『一番星』は『天使』の手を掴んで離さない   作:ネマ

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2人の共通点は“ミクの遺言を裏切る所”です。
どう取り繕っても不義を行なってしまう双子にはもうミクの微笑みは与えられないでしょう。
まあそのミクはもう死んでるんだけど。

今回はアイ編。……ぶっちゃけ自分が想像している以上に地獄になっちゃった……




後日談2

 

 

 

片翼と片目。生命としても不出来な鳥はまるで“運命”と言うかの様に補う片割れと出会い寄り添い空を翔ける。それが“比翼の鳥”。今でも尚仲慎ましい2人に送られる言葉。

 

では。その片割れを無くした比翼は空を飛べるのだろうか?

 

 

『…………ぁ……ぁぁぁぁああああああああぁぁあああああああ!!??』

 

あの日、あの時。警察の前に立ちはだかったアイは気がついていた。

ミクが死んだ事を。ミクが自分を庇ったせいで死んでしまった事に気がついていた。

誰よりもミクを知っているのがアイだ。それはミクの身体の様子も手に取るように分かる。昔から熱が出ているのに無茶をするミクに真っ先に気がついて止めるのはアイの役割だったのだから。

ミクのお腹から命そのものが流れ出ている事も分かっていた。

そしてそれにアイが対処できる事など無いことも分かっていた。

 

 

 

愛してる愛してる

 

 

 

ずっと、ずっと頭の中で鳴り止まないミクの最期の言葉。

私たちが本当に遅くまで言えなかった言葉。好きだとか大好きだとかは言えたのに私は前日に、ミクは死の間際でしか言えなかった。もっともっと言えた筈なのに。

 

『愛してるよ。未来』

 

ここで1つ確かにしなくてはならない事がある。

それはアイは確かに頭があまりよろしくない事は事実である。人の名前はミク以外はあまり覚えてないし勉強でもミクが付きっきりで教えて何とか付いて行けている程度には宜しくない。……だがアイドルという芸能界の魔窟の中でトップアイドルに至れるような人間が馬鹿で居られるだろうか?答えは否だ。アイは第六感とも言える勘が鋭く効くようになっているのだ。

 

そしてそこでアイは気がついてしまう。

もし、あの日。あの時。アイがミクに愛してると言わなければミクはアイを庇わなかったのでは無いかという悪魔的な発想が。勿論、真相は分からない。もし逆にミクが刺されそうならアイは迷わず身代わりになる。でもその逆は?

 

荒唐無稽なアイの考えは悪い方向に止まる事を知らない。

誰がどう聞いても馬鹿馬鹿しいと笑う様なアイの考えは意識を失っているという最中だったのが非常に拙かった。

 

 

『ミクを殺した!ミクを殺した!ミクを殺しちゃった!!』

 

 

…………違うっ!!殺したのはあの男!!

 

 

『でも。あの男はアイを殺しにきたよ??』

 

『ああ!可哀想なミク!!こんなアイが愛してるって言ったせいでこんなアイを庇って死ぬなんて!!』

 

 

………それは。……

 

 

『本当にミクはアイを愛してたの??』

 

 

………………は?

 

 

『ミクを離れて欲しく無いからって無理矢理犯して、大好きだからって子どもをダシに拘束するなんてホントに愛されると思うの??』

 

………………

 

 

『そんな事して愛されるわけ無いよね!!』

 

 

……………あ。……ぁぁ…………ああ

 

 

 

『お前が殺した!お前が殺した!お前が殺した!!』

 

 

 

 

アイが卒倒した中、アイは永遠とも言える時間を自分に責められ続ける悪夢を見る。その悪夢とは見てわかるように自分の心の中にある不安や絶望などのマイナス感情から生まれた自分に「目を逸らしていた最悪の可能性」を言わせ自分の心を圧し折る事だけの悪夢。

そんな悪夢。もし生まれたとしてもミクと隣にいるアイなら問題は無かった。

けどミクを失った事でアイの心は完全に折れてしまう。そしてその上での悪夢。

正直に言うなら状況としては最悪も最悪だ。

 

そして遂に悪夢にさえも耐えきれなくなったアイは目を覚ます。

ただ一言。アイには決して許されない救済の祈りを込めた一言と共に。

 

 

 

『……………………しにたい』

 

 

 

けどアイの悪夢は決してアイの目を逸らす事を許さない。

最初は悪夢だった。極論、寝なければ良いだけの話だ。“安息を貪る事を許さない”そんな軽い罰ならアイは受け入れられた。だけど、悪夢は終わらなかった。

 

