イカれた幼馴染を紹介するぜ!! 作:俺の両手は幼馴染
「おい、おまえ!」
「?」
突然、後ろから声をかけられた。
振り返ってみると、3人の男の子が立っていた。体型が普通、太っちょ、ガリと絵に描いたような3人組だ。
彼らは警戒するような、見定めるような目をして俺を睨んでいた。
誰だ?
軽く記憶を探ってみるが、俺はこの子達を知らない。名前はもちろん顔も見たことがない。
今回が初めましてだ。
一体何の用だろうか。遊びのお誘いだろうか。もしそうだとしたら、申し訳ないがロニセラと共依存する為にも断らせていただこう。
「どうもこんにちは。僕に何か用でしょうか?」
「…変な言葉使いだな。気持ちわりぃ」
初っ端から毒舌だな…。
真ん中の普通の少年に俺の敬語が否定されてしまった。
というより、敬語を知らないっぽいな。知らなかったら、確かに敬語は変な言葉使いに聞こえるだろう。
まぁ、こんな辺境の村で敬語を知る機会何て殆ど無いだろうし、仕方ないか。
俺はコホンと咳をし言い直す。
「俺に何か用?」
「…お前、あの獣人と仲良いだろ」
「あの獣人…?ああ、ロニセラのこと?」
俺が彼女の名前を言うと、その少年は眉を顰めた。
嫌われ者と仲良くなってんじゃねぇよ、なんて言いたげな顔だ。
「なぁ、何であんなのと仲良くしてるんだ?」
言いやがったよこいつ!
俺はその言葉を聞いた瞬間、怒りが湧いてきた。
だが落ち着け。相手は子供、そうマジになることはない。
ここは俺が大人になるべきだ。
この村では獣人が嫌われている、そんな背景から考えるに、彼の言葉は必然的なものだと分かる。
それにロニセラは何故だか分からないが、出会う者全てに殺意を振り撒いている。理由を聞いても、そもそも殺意という言葉が分からないらしく、聞けば聞くほどあれが素の状態らしい。
出来れば殺意を引っ込めて欲しいものだが、彼女は道化を演じられる程大人では無い為、それも難しそうだ。
俺はもう慣れたから良いけど、他の人はそうはいかない。
何せ、出会い頭に「お前を殺す」宣言をしてくるのだ。普通の人なら近付こうとしないだろう。
で、そんな奴に近付いてる異常者が俺ってわけ。
そんな俺に話しかけてくるなんて、この子達は勇者か何かか?
それで、どうして仲良くしてるのか、だったか。
それはもう将来結婚するため―――と言いたい所だが、そんなラブコメみたいな事言われても少年達にはピンとこないだろう。
かといって、変に分かってもらおうと努力してロニセラに興味を持たれたら困る。
彼女の世界に俺以外の男が入ってくるのはNGだ。ライバルなど要らぬ。
「どうしても何も、友達になりたいからだ」
「はぁ?意味分かんねぇ。あいつは獣人だぞ?」
「なんかすぐ睨んでくるし、やめておいたほうがいいよ…」
太っちょが言った言葉に、ガリの子が賛同するように頷く。
あれ、ひょっとしてこの子達、俺の事心配してくれてる?
同じ人間としての仲間意識的なものだろうか。
彼らの目には、俺が誤った道を歩もうとする無垢な子供に見えているのかも知れない。もしそうなら、彼らが勇者か何かと思ったのも、あながち間違いでは無いかも知れない。
ただまぁ、気持ちは有り難いけど不要な心配だ。
「確かに会う度に首筋を噛み切られそうって考えちゃうけど、それ以外だと基本的に良い子なんだ」
「そんな奴が良い奴なわけねぇだろ!!」
ぐっ。
正論言うの止めてほしい。こっちだってちょっとミスったかなって思ってるんだ。
「なんで毎回こわい思いをしてるのに一緒に居続けてるの?」
太っちょが不思議そうに問いかけてくる。
まぁ、確かに、その疑問は最もだ。
幼馴染と結ばれる為に仲良くやってんのに、肝心の幼馴染からは殺意向けられてるのだからな。我ながら可笑しいと思う。
ただ、俺は一途なんだ。一度決めた相手は二度と変えない。
言ってしまえば―――…
「愛だよ。全てを受け入れるんだ」
「気持ちわりぃ奴だなお前」
「ぜったい受け入れちゃ駄目だよそれ…」
◇◇◇◇
時が経ったある日の事。
事件が起きた。
天気の良い日だった。そんな日はロニセラと遊ぶに限る。
俺はそう思い、いつものように彼女の下へと向かった。
しかし、いつもなら近場の一本だけ立つ木の側で彼女が座っているはずなのだが、何故か今日は居なかった。周りを見渡してみてものどかな風景があるだけで、彼女の姿は何処にもない。
俺は真っ先に、あの少年達の仕業なのではと思った。
