イカれた幼馴染を紹介するぜ!!   作:俺の両手は幼馴染

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勝利

 

 ヤバい。

 何がヤバいって小1ぐらいの女の子がする目じゃない。

 あれは連続殺人鬼の目だ。

 足が震える。危うく走馬灯が見えかけた、前世の。

 まるで人を人として見ていないような、生物をただの肉塊としか見ていないような、そんな非人道的な目だ。

 

 何故彼女がそんな目をしているのか、それは分からないが、話しかけてしまった手前このまま回れ右をするわけにはいかない。

 何せ、彼女の一人遊びを邪魔してしまったのだ。このまま何も話さないでいると、機嫌を損ねて原型が分からなくなるまでボコボコにされるかもしれない。

 

 「きょ、今日は良い天気ですね」

 

 「うん」

 

 「晴れは好きですか?」

 

 「あまり」

 

 「あはは、そうッスよね」

 

 会話下手か俺は。

 

 いや待てよ。結構話しが通じてるぞ。

 てっきり問答無用で首筋を噛み切ってくるかと思っていたが、ひょっとしたら冷たい目をしているだけの悲しきモンスター枠かもしれない。

 小さな女の子に抱く感情じゃないが、それぐらい彼女の目は不気味なのだ。瞳孔が十字架の形してるのが特に。

 

 「何を描いてるんですか?」

 

 「ひと」

 

 彼女の言う通り、土に描かれている絵は人そのものだ。

 おかしな点を1つ言うならば、人が二人いて見覚えのある体位で重なっていることぐらいだらうか。

 俺の心が汚れているせいか、その体位はコオノトリを呼ぶ儀式に見える。

 この幼さでそれを知っているとは、彼女の両親は詰めが甘いらしい。

 

 「どっちがママなのですか?」

 

 「したがママ」

 

 「じゃあ上は?」

 

 「パパ」

 

 「いつ見たの?」

 

 「きのう」

  

 ふむ。昨日初めて見たばかりにしては精巧に描かれている。

 この子、さては結構じっくり見たな?将来はどスケベと見たね。

 俺も前世がある関係上赤ん坊の頃からどスケベだし、これはもしかしたら相性抜群なのかもしれない。

 

 そう思い、結構ディープな下の話をしてみると聞き入ってくれた。もちろん、小さな子供でも分かるようなるべく言葉を噛み砕いて教えた。

 そして、そうして話している内に、彼女の事について少しずつ分かってきた。

 

 彼女の名前はロニセラ。

 身長体重は不明。ただ、俺より少し小さい。

 食べ物の好き嫌いはしないが、強いて言うなら肉が好きで、大食らい。

 俺が睨んだ通り友達は居ない。彼女曰く、一応話しかけには来るそうだが、どうしてか、皆自分の顔を見ると一目散に去っていくらしい。

 一応家庭環境を聞いてみたが、聞く限り良好な親子関係を築けているそうだ。

 

 今のところ俺の彼女に対する印象は、怖い目をしているだけの下好きな少女だ。

 普通に話せるし、鉄仮面でもない。

 初っ端から当たりを引いたのかもしれない。そう思ってしまうほどに良い子だった。

 

 そんな彼女と親交を深める為、取り敢えずかけっこをする事にした。

 そのまま話し込むのも良いのだが、子供と手っ取り早く仲良くなるのならこれが一番良いだろう。

 それに彼女は獣人だ。お喋りより体を動かした方が楽しいだろう。偏見だけど。

 

 「いいよ!」

 

 誘ってみると笑顔で了承された。見ると、彼女の尻尾はそこそこのスピードで揺れていた。

 

 

 「あははは!遅いね!」

 

 「ゼェ…ゼェ……そっちが速すぎるんだよ……」

 

 ロニセラは速かった。

 それはもう、俺とは比べ物にならない速さで野を駆けれた。

 しかも、かれこれ小一時間は走り続けてるのに全く疲れた様子がなく、息も絶え絶えな俺を見て笑っている。

 身体の性能が段違いだ。正直、追い付ける気がしない。

 獣人と人間の差ってやつだろうか。それともただ単に俺が体力不足なだけなのだろうか。何にせよ、まさかここまで差があるとは思わなかった。

 

