ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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いつも読んで頂き、ありがとうございます。
遅くなりましたが、何とか書き上げられました。


LEVEL.25 導く声

 

「――さて、どいつからやる?」

 

「あの中で一番厄介な黄頭……と言いたい所だが、手数で押されると面倒だ。先に他の頭を減らそう」

 

 

警戒しているのか、徐々にオレ達から距離を取るヒュドラを余所に、オレはハジメと作戦を決める。

 

 

「オレが先に行って敵の数を減らす。ハジメはユエの回復と、邪魔が入らない様に黄頭の牽制を頼む」

 

「了解。――『もう一体』については大丈夫か?」

 

「――ああ、問題ない」

 

 

ハジメの言葉に短く返事をする。

どうやらハジメも気が付いていたらしい。

 

 

「ま、お前なら大丈夫だろうが、気を付けろよ」

 

「分かっているさ。――じゃあ、行ってくる」

 

 

会話を切り上げ、ヒュドラに向かって駆け出す。

 

奴はオレとハジメが戦闘に復帰したのを見てから、警戒する様に守りを固めていた。しかし、オレが一人で近付いて来るのを見ると、直ぐに攻撃態勢を取り、大量の魔法を放ってきた。

 

殺到する火の球に氷の矢、風の刃に対して、オレは掌を向けて呪文を唱える。

 

 

「――ザケル!!」

 

 

――バギャアアッ!!

 

 

少し前までとは段違いの威力となった電撃がヒュドラの魔法を撃ち破り、強烈な閃光を発生させる。

 

オレは閃光に紛れて《縮地》でヒュドラに急接近する。そして黒頭に掌を向け、再び呪文を唱えた。

 

 

「ザケル!!」

 

 

「ギャァオオ!?」

 

 

電撃を頭部に受けた黒頭が絶叫しながら大きく仰け反るが、まだ生きている。オレは近くの壁を蹴って登り、黒頭の頭上に躍り出た。

 

 

「――クルォオオ!!」

 

 

黒頭は空中にいるオレに気が付き、魔力を込めた瞳で睨みつけてきた。

 

精神に干渉しようと不快な魔力が纏わり付いてくるが、オレはそれを無視して黒頭へ掌を向ける。

 

 

「ザケル!!」

 

 

再び放たれた電撃が直撃して黒頭は地面に叩き付けられ、そのまま動かなくなった。

 

 

「今のオレに、貴様如きが入り込む心の隙間は無い」

 

もう動かない黒頭に向かって吐き捨てる。

 

 

地面に着地し、次の行動に移ろうとした瞬間、オレの体が重くなった。これは、紫頭の魔法だろう。

 

真上から押さえ付けられる様な力は徐々に強くなり、周囲にある地面が陥没していく。

 

 

その場を動かないオレに対して、赤頭が熱光線を放とうとする。先程と同じ状況だ。

 

熱光線が放たれる直前、赤頭へと掌を向けて呪文を唱える。オレが選んだのは、前回と同じ呪文。

 

 

「――クルゥオ!!」

 

「――ザケルガ!!」

 

 

前回の状況を再現するかのように、赤頭の熱光線とオレの雷が同時に放たれ、ぶつかり合う。

しかし、その結果は前回とは違うものになった。

 

オレが放ったザケルガは熱光線を散らしながら突き進み、そのまま赤頭の頭部を貫いた。

 

一瞬の後、ズシンと音を響かせて赤頭が倒れる。

 

 

さらに間髪入れず、紫頭に向かって呪文を唱える。

 

「――ジケルド」

 

 

掌から雷の球体が放たれ、ゆっくりと紫頭に向かう。

 

 

警戒して後ろへと下がる紫頭だが、この術の効果は直接当たらなくても発生するため、もう遅い。

 

淡く輝き出す紫頭に向かって、直剣を構えて駆ける。途中、進行方向に青頭と緑頭の魔法が飛んでくるが、跳び上がることで回避する。

 

 

すると、紫頭が空中にいるオレに向かって魔法を発動しようとする。どうやら地面に叩き落とすつもりらしいが、奴の狙いは外れる事になる。

 

 

――グンッ

 

 

