『一番星』は『天使』の手を掴んで離さない   作:ネマ

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『一番星』と『天使』は繋いだ手を離さない









真・happy end 『ふたりはまだ始まっていない』

 

 

 

「………うーん」「………ん。おはよう」

 

今日は武道館ライブ当日。いつものようにアイとルビーを挟んだ大きなベットからアラームが鳴る前に2人はほぼ同時に飛び起き、準備を始める。

ミクの髪はいつものように2人一緒に整え、今日は久々に互いが互いのメイクをしてルビーとアクアも着替え終わり、後は車が来るまで待機となった。

 

 

「あれ?チャイム?」「少し早い?……見てくるね〜」

 

そうして服に皺を作らない程度にくつろいでいた所で家のチャイムが鳴る。

迎えに来ると知らされている時間にしては少し早い。首を傾げながらも出ないわけにはいかないとアイは素早く立ち上がり玄関に向かう。

 

その瞬間、アイは身体がフラつくような強い頭痛が脳裏を走る。

 

 

「その身で罪を贖え。塵芥」

 

脳裏に浮かぶ。脳裏を侵食する。脳裏を犯す。

 

       愛してる愛してる

 

ありもしない悲劇。ありえない可能性。けど必ず起きるこの後の悲劇と惨劇

 

『…………ぁ……ぁぁぁぁああああああああぁぁあああああああ!!??』

 

 

「……………あれ?どうしたの?アイ」

 

後ろからミクが顔を覗き込む。そうだった私が向かった後ぐらいにミクが顔を出すのだ。一瞬フラついたアイにミクが追いつくと言うのは道理だ。

そんなこんなしているともう一度チャイムが鳴る。今のアイにはこのチャイムの音が死者の手招きにしか思えなかった。だけど…そんなアイとは裏腹にミクは玄関のドアに釣られるかのように近づいていく。

 

ミクがドアのハンドルに手を掛けた瞬間だった。

 

 

 

 

「開けちゃダメ!!!」

 

 

 

 

アイの悲鳴にミクの手が止まる。唖然とした顔でミクが後ろを振り向くと、両目から涙を流してミクに手を伸ばしているアイの姿があった。これにはミクもチャイムに応えている場合ではないとすぐさまアイのもとに向かい抱きしめる。

 

「どうしたの?アイ。」

 

「ダメ…ダメ……ダメなの……その扉を開けちゃ。ミクが…ミクが……ミクがぁ……」

 

ミクの胸元で首を振りながら泣くアイの言葉を拾うとどうやらこのチャイムで扉を開けてはならないらしい。泣く勢いから見るにどうやら相当酷い目に遭うらしいとミクはアイの髪を撫でて宥める。

その後ろでアクアとルビーが顔だけ出して見てくるが“よく分からない”と首を一度横にすると双子そろってサムズアップして去っていった。………どういうことやねん

 

((アイ(ママ)とミク(ミクママ)がイチャついてるだけだなヨシ!))

 

 

「それで?……ああもう鼻かんで」

 

そのままアイが落ち着く感じが全く無く、次第に過呼吸のように息が上がり始めるアイにこれはあかんとミクはリビングの椅子まで誘導して背中を軽く叩いて落ち着かせる。鼻水も出てくるだろうとティッシュを渡し、ようやく落ち着いたアイにミクは優しく問う。

 

「……………夢をみたの」

 

小さくゆっくりとアイは語る。それは一瞬の間に見たデジャヴ。

アイを殺そうと襲ってきたのをミクが庇って、そのままミクが死んでしまうという最悪なデジャヴ。そこではアクアがミクの棺の前で復讐に狂ってしまうし、ルビーも途中誰かの遺骨を見て復讐に狂ってしまうという痛ましい未来。その中で肝心なアイは……

 

「私は、“ミクを知らない人格”を生み出して……あぁ……ぁああぁ……」

 

またミクに縋りつき泣き出してしまうアイ。そんなアイにミクは何も言う事もせずアイを強く抱きしめ続ける。私はここに居るよと言わんばかりに。

ミクの中でアイの言っているデジャヴはやけに鮮明だ。信じる信じないかは別として“もし私が殺されたのなら”という可能性だけを鑑みれば理解できる。……何故ならきっと逆だったら自分もそう言うことになるだろうから。とミクは鼻から息を吐き、アイを慰め続ける。

