ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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何とか書けました。
今回は殆どオリジナル展開なので、変な描写が無いかビクビクしてます。


LEVEL.24 我が名は

 

「――う、くっ……。今の光は、何……?」

 

 

ハジメとゼオンが倒れた直後、ヒュドラが放った極光の余波で吹き飛ばされていたユエが体を起こす。

 

 

そして、先程起きた出来事を思い出した。

 

突如、自身に向かってきた極光。

ハジメはユエを守るために前へ出て、自分の代わりに光に飲まれたのだ。

 

 

ユエはサッと顔を青ざめさせ、ハジメの姿を探す。

 

すると、少し離れた所に血塗れで地面に倒れ伏すハジメの姿を見つけた。

 

 

「――ハジメ……!?」

 

 

慌ててハジメの下に駆け寄り、容態を確認する。

 

 

ハジメは生きていたが、その身体は酷い状態だった。

 

全身が焼け爛れており、傷口からはジワリと血が滲み出てくる。顔も無事ではなく、右半分が火傷で黒く変色しており、右目から血を流していた。

 

傍に溶解したシュラーゲンらしき残骸があることから、これを盾にすることで被害を軽減したのかもしれない。

 

 

ユエは急いで神水を取り出し、傷口へと振り掛けるが、中々傷が治らない。

 

神水をハジメに飲ませようとしても吐き出してしまうため、口移しで無理やり飲ませる。

 

 

「お願い、死なないで、ハジメ……!!」

 

 

神水の効果で出血は止まったが、ハジメが目覚める気配はない。呼吸はしているが、このままでは危ないかもしれない。

 

半ばパニックになっていたユエは、その時ようやくハジメの相棒とも言える存在がいないことに気付く。

 

 

「――ゼオン、ゼオンは……!?」

 

 

周囲を見回すと、壁にもたれ掛かって座り込むゼオンの姿を発見する。しかし、ユエの声に気付かず顔を俯かせたまま動かないことから、意識を失っているようだ。

 

ゼオンにも神水を飲ませるべく、ハジメを抱えて移動しようとすると、忌々しい鳴き声が辺りに響いた。

 

 

「くっ……!? 今、相手してる暇ないのに……!」

 

 

ヒュドラがゆっくりと自分達のいる場所に近付いてくる。どうやらハジメとゼオンは仕留めたと思っている様子で、その瞳には嗜虐的な光が宿っていた。

 

守ってくれる存在がいなくなったユエを絶望させ、いたぶりながら殺すつもりなのだろう。

 

 

それを理解したユエは、ハジメをそっと地面に寝かせ、傍に落ちていたドンナーを拾い上げる。

 

そして、背後の二人を守るようにヒュドラの前に躍り出た。

 

 

覚悟を決めた表情でヒュドラを睨みつけ、ユエはドンナーを構える。

 

 

「――今度は、私が二人を守る!」

 

 

ユエの心がまだ折れていないと気付いたのか、ヒュドラが苛立たしげに鳴いて攻撃態勢を取る。

 

 

――ドパンッ!!

 

普段見てきたハジメの使い方を真似て放たれた銃弾は、見事に緑頭へと命中した。

 

 

「クルォオオ!?」

 

 

ユエの事を狩られるだけの獲物と侮っていたヒュドラは、思わぬ反撃に絶叫する。

 

しかし、直ぐに他の頭がユエに向かって口を開き、攻撃を開始した。

 

 

広範囲に展開される多種多様な魔法に対して、ユエは掌を向けて急速に魔力を練る。

 

 

「――《緋槍》、《砲皇》、《凍雨》!!」

 

 

とんでもない速さで構築された魔法がユエから放たれ、ヒュドラの攻撃を全て撃ち消す。

 

思わず警戒するヒュドラに対して、ユエは大きな声で宣言する。

 

 

「――二人には、絶対に手出しさせない!!」

 

 

その言葉に再び苛立った様な鳴き声を上げるヒュドラに対し、ユエは背後の二人を守るべく魔法を展開していった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

『――ゼオン』

 

 

頭の中に、声が響く。

 

 

(――誰だ……?)

