イカれた幼馴染を紹介するぜ!!   作:俺の両手は幼馴染

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本日は3話投稿で、これは1話目です。
ご注意ください。


後始末

 

 「こ、これは一体…!?」

 

 家に閉じこもっていたらしい村長が顔を出したかと思えば、家の前の光景を目の当たりにして驚愕の声を出した。

 その隣でエリスも一瞬驚いた顔をしていたが、すぐに笑みを浮かべ、俺たちの方へ歩いてきた。

 

 「考え直してくれたんですね。ありがとうございます…!」

 

 「いや、考え直したというか、こうするしかなかったというか…」

 

 「む、イリくん。私の知らないところでその女と何か約束したの?」

 

 「い、いや、違うんだよロニィ――!」

 

 「寂しくなるって言ったのに…」

 

 「――…ごめん」

 

 「私、お礼を言うタイミング間違えましたかね?」

 

 そう言って、エリスは返答を待つこと無く俺達から離れていった。

 しかし、それとすれ違うように村長が俺達のもとに駆け寄ってきた。駆け寄るといっても、彼は老体なので速いわけではないが。

 

 「イリベくん!君がやったんだな!?何故こんなことをした!?」

 

 「……エリスさんが望んだことです。詳しいことは彼女に聞いてください」

 

 「なっ!?…エリス!どういうことだ!」

 

 エリスはすでに離れていたので、村長はまた駆けることになった。

 その姿を見送っていると、ロニセラが不機嫌に聞いて来た。

 

 「で、あいつとどんな約束したの?」

 

 「約束はしてない。ただ、エリスからこの村の住人を皆殺しにしてくれと言われた」

 

 「……」

 

 「あの時は断ったけど、うるさいあいつらを見てると彼女の提案に乗るのも悪くない気がして…」

 

 「私のせい…てこと?」

 

 「まさか!…むしろ気づかせてくれたよ。俺はこのままじゃダメなんだって」

 

 ロニセラが負い目を感じる必要はない。

 確かにきっかけにはなったが、結局こうすることを選んだのは俺自身だ。

 今回の一件で、俺の考えがいかにおかしいかを知れた。

 よくよく考えればおかしな話だ。

 違う国どころか違う世界線の常識で生きるなど場違いすぎる。郷に入っては郷に従え、という言葉もあるというのに、俺は一体何を渋っていたのだろうか。

 

 「さてと…」

 

 俺は殺人を犯した。

 

 冒険者は自由な立場にある職業だが、しっかり法には裁かれる。もしこの事が露見すれば俺たちの首が飛ぶことは間違いないだろう。

 幸い、ここは辺境の村。素人の俺でも十分証拠隠滅が出来る規模だ。

 目撃者を減らし、それを魔物がやったと言ってしまえば、もう証拠隠滅は完了したと言って良いだろう。

 

 そんなわけで、一先ず、村長とその奥さん、そしてエリスを除く村人を始末することにした。

 完璧に証拠隠滅をしたいのなら彼女らも対象だろうが、言動的に俺らを言いふらすことはしなさそうなので生かすことにした。

 エリスの両親は大丈夫なのかと聞いてみたが、随分前に亡くなっていたらしい。

 両親といえば、ロニセラの両親も、生贄の日に行方不明になったそうだ。相変わらずロニセラの目が泳いでたけど。

 俺は彼女の両親に会うためにこの村に来ていたのに、肝心の人物が行方不明とは。

 俺は一体何のためにこの村に来たのだろうか。

 まぁ、自分の生き方を決められたのでそれを収穫としよう。

 

 「■■■」

 

 呪文と同時に、1人の男が燃え上がる。

 

 これで最後だ。

 最初は一度魔物にしなければ出来なかったのに、何度も繰り返しているうちに面倒になってきてしまい、やがて人のままで殺るようになった。人は慣れる生き物と言うが、こんなにもあっさりと順応するものなのだろうか?