 

 

 

「おーいアイドル共ー!時間だぞー?」

 

そうしていると玄関が開きそこから斉藤夫妻が現れた。

リビングまで顔を見せる2人はミクに抱きついて完全にコアラになっているアイを見て驚いた後二人で顔を見合わせた挙げ句頷いてアクアとルビーを回収しに行った。

 

「……すみません。ミヤコさん。不審者が来たかも知れません」

 

「…………………!?ホント!?」

 

どうにか双子を抱えた2人にミクが小さくミヤコに声を掛ける。内容が内容であるためにそれは即座に社長に伝えられて、このマンションの警備員に電話となった。

 

「ミクゥ…………」

 

「はいはい。アイも泣き止んで」

 

愚図るアイにミクは落ち着かせるように髪を撫でて頭を撫でて抱きしめる。

今日は一応節目の武道館ライブである。まだ時間があるとはいえ最終調整だとか待っている中であまり時間は無いとしてアイを抱っこしたまま立ち上がる。

またコイツらいちゃついてるよ…という4人の視線は無視して。

 

 

 

 

 

車に揺られて武道館に向かう。その途中でマンションにナイフを持った不審者が現れて、そのまま現行犯だったとして逮捕。という知らせを聞いた。どうやらその不審者はアイをナイフで刺そうとしていたらしくあのチャイムに開けていたらもしかして…と聞き肝が冷えたミクがいた。アイに助けられたね。とミクがアイを抱きしめると嬉しそうに嬉しそうに微笑みそして一言……

 

「本番30分前です。Angel’s☆さんは準備お願いします」

 

いい感じの空気になった所で外から声がかかる。

ああ。そうだった私たちは今、武道館ライブ前の最後の調整をしていたんだとふと我に帰る。……まあ最後の調整といってもいつも通りやれば良い。隣には最愛のアイが/ミクがいるのだから何の心配もない。

 

 

身も、心も軽い。もはや恐れるものなど何もない

 

 

コツコツ…と軽快でありながら響くような足音を奏でて2人は肩を並べて歩く。

2人の表情は似たように微笑んでいるがその口角は上がり、その瞳の中では畝る炎が渦巻いていた。

 

 

ここまで遠かった/ここまで長かった

 

 

ついに舞台裏にまで辿り着いた2人。監督が、プロデューサーが、音響が、照明が。裏手全ての人間がアイとミクのカリスマとも言える暴虐で目を奪う。

ライブ開始数分前だというのにまるでライブ真っ只中に居るような熱意が沸々と湧lき上がってくるのを感じる。……ああ。これが、この2人こそが絶対的なアイドルなのだと言葉では無く魂で心で理解するほど強い極光。

 

 

「ね。アイ」

 

「……どうしたの?ミク」

 

 

小さく、とても小さくミクがアイに声を掛ける。

ミクから発せられるオーラは全ての人を魅了するかのような極光でありながら全ての人を拒絶する神聖さとなりミクのカリスマとなる。

そんなミクにアイは身も心も囚われそうになる……がどうにか耐える。だってここで屈服してはミクの独壇場になってしまう。それはあまりにもつまらない。

 

 

「今日ばかりは主役。貰うよ」

 

「!!……へぇ……」

 

 

そのオーラが一段と強くアイにぶつかる。そうだ。これを待っていたんだ。とアイは武者震いを走らせながらも歓喜の笑みを浮かべる。ミクはこの時、アイというアイドルを脅威だと。“歌姫”…そして“天使”の座を揺るがす同格だと認めたという事。

 

そんなミクにアイも負けじとオーラを滾らせる。ようやくだ。ようやくアイはミクに追いつく…そして追い越せる所まで届いたという事。そんな最高の機会に最高の舞台で挑めるだなんて私はなんと幸福だろうと全てに感謝してアイは目を見開く。

 

 

 

アイの瞳に一番星を超える輝きが宿った

 

 

ミクの瞳に全てを焼き尽くすような炎が宿った

 

 

 

 

ブザーが鳴り、カーテンコールが始まる。

この日。新たな伝説が初声を上げる。

 

 

 

ねえ。ミク  ねえ。アイ

 

 

