またまた遅くなりすみません。
今日から投稿を再開していきます。
ゼオン達がヒュドラとの死闘を制し、オスカー・オルクスの隠れ家で世界の真実を知った日から、二ヶ月程が経った。
あれからゼオン達はオスカーの隠れ家を拠点として、他の七大迷宮を攻略する準備を整えていた。
かつて神々と戦った『解放者』達が迷宮の攻略者に与えるという、神代魔法を集めるためである。
この二ヶ月間でゼオン達の実力は大きく上がり、装備も大幅に強化されたことで、以前とは比べ物にならない程に戦力が充実していた。
特にハジメに関しては、オスカーが自分と同じ錬成師だったこともあり、彼が遺したアーティファクトの設計図や素材、研究資料を使って様々な武装を開発し、戦力を強化しまくっていた。
そんなゼオン達は現在、かつてヒュドラと戦った大広間に来ていた。
ヒュドラとの激しい戦闘でボロボロになっていたのだが、今は綺麗に修復されており、見た目はすっかり元通りである。
実はこの大広間、修復された際にゼオン達が手を加えているため、様々な機能が追加されている。
かなり広い空間なので、今は主に戦闘訓練や新作のアーティファクトを試運転する際に使われているのだ。
そして、その大広間の中央付近で向かい合っている二人――ハジメとゼオンの目的も、もはや日課となった戦闘訓練を行うためである。
二人は十メートル程離れた位置に立ち、言葉を交わしていた。
「今日こそ一本取ってやるからな、覚悟しろよ? ゼオン」
「あぁ、期待している。……だが、そう簡単にはやられはせんぞ?」
軽口を叩きながら、二人は装備の確認を進めている。
二人の装着している装備は、二ヶ月前と比べて大きく強化されていた。
まずハジメに関してだが、失ってしまったはずの『左腕』の代わりに、義手を取り付けていた。
この義手はアーティファクトであり、魔力の直接操作によって動作する代物である。擬似的な神経機構が備わっており、魔力を通すことで触覚も伝わる様に出来ている。
更にこの義手には多数のギミックが仕込まれており、ハジメの趣味全開で、武装やら便利機能やらが詰め込まれているのだ。
また、ヒュドラとの戦闘で視力を失ってしまった右目の代わりに、『魔眼石』というアーティファクトも作成していた。
こちらも義手と同じく疑似神経によって体と接続しているのだが、この瞳が映し出すのは魔力の流れであり、これによってハジメは魔法の属性を色で視認したり、魔力の微弱な弱所を見つける事が出来るようになったのだ。
更に、ハジメは『宝物庫』という便利なアーティファクトを手に入れている。
これはオスカー・オルクスが保管していた指輪型アーティファクトであり、創られた空間内に物を保管できるというものだ。
今の所容量の限界は分かっておらず、この二ヶ月で作成した装備や道具、魔物の素材を片っ端から詰め込んでも、まだまだ余裕がありそうだった。とにかく、非常に便利な道具であるので、ハジメが有効活用することに決めたのだ。
最後に武装についてだが、ドンナーの対となるリボルバー式電磁加速銃『シュラーク』も開発された。ハジメに義手ができたことで両手が使えるようになったからである。
こうして、ハジメの戦闘スタイルは二丁拳銃を駆使して戦う方向に落ち着いたのだった。
次にゼオンだが、新たな装備がいくつか追加されている。
まず、ゼオンが服の上から羽織っているマントである。これは迷宮内に生息する蜘蛛型の魔物が吐き出す糸を加工したもので、魔力を込めると伸縮するという性質を持っている。
また、耐久性についてもマントの胸元に取り付けているブローチ型のアクセサリーによって、強度の向上や自己修復機能などが備わっている。
殆どの記憶を取り戻したゼオンが、ハジメに協力してもらいながら作成したこだわりの装備である。
更に、ハジメが手に入れた『宝物庫』を真似して作成された、腕輪型のアーティファクトも装着されている。
これはオスカー・オルクスの工房に残されていた資料を基に、複製を試みた装備であるが、どうしても完全に再現はできなかった代物である。腕輪型にまでサイズを拡大することでようやく同じ機能を持たせることはできたが、そこまでしても容量自体は小さな倉庫程度しか存在しない。
だが、有用であることは間違いないため、ハジメに比べて武装が少ないゼオンが装備しているのだ。
新しい装備としてはこんなところであるが、極め付けは二人のステータスである。
どちらも、二ヶ月前にヒュドラと戦った時とは別格の強さへと至っていた。
まず、ハジメのステータスはこうなっている。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???