突如、オレの体が空中で何かに引き寄せられる様に動き、飛んでくる魔法を回避する。そしてそのまま紫頭に向かって加速しながら、空中を移動していく。

 

オレは『紫頭に引き寄せられる直剣』を強く握り、紫頭に凄まじい速度で突撃した。

 

 

「ギャァオオ!?」

 

 

ズブリ、と勢い良く直剣が根本まで突き刺さったのを見て、呪文を唱える。

 

 

「――ザケル!!」

 

 

直剣を伝って電撃が体内に流れ込み、身体の内側から焼き尽くしていく。

 

 

数秒後、力尽きた紫頭が地面に倒れ込んだ。

 

 

「――これで残り三体。上々だな」

 

 

残る他の頭に視線を向け、オレは呟いた。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「――ゼオン、凄い……」

 

「いや、強くなりすぎだろ……」

 

 

ゼオンが立て続けに三体の頭を倒したのを見て、ハジメとユエは驚愕していた。

 

特に驚いたのは、恐らくゼオンが強い術を使っていないという点だ。あれだけの戦闘力を見せたのに、まだ余力がある立ち回りをしている。

 

 

「――ったく、一人でどんどん強くなりやがって」

 

 

呟きながら、ハジメは思わず苦笑する。

 

最近ようやく実力が追い付いてきたと思ったらこれだ。どうやら、追い付ける日はまだまだ先らしい。

 

 

「ユエ、力は戻ったか?」

 

「――ん、もう大丈夫。」

 

 

ハジメは黄頭を牽制してゼオンの援護をしながらも、ユエに血を吸わせていた。

 

ユエに確認すると、魔力はもちろんの事、ボロボロになっていた身体の傷も回復しているようだ。

 

 

「よし、あの黄頭を倒すには、お前の魔法が頼りだからな。頼んだぞ」

 

「んっ、任せて」

 

 

やる気十分のユエに頷くと、ハジメは《念話》を発動し、ゼオンに声をかけるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

残った青頭と緑頭から飛んでくる魔法を避けながら隙を伺っていると、ハジメから《念話》が届いた。

 

 

『――ゼオン、ユエの回復が終わった。今から俺達も攻撃に参加する』

 

『――了解だ。いつ『八体目』が出るか分からない。ハジメとユエは一緒に行動してくれ』

 

『――ああ、元々そのつもりだ。じゃあな』

 

 

視界の端に、ハジメがユエを背負って空中を駆けているのが見える。

 

ヒュドラもそれに気付いたようで、ハジメ達に向かって魔法を乱射するが、ユエが即座に魔法を展開して撃ち落としていく。

 

 

――ドパンッ!!

 

 

飛び交う魔法の隙間を縫うように駆けるハジメが、魔法を放った直後の無防備な青頭と緑頭に銃撃を浴びせていく。

 

時折、黄頭がハジメの攻撃から他の頭を守ろうとするが、そうなればオレの電撃が反対側から襲いかかる。

 

 

オレ達の連携攻撃によって、ハジメとユエが合流してから数十秒で青頭と緑頭が力尽き、残りは黄頭のみとなった。

 

 

『――ゼオン、これからユエが黄頭を攻撃する。俺達は『次』に備えて警戒するぞ』

 

『――分かった』

 

 

ハジメの《念話》に返事をし、オレは感知系の技能を発動させた状態でその時を待つ。

 

 

「――《凍雨》!!」

 

 

直ぐにユエの魔法が発動し、氷の針が雨のように黄頭へと降り注ぐ。

 

それに対して黄頭は自身を黄色い光で包んで防御を固めるが、それはオレ達の狙い通りの行動だった。

 

ユエは《凍雨》を中断し、氷の針が消え去るまでの一瞬で別の魔法を発動する。

 

 

「――《蒼天》!!」

 

 

身を固めている黄頭を、青い太陽が包み込む。

一度はやられた魔法を喰らったというのに、黄頭は動こうとしない。

 

その姿を見て、オレ達は確信する。

黄頭は、あの光を纏った状態では動くことができないのだと。

 

今から逃げようにも、既に《蒼天》に包まれた状態では、光を解いた瞬間に焼き尽くされるだろう。

 