 

 

『――ゼオン、起きろ』

 

 

記憶にない、だがどこか懐かしさを覚える声によって、オレは意識を呼び起こされる。

 

 

「――ん……ここは、どこだ……?」

 

 

目を開けると、何も見えない真っ暗な空間にいた。

 

自身の体すら見ることが出来ない、完全な暗闇。

次第に、身体の感覚があやふやになっていく。

 

まるで夢の中にいるような感覚だ。

 

 

「……オレは、何故ここに?」

 

 

何か大切な事を忘れている気がしたが、頭の中に霧がかかった様に、思考も纏まらない。

 

 

『――目が覚めタか』

 

 

再度、頭の中に声が響く。

だが先程と違い、少しくぐもった声だった。

 

 

『――ここは、オ前の心の中ダ』

 

 

声の主が、ここが何処かを説明してくる。

どうやらここの事を知っているらしい。

 

ここが本当にオレの心の中なら、幾つか疑問がある。

 

 

「……何故オレはここに? それと、現実のオレはどうなっているんだ?」

 

『――ソれは、今知る必要はナい』

 

 

声の主はオレの疑問には答えず、言葉を続ける。

 

 

『――オ前の心の中は、実に興味深いナ』

 

「……さっきから何を言っている? 話がそれだけなら、オレは帰るぞ」

 

 

要領を得ない発言に辟易とするが、次に声が発した言葉にオレは思わず動きを止める。

 

 

『――記憶ヲ、取り戻したくはナいか?』

 

 

「……何?」

 

 

何故、コイツが記憶の事を知っているのだろうか。

オレが疑問を口にする前に、再び声が響く。

 

 

『――オ前が忘れテいる記憶ヲ思い出させテやろう』

 

 

声の主がそう言うと同時に、真っ暗だった空間に何かの映像が浮かんできた。

 

 

 

広い空間に、数人の人影が集まっている。

 

そして、その人影に囲まれて地面に這いつくばっているのは、幼い銀髪の少年であった。

 

 

「…………これは」

 

『――ソう、オ前の幼少期の記憶ダ』

 

 

 

幼い少年はボロボロだった。

オレは自然と、それが少年を取り囲む数人の大人によってもたらされた結果だと理解する。

 

 

『――ゼオン、立て』

 

 

その場に重苦しい声が響き、少年はふらつきながらも立ち上がる。すると、少年を囲んでいた大人達が一斉に呪文を唱える。

 

 

『ギコル!!』

『ラドム!!』

『ビライツ!!』

 

 

少年は自身に迫る光線を避けるが、次いで飛んでくる氷の塊を避けきれず、足を止めてしまう。そこにエネルギー弾が着弾し、爆発が発生すると少年は再び倒れ伏し、動かなくなった。

 

 

『――今日はここまでだ。……ラジン中将、ゼオンを部屋まで運んでおけ』

 

 

再び重苦しい声が響き、『訓練』が終了する。

 

すると映像が切り替わり、先程と同じ訓練場が映し出される。どうやら登場する人物も殆ど同じらしい。

 

 

しかし、その状況は先程とは真逆だった。

 

先程の映像に比べて僅かに成長した少年が、倒れ伏す大人達の中心に立っていた。残った一人の大人に向けて、少年は口を開く。

 

 

『――どうした? もう終わりか?』

 

『ヒイッ!? ――ギ、ギコル!!』

 

 

大人の魔物が咄嗟に放った氷の塊を素手で破壊し、少年は怯える大人に向かって歩いて行く。

 

 

『この間の訓練時に見せた威勢はどうした? 散々オレを叩きのめした時とは別人だな?』

 

『あ、あれは……!』

 

『あまつさえ、貴様はこのオレに向かって哀れみの視線を送っていたな? 同情でもしたか?』

 

『……!! そ、そんなことは――』

 

 

弁解しようと口を開く大人に、少年が掌を向ける。

 

 

『もう良い、お前の相手は飽きた。――ザケル!!』

 

『――ぎゃあああぁぁ!?』

 

