ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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遅れました。
昨日は急用で投稿が間に合わなかったので、今日の分として投稿します。

リアル時間にして一週間ぶりのゼオンくん視点です。


LEVEL.21 快進撃

 

――迷宮に閃光が瞬く。

 

 

「――ザケル!!」

 

 

――バチィッ!!

 

 

掌から放たれた雷撃が、こちらへと飛び掛かって来る巨大トカゲに命中し、弾き飛ばす。

 

巨大トカゲがひっくり返った状態で地面に倒れると、間髪入れずに破裂音が響いた。

 

――ドパンッ!!

 

 

バタバタともがいていた巨大トカゲに、高速で飛来する弾丸が命中し、その頭が吹き飛ばされる。

 

一瞬ビクリと震えて動かなくなる巨大トカゲを無視し、オレ達は次の相手に集中する。

 

 

「グギャァ!!」

 

少し離れたところからオレ達を睨むもう一体の巨大トカゲが、ガパッと口を大きく開け、熱光線を放つ。

 

恐らく固有魔法であろうその攻撃は、一直線にオレへと向かってきた。

 

込められた魔力量から、大体の威力を推定する。

 

 

(威力はオレの『ザケルガ』と同じくらいだな。……なら、試してみるか)

 

オレはスッと右手を上げ、迫ってくる光線に掌を向けて呪文を唱える。

 

 

「――ザケルガ!!」

 

オレの掌から放たれた雷が、熱光線と激突する。

 

ほとんど同じ威力の攻撃は、良くて相殺する程度にしかならない筈であったが、結果はオレの『ザケルガ』が巨大トカゲの熱光線を散らしながら貫き、そのまま巨大トカゲの口内に直撃して頭に大穴を開けた。

 

ドサリと倒れる巨大トカゲを見て、オレは上手くいったと笑みを浮かべる。

 

 

オレの術が撃ち勝てたのには、当然理由がある。

先程オレは、巨大トカゲが放った魔法の密度が薄い部分――『弱所』を突いたのである。

 

魔法とは、当然だが魔力によって形成されている。

そして、魔力とは本来不定形の存在だ。

 

そのため、魔法という現象を発動させた場合も、それに込められた魔力を均一に維持することはかなり難しい。

 

結果、魔法には魔力の『ムラ』が発生し、魔力が薄くなっている部分は当然弱くなる。

 

オレが『弱所』と呼んでいるその部分を攻撃することができれば、威力の劣る魔法でも相手の魔法に撃ち勝つことが出来る、という訳だ。

 

 

まぁ、当然ながら難易度は高いので、直ぐに出来るような技術でもないのだが。

 

 

そこまで考えて、オレは残る一体の魔物に意識を向ける。

 

そこには、正に『リザードマン』といった姿をしている人型のトカゲがいた。

 

従えていた巨大トカゲ達を瞬く間に倒されたことで、怒りを込めた眼でこちらを睨んでいる。

 

 

「グギャァアアオ!!」

 

こちらを威嚇しながら腕を振り回してくる人型トカゲに、オレは直剣を構えて対応する。

 

 

――ギャリンッ!

 

二メートルは軽く超える体躯から繰り出される拳を避けながら斬撃を見舞うが、硬質化した鱗によって阻まれる。

 

斬撃が当たる直前、人型トカゲの体から魔力が発せられたため、コイツの固有魔法なのだろう。

 

剣が当たった感触から、その強度は相当なものだと思われる。

 

 

――だが、問題はない。

 

 

「――ゼオン!!」

 

オレは少しの間、攻撃の回避に専念していたが、ハジメからの『合図』を受けて真横にステップする。

 

 

――ズガンッ!!

 

 

直後、凄まじい速度で飛来する弾丸が、空気を切り裂きながら人型トカゲの上半身を吹き飛ばした。

 

ハジメの新兵器『シュラーゲン』による狙撃だ。

 

硬質化する鱗など関係ないと言わんばかりの威力に、思わず苦笑する。

 

 

これで先程までいた敵は全滅させたが、戦闘の音を聞きつけたのか、十体以上の巨大トカゲがオレ達を取り囲む。

 

 

「「「グギャオ!!」」」

 

 

一斉にこちらへと飛び掛かってくる巨大トカゲ達を見ても、オレ達は冷静だった。

 

 

「――ユエ、頼む」

 

「ん。――《凍雨》」

 

 

――ズガガガガッ!!