あの時話しかけてきた以来、彼らはずっとシカトを貫いていた。
多分、ヤバい奴ら認定されたのだろう。触らぬ神に祟りなしだ。
しかし、一転して積極的になる可能性は十分にある。
人の心は簡単に移り変わりするものだ。時間を置いて考え直したり、誰かに催促されたりすれば、手の平を簡単に回してしまう。
それか、今更彼女の魅力に気付いたか。
だとすればもう遅い。既にマーキング済みだ。
しかし、だからといってこの木陰で待つほど俺は怠惰ではない。
俺の幼馴染に手を出すこと。
それは、俺が最も嫌悪するNTRをするということだ。
許せぬ。
イリベは激怒した。必ずや、かの放辟邪侈の子供達を成敗せねばと決意した。
イリベには幼子の気持ちが分からぬ。イリベは村の農民の息子である。
生まれる前から幼馴染を熱望し、今日まで幼馴染と共に生きてきた、ノンケな男である。
しかし、幼馴染の危機に関しては、人一倍に敏感であった。
俺は早速捜索を開始した。
よく遊びに来る場所をまず最初に調べた。
ロニセラは結構気まぐれな所があるから、俺より先に遊び場に居る可能性はゼロでは無い。てか、そんな事があった。一、二度程度だけど。
しかし、彼女の姿はそこには無く、涼しい風が吹くだけだった。
次に他の子供達がよく遊ぶ場所を調べた。
しかし、そこにもおらず、子供達の遊び場は俺の来訪によって静まり返っただけだった。
はて、一体彼女は何処に行ったんだろうか。
俺の住む村は広い。大人の足であれば見回るのに一日あれば良いものの、俺はちびっ子、この村を調べ尽くすにはスピードも体力も時間も無い。
闇雲に探しても意味が無いと思い、俺は人気のない場所を探すことにした。
もしロニセラをNTRのならば何処が良いか、そう考えての行動だった。
そして、その考えは当たっていた。
とにかく人気のない場所を探してみたら、案外速くにロニセラは見つかった。
どうしてか、少し離れた場所に有る誰も住んでいない廃屋の影に彼女は居た。
廃屋は半ば腐っており、蔦が壁の殆どを覆い隠していた。そこは湿っぽく、陰鬱な空気が留まっていた。
早速俺は話しかけようとした。
しかし、妙な臭いが鼻を刺激した。
血生臭いのだ。
冷や汗が背中を流れていくのを感じた。
まさか、気のせいだ、あの子は良い子だ。
そんな現実逃避地味た思考が脳内を満たすが、それは逆に自分の予想に説得力を持たせるだけだった。
手足が震える。まるでロニセラと初めて会った時みたいだ。
何かミチミチと肉肉しいものを握る音が聞こえた。
やっている。そう確信した。
俺は唾を呑み込み、思い切って話しかけてみた。
「……っ…ロニィ、何やってるの?」
「ん?あっ、イリくん!見て見て、これ!」
彼女が喜々として見せてきたそれは、意外な事にネズミの性行為だった。
それがただの性行為だったら良かったが、ネズミが全く動かない。死んでいるのだ。
ネズミの身体には穴が開いていて、そこからは赤い液体と共に溢れてはいけないものが溢れていた。
見れば、その体位も不自然で、ネズミがするというより人間がするもの、花菱攻めだった。
不自然に開いた穴、人為的に作られた体位、ロニセラの赤く染まった指先。
それが意味することは明白だった。
「ね、どう思う?」
「……死んだネズミで生命を生み出す行為を形取らせる、実に皮肉でメッセージ性のある作品かと」
「…ひにく?」
俺のコメントに首を傾げるロニセラを尻目に、俺はとんでもない娘を選んでしまったと後悔していた。
なんということだ。
もしかしたらとは思っていたが、杞憂であって欲しかった。
初めてあった時から片鱗を見せていたから回避出来たはずだ。なのに阻止出来なかったのは、ひとえに俺の希望的観測が原因だ。
前世で平和な国に居たから、こんな結果を招いてしまった。
侮っていた、子供特有の純粋な狂気を。
笑顔で列を組む蟻を潰す子供の倫理観を。
だとしてもこれはないだろ!
まぁ、起きてしまったのは仕方ない。
もう既に子供達の間では俺達に関わってはいけないと言うルールが出来てしまっている。
いまさら「僕も混ぜて」なんて言えない。そうなるよう望んだのは俺だしな。
これはもう、腹を括るしかないな。
分かったよ。俺は誓う。
何があってもロニセラ一筋で有り続けると。
ロニセラが神の生贄に選ばれたらしい。
親から告げられたその事実に、俺は食卓で素っ頓狂な声を上げた。
感想・評価貰えるととても嬉しいです。