 

少年の雷撃を受けた兵士は意識を刈り取られ、地面に倒れ伏して動かなくなる。

 

 

『――ラジン中将、次の訓練ではもっと強い奴を連れてこい。こんなゴミでは鍛錬にならん』

 

『ゼオン様……』

 

 

少年の言葉に、大柄な魔物は悲しそうな表情をする。

 

 

『……それと、父上は見ているか?』

 

『……いえ、王は……』

 

『…………そうか、分かった』

 

 

言い辛そうにする大柄の魔物の様子を見て、少年は追求するのを止める。しかし、その拳は強く握りしめられ、小さく震えていた。

 

 

 

そこで映像が途切れ、再び景色が暗闇に戻る。

 

 

「……何故、今の記憶を見せた?」

 

『――オ前が失った記憶は、殆どが今見た景色と同じダからナ』

 

「…………」

 

 

その言葉に、納得してしまう自分がいた。

コイツが今言った事は、真実なのだと。

 

 

『――オ前は、幼い頃から両親に疎まれて生きテきた。何故ナら、オ前は『要らない子』ナのダから』

 

 

何故か、コイツの言葉がスッと頭に入る。

 

 

『――オ前はソの原因に心当たりがあるダろう?』

 

 

そう言われてオレが思い浮かべたのは、金髪の少年。

 

 

「……バオウと、……ガッシュ」

 

『――ソう、オ前が受け継ぐ筈ダったチカラと、両親の愛情も横取りしたソイツが、全ての元凶ダ』

 

 

そうだ、かつてオレはガッシュを恨み、憎んで、消し去りたいと思っていた。

 

何故、アイツだけが幸せに生きているのか。

オレが苦しい思いをしたのは、アイツのせいなのに。

 

 

『――ソコデ、オ前に復讐の機会ヲやろう』

 

 

次の瞬間、暗闇の中に二人の人影が現れる。

 

そこいたのは、オレの父親と、ガッシュだった。

二人は人形のような無表情でオレを見つめている。

 

 

『――自身ヲ虐げ続けた父親と、オ前の苦しみの元凶。この二人ヲ攻撃しテ、恨みヲ晴らせ』

 

 

その声を聞いた途端、オレの中で怒りと憎しみの感情が大きくなる。

 

そうだ、コイツ等はオレの事を傷付ける敵だ。

敵は、消さなければならない。

 

 

――本当に?

 

 

ピタリと、二人に向けようとしていた腕が止まる。

何か、大切な事を見落としている気がした。

 

 

『――ドウした? 迷うことはナいダろう!』

 

 

声が頭に響く度、憎しみと怒りが強くなっていく。

 

だが、それと同時に何かの映像が脳裏に浮かぶ。

 

 

 

『――ゼオン、ガッシュ、そして我が魔界、全て無事であってほしい――』

 

 

『――私には、お兄ちゃんがいる――』

 

 

 

聞こえた声に、思わず父とガッシュの方を見ると、そこにはもう一人の人物が立っていた。

 

逆立った銀髪が特徴的なその青年は、オレの事を真っ直ぐ見つめてくる。

 

 

青年の、全てを見通すような不思議な瞳を見た瞬間、オレは思い出したのだ。

 

 

――ああ、そうか。彼は、オレの――。

 

 

 

『――何ヲしている!? 早く攻撃ヲ――』

 

 

「――ああ、そうだな」

 

 

スッと、掌を前方に向けて構える。

唱えるのは、『オレ達』が使う、最初の呪文。

 

 

「第一の術――」

 

 

身体から雷が湧き上がり、掌に集中していく。

そしてオレは、『トリガー』を引く。

 

 

「――ザケル!!!」

 

 

放たれた電撃は、オレの前に立つ三人の間を通り抜け、その後ろにいる『敵』に直撃した。

 

 

『――グギャァアアア!? 貴様、何ヲ――!?』

 

 

直後、闇に紛れた敵――ヒュドラの黒頭が姿を表す。

 

 

「――随分と、人の心の中で好き勝手してくれたな? 今のはその礼だ、ありがたく貰っておけ」

 