 

 

突如、頭上から降り注いだ氷の針によって、巨大トカゲ達は全身を貫かれ、地面に縫い付けられたまま力尽きた。

 

 

今度こそ敵を全滅させたオレ達は、周囲を警戒しながらも倒した魔物の素材を回収していく。

 

 

現在の階層は、第六十五層。

オレ達の迷宮攻略は、すこぶる順調だった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「……最近、ユエ無双が止まんねぇな」

 

「……どうした、急に」

 

 

あらかた魔物の素材を回収し終えたタイミングで、ハジメがポツリと呟いた。

 

オレが聞き返すと、ハジメは微妙そうな表情でこちらを向く。

 

 

「いや、だってよ……。魔物の殲滅戦になると、大体ユエが対応するだろ?」

 

「……まぁ、そうだが。事前に決めた役割分担の通りだろう?」

 

 

普段、単体の魔物を相手にする時は、オレとハジメが倒している。

 

ユエの魔法は強力だが、その分燃費も悪い。

何も考えずに魔法を連発させていては、先程のように囲まれた時に魔力切れを起こしている、なんてことも考えられる。

 

そのため、基本的にユエは魔力を温存し、複数の魔物を一掃する時に活躍してもらっているのだ。

 

 

ちなみに、先程言った通り、戦闘におけるオレ達の役割は事前に決めてある。

 

前衛は、身体能力系のステータスが一番高いということでオレが担当している。主に敵の注意を引いたり、ハジメとユエが攻撃するまでの時間稼ぎをしたりする。当然そのまま敵を倒したりもするので、アタッカー兼タンク役だ。

 

ハジメは中衛で、前衛のオレのサポート兼ユエの護衛役だ。オレが体勢を崩した敵へのトドメや、防御が硬い敵への対処など、状況によって切り替えが必要な難しい立ち位置である。

 

そして、ユエは言わずもがな後衛である。その圧倒的な威力の魔法によって、大勢の敵を殲滅する時に活躍してもらっている。

 

 

「……そうなんだけどなぁ。何というか、どんどん『もう全部ユエ一人でいいんじゃないかな』ってなってる気が……」

 

「……あぁ。何となく、言いたいことは分かった」

 

 

極論を言えば、戦闘の初めにユエが魔法を放てば一瞬で片が付くからな。

 

オレとハジメは、揃ってユエを見る。

当の本人は倒した巨大トカゲの上に座って、足をプラプラとさせている。

 

「……?」

 

 

こちらの視線に気付いて首を傾げるその姿はただの可憐な少女だが、現状オレ達の中で最も魔物を倒しているのは、間違いなくユエである。

 

第五十層から降りてすぐの頃は、ハジメの役に立ちたいという気持ちが強すぎたのか、ハジメが仕留めようとした魔物を片っ端から魔法で消し飛ばすという事件もあったのだ。

 

ちなみに、その後ハジメはちょっと落ち込んでいた。

 

 

「……まぁ、迷宮攻略が楽になる分には別に構わんだろう。ハジメ、あまり気にするな」

 

「……そうだな」

 

 

そんな会話をしながらも、オレ達は先へと進んでいくのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

あれから俺達は、迷宮の一角に拠点を作成して、少し休憩を挟んでいた。

交代で見張りを行っているが、今はゼオンが休んでいるところだ。

 

 

「……ハジメ、アレが欲しい」

 

「……ユエ、またか? 前回やってからまだそんなに経ってないだろ……」

 

 

俺の隣に座り、こちらへと体を寄せるユエが、最近定例化しつつある要求をしてくる。

 

 

「……ん、もう限界。我慢出来ない」

 

「……せめて、ゼオンが起きてからにしないか? 一応見張り中だぞ、俺達……」

 

 

そう言うも、ユエは構わずに俺の膝の上に乗ってくる。

 

 

「大丈夫、すぐ済ませる」

 

「ちょっ、おい……」

 

 

そのまま、ユエが顔を近づけてくる。

そして――。

 

 

ちぅうううう~

 

 

相変わらず慣れない、力が抜けていく感覚。

俺の首筋に噛み付いたユエが、ゴクゴクと喉を鳴らして俺の血を飲み込んでいく。

 

 

「……はぁ、もういいだろ?」

 

「……ん、もうひょっと」

 

 

こう言って粘られるのも、もはやお決まりの流れだ。

 

ため息を吐いてユエが満足するのを待っていると、後ろから呆れたような声が聞こえてきた。

 

 