数時間も経たぬ内に、アイは幻覚を見ることになる。そう、それはミクの死体の悪夢。決して忘れるなと言わんばかりに何処の部屋でもミクが居るのだ。お腹から血を流し口から血を出しながら倒れているミクが。……それぐらいなら受け入れた。いついかなる時でも忘れるなと言うミクからの呪いだと思えば愛しい物だ。

 

けど。その次が耐えられなかった。常にアイの後ろでミクが恨み言を唱えているのだ。“許さない”、“なんで私が死なないといけなかった”、“お前が死ねば…”。そんな多くの恨み言。ミクがそんな事言うはずが無い。これは幻想。弱い自分が見せる悪夢だとアイ自身気がつくはずだった。

 

そう。悪夢によって歪められたミクの最期の言葉の意味を捻じ曲げてしまうまで。

簡単な事だ。アイは最後の最後にミクの言葉を疑ってしまったただそれだけの話。

 

 

 

「アクア。ルビー。」

 

アイは着替えさせられた喪服で葬儀場に入る。

どうやら今日、亡くなった方は多くの人に愛されていたらしい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どうやら振り返るアクアとルビーの顔を見るに結構2人と仲が良かったらしい。

 

「………これがミクさん??」

 

膝を折り曲げて棺の中を覗き込む。その仏様は緑色の長髪という特徴的な髪色に結構綺麗な人だったらしい。柔らかい笑みで寝ているその人の姿は確かに多くの人がいう“歌姫”というのに相応しい。頭が痛い

 

「……………………………は?」

 

「えっ??……ママ??“ミクさん”って??」

 

一回軽く両手を合わせて合掌しているとその横でアクアとルビーがとても驚いたようにこっちを見ている。どうしたんだろうと首を傾げる。そんな私の様子に2人は顔を見合わせて“あり得ない”と言わんばかりに顔を見合わせている。そんな息の合っている動作も双子らしい可愛さだ。

 

「……………ちょっとトイレ行ってくるね!」

 

「アクア?大丈夫?場所わかる?」

 

うん。大丈夫と言って椅子から跳ね上がり走っていく。その速度は子どもながら見事なものでよほど我慢していたんだなと思いながらアクアが座っていた席に座る。

 

「ね。ママ。ミクマ……ミクさんとどんな関係だった??」

 

「おじさんっ!話があるっ!!」

 

「うーん?ミクさんと?」

 

ミク…ミク…ミク……これほど特徴的な髪と私と同じぐらい。もしくはそれ以上に綺麗な子なんて中々忘れないと思うし私はファンの名前を覚えてなくても顔は大体覚えている。思い返してみるとそう言えば()()()()()()()()()()()

 

「うーん。初めて会うと思うん、だけど………」

 

「どうしたの?アクア」

「ミヤコさん……アイが…アイが…っ!!」

 

「初めっ………うーんそうなのかな?」

 

ここまで考えても出てこないあたり話したこともないんじゃ無いだろうか?

そう考えたら惜しいものだ。もし同じアイドルをしていたら一緒に写っても話題になっただろうに。それにしてもさっきからルビーの様子もおかしい。トイレに行きたいのだろうか?

 

「ま。始まるまでもう少し時間あるみたいだし。」

 

「ミクの事を忘れてるっ!!!」

「…………は?」

「そんな事……あり得るの??」

 

「う、うん。そうだね……」

 

「さっき…さっき……ミクの事をミクさんって……」

「…………あの馬鹿アイドル。何があった?」

 

 

葬式は意外にも早く終わってしまった。…ところどころ意識を失っている辺りもしかして寝ていたのかも?と考えてしまう。それはよろしくない行動だ。とどうにか自制する。

 

 

 

「解離性同一症。……二重人格と見るべきでしょうな」

 

私はなぜかその後。病院に送られた。……しかも病院は“精神科”。失礼な私は病んで無いと言いたかったが凄く心配そうにする佐藤夫妻に逆らう事なんて出来ず。

そこで言われたおじいちゃん先生に言われた私の病名。

 

「………そんなっ!!」

 

「アイさん……貴方ミクという存在を知らないのですね?」

 

横で絶句する佐藤さんのお嫁さんを片目におじいちゃん先生は私に聞く。

それがどうしたのだろう?確かに名前を覚えるのが苦手な私だけどあれほど特徴的な容姿なら忘れないはずだけど。

 

「はい……それがどうしたんですか?」

 

「いえ。大丈夫です。それでは……看護師の指示に従って……」

 

どうやら検査はここで終わりらしい。看護師の指示に従って別室に案内される。

 

 

 