光を解かなくても、このまま耐え続けることができないのは先程実証されている。

 

つまり、黄頭はもう詰んでいた。

 

 

「――ギュォオオ!?」

 

 

遂に黄頭を守る光が消え去り、その身が蒼炎に焼かれていく。

 

一瞬黄頭の悲鳴が上がるが、それも直ぐに聞こえなくなった。

 

感知系の技能で炎の中にあった反応が消えたことを確認すると、ユエが魔法を解除した。

 

 

これで、長かったヒュドラとの戦闘もようやく終わり――ではない。

 

全ての頭を倒したヒュドラの身体から、莫大な魔力が噴き出す。

 

 

『――ハジメ、くるぞ!!』

 

『――ああ、ようやくお出ましだ!!』

 

 

積み重なる様に倒れていた数多の首の隙間から、七色の極光が溢れ出す。

 

当たればただでは済まない死の光を避けるため、オレ達はヒュドラから距離を取る。

 

そうしている間にも光は輝きを増し、感じる魔力もどんどん強くなっていく。

 

 

魔力が辺りに衝撃波を発生させ、輝きが極限に達する。その直後、突然極光が収まると、そこには銀色の鱗を持った蛇龍がいた。

 

今までのヒュドラの頭達よりも一回り大きい怪物は、赤く鋭い眼光でオレ達を睨み付け、絶叫した。

 

 

「――ギュルゥァアア!!」

 

 

ビリビリと肌に感じる威圧感に、コイツこそがヒュドラの本体であり、核となる存在なのだと理解する。

 

しかし、間違いなく今まで戦ってきた魔物とは比較にならない強敵だというのに、オレに不安は無かった。

 

 

「――さぁ、決着を付けよう」

 

 

オレ達は、この長く苦しい戦いに終止符を打つべく、ヒュドラへと向かって行った。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

――ドパンッ!!

 

 

やはり、先陣を切ったのはハジメのドンナーによる銃撃だった。

 

真紅の雷を纏い、一瞬でヒュドラに到達した銃弾は、しかしその銀色の鱗に弾かれた。

 

ガギィン、と金属同士がぶつかった様な音が響き、銃弾がヒュドラの後方に逸れる。

 

 

ハジメの方をギロリと睨んだヒュドラは、口を大きく開けて極光を放った。

 

素早い動作で放たれた光線は、ハジメの銃撃に匹敵する程の速度で進んでいく。

 

 

空中にいる所を狙われたハジメだったが、《天歩》により間一髪で光線を避ける。

 

直後、ハジメの後ろにあった柱へと光線が当たり、そのまま何も無かったかのように貫通する。光が収まると、光線が当たった柱の中腹が綺麗に消滅し、丸い穴が空いていた。

 

 

「――軽く放っただけで、この威力か……!」

 

 

あんなのをまともに食らってしまえば、人間など容易く消し飛ばされるだろう。

 

 

ハジメが、空中を駆け回りながらヒュドラへと銃撃を放っていく。ハジメの挑発に気を取られて、苛立ったように空中へ光線を放っているヒュドラの背後に回り込み、オレは呪文を発動する。

 

 

「――テオザケル!!」

 

 

掌から放たれた雷撃がヒュドラの身体を飲み込む。

しかし、雷の中で急速に高まる魔力を感知したオレは、直ぐにヒュドラから距離を取った。

 

 

「――ギュルァアア!!」

 

 

次の瞬間、電撃が極光で掻き消され、光り輝くヒュドラが姿を現した。どうやら身体に極光を纏って身を守ったらしい。

 

しかし流石に無傷では無いようで、身体の至る所が焼け焦げ、血を流している。

 

 

(どうやら、奴には魔法の方が通用しそうだな)

 

 

そう思ったのも束の間、ヒュドラが空中に大量の光球を放つ。それらは空中で静止したかと思うと、次々とオレ達に向かって降り注いできた。

 

時間差で放たれる光球は、避けるオレ達の逃げ道を塞ぐように動き、徐々にこちらを追い詰めてくる。

 

 

「――くっ……!? ラージア・ザケルッ!!」

 

 

