ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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なんとか書けました。
戦闘描写多めですが、あまり自信ないです。
かっこよく書けてると良いのですが……。


LEVEL.11 裏切り者

 

光が収まると、周囲の景色が変わっていた。

 

 

そこは巨大な石造りの橋の上であり、橋の下には闇が広がっていて何も見えない。

 

オレ達は橋の中央付近に転移されたようで、橋の袂はそれぞれ奥へ続く通路と、上層へ向かう階段に繋がっている。

 

 

それをいち早く確認したメルド団長が、険しい表情で指示を飛ばした。

 

「お前達! 直ぐにあの階段まで行くんだ! 急げ!」

 

 

その大声を聞いて、慌てて動き出す生徒達。

 

しかし、次の瞬間には階段の前は大量の魔法陣で埋め尽くされ、そこから魔物が出現したために撤退は出来なくなった。

 

更に、階段とは反対側の通路にも巨大な魔法陣が出現し、一体の魔物が現れる。

 

 

現れた魔物を見たメルド団長は、唖然と呟いた。

 

 

「――まさか、ベヒモス……なのか?」

 

 

メルド団長の呟きをかき消すように、巨大な魔物は咆哮を上げた。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

オレは、通路側から現れた巨大な魔物『ベヒモス』を見て、即座に『勝てない』と感じた。

 

肌に感じる威圧感。明らかに、ステータスが違いすぎる。見るからに頑丈そうな表皮には、こちらの攻撃が通用するのかも怪しい。

 

 

(恐らく、万全のオレとメルド団長が揃って、ようやく動きを抑えられるかどうかというレベルだ)

 

 

そこまで考えた所で、背後から攻撃の気配を感じたため、剣を抜いて迎撃する。

 

そこに居たのは、階段側の魔法陣から現れた魔物『トラウムソルジャー』であった。骸骨が剣を握った見た目の魔物は、次々と魔法陣から姿を表し、どんどん数が増えていく。

 

トラウムソルジャー自体は大して強くはない。クラスメイト達でも、前衛なら一対一であれば倒せるだろう。

 

だが、今回は数が多すぎる。トラウムソルジャーは既に数十体ほど存在し、今もまだ増え続けている。

 

 

さらに、先程のトラップによる急な戦闘移行に、クラスメイトの大半はパニックになっている。

 

 

(――マズイぞ、これは!)

 

 

今すぐ撤退すべきだが、階段側には大量のトラウムソルジャーがいるため、徐々に橋の中央に押し戻されている。

 

とにかく、今は敵の殲滅が最優先事項だ。

 

 

「ザケル!」

 

オレは襲い掛かってきた数体のトラウムソルジャーに向かって術を発動する。

 

電撃によって吹き飛ばされ、橋の下に落ちていく魔物達。

 

 

「きゃあっ!?」

 

視界の端に、魔物の攻撃を受けて、倒れ込む女子生徒が映る。

 

 

オレは掌を向け、再度術を唱える。

 

「ザケルガ!」

 

放たれた電撃は、道中の魔物数体を貫きながら、女子生徒に止めを刺そうとしていた奴の頭を消し飛ばす。

 

頭が無くなった魔物は、力尽きたようにその場に崩れ落ちた。

 

 

「皆しっかりしろ! バラバラで戦うな! 前衛職は後衛職を守る様に動け! 後衛職は、単体向けの魔法で構わないから、一体一体敵を確実に減らしていけ!」

 

 

そう叫ぶと、幾つかのパーティーが少しずつ陣形を組み始め、何とか持ち堪えられる様になった。

 

だが、未だに魔物の数は増え続け、減る気配がない。

 

 

そんな時、ベヒモスがいる通路側から、メルド団長達の声が響いた。

 

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――《聖絶》!!」」」

 

 

直後、凄まじい振動が発生し、橋全体が大きく揺れた。クラスメイト達からも悲鳴が上がり、次々と転倒していく。

 

一度落ち着きかけたクラスメイト達が、再びパニック状態になっていく。

 

 

そこへ、騎士団員のアランさんが駆け寄ってきた。

 

「皆、落ち着いて! 私が道を切り開きます! 隊列を組んで魔物の群れを突破してください!」

 

必死にパニックを抑えようとするが、中々上手く行かない。

 

 

魔物の数も増え続けており、オレ達は既に囲まれつつある。

 

パニックになっている者達には、既に普通の声は届かないだろう。

 

 

オレは大きく息を吸い、声に魔力を乗せて開放する。

 

