イカれた幼馴染を紹介するぜ!! 作:俺の両手は幼馴染
俺は幼馴染キャラが大好きだ。
幼馴染キャラの何処か大好きかというと、幼馴染キャラが幼馴染キャラたる全ての要素が大好きだ。つまり、幼馴染キャラが大大大好きだ。
特に、他のヒロインには無いお互いを理解し合った深い信頼関係が素晴らしい。
ドキマギして会話が拗れる事は無く、言いたい事を言い合う。したい事があれば気軽にやって、何でもないような顔でガチ恋距離を維持し続ける。
見ていて全くもどかしくなく、それでいて安心感がある。
あと、まるで我が家のように家に押しかけてくるのも良い。それを見て呆れる事も無くさも当然のように受け入れる主人公キャラも良い。
恋という簡単な言葉では言い表わせられないようなあの関係、実に尊きものかな。
しかし、ここ最近の幼馴染キャラは弱いと聞く。
どうしてだ。何故幼馴染キャラを弱体化させたのだ。あれほど心温まる関係は無いと言うのに、どうして。
どうしてポっと出の奴が優位に立っているのだ。十年近く熟成された恋心が、どうして採れたての恋心に負けているのだ。
熟成されすぎて腐ってしまったのか?赤い糸で結ばれた縁は、いつの間にか腐れ縁となってしまったのか?
俺には分からない。
何故なら、俺の人生に幼馴染ヒロインなんていなかったからだ。
幼馴染とは、それだけ弱いものなのだろうか。
否、そんな筈は無い。
誰かが証明せねばならない。
幼馴染は最強だと。
ポッと出の奴なんかに敗れぬ存在であると。
だから俺は、来世では幼馴染と結ばれようと思う。
◇◇◇
俺は辺境の村に住む、一般的な夫婦の下に転生した。
性別は前世と同じ男。名をイリベ・ルザードという。
父親のザルバと母親のリリスの間に生まれた長男にして第一子。
父母共に美形でスタイルもとても良いので俺の将来が楽しみだ。とりあえず、顔を見た瞬間悲鳴をあげられる、なんて事にはならなそうである。
まずは第一関門突破。
さて、困ったやることがない。
なんせ、俺は今赤ん坊である。
将来的にはムキムキマッチョになりたいが、今の段階で筋トレしても身体を壊すだけだ。それに、今は筋力が少なすぎて身体が全く動かせないし、下手に動いて頭を打ってポックリ逝ったなんて事になったら目も当てられない。
故に動けぬ。動かなすぎもあれなので定期的に必死に手足をジタバタさせているが、それ以外にまるでやることがない。
ここは全く知らない言語を扱う場所なのでそれを覚えようにも、どうしてか分からないが俺はこの言葉が分かるようだ。
全く知らない言葉なのにまるで母国語のようにスッと頭に意味が浮かんでくる。奇妙な感覚だ。
まだ舌っ足らずでろくに言葉を喋れないが、この国の言葉を結構流暢に話せる気がする。そんな確信がある。
なんせ、まだこの両親から聞いたこともない言葉、例えば『幼馴染』をどう発音するのかが分かるのだ。
俺は英語も出来なくは無いので、生まれて早々俺はトリリンガルになったらしい。
そんなわけで、俺は言葉を覚える必要がない。
余談だが、この村には生け贄の文化があるらしい。
ワンチャン自分が土着神に捧げられるのかとビクビクしていたが、後に話を聞くと村から離れた祭壇に村一番の娘を神に捧げるらしい。
おっかない話だ。
まぁ、とりあえず自分が対象になることは無さそうで一安心。
そんなこんなで幾年かの時が経ち、俺は前世で言うところの小1ぐらいになっていた。
この村に鏡は無いので水面の自分を見た感想だが、俺の容姿からは既にイケメンオーラが漂っていた。
両親がイケメンと美女だからだろう。いやはや、良い遺伝子をありがとうございます。パパ、ママ。
これぐらいの年になると自由に外出が出来るようになる。
つまり、ついに俺の『幼馴染結婚計画』を本格的に始動できるということだ。
俺はずっとこの時を待っていた。念願とは正にこのことをいうのだろう。
俺の心は人知れず浮足立っていた。
赤ん坊という約30cm程度の肉の牢獄に囚われている間、俺は幼馴染とどうやって結ばれるのかを考えていた。
当然だが、幼馴染と仲良くなるのは必須だ。
険悪な関係で結婚なんて出来る訳がないし、俺もしたくない。
抱き合うくらいどうってこと無いくらいには仲良くなっておきたい。
だがしかし、ここで幼馴染キャラの種族特性が壁となる。
それはお互いがお互いを親しみ合い過ぎて恋心を抱き難いという点だ。
『幼』馴染と言うように、幼い頃からの付き合いは友人や親友といった関係性を超越し、ほぼ『家族』のような関係を築ける力を持っている。
ここで言う『家族』とは夫婦では無く兄妹に近い。一体誰が兄妹愛を夫婦愛に変えられるものか。
俺は『幼馴染と結婚する』という目的を持って生きているので問題無いが、相手はどうだろう?
幼馴染に告白した時によくある返答、君の事を異性として見れない、が聞けてしまう可能性がある。
そんなこと、あってはならない。
俺は考えた。
親しくあり、それでいて恋心を抱いてくれる余地がある幼馴染キャラを作るにはどうすればいいのか。
シワの無いプリップリな脳をフル稼働させて必死に考えた。
そして俺はある一つの答えに辿り着いた。
幼馴染になる女の子の性格や環境次第で変わるのでは、と。
では、どんな子を幼馴染にするべきか。
ただ仲良くなるだけでは駄目だ。将来結ばれたいと思う程の感情を向けてもらわなければならない。
そしてそう思って貰うためには、俺自身の行動もあるだろうが、ライバルの居ない唯一の存在として居続けなければならない。
つまり、孤独な子。ボッチと仲良くなるのが良いだろう。
名付けて『幼馴染の世界に俺だけが居よう大作戦』。
標的にするならば、そう、例えば、あそこで一人遊びしている女の子とか。
歳は俺と同じくらい。橙色の髪をしていて一見明るそうな子だが、一人で膝を折り曲げて指先を地面に走らせているあの姿はまさに孤独。
理由は恐らくだが、彼女の外見的特徴のせいだろう。
フワッとした尻尾にぴょこっと動く大きな耳。犬の獣人って奴だろう。正直可愛い。
しかし子供は自分とは大きく違うものを嫌うもの。ぱっと見ても完全無視の体勢が出来ている。
友達もライバルも居ないと見た。アタックチャンスだ。
もしかしたら、ただの一人好きの可能性もあるが、それでもしつこく関わり続ければ悪くない関係は築けるはず。
そう内心でほくそ笑みながら、俺は彼女に声をかけた。
かけてしまった。
それが、一生後悔するような最悪の選択だったとは知らずに。
俺の呼びかけに答えるように少女は顔を上げた。
俺はその顔を、目を見てゾッとした。
その目には一切の光がなく、心臓にナイフを突きつけられるかのような殺意を放っていた。
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