 もしかしたら、前世の■■を捨てて、精神性がイリベに傾いたのが関係しているのかもしれない。まぁ、正確には■■の倫理観を捨てただけで性癖は健在だ。純度100%のイリベになったわけではない。

 

 「終わったよ」

 

 背後から声がかかる。

 どうやら、別れて行動していたロニセラが戻ってきたようだ。彼女の方を見てみると、その手には狼型の魔物の牙が握られていた。

 あれは魔物を討伐したことを知らせる証明部位。あれがあれば、魔物によって村人が惨殺されたという話に信ぴょう性が増す。

 

 何て考えていると、ロニセラが俺の顔をジッと見てくることに気づいた。

 

 「え、何?俺の顔になんかついてる?」 

 

 「イリくん。なんか、いつもより凛々しくなったね」

 

 「…そう?」

 

 「うん。なんだか、迷いがなくなったみたい。かっこいいよ」

 

 「…ありがとう」

 

 ロニセラに褒められて、顔が赤くなるのを感じる。

 散々悩まされた分かれ道も、いざ進む道を決めてしまえば迷いはなくなる。ロニセラが喜べる道に進めたのなら、こちらとしても自分の選択に自信が持てるというものだ。

 

 

 

 「エリスから話は聞かせてもらった…。そうか、君は我々を助けてくれたのか…。すまない、君にあんなことを言ってしまって」

 

 村長は俺に深々と頭を下げた。

 俺としては別に気にしていない。むしろ、自分の孫と奥さん以外の知人すべてを殺された身でありながら全くそのことを気にしていない村長の心情の方が心配というか、恐ろしいというか。

 自分の家族が生き残れるのならなんだってするタイプなのだろう。ロニセラもそれの犠牲になりかけた。

 そのことを思い出すと怒りがふつふつと湧いてきた。こいつもヤっておいた良い気がしてくる。

 しかし、もう黒魔術を発動するための血のストックがない。それに、謝罪してくる人を無慈悲に殺せるほど俺は情を捨てることは出来なかった。

 

 「そのことは別に気にしてませんよ。ただ、別件であなたを憎んでいるのでこれ以上話しかけてこないでください」

 

 「は、はい。わかりました」

 

 

 そんなこんなで、俺たちはリャシャジャ村を後にした。

 村長たちを連れて行ったので、帰りは行きより人数が多かったが、会話は圧倒的に少なくなった。

 村長は気まずそうにして口を開かず、その奥さんも同様。エリスはロニセラに威嚇されて会話どころではない。俺も彼女らに話題があるわけでもないので、居心地は最悪だった。

 強いて良かったことを上げるのなら、最近ずっと曇り空だった空模様が、ようやっと良くなってきたことだろうか。

 だんだんと雲が空を占める割合が減っていき、アルハァナに着く頃には完全に晴れた。

 

 門番の人にお金を支払い、彼らにエリスらの事情を説明する。

 魔物が出たという依頼を見て村に行ったが、時すでに遅く村人は全滅。生き残っていたのは彼女らだけだったと、そんな嘘の事情だ。

 門番は特に疑う様子はなく、すんなりと俺の話を信じた。と言うより、辺境の村がどうなったとかどうでもいいのだろう。

 エリス達は難民として、一旦この街の保護下に入ることになった。なにやら説明やらなんやらがあるそうなので、俺たちはここで別れることになった。

 

 冒険者協会の受付に証明部位を渡し、依頼を完了させる。

 村の安否は特に説明しなかった。一応、依頼先の安否を説明する義務があるらしいが、サリーナ曰く、そんな律儀なことをする奴は殆どいないらしい。

 さらに、律儀に話したとしても何か変わるわけでも何かしてくれるわけでもないらしいので、俺は先人たちに則って何も話さないことにした。

 

 「お疲れさまでした!!」

 

 そんな受付の労いの声を背に俺たちは冒険者協会を出た。

 そして、特に何かすることがないので、サリーナ、いや、ゼイルスの家に戻ることにした。思えば、あそこに帰るのはおよそ一週間ぶりである。

 

 家。そうだ、家だ。

 そろそろ、ロニセラとの結婚に向けて、将来どこに住むのか決めてもいいかもしれない。

 金はそれなり貯まってはいるが、一軒家を買うには足りないだろう。しかしそれも時間の問題だ。数年後か、10数年後か。いつかは貯まる。まぁ、待ちきれなかったら最悪借家でも良い。なんにせよ、我らが将来のスウィートホームを見つけるのだ。

 しかし、この街の不動産屋がどこにあるか分からない。

 まぁ、サリーナとかなら知っているだろう。

 

 現在は夜。

 街はまだまだ静まり返ったわけではないが、昼間に比べて人通りは随分と少なくなっている。

 それでも、大きな音を出せば殺気を駄々洩れにして隣人が押し掛けてくるだろう。

 家に着き、迷惑のないよう扉を静かに開ける。

 

 すると、まるで俺たちが帰ってくる時刻が分かっていたように、玄関のすぐそこにサリーナが立っていた。

 驚きで体が止まった俺を見て、彼女は何でもないような表情で言った。

 

 「おかえり」

 

 「た、ただいま」

 

 

 

 

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