『一番星』は『天使』の手を掴んで離さない   作:ネマ

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感想をくれぇ……(感想乞食の断末魔)



初音ミクの消失

 

 

 

その日は、意外と簡単に訪れてしまった。

アイも、なんだったらミクでさえ想定していなかったその日。

なんでもない日になるはずだったその日は、アイにとって過去最悪の日になってしまうのだった。

 

 

その日はミクもアイもオフの日だった。

アイドルとして数年経った2人は順調に名前は売れていきミクは“歌姫”、“天使の生まれ変わり”(後者はミクはあまり認めていないが)などと二つ名付きで賞賛される国民的アイドルに。アイも“一番星の生まれ変わり”などと国民的アイドルとして讃えられるようになった。

 

日々を忙しく過ごす2人だが今日は事務所から渡されたオフという事で同棲(親の許可を貰ってシェアハウスをした)になった2人は思うがままにゆっくりとしていた。

遅くまで作業していたミクはリビングの方でゆっくりとこの前のライブの復習しながらストレッチをしていた。

 

『ミクー?パソコン借りていーい?』

 

そんなミクにアイは隣でミクとじゃれようかと考えたがそういえばと何かを思い出したようにミクの昔から使っているパソコンに向かう。ミクのパソコンは専ら音楽の作成用…つまり仕事用だ。

 

『んー?…いーよ』

 

基本的にミクのパソコンは誰にも触れられないように細心の注意を払っている。

だがアイは例外だと何回か貸している。勿論触ってほしくないファイル類は触るな!とだとか注意や鍵を掛けている。

 

(この前のデュエットの曲は何処だっけなー…)

 

手慣れた手つきでアイはミクのパソコンのロックを外す。

淡い光と共にアイの瞳に映る質素なデスクトップと乱雑に置かれたままのファイル達。曲の名前だろうか、カタカナばかりのファイルや漢字だらけのファイル。

 

(ああ。懐かしいなぁ)

 

これでもない。あれでもないと探していると懐かしい曲の原本がたびたび見つかる。ミクが“歌姫”となるキッカケの“メルト”。アイドルとしてのデビュー曲の“みっくみくにしてあげる”と。路上シンガーとしての一曲目の“ハジメテノオト”と“tell your world”。………次々と出てくるミクの楽曲にアイは1つずつ開いてはミクが歌っていた姿が鮮明に浮かんでくる。

 

(うーん。全然探すのが進まないぞー?)

 

まあその理由なんて明白だとアイは苦笑する。

ミクの曲は膨大だ。ミクのその頭からどんなリズムが浮かんでいるのかと言うほど曲調も疎でまさしく彼女こそ天才だとバッハ、ベートーヴェンに並ぶ天才だと讃える声も少なくない。

 

勿論、そんな1つ開いては次のファイルを開いてをしているとアイの脳内に簡単にミクの曲が流れてしまう。そんなことをしていると目的の曲なんて見つかりはしない。探す半分、楽しむ半分となってしまったアイは、やらかしたと思いながらもその手を休める事はしない。

 

「……………………あっ」

 

「………?どうしたの?アイ?」

 

そしていると途中開いたファイルが溜まってしまったのを見て閉じていると間違えてログアウトボタンを押してしまった。基本的にミクのパソコンはログアウトまでせずにある程度放置していたら待機状態に移行するようにしている。

 

勿論アイもその状態でしか見た事なかったから初めてやらかした事にアイは驚きの声を上げる。勿論そんな気の抜ける声にミクがリビングでヨガのポーズをしている(勿論めちゃくちゃエロい byアイ)ミクが声を掛けてくる。

 

「んー。なんでもなーい」

 

開き直せばいいかと処理が終わるのを待っていた。すると数分後にはいつもの画面に戻っているはずがアイの目にはもう1つアカウントがある事に気がついた。

 

(?…なんだろ。これ)

 

無名のアカウント。名前さえ書かずに置かれたアカウント。

これはミクのパソコンだからミク…と私しか使う人はいないはずとアイは面白半分で開いたのだった。そう。決して悪気は無かったのだ。

 

(あ〜やっぱり鍵が掛かってるかぁ……)

 

と言う事は本格的にミクがこれに関わっているとアイは目を輝かせる。

中に入っているのはミクの趣味だろうか?それとも日記だろうか。

まず手始めに0831。0309。3939。うーん、じゃあこれかな?

