっており、アイに整えてもらった髪まで血の色に染まり始めた。ああ。もう本当に時間が無いのだろう

 

「ミク!ミク!……くそっ!大動脈か!?」

 

電話口で騒ぎ立てるアイに、アクアが自分の身体が血で染まるのを気にせずにミクの傷口を圧迫しにかかる。……けどそれでも止まる感じでは無い。これはつまり大きな血管に傷がついてしまったという事。すぐにでも傷口を塞がなければ最悪の展開になると医者だったアクアは死に物狂いで傷口を抑える。

 

「あはは。まさかこうなるなんて…ね」

 

喉の奥に血が滲む様な味がし始める。全くいつの日かの歌い過ぎと同じ様な事が起きるとはと苦笑せざるをえない。……いつかは死を望んだというのに今、こんな形で死が迫り来るとなるとやはり怖いものだ。かみさま。最後に一言ずつだけ待ってください

 

「喋るな!!」

 

「……もういいよ。アクア。アイ。」

 

全体重を掛けてアイは傷口を抑えに掛かっている。アクアはその横で腕の血管を触り血圧を体感で測る。ああでも急速に血液が失われていくミクの腕ではもう体感で測れるほどの血圧は残っていない。

 

そんな2人にミクは静かに微笑み、強い脱力感を訴える身体の体勢をどうにか整えボヤけ霞んでいく目に力を込めて泣き顔で近づいて来たルビー、傷を抑えてくれているアイ。そしてアクアを目だけで見渡し言葉を紡ぐ。

 

「ルビー。」

 

「…ね、ねえ?ミクママ…?ミクママ大丈夫だよね!!?」

 

泣きながらも近づいてくるルビーに愛しさを感じながらミクはルビーに最後の愛を伝える。ルビーは将来アイドルだろうか。私たちみたいになりたいと言ってたし将来はトップアイドルだろうか。

 

幸せになってね?私の死に悲しまないで

 

本当にかみさまは最期の言葉を伝える“だけ”の時間はくれたらしい。

 

「アクア。」

 

「何も………っ!!!……………」

 

アクアは賢い子だ。私の最期の言葉を聞こうと涙を精一杯堪えて私を強く見る。

ああ。アクアの将来を…俳優になるのかな?その未来を見れないのは残念だけど。

 

2人を支えてあげてね?復讐なんて考えないで

 

少しずつ、少しずつだけど削れていく自分。もう歌もリズムも奏で、られないけど

最後、最期、貴女だけにアイだけに聴いてほしい。

 

「アイ。」

 

「いや…!、いやぁ………いやなの……ミク……いや……」

 

涙で顔がぐちゃぐちゃじゃん。お化粧したのに。あ。それなら私もそうか

アイは……どうなんだろう。1人でも続けるのかな?2人の最後に待ち受けるラスボスみたいになってるかもね。

 

愛してる愛してる

 

ああ。やっと言えた。随分遅くなってごめんね。

あー。良かった。この言葉は私だけのモノだ。

 

 

 

ありがとう。そしてさようなら

 

 

 

 






初音未来

1つ。私の死に泣かないでください。みんなが悲しいと私まで悲しくなってきちゃいます。

2つ。復讐や仕返しなんて馬鹿な事考えないでください。そんな事しても私は帰ってきません。

3つ。どうか喧嘩しないでください。もし喧嘩しても最後はごめんなさいで笑ってください。

4つ。私にとってのアイのように運命の人を見つけてください。きっとそれが貴方の目指す星になるでしょう。

………5つ。いつまでもお慕い申し上げます。私の最アイの貴方。


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