 「ね、もっと走ろ?よるになるまで走ろ?」

 

 「いやぁ、キツイって…っ」

 

 

 …。

 

 

 そんなこんなで日が暮れてお別れの時間になった。

 最早足は言うことを聞かず、膝は大笑いしている。呼吸器系は悲鳴を上げ、心臓は未だにギアを上げようと奮闘しており、心音が鳴る度に体の節々が痛む。

 喉はカラッカラで、胃袋は空腹の絶叫を上げた。

 

 ツライ。死にそう。

 

 そんな俺の思いを知らず、まだ走りたかった、ロニセラはそう思っているのか、少しばかり残念そうな顔をしていた。

 体力が無尽蔵過ぎる。子供の体力は底無しというが、そこに獣人補正が入って最凶に見える。

 かけっこを提案するんじゃなかった、と今更ながら後悔した。

 

 ロニセラを娶る為には、こんな事を毎日しなければならないのか。

 一日付き合うだけでこれ程の疲労を感じて、俺の身は持つのだろうか。

 彼女から離れることが頭を過るが、すぐに打ち消す。こちらから親交を求めておいて、ツラいから止めるとは男が廃る。

 

 「ゼェ…ゼェ…っ…ゲホッ……ふぅ…じゃあ、またね」

 

 故に俺は、明日また会おうと約束した。

 

 「うん」

 

 そう言って耳を伏せて手を振る彼女の姿は、別れを惜しむ子犬のようだった。

 

 

 それから俺は彼女と“だけ”遊んだ。

 一緒に絵を描いたり、お話したり、鬼ごっこしたり隠れんぼしたり尻尾をモフったり。子供らしい事は一通りやった。血を吐くような思いでやった。

 他の子と遊ばなかったのには理由がある。

 

 『幼馴染の世界に俺だけが居よう大作戦』を決行するためには自分も同じようにならなければいけないのだ。

 相手には頼れる人が1人しか居ないのに、自分には沢山いる。そんな状況を作ってしまうのは不味い。

 嫉妬心を生み出してより俺に依存するかもしれないが、相手も他の人を作ろうとするかもしれない。

 そうなればNTRだ。幼馴染をNTRのだけはマジでやめてほしい。

 そうはならないように、お互いがお互いしか居ない状態―――共依存の状態にならなければならない。

 

 その状態にさせるのは普通であれば至難の業なのだが、環境が後押ししてくれた。

 

 後で知ったことだが、この村では獣人が嫌われている。あの時ロニセラがボッチだったのはその為だろう。

 聞いた話によれば、人間と亜人の仲は、価値観や容姿の違いとかで歴史的に見てもあまり良くないらしい。

 だというのに、ロニセラ一家が何故この村に住めているかというと、村長さんのご厚意らしい。

 ご厚意で住まわすんだったら、この嫌われ者の惨状をどうにかしてくれれば良いのに。

 本当に優しさで住まわしているのならそこら辺どうにかしてるはずだし、多分、何か黒い理由でもあるのだろう。

 まぁ、ロニセラ一家がどういった経緯で住む事になったのか知らないし、個人的にこの状況は美味しいから良いけどね。

 

 そんな状態だからか、ロニセラは俺以外の子供とは関わろうしなかった。

 確認のため、「他の子と遊ばなくていいの?」と聞いてみたが

 

 「イリくんがいてくれるならそれでいい」

 

 と言ってくれた。

 

 堕ちたな。

 これには俺もニッコリ。彼女を嫌ってくれた村の人達には感謝しなければ。

 もしやあの人達、俺がロニセラとこういう関係になりたいと察してくれた可能性があるのでは?

 もしそうだとしたら、あの方々はもはや恩人だ。

 厄介者を押し付けられたとは思ってはいけない。

 

 なんにせよ、依存性の幼馴染を手に入れた。

 後はこの関係を維持し続ければゴールイン確定である。

 

 そう思い、俺は歳が二桁と行かぬ内に人生の勝利を確信した。

 

 

 




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