 

『――全員、今すぐ伏せろ!!!』

 

 

響いた声にビクリと反応したクラスメイト達は、咄嗟に地面へ伏せる。

 

 

それを確認したオレは即座に、手に魔力を集めて『呪文』を唱える。

 

 

「ラージア・ザケル!!」

 

オレの掌から電撃が放出され、攻撃の軌跡上に居た魔物達を吹き飛ばす。

 

 

そして、オレは更に魔力を込め、掌を前に突き出したまま体を回転させる。

 

すると、オレを中心に電撃が周囲一帯を薙ぎ払い、オレ達を囲んでいた魔物の殆どが橋の下に吹き飛ばされ、落ちていく。

 

一回転したオレは、魔力を込めるのを止め、術を解除した。

 

 

――第四の術である『ラージア・ザケル』は、威力こそ『ザケル』と大差ないが、拡散性と持続力が優れており、魔力を込め続ければ、今の様に範囲攻撃も可能となる術だ。ただし、相応に魔力を消費し続けるので、使用する際は注意が必要である。

 

 

オレは、少しの間唖然としていたアランさんに声を掛ける。

 

「アランさん。すみませんが、撤退の指揮はよろしくお願いします」

 

「あっ、ああ!! 任せてください!」

 

 

その声を背中に受け、オレは走り出す。

 

通路側――『ベヒモス』がいる方向へと。

 

先程、メルド団長や天之河達が居る場所に走っていくハジメの姿を見たから。

 

 

(クソッ、時間がない! 間に合ってくれ!)

 

 

既にメルド団長達が張った障壁は破壊されている。今は天之河達が戦っているが、状況は相当厳しいだろう。

 

オレは足に力を込め、全力で彼等の元に向かった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

南雲ハジメは焦っていた。

 

巨大な魔物『ベヒモス』の突進により、倒れてしまったメルド団長。現在は香織の治癒魔法で回復中であり、自分は彼に戦いの余波が届かない様に石壁を作り出している。

 

 

今は光輝達がベヒモスと戦っているが、既に皆ボロボロである。

 

 

「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ! ――《神威》!!」

 

 

光輝の持つ聖剣から極光が溢れ、砲撃となってベヒモスに直撃する。

 

手応えを感じた光輝だが、攻撃によって舞った埃が晴れると、そこには無傷のベヒモスがいた。

 

 

頭の角を赤熱化させ、それを光輝達に向けてベヒモスが突進を始める。

 

そして、ベヒモスは跳躍し、赤熱化した頭部を下に向けて隕石のように落下してくる。

 

 

「――ボケッとするな! 逃げろ!」

 

回復し、何とか立ち上がったメルド団長の叫びにより、光輝達は回避行動を取ろうとするが、間に合わない。

 

着弾時の衝撃波を浴びて、吹き飛ぶ光輝達。なんとか橋の外には落ちずに済んだが、満身創痍の状態だった。

 

 

更にベヒモスは、再度頭の角を赤熱化させ、倒れる光輝達に向かって突進を始める。

 

「――マズイ!? 天之河くん、起きて!!」

 

 

急いで倒れる光輝達に駆け寄るが、このままでは避けられない。

 

 

そして、後少しでベヒモスの攻撃が届くというタイミングで、聞き慣れた人物の声が響く。

 

 

「ラシルド!」

 

 

突如地面から現れた雷の盾により、ベヒモスの頭がかち上げられる。

 

 

――バチィッ

 

 

「グァオオオ!?」

 

更に、盾に纏われた電撃がベヒモスの表皮を焼き、悲鳴を上げさせる。

 

 

一瞬体が持ち上がり、腹を晒すベヒモスに向けて、再度『呪文』が唱えられる。

 

「ザケルガ!!」

 

一直線に進む電撃は、ベヒモスの腹に直撃し、ギャリギャリと音を立てて硬い皮膚を抉っていく。

 

 

「ギュァアアア!?」

 

 

電撃によってベヒモスは僅かに押し戻され、橋の上に倒れ込む。

 

 

「チッ、硬いな。あれだけ魔力を込めたのに、貫けないとは」

 

 

声に振り返るとそこには、息を切らしてベヒモスへ掌を向けているゼオンが居た。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

(――何とか間に合ったか)

 

 

オレは、ハジメ達がベヒモスに轢かれる前に助けられた事に安堵した。

 

現在ベヒモスは、倒れ込んだ体を起き上がらせるために藻掻いている。

 