「………先生。それで結果は……」

 

アイが退出して医者と斉藤夫妻のみとなった。

考えればわかる話だった。あれほどミクが好きだと公言してやまないアイがミクを失った時。一体どんな行動に出るかなんて分かりきっていた。一回は自殺未遂ぐらいやらかすと思っていたら直後の話だ。

 

「おそらく………」

 

医者は慎重に切り出す。

解離性同一症とはつまり強いストレスやトラウマなどから自分を守ろうとした結果、一人のなかに二つ以上の別人格が入れ替わり現れるようになり、自己同一性(自分はこういう存在であるという感覚)が損なわれてしまう精神疾患の1つ。【二重人格】と言った方が良いのだろうか。

 

今回のアイの場合。最愛の人が死んでしまった。という所に“自分自身を庇う”更には“目の前で死んでしまう所を見てしまう”。という大人であっても発狂を免れない事態を受けてアイは耐えきれなくなり本能下においてもう一つの人格を生み出した。

 

【ミクを知らないアイ】という別人格を。

 

それでも表情や仕草がミクにそっくりな辺り無意識の内にミクという存在をベースにしている事は確かだが覚えていない。ということがどこまでなのか想像が付かない。

 

「アイさんはアイドルです」

 

勿論、世の中に出回っている写真や動画の中には単独もあるだろうがやはりミクと共に写っている保存媒体の方が多い。それを見た時アイはどうなるのか。元の人格に戻るのか。それともミクを認識できないのか。はたまた今のアイも発狂してしまうのか。

 

「そして状態が良くなるかさえ不確かです。」

 

アイが二重人格なのはすぐに分かった。ミクの葬式の途中まで涙を流す演技をしていたというのにある途中からアイは泣いていた。心からの号泣だった。献花が開始された時点では戻っていたというのに最後アイの順番には泣き崩れ棺の前から動かなくなってしまった程だ。

その変わりようは誰が見てもまるでアイが2人いるような感じで………

 

 

 

 

その後。アイは“悲劇のアイドル”としてソロで再出発していくことになる。

勿論、アイの演技に…“歌姫”の歌唱力と“天使”の美声を完璧にトレースしたようなアイはより一層魅力が増したとしてさらに多くの人をファンにしていく程である。

アイドルだけでなく多くの活動に精力的に打ち込む彼女は“国民的アイドル”ではなく“国民的大スター”としての呼び声が大きくなる。

 

 

 

 

 

「………これなんだっけ?」

 

アイは1人になった家でふとパソコンが目についた。

まるで家に最初からあるように自然に鎮座していたパソコン。塗装の剥げ具合から見てだいぶ使い込まれているようだ。()()()()()()でアイはパソコンの電源を入れる。ロックの番号は64572。……あれ?そういえば何でこんな番号にしたんだろう?もう少し分かりやすくて自分に関係がある番号でも良いはずなのに。そもそもこれって私のパソコンだった?このパソコン、を使っていた人がいたような?それも私と相当仲の良い人が居たはずなのに。頭が痛い

 

「わ。……音楽がいっぱい……!」

 

ノリに乗れそうな音楽から何処かしんみりとするリズムまで多くの音楽が入っている。……ただどれもこれも()は入っていないらしいのは残念だ。歌を…歌詞を付けたらもっと良い音楽になっただろうに。

 

「あれ?動画……?」

 

それも()()()()()()()()()()()()()()()の動画。

……一つ一つ再生していくとどうやら空のライブ会場の動画と私が歌っている動画の2種類がある事に気が付いた。一体誰が何のためにこれを?……いや。そもそもあんな熱気の入った声が入っている空のライブなんて存在するの?そして私の動画もまるでそこにはもう1人居るような─────────頭が痛い

 

「何これ?………ぼーか、ろいど?」

 

そうして漁っていると1つだけ圧縮されているファイルがある事に気がついた。

最終更新日は()()()()()()()()()あたり。当時私は16歳だっただろうか?