逃げ道が無くなる前に、オレは周囲の光球に掌を向け、全方位に電撃を放つ。

 

相当魔力を込めたにも関わらず、幾つかの光球が電撃を突き破ってオレに向かってくる。

 

 

「ラウザルク!!」

 

 

避けきれずに一つの光球がオレの左腕に当たるが、咄嗟に発動した肉体強化のお陰か、消されずに済んだ。

 

攻撃が止み、ジクジクと痛む左腕を庇いながらも、ハジメ達の姿を確認する。

 

 

どうやら、ハジメ達も上手く凌げたようだ。

空中を駆けるハジメの姿を確認し、安堵する。

 

すると、丁度ハジメから《念話》が届く。

 

 

『――ゼオン、無事か?』

 

『――ああ、大丈夫だ。……だが、このままだとジリ貧だぞ』

 

『――分かってる、チンタラ戦ってる暇はない。……俺に、奴を倒す作戦がある』

 

 

そう言ってハジメが、ヒュドラを倒す作戦を語る。

それに対するオレの答えは決まっていた。

 

 

『――分かった』

 

 

ハジメの言葉に、即答する。

 

 

『――聞いといて何だが、良いのか?』

 

『――信じてるからな。……それより、あまり長くは耐えられない。なるべく早く頼むぞ』

 

『――ああ。すぐに終わらせる』

 

 

会話を切り上げ、オレとハジメは同時に動き出す。

オレはヒュドラへと駆け出し、ハジメは《天歩》で更に上へと向かっていく。

 

 

ハジメが逃げると思ったのか、ヒュドラがハジメに向かって光線を放とうとする。しかし、その前にオレは呪文を唱えていた。

 

 

「――ザケル!!」

 

 

電撃がヒュドラの顔面へと直撃する。

大したダメージにはなっていないが、ザケルの閃光によってハジメの姿を見失ったヒュドラがオレを睨む。

 

 

ハジメの作戦におけるオレの役割は、時間稼ぎ。

つまりハジメの『準備』が整うまでの間、オレはコイツを一人で抑えなくてはならない。

 

 

「――ギュルァアア!!」

 

 

ヒュドラが放ってきた光線を《縮地》で避ける。

しかし、続けて奴は大量の光球を空中に放った。

 

再びオレに向かって降り注ぐ光球の雨。

先程と違い、狙われているのはオレ一人なので、攻撃の苛烈さも段違いだ。

 

 

「――ラウザルク」

 

 

肉体強化を発動し、向かってくる光球を避け続ける。

 

次第にオレの感覚は研ぎ澄まされていき、自身を取り囲んでいる光球の動きがハッキリと分かった。

 

 

『――正面、複数弾による同時攻撃。伏せて回避』

 

『――右側面、4時の方向。3秒後に2発の時間差攻撃』

 

『――5秒後、複数弾による多段攻撃。前方へダッシュして回避可能』

 

 

自然と頭に浮かんだ『声』に従い、体を動かす。

 

普段のオレでは到底避けきれない光球の嵐を、最小限の動作で躱していく。

 

どれだけ避け続けただろうか。

気が付けば、大量の光球は全て無くなっていた。

 

 

『――ゼオン、準備ができた。そっちはいけるか?』

 

 

丁度良いタイミングでハジメから《念話》が届く。

オレは直ぐに了承する。

 

 

『――大丈夫だ。いつでも問題ない』

 

『――よし、いくぞ! 3、2、1――』

 

 

次の瞬間、複数の爆発音が辺りに響き、次いでヒュドラの真上にある天井が崩落した。

 

遥か高くから降り注ぐ大量の瓦礫。

それに気付いたヒュドラが迎撃しようと顔を真上に向けるが、そうはさせない。

 

 

「テオザケル!!」

 

 

雷を受けたヒュドラが悲鳴を上げ、動作を中断する。

 

そこに瓦礫が降り注ぎ、ヒュドラの巨体を押し潰していく。

 

 

「――ギュァアア!?」

 

 

ヒュドラの体が瓦礫の山に埋もれ、見えなくなる。

 

それと殆ど同時に、ハジメがオレの傍に降りてきた。

 

 

「――流石に、今のは効いたよな……?」

 