天職:錬成師
筋力:13500
体力:13500
耐性:15000
敏捷:17500
魔力:19000
魔耐:19000
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷[+雷属性耐性][+出力増大][+発動速度上昇][+発動範囲拡大]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪[+三爪][+飛爪]・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性[+治癒速度上昇]・麻痺耐性[+治癒速度上昇]・石化耐性[+治癒速度上昇]・恐慌耐性・全属性耐性[+雷属性耐性強化]・先読・金剛[+物理耐性強化][+部分強化]・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換]・限界突破・生成魔法・言語理解
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本来、レベルは100が上限となっているが、魔物の肉を喰らっていく内に体が変質し過ぎたのだろうか。ある時期を境にステータスのみが上がり、レベルはエラー表示の様にバグったまま動かなくなってしまったのだ。
ステータスの内容だが、全ての数値が一万を超えており、魔力関連に至っては二万の大台が見えてきている。初期のステータスと比較すると雲泥の差であり、もはや誰もステータスの初期値がオール十程度だったとは信じられないだろう。
また、技能の数がとんでもないことになっており、特に《錬成》の派生技能に至っては8つも獲得している。
技能の総数で言えば60個以上と、普通では絶対に見ることのできないステータスになっているのだった。
そして、もう一人の規格外――ゼオンのステータスは下記の様になっている。
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ゼオン・ベル 17歳 男 レベル:85
天職:雷帝
筋力:15000
体力:15000
耐性:18000
敏捷:20000
魔力:45000
魔耐:30000
技能:雷属性耐性[+全属性耐性][+雷属性耐性強化]・物理耐性[+金剛][+物理耐性強化][+衝撃緩和]・毒耐性[+治癒速度上昇]・麻痺耐性[+治癒速度上昇]・剣術[+斬撃速度上昇][+鎧断]・体術[+縮地][+重縮地][+震脚]・槍術・杖術・魔力操作[+遠隔操作][+精密操作][+部分強化][+付与強化][+効率上昇][+魔力圧縮][+天歩]・先読[+心眼][+瞬光]・高速魔力回復[+瞑想]・気配感知[+特定感知][+広域感知][+気配遮断看破]・魔力感知[+特定感知][+広域感知]・気配遮断[+幻踏]・威圧・生成魔法・言語理解
《使用可能呪文》
第一の術 ザケル
第二の術 ラシルド
第三の術 ジケルド
第四の術 ラージア・ザケル
第五の術 ザケルガ
第六の術 ラウザルク
第七の術 ザグルゼム
第八の術 ガンレイズ・ザケル
第九の術 テオザケル
第十の術 バルギルド・ザケルガ
第十一の術 ソルド・ザケルガ
第十二の術 ジャウロ・ザケルガ
第十三の術 エクセレス・ザケルガ
第十四の術 レード・ディラス・ザケルガ
第十五の術 ■■■■■■・■■・■■■■
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こちらはハジメの様にレベルがバグることはなかったが、上限の100レベルが見えてきている。
技能については幾つか派生技能を獲得しており、使用可能呪文についても大量に解放されている。