 

 

「project:electronic diva。直訳すると電子の歌姫計画。」

 

「その計画は、“◼️◼️◼️◼️”を主体に五つの声。つまり“幼い少女の声”、“幼い少年の声”、“◼️◼️とは違う少女の声”、“大人の女性の声”、“大人の男性の声”を音声合成ソフトとして準備した。」

 

「そしてその計画の要。“◼️◼️◼️◼️”そのものの声を音声ライブラリに保存して“◼️◼️◼️◼️”は“歌姫”から“電子の歌姫”になる。」

 

「………そしてその後。“歌姫”……いや◼️◼️◼️◼️は」

 

「自ら命を絶つ」

 

 

アイの脳内で火花が散るような激しい頭痛に襲われる。

たまにあることなのだ。数秒これが続きその後にはすぐに良くなっている。一回病院に診てもらったけど特に病気とかでは無かったから偏頭痛の一つか何かだろ……あっ。解凍が終わってる。

 

「なになに………??」

 

画面に映ったのは無機質な長方形とその他諸々に型取られた“何か”。基本的にこうしてパソコンをあまり使わないアイにとってこういう専門的っぽいモノを見るのはあまり得意じゃ無い。……けどどうやら一つデモンストレーションのファイルが挟まっていた。ファイル名は“Blessing”という…今までのファイル名の法則から見るに曲名だろうか?

 

「再生っと……!」

 

少女の歌。……そしてそこに合わせられる5つの声。

どれもこれも違う……声?いや違うこれは歌い分けている全員同じ声の歌だ。

初めて聞いた曲…のはず。この軽快なリズムとは裏腹に魂まで揺さぶるような歌詞を私はなぜか知っている気がする。私はこれを覚えている。一体……どういうこと???

 

「…………ぁ?………え?………どうして涙が」

 

サビ。アイは知らず知らずのうちに流れ出る涙を拭うこともせず曲を聴き入る。

“国民的大スター”となったアイには人には言えないデジャヴを抱えているという事を誰にも話せずに居た。朝起きた時も、お昼を1人で食べる時も。夜仕事を終えて帰る時も。深夜寝る時も。必ずアイのそばには誰か居たのだ。アイの隣には確かに温もりがあった筈なのだ。……けど目を覚ますとそこには誰も居なくて、ただポカリとこの胸の中に空いた喪失感だけが“誰か”を示すたった1つの証明。

 

「ああ……わかんないよ……」

 

アイの頬に涙が伝う。手を空に伸ばしても空気を切り裂くだけの掌が、まるで間違っていると言わんばかりにアイにはもう喪失感を抑えることが出来なくなってしまった。まるで赤子のように、赤ちゃんのように泣き叫ぶ。けど…何故かアイはその涙を抑える事も拭う事も出来ない。しない。……居た筈なのだ。この頬を伝う涙を慰めてくれる誰かが居た筈なのだ。

 

 

 

 

メーデー。メーデー。誰か聞こえていますか?

 

メーデー。メーデー。寒いのです。どうしようもなく寒いのです。

 

メーデー。メーデー。貴方は誰だったのでしょうか。

 

メーデー。メーデー。…………私はどうして“ここ”に居るのですか?

 

 

 

 

 







アイ

その正体は別人格アルターエゴ
“星野アイ”が切り離した“アイドルとしてのアイ”が途中からの語り部の正体。
ミクに出会っていないというアイを仮定に作られた人格ゆえに生きてきた二十年のおよそ全ての記憶を喪失している。勿論、そんな状態で双子の父親を覚えているはずもなく……アクアが言っている“狂い果てた”というのはそう言うこと。今のアイはただの残骸に過ぎない。ハリボテの人形はまさに別人格アルターエゴというのに相応しい。
このアイの趣味は天使が描かれた宗教画鑑賞。時間があれば博物館とか美術館にいるらしい。

実は多くのファンを虜にしていくというがそれ以上に増える反転アンチ。
理由はお察しの通り、昔のアイミクを知っているファンや知ってしまったファンがもう休め…休んでくれ……っ!となっているタイプのアンチが多い。
ただまあ大切なものを全部失った少女がそれを聞くかと言うと……まあ察しの通り


原作とは違い生きているおかげでアクアとルビーの手伝いはするかも。
ルビーのB小町を再建するということに一番ワクワクしてるのもこの人。
多少の助言とかでお助けキャラ化する未来が見える。ただ息子が連れてきた彼女らしい子はたまにボヤけて見えなくなるのが悩み。不思議だがその子以外ではこの現象が起きないので放っておいてる。

VOCALOIDは間違いなく発売されると思われる。
想像しているキャッチコピーは“昔日の歌姫を貴方に”。
だけどまあ“原点”に敵う曲が出てもやっぱり“◼️◼️”自身に歌ってほしいと言う声も多くあり……どこかでパソコンに残された音源が世界中を巻き込む大波乱となるまで想像出来る。



星野初音アイ

こっちが本物のアイ。過去という幸せな夢の微睡みの中。

“未来”を失った者がもう二度と目を覚ますことは無いのだから。



どんなミクの曲(ボカロ)がアイやアクア、ルビーの心を折そうですか?
曲名だけでもいいので感想で教えてください。

RE。START??

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