 

(あ、空いちゃった………)

 

64572。初音ミクを日本語キーパッドで打った時。その場所とリンクさせたモノ。意外と簡単に開く仕掛けにアイは苦笑せざるを得なかった。……まあただ空いてしまったものは仕方ない。とアイは欲望に逆らえなかった。

 

(リン…レン…MEIKO…ルカ…KAITO)

 

あるのは6つのファイルと一つの文書ファイルだけ。

そのファイルには“ミクが常日頃語る誰かの名前”が記載されている。

そして恐る恐る開いた文書ファイル。そこに記入されていたモノとは。

 

 

 

(“electronic diva”、計画)

 

 

 

 

 

 

(はぁ…今日も忙しかったぁ……)

 

アイがパソコンを借りた数日後。いつものようにアイドルとして、今日は雑誌の表紙の写真撮影の日で一日中駆り出されていたようなモノだった。

アイも自分のグループの方で活動があったようで(それでもミクより帰宅は早かったらしいけど)今日は2人とも忙しかった日だ。

 

「ただいまー」

 

今や2人は国民的アイドル。その身に付くパパラッチやストーカーなど常人の比でもない。2人で住むからまだ安全上はマシだとは言いたいがそれでも女子供に違いはない。だからこそ、“中々高度なセキュリティで守られたマンション”に住んでいるが…

 

「…………………おかえり」

 

その日。家にはライト1つも付いていなかった。

奥からアイの声は聞こえるのに何故かリビングの照明も付けていないようだ。

それにいつもならミクが帰ってきた時には新婚よろしくアイが迎えにきていたのに今日はどうやら迎えがないようだ。……何かに集中しているのかな?とミクはリビングの扉を開ける。

 

「project:electronic diva。直訳すると電子の歌姫計画。」

 

扉を背にアイは椅子に座っている。真っ暗の家の中、ミクのパソコンのブルーライトがアイのバックライトになり照らしている。アイの声は何処か平坦で抑揚も付いていないその声は何処か背筋に恐怖を走らせる。

 

「その計画は、“初音ミク”を主体に五つの声。つまり“幼い少女の声鏡音リン”、“幼い少年の声鏡音レン”、“ミクとは違う少女の声巡音ルカ”、“大人の女性の声MEIKO”、“大人の男性の声KAITO”を音声合成ソフトとして準備した。」

 

「………………………」

 

文章を読んでいるかのようなアイの声にミクは何も言えない。

何故ならその文章を、その計画を主導しているのは他ならぬミクだから。

 

「そしてその計画の要。“初音ミク”そのものの声を音声ライブラリに保存して“初音ミク”は“歌姫”から“電子の歌姫”になる。」

 

そのソフトは歌を歌わせる専用の(所謂DTMと呼ばれる物)音声合成ソフト…ミクの文には“VOCALOID”の名前で計画は進んでいった。

 

まるで幽鬼もかくやと言わんばかりのおどろおどろしさでアイはミクの前に立つ。

そんなアイにミクは何を思っているのかいつもの笑みでアイの続きを待つ。そうミクにとってここまでの計画は前座も前座。ミクの計画の真骨頂はここからだ。

 

「………そしてその後。“歌姫”……いや初音ミクは」

 

アイにとって認めたくない未来図。でもこれを本気でミクが考えている計画ならば。

 

()()()()()()

 