歌い、踊り、その全てで魅了する2人には言葉も視線もなくミクアイの考えが、想いが、五感の全てがまるで自分のように分かる。…今私たちは2人で1つの存在だ。

 

 

あの日、星が輝いた 夢を見た。夢を見た。

 

 

もはや無我の境地。ゾーンというのにも生温い極点に至った2人にはもう気にするものは互いの存在だけ。ミクアイが限界を越えればミクアイも限界を超越する。

 

 

私の憧れ。私の全て 頂点を識った。さらにその先を識った。

 

 

ミクアイが片割れの歌を喰らい始めるとミクアイもまた片割れの歌を喰らう。それはまるで自分の尾を噛む蛇のようで陰陽魚のように互いを高めていく。

 

 

遠くの空の天使を追いかけて その真横で追従する星を見た

 

 

天上天下。唯我独尊。

天上の座には2人も坐る必要はない。たった一つ至高のイチがあればいい。

そんな戯言さえも気にならないほど──────今はただただこの世界が心地良い。

 

 

私の最高に輝く一番星!! 私の最高に輝ける一番星!!

 

 

ラストスパート。観客席では倒れている人がいる。舞台裏では倒れている人がいる。それがどうしたの??今私は、貴方は立っているこの舞台を終わったせたくない。時よ止まれ。ミクアイは誰よりも美しい───────!!!

 

 

「ね。アイ」

 

歌を終え、余韻が続く中。ふとミクがアイに声をかける。マイクがまだ入っているのに、多くの人が聴いているのに。いつものミクならそんな歌の余韻を妨げるようなことはしないはずだ。だというのに彼女は────────

 

 

 

「愛してる」

 

 

 

その一言と共にミクはアイにキスをする。褥の中でなく、本気のミクの愛しているというアイへの言葉。アイが待っていた。【アイ】が失ったはずの言葉。その意味を理解した瞬間。アイはミクに飛び込むように抱きつく。

 

 

その日。武道館では遠く離れたビルも揺らすような大歓声が巻き上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

【十数年後】

 

 

「アクアー。ルビー。起きなさーい」

 

伝説的な武道館ライブを終えて十数年という月日が経った。

その間にミクとアクアとルビーの転生した事がアイにバレたり、アイとミクのアイの巣…もとい小さな一軒家を買ったり、ミクが個人用に使っていた“電子の歌姫・初音ミク”が音楽会社の強いオファーを受けてVOCALOIDの形を受けて発売。そしてヒットもヒット。大ヒットを起こし社会現象の一つになり“ボカロ”という音楽ジャンルは日に日に進化していっていたりしている中で。

 

ミクは()()()()()()()()を抱えながら今も尚、眠りにつくお寝坊さん3人を起こしに掛かる。アクアとルビーももう高校生だというのに同じ部屋なのは如何なものかと思いながらアクアの布団を揺らす。アイは最後まで中々起きないから放置。

 

「んー…おはよー……ミクママ」

 

「おはよう。ルビー。そろそろアクアの布団に潜るの止めようね」

 

ルビーの布団は盛り上がっているがミクの耳は騙されない。

アクアの布団の中で丁度2人分の寝息が聞こえてくるので真っ直ぐアクアを起こしに来たのだ。その中にはアクアの双子の妹のルビーが先に起きてきていた。

 

「……………………………ずー」

 

「アクアも起きる。狸寝入り気づいているんだからね」

 

「ずー………へいへい。おはようミク姉」

 

簡単にわかるアクアの狸寝入りにミクは小さくわかりやすいようにため息をついて起こしに掛かる。………アクアの名誉のために言っておくがアクアはこう見えて“若手実力派最大手の俳優”である。その狸寝入りを最も容易く見破るミクの実力が高すぎるだけなのだ。

 

「それで後はママ?」

 

「そう……ルビーはアクアの前で着替えるのを止める!」

 

恥じらい持て!と注意する先にはルビーが下着姿になって着替えている姿だった。まだ目の前に兄であるアクアが居るというのに。確かに私たちも互いのパーソナルスペースなんて零だがそんな間に育てられた子なのだ。ルビーもそうなってくると育て方に問題があったのかとふと考えてしまう。アクアはキチンとパーソナルスペースがあるというのに(この家で唯一の異性と言ってしまえばアレだが。)

 

「………もっと言ってくれミク姉」

 