「ああ。相当なダメージを与えたのは間違いない」

 

 

オレとハジメはヒュドラが埋もれている場所を警戒するが、不気味な程に静かだった。

 

しかし、オレ達は奴がまだ生きていることを感知系の技能で把握している。

 

 

突如、弱っていたヒュドラの魔力が爆発的に高まり、溢れ出す極光が瓦礫の山を消し飛ばした。

 

その身に極光を纏い、姿を現したヒュドラはボロボロだった。体の至る所から大量の血を流している。

 

いつ力尽きてもおかしくない。

そんな状態だというのに、その瞳はギラギラと鈍く光り、オレ達を睨み付けていた。

 

 

ヒュドラの纏う極光がどんどん強くなっていく。

 

どうやら、奴は最後の手段に出るらしい。

 

 

「――ハジメ、ユエ、力を貸して欲しい」

 

 

オレの言葉に、二人は直ぐに答えてくれた。

 

 

「任せろ」

 

「ん。任せて」

 

「――ありがとう」

 

 

オレ達は、横に並んでヒュドラと相対する。

 

 

「三人の同時攻撃で撃ち破る。オレに合わせてくれ」

 

 

オレは右手の掌をヒュドラへと向ける。

ハジメとユエもそれに続いて腕を前に突き出し、魔力を高めていく。

 

 

「――ギュルァアアア!!」

 

 

ヒュドラが溜め込んだ極光を開放し、オレ達へと放つ。全てを破壊する光は、道中にある幾つもの柱を破壊しながらこちらへ向かってきた。

 

 

迫る光の壁に対して、オレ達は同時に攻撃する。

 

 

「――テオザケル!!」

 

「――《纏雷》!!」

 

「――《雷砲》!!」

 

 

白銀の雷に、真紅と黄金の雷が纏われる。

 

三色に輝く雷撃が光の壁へと激突し、一瞬光の壁の進行が止まる。

 

しかし、徐々にオレ達の攻撃が押されていく。

 

 

「くっ……!?」

 

 

突き出した腕に負荷が掛かるが、何とか堪える。

 

隣のハジメとユエも、全力で魔力を込めて耐えるが、光の壁が止まることはない。

 

 

(――負けて、たまるか……!!)

 

 

既に、光の壁は目の前に迫っている。

 

必死に堪えるオレは、朦朧とする意識の中で、懐かしい声を聞く。

 

 

『――ゼオン』

 

 

背後から、スッと誰かの腕が伸ばされ、ある一点を指差す。

 

 

――オレは、知っている。この声は――。

 

 

「――ああ、あそこだな?」

 

 

オレは振り返りたくなる衝動を抑え、その腕が示す箇所に掌を向けて、残った魔力を全て注ぎ込んだ。

 

すると、眼前に迫っていた光の壁が止まり、雷が徐々に壁を押し返していく。

 

 

「――オオオオオッ!!」

 

 

そして、遂に光の壁はヒュドラの地点まで押し返され、そのままオレ達の雷が奴の体を飲み込んだ。

 

 

「――ギュァア……ア……!!」

 

 

ヒュドラの絶叫が消えていき、光が収まる。

するとそこには、頭部が消し飛び、胴体だけを残したヒュドラの死骸が残っていた。

 

 

「――はぁ、はぁ……勝った、のか……?」

 

「――ん……多分……?」

 

 

息を切らしながらハジメとユエが呟いた言葉に、オレは答える。

 

 

「――ああ。――オレ達の、勝ちだ」

 

 

その言葉を聞いて、二人は大いに喜び合う。

 

 

ふとオレは後ろを振り返るが、そこには誰もいなかった。しかし、先程の出来事はきっと幻などではないだろう。

 

 

 

「――ありがとう、デュフォー」

 

 

オレは、胸に灯る暖かい光を感じながら、助けてくれた『パートナー』へと感謝の言葉を呟くのだった。

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

ようやくヒュドラとの戦闘が終わりました……。
長かったですが、自分が納得できる形には出来たと思います。

やっと奈落の底からの脱出が見えてきました。
この調子で投稿していきたいですね。

では、次話もよろしくお願いします。
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