そう。その計画とは正しく“電子の歌姫”。

“初音ミク”以下…6つの音声合成ソフトの発売とほぼ同時に初音ミクは自らの命を絶つ。……そして歌姫という存在はソフトだけに残り、そしてそれらを使う人々の手を使った“電子の歌姫”になる。

 

なんとも悍ましい。自らの命でさえ勘定に入れた計画。

それが初音ミクの考案した“電子の歌姫”計画。

 

「………正解。よく見つけ出したね。それ」

 

もう取り繕う事も無意味だと悟ったのかミクはそこまで探したアイに拍手を送る。

そんなミクのおざなりな拍手にアイはこの計画が本気である事を悟った。

 

「ねえ。どうして?」

 

アイはミクを壁ドンする形で迫る。

今のアイの胸の中には怒りと嘆きと…そして悲しみだけが詰まっていた。

どうして。どうして何も言ってくれなかったの?どうして相談してくれなかったの?どうしてそんな方法を考えてしまったの?どうして私に……

とても皮肉な事にそれら感情は全てミクへの愛の裏返しなのだから。

 

「別に、アイが悪いってわけじゃないよ」

 

そんなアイの内心を悟ったのかミクはため息混じりに呟く。

この計画は自分が初音ミクと自我を得た時から考えていたモノだと。

 

「そっか……そっか」

 

じゃあこれは思いつきじゃ無かったんだ。

嘘つき。嘘つき。嘘つき。愛してるのに、こんなに私はミクを…貴方を愛しているのに。

 

アイの瞳の星が反転する。黒く、黒く何処までも黒くなによりも黒く反転する。

ああ。そうだ。これこそが、これこそが愛。希望よりも熱く、絶望よりも深い感情の極地。

 

「じゃあ。ミクはこれを失うと、計画がおじゃんになっちゃうね?」

 

「…………!それ、は……」

 

アイは最高の笑みでミクに問いかける。

今ここでアイがパソコンを壊したらミクは全部の計画がおじゃんになってしまう。

どうせミクの事だ。この計画はバレないだろうと思い、他に保存なんてしていない。

 

「アイ……分かってるよね?私は…」

 

「ああ。そんなの今はどうでもいいの」

 

ミクの命乞いとも取れる発言をアイはどうでもいいと吐き捨てる。

力関係は逆転した。今やミクがアイに媚びなくてはならない事。それをようやくミクは理解した。

 

「私はさ。ミクに生きてほしい。でもミクは死にたい」

 

「…………ちょっ!アイ?……アイ?そっちは寝し…!!」

 

万力のような力でアイはミクを引きづり寝室へと…ベットにミクを押し倒す。

 

「……ミク、暴れないでね」

 

ミクの服を剥ぎ取る。下着はもれなく、めんどくさくなったからほぼほぼ破り捨てる。

 

「えっ?…えっ!?……ちょっアイ?!?」

 

ミクの慌てるような声が聞こえる。ああ。でも今更だけど。

 

「暴れてもいいよ?噛んでもいいよ?強く噛んで良いよミク……まあいただきます」

 

ミクが死にたいって言うなら、私がどれほどミクに生きてほしいか。どれほどミクを愛しているのか教えてあげる。勿論、その身体でね?

 

 

 

 

 








『残念だったね。ミクは私に堕ちたよ』

『…………!?…………!!』

『君にとっては最悪だね。ミクを“神”と崇める君には…ね』

『!──────────!、!!』

『そんな焦んないでよ。一つ良い提案を持ってきたんだからさ』

『─???─────────』

『そ。良い提案。貴方の血を引いた子をミクが育てる、なんてどう?』

『────────────………?────』

『あーまあ堕としたって言っても……君だって神様にはしたくても“天使”にはしたくないでしょ?』

『────────────────────────』

『…………契約成立だね。後々はまた後で』





『これでよし……後はタイミングを見計らって…かな』

『ああ。悪いことしちゃったね。ミク。でもミクが悪いんだよ?』

『……………ごめんね』




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