まだ朝だと言うのに酷く疲れた様に呟くアクアにミクは一瞬哀れみを込めた眼差しを向けるがそんな事で時間を割いていられない。アイが待っている。

 

「遅くならない程度に降りてきなさいね」

 

「はーい」「へーい」

 

そのまま部屋を出てもう一つの部屋に入る。

こっちは私たちの寝室。つまりはアイが寝ている部屋だ。

 

「アイ。アイ。起きて」

 

「ん〜……おはようのキス」

 

馬鹿なこと言ってないという気分半分、別にキスぐらいなら良いかが半分。まあキスするんですけど。そう考えながらミクはアイに口付けする。ディープな奴は昨晩いっぱいしたからバードな奴を。

 

「おはよう。アイ」

 

「………おはよう。ミク」

 

そこには()()()()()()()()()()()()()()()()を抱えたアイがベットから身体を起こしていた。そう。察しが良いなら気がつくと思うが2人は妊娠していた。互いが互いの子を。

 

 

 

「朝ごはんできてるよ」

 

多くの悲しいことや多くの衝突もあったけど

 

「ありがとう……ねえミク」

 

でもそれ以上に多くの喜びが笑みがあった

 

「愛してるよ。ミク」

 

「私も愛してるよ。アイ」

 

そうやって、これからも─────────

 

 

 

 







初音アイ、初音ミク

例の公開大告白の後にアイは芸名を“初音アイ”に変えた。
公式的にはまだ籍を入れることが出来ないがミクの両親からも結婚は認められており事実上の結婚はしているような物。勿論結婚式も挙げている。最初、ミクがタキシードでアイがウエディングドレス。お色直しで逆転して両方とも着た。

結婚式が上がってからは更に名乗りの口上を「初音ミクの妻にして夫!初音アイでーす」と言うようになった。この世の春。そして勿論ミクも「初音アイの妻にして夫。初音ミクです。」と言うようになったとか何とか。

お腹が大きいと言うのは勿論そのまま妊娠しているということ。
互いが互いの子を孕んでいると言うのはそのままの通り、精子ドナーから譲ってもらった精子でミクの受精卵をアイの子宮に、アイの受精卵をミクの子宮で育ててるから。勿論この提案者はアイ。満面の笑みだったらしい。
ちなみに子どもを産んでも色気は増したぐらいで特に美貌やプロポーションに変化はなかったらしい。二十代の容姿で40歳とかになってる2人に多くの人が驚愕したのは将来の話。


─────────わたしたちがあいをうたうのならそのすべてはこのかたちだ

だれもがしるこのものがたりまだゆめはつづいていく───────────





初音 愛久愛海(星野アクア)

前世もバレて、そして復讐だとか報復だとか物騒な事にならず、国民的大スターの2人に育てられたのがここのアクア。医者になっても良かったがここまで仕込まれてるしいっそ行けるとこまで行くかぁ!よろしくなぁ!!と芸能界に乗り込んだら“若手実力派最大手の俳優”になった。宇宙猫案件。

最近の悩みは妹と妹のアイドルメンバー有馬かな最近よく共演する女優黒川あかねからケダモノじみた視線を送られる事。

おそらく数年後には3人の妻ができている男である。




初音 瑠美衣(星野ルビー)

前世バレの時にアクアが前世医者。という所でもしかして…と来て数年間に及ぶ執念によりアクア=前世の初恋の人という所まで暴き、アクアに言質も取らせた。執念の子。

アイの後を継ぎ、“B小町”を1から始めるというとてもバイタリティ溢れる子。
最近ではそれも軌道に乗り始めていずれ第一線から遠のいたアイとミクを引っ張り出して正面からバトルを挑もうとする。……そしてその舞台は武道館でという所まで見た。

元気な身体&初恋の人が近くにいるおかげで滅茶苦茶テンション爆上がり。
だけどアクアが意外とモテるせいで他にも“ガチ”でアクアを狙っているとある2人と契約を交わしている。………そろそろ狩るか♦︎
ちなみにアイミク公認。急募:倫理観


おそらく数年後にはお腹を大きくしたルビーの姿が見れるだろう。







完結っ!完結!!およそ三週間みなさまお付き合い下さりありがとうございました。
それではまた何処かで。

RE。START??

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