(だが、あまり時間はなさそうだな)

 

 

「お前等、動けるか!?」

 

 

メルド団長が叫ぶように尋ねるが、天之河達は呻き声を漏らすだけだ。衝撃波で体が麻痺しているのだろう。

 

悔しそうに顔を歪めるメルド団長は、覚悟を決めたように盾を構えた。

 

 

「ゼオン、ハジメ! 光輝達を担いで急いで下がれ!」

 

その指示を聞き、オレとハジメは一瞬硬直した。

 

――メルド団長は、己を囮としてオレ達を逃がすつもりだ。

 

 

「……ゼオン、後は頼むぞ」

 

覚悟を決めたその表情に、オレが頷こうとすると、ハジメが声を上げる。

 

 

「待ってください! 僕に、考えがあります」

 

ハジメは必死の形相で、とある提案をする。

 

この場の全員が助かるかもしれない唯一の方法。しかし成功の可能性も少なく、ハジメが一番危険を請け負う方法だ。

 

だから、その危険な役割には、オレも参加する。

 

 

「ハジメ、オレも残る」

 

「ゼオン……、でも」

 

「オレ達は『家族』だ。……ハジメ一人危険な目には遭わせない」

 

「……うん、ありがとう」

 

 

オレ達の会話を聞いていたメルド団長は、一言尋ねてくる。

 

「……やれるんだな?」

 

「「やります」」

 

 

真っ直ぐな眼で即答するオレとハジメに、メルド団長は思わず笑みを浮かべる。

 

 

「お前達には散々頭を悩まされたが、まさか命を預けることになるとはな。……必ず助けるからな。……頼んだぞ!」

 

「「はい!」」

 

 

そう言うと、メルド団長は体勢を立て直したベヒモスの前に出て、簡易の魔法を放ち挑発する。

 

狙い通り、ベヒモスがメルド団長に向けて赤熱化した兜を掲げ、跳躍する。メルド団長はその突進をギリギリまで引き付け、小さく詠唱した。

 

 

「吹き散らせ――《風壁》」

 

魔法が発動すると同時、メルド団長は後ろに下がり、ベヒモスの突進を避ける。

 

 

瞬間、凄まじい衝撃波が発生するが、メルド団長自身は先程発動した《風壁》のお陰で大したダメージにはならなかった。

 

オレとハジメの方にも石礫が飛んでくるが、オレが剣で叩き落とす。

 

 

そして、高く跳躍し、地面へ垂直に近い角度で突進したベヒモスは、頭が地面にめり込んでいた。

 

ベヒモスが頭を抜こうとするが、遅い。

 

既にハジメが地面へと手を付き、詠唱を完了している。

 

 

「――《錬成》!」

 

 

地面を砕いて頭を抜こうとしていたベヒモスの動きが止まる。壊した箇所をハジメが即座に錬成して直すからだ。

 

 

「グアォォオオオ!!」

 

苛立つように暴れるベヒモスが、ハジメに向かって腕を振るう。

 

だが、そんな事をさせると思うか?

 

 

「ザケルガ!!」

 

振るわれた腕が『ザケルガ』によって弾かれたことでバランスを崩し、思わず倒れるベヒモス。

 

 

そこへ、ハジメの《錬成》によってベヒモスの体が更に地面に沈み込む。

 

力尽くで脱出しようとするベヒモスだが、ハジメの錬成速度に追いつかず、ほとんど身動きが取れない。

 

 

その間にメルド団長が回復した騎士団員と白崎を呼び集め、光輝達を担いで離脱していく。

 

どうやら階段側のトラウムソルジャーは、何とか対応できているようだ。皆連携を取りながら、少しずつ数を減らしている。

 

 

「待って下さい! まだ、南雲くん達が!!」

 

撤退を促すメルド団長に、白崎が叫ぶ。

 

 

「あいつらの作戦だ! ソルジャー共を突破して安全地帯を作ったら、魔法で一斉攻撃を開始する! 魔法で足止めしている間に二人が帰還したら、上階に撤退だ!」

 

「なら、私も残ります!」

 

「ダメだ! 撤退しながら、香織には光輝を治癒してもらわにゃならん!」

 

「でも!」

 

 

なおも渋る白崎に、メルド団長の怒声が響く。

 

「二人の思いを無駄にする気か!!」

 

「――っ!」

 

「大丈夫だ! あいつらなら、きっとやり遂げる!!」

 

 