 

オレの言葉に怒りの籠もった視線を向ける黒頭に向かって、オレは宣言する。

 

 

 

「――我が名は、ゼオン・ベル!! 魔界の先代王、ダウワン・ベルの息子であり、現魔界の王、ガッシュ・ベルの兄だ!!」

 

 

 

オレが宣言した瞬間、黒い空間へヒビが入り、そこから白い光が溢れ出した。

 

 

『――オのれ、オのれぇええええ!!』

 

 

光に照らされた黒頭の姿が掻き消え、オレの意識も現実に戻ろうとしているのが分かった。

 

ふと黒頭が作り出した幻影に視線を向けると、彼らも消えようとしていた。

 

 

だが、オレの視界が白く塗り潰される直前、彼らはオレに微笑んでくれたような気がした。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「――ハァ、ハァッ……!!」

 

 

ユエは、荒い息を吐きながら、地面に膝を付く。

 

倒れてしまったハジメとゼオンを守るためにヒュドラと対峙していたが、遂に限界が訪れていた。

 

 

近くの地面に火球が着弾し、その爆風で吹き飛ばされたユエが悲鳴を上げる。

 

 

「――くぅっ……!?」

 

 

既に身体はボロボロだが、ユエは立ち上がる。

自分が倒れたら、ヒュドラはハジメとゼオンにトドメを刺すだろう。それだけは許せなかった。

 

 

フラフラと立ち上がったユエは、ドンナーを構える。

魔力がとっくに尽きているため、撃つことは出来ないが、せめてもの反逆心だった。

 

 

ユエをいたぶって遊ぶのに飽きたのか、ヒュドラの赤頭が熱光線を放つ予備動作をした。

 

アレを撃たれたら、今の自分に避けることは出来ない。

 

 

「うぅ……」

 

 

死の直前、ユエは涙を流した。

このまま自分が死ねば、後ろの二人も殺される。

自身の無力さが悔しくて、涙が溢れたのだ。

 

 

赤頭がこちらに狙いを定めた。

どうやら、もう終わりらしい。

 

ユエは目を閉じ、その際に再び涙が溢れ落ちた。

 

 

「――泣くんじゃねぇよ、ユエ。――お前の勝ちだ」

 

 

そっとドンナーを持つ腕に手が添えられる。

 

そして、バチリと音を立てて真紅の雷が迸った。

 

 

――ドパァンッ!!

 

 

「グルォオオ!?」

 

 

ドンナーから放たれた弾丸は、今まさに熱光線を放とうとしていた赤頭に命中し、攻撃を中断させた。

 

ユエは改めて自身の背後に居る人物に視線を向け、驚愕する。

 

 

「――ハジメ!? でも、どうして……!?」

 

「――どうしても何も、お前のお陰だ、ユエ」

 

 

ハジメの身体はまだ傷だらけで、とても動ける状態ではない。それでも、そんな状態で自分を助けてくれた事がユエは嬉しかった。

 

 

「――それに、俺だけじゃないみたいだぞ」

 

「えっ……?」

 

 

――バギャアアッ!!!

 

 

突如、一筋の雷がユエ達の横を通り抜けて、ヒュドラに直撃する。

 

カツン、カツンと靴音を鳴らしてこちらに合流したのは、もう一人の仲間であるゼオンだった。

 

 

「――遅いぞ、ゼオン」

 

「――すまんな。この後挽回するから許してくれ」

 

 

当たり前のように会話する二人に力が抜け、ユエはぺたんと地面に座り込む。

 

二人は横に並んで立ち、ヒュドラに対峙する。

 

 

「「――さぁ、反撃開始だ」」

 

 

二人は同じ言葉を口にし、戦闘態勢に入るのだった。

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

今回はゼオンくんの覚醒回でしたが、格好良く書けてましたか……?

今話を執筆する際に、『金色のガッシュ!!』のファウード編終盤を見返したんですが、やっぱり良いですね。
読んだこと無い方には、ぜひ読んで貰いたい。

では、次話もよろしくお願いします。
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