「……何をしているんだ? お前達は……」

 

 

振り返ると、先程の声通り呆れた表情をしたゼオンがこちらを見ていた。

 

 

「……んっ、今回も美味。ハジメ、やっぱり熟成の味」

 

「……あぁ、そりゃどーも……」

 

 

ようやく満足したユエが首から口を離して放った言葉に、俺は再びため息を吐くのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

ハジメの《錬成》によって簡易的な拠点を作成したオレ達は、交代で休息を取ることにしていた。

 

ある程度疲れが取れたので、ハジメ達と交代しようとしたが、そこには抱き合っている二人がいたのだ。

 

 

「……ハジメ、オレ達の年齢でそういうのはまだ早いと思うぞ」

 

「いや、何の話だよ!? ユエに血を与えてただけって説明したよな!?」

 

 

ハジメのツッコミに、『おぉ~』と呑気に感心しているユエ。

 

……まぁ、変なことをしていないのは分かっていたんだが。

 

 

「というか、そんな事言うんだったらゼオンが代わってくれよ」

 

「……なに? ……まぁ、多少血を吸われるくらいは別に構わんが……」

 

 

不貞腐れたように言うハジメに、オレは了承する。だが、問題は……。

 

オレとハジメは、オレ達の会話を聞いて考え込んでいたユエに視線を移す。

 

 

「私は、ハジメの方が良い」

 

そう、ユエはハジメの血を気に入っているのだ。

魔力を補給する時以外にも要求するくらいには。

 

 

以前にも同じ話をしたのだが、その時もユエは譲らなかった。

 

「……何でだよ? 別にゼオンの血じゃ魔力が回復しないわけじゃないんだろ?」

 

 

実は一度、オレの血でもユエの魔力が回復するかを確認したのだが、特に問題なく回復できていた。

 

「ハジメの血が美味しすぎるのが悪い。それに……」

 

 

ユエは、少し言い淀んでから言葉を続けた。

 

「……ゼオンは、お兄ちゃんっぽいから……」

 

「「……は?」」

 

 

オレとハジメは、予想外の理由に揃って声を出してしまった。

 

詳しく理由を聞いてみると、どうやらオレの雰囲気や魔力の波長的に、他人とは思えないらしい。

よく分からんが、吸血鬼的に親族に血を飲ませて欲しいと頼むのは、恥ずかしいことなのだと。

 

ちなみに、オレの血はパチパチしていて目が覚める刺激的な味らしい。

 

……オレの血はエナジードリンクか何かか?

 

 

「……別に血は繋がってねぇんだから、気にする必要あるか?」

 

ハジメの言葉に、ユエはふるふると首を横に振った。

 

「……私には分かる。ゼオンはきっと、先祖が私と同じ。遠い親戚。……多分、恐らく」

 

「あんまり自信なさそうだが……」

 

 

オレが呆れていると、ユエは再度ハジメに向き直る。

 

「……お願い、ハジメ。私はハジメの血が好き。あの味がもう忘れられない」

 

「結局それが理由なんじゃねぇか……」

 

ハジメも、呆れたようにため息を吐く。

 

 

「……まぁ、もう良いか。ただし、ユエもあまり吸い過ぎるなよ?」

 

 

オレの言葉を聞くと、ユエは眼をキラキラさせてこちらを見てきた。

 

 

「……ありがとう。流石、お兄ちゃん」

 

「おい、誰が兄だ」

 

「……? じゃあ、お義兄ちゃん?」

 

「――待て、何か変な意味が込められてないか?」

 

 

オレがユエの天然なのかボケなのか分からない発言に疲れていると、ハジメがボソリと呟いた。

 

 

「…………というか、俺の意思は……?」

 

 

残念ながら、その言葉に応える者はいなかった。

 

 

 

そんな会話もありながら、オレ達は体を休め、迷宮の探索を再開した。

 

 

三人での迷宮攻略は、時折ピンチに見舞われることはあったものの、順調だった。

 

その速度は驚異的で、止まらない快進撃により、次々と階層を踏破していく。

 

 

――そして、オレ達は遂に第百階層へと続く階段を発見したのだった。

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

という訳で、久しぶりのゼオンくん視点でした。

やっぱり強くなるには『弱所突き』は外せないな、ということでその辺の描写を入れました。

その代わり、エセアルラウネさん関連の描写が犠牲に……。まぁ、早く展開進めたかったからね、仕方ないね。

では、次話もよろしくお願いします。
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