メルド団長の言葉に、白崎はこちらを一瞥したが、すぐに振り返り階段まで走り出した。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

あの後、白崎が回復させた天之河達によって階段側の魔物は次々と倒されていき、もうすぐ階段前を確保できそうだ。

 

 

「ハジメ、もう少しだ。そろそろ魔法の一斉攻撃が始まる。魔力は保ちそうか?」

 

オレは、額から汗を流しながら《錬成》を続けるハジメに、声を掛ける。

 

 

「う、うん……。ギリギリ、かな。ほんと、訓練しといて、良かった」

 

ハジメは薄く笑みを浮かべてはいるが、顔色が悪い。相当無理しているのだろう。

 

 

「……ハジメ。オレは、お前を誇りに思う」

 

「……どうしたのさ、いきなり」

 

 

「今回の作戦を提案したことだ。ハジメは、全員が生き残る道を考え出した。……オレには、できなかった」

 

「……ゼオン」

 

あの時、オレはメルド団長の事を諦めていた。ベヒモスから撤退するには、誰かが囮になる必要があるから。

 

しかし、ハジメは諦めてなどいなかった。たとえ絶望的であっても、全員が生き残る方法に賭けた。

 

(……まだまだ未熟だな、オレも)

 

 

「すまん、邪魔したな。……ハジメ、絶対に生き残るぞ」

 

「……うん、もちろんだよ」

 

 

話を切り上げたタイミングで、階段側を制圧した生徒達が魔法の詠唱に入っているのが見えた。メルド団長が合図を送っている。

 

 

「――時間だ。次の《錬成》が完了したら、階段まで走るんだ。殿はオレが務める」

 

「うん。……気を付けてね、ゼオン」

 

「ああ。任せろ」

 

 

そして、ベヒモスが数十回目の脱出を図ろうとしたタイミングで、最後の《錬成》が行われる。

 

「――行け! ハジメ!!」

 

《錬成》が終わると同時にハジメは駆け出し、オレもその後に続く。

 

 

「グアォォオオオ!!」

 

 

数秒後、拘束から抜け出したベヒモスがこちらへ向かって来る。

 

だが、そうはさせない。

 

オレは残った魔力をつぎ込み、『呪文』を唱える。

 

 

「ラージア・ザケル!!」

 

オレの掌から放たれる電撃の奔流に、ベヒモスの体が押し戻される。稼げた時間は僅か数秒だが、それで十分だ。

 

 

次の瞬間、ベヒモスへと雨の様に攻撃魔法が殺到した。

 

階段を制圧した生徒達の魔法だ。しっかりと足止めになっている。

 

 

オレとハジメは階段に向けて全力で走る。オレ達の頭上を数々の魔法が通っていく。

 

 

後少しで階段まで辿り着くという所で、ぞわり、とオレは嫌な視線を感じた。

 

そして次の瞬間、オレ達の頭上を通っていく筈の《火球》が、軌道を僅かに変えてこちらに向かってきた。

 

 

(――は?)

 

「えっ!?」

 

 

軌道を変えた《火球》は、オレの前を走るハジメへと直撃し、橋の外へと弾き飛ばした。

 

 

「――っ! ハジメ!!」

 

オレは咄嗟に橋の縁に駆け寄り、空中にいるハジメへ向かって腕を伸ばす。

 

ハジメも、オレの声に反応してこちらに腕を伸ばしてくる。

 

 

(よし、ギリギリ届く!)

 

 

オレがハジメの手を掴もうとした瞬間、ハジメが叫ぶ。

 

「――ゼオン、危ない!!」

 

 

その声を聞いたと同時、オレの体に衝撃と熱さが伝わる。

 

 

――《火球》がもう一発、オレに向かって飛んで来ていた。

 

 

直撃したことでオレの体は吹き飛ばされ、ハジメに伸ばしていた手は空を切る。

 

 

ハジメとは違う方向に投げ出された体は、橋の上から落ちていく。

 

 

オレが最後に見た光景は、奈落の底に落ちていくハジメと、こちらに駆け寄って腕を伸ばしている雫。

 

 

――そして、気色の悪い笑みを浮かべてオレを見る、檜山大介の姿だった。

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

というわけで、ベヒモスとの戦闘回でした。

今話を書いている内に、「あれ、これベヒモス倒せるんじゃね?」とかも思いましたが、こういう展開に落ち着きました。
まぁ、ゼオンくんの魔力残量も限界だったということで許してください。

では、次話もよろしくお願いします。
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