ステータスの数値についても、身体能力系の数値はハジメと同程度であるが、何よりも目を引くのは圧倒的な魔力関連の数値である。
戦闘時の主な攻撃手段が呪文による魔法であることから、この二か月余りの期間、術のコントロールや魔力の扱いを重点的に鍛えてきた結果が反映されたステータスとなっていた。
それにしても、ステータスの伸びが異常すぎるため、ハジメは自分の事を棚に上げて少し引いていたとか。
ゼオンとハジメの準備が整うと、二人は訓練に着いてきていた少女――ユエに視線を向ける。
「ユエ、魔法陣の起動を頼む」
「……ん、わかった。……二人とも、やり過ぎないこと」
ユエが大広間の最奥にある魔法陣に魔力を込めると、大広間全体に張り巡らされた魔力回路が光り輝き、魔力によるシールドが張り巡らされる。大広間の強度を大幅に強化し、耐久力を高める術式が起動したのだ。
この術式を起動しない場合、大広間は今の成長したゼオン達の戦闘に耐えられずに崩壊してしまうため、最近はこうしてユエに協力してもらうのがいつもの光景となっていた。
「……よし、それじゃあ始めるか」
「ああ、いつでもいいぜ」
大広間の術式が正常に発動していることを確認した二人は、顔を見合わせると口元に笑みを浮かべた。
そして次の瞬間、向かい合う二人の体から雷が溢れ出す。
「――《纏雷》!!」
「――ザケル!!」
こうして、この世界の中でも圧倒的な力を手にした二人の戦闘訓練が始まった。
◆◇◆
手始めに、互いの掌から放たれた電撃。
深紅と白銀の雷が激しくぶつかり合い、バチバチと音を立てて閃光を散らす。二色の雷撃は一瞬拮抗した後、ゼオンの雷撃が打ち勝ち、そのままハジメへと迫る。
――ドパンッ!!
しかし、次の瞬間ゼオンが放った電撃に風穴を開け、ハジメの銃弾がゼオンに襲い掛かった。
ゼオンは真横に跳ぶことで銃弾を回避するが、ハジメは左手に持ったシュラークをゼオンに向け、続け様に発砲した。
回避先を予測して放たれた銃弾を、ゼオンは直剣で逸らすことで防いでいくが、右手と左手、二丁の拳銃による隙のない銃撃により、次第に防戦一方となっていく。
しかし、ドンナーとシュラークはリボルバー型の拳銃であり、それぞれの弾数は6発。二丁合わせても計12発までしか連射はできないのだ。
銃弾が止み、ハジメがリロードしている隙をついて、ゼオンは駆け出す。
ハジメがリロードを終えた時には、ゼオンが既に目と鼻の先まで迫っている。
咄嗟にハジメが放った二連射を体を逸らすことで躱し、そのままクロスレンジに入った。
近接戦闘では、ステータスの差異や戦闘スタイルの違いから、ゼオンが圧倒的に有利である。
ゼオンは距離を取ろうとするハジメにぴったりと離れない位置をキープし、素早く中段蹴りを放つ。
咄嗟にガードしたハジメだったが、そのまま強引に力を込められ、数十メートルは吹き飛ばされた。
「――ジャウロ・ザケルガ!!」
地面を滑りながらも受け身を取って着地したハジメだったが、そこにゼオンの追撃が襲い掛かる。
ゼオンの掌から巨大な円環状の電撃が放たれると、そこから複数の雷の槍が発射された。
計11発。放たれた電撃は、僅かに曲線を描きながら時間差でハジメへと殺到する。
「くそっ、いきなり大技使いやがって……!!」
悪態をつきながらも、ハジメは一瞬で呼吸を整え、迫る電撃に向けて銃口を向ける。
ドパン、と破裂音が響くたびに電撃の軌道が逸れ、外れていく。
ハジメは自身の右目に埋め込んだ『魔眼石』によって電撃を構成する魔力の弱所を見抜き、そこを的確に撃ち抜くことで攻撃を逸らしたのである。
だが、ハジメの拳銃に残されていた銃弾は10発。
残る一発の電撃が迫るが、咄嗟に足で発動した《風爪》によって軌道を逸らすことでギリギリ防ぐのだった。
何とか攻撃を凌いだハジメだったが、ゼオンの姿が消えていることに気付く。
「――呪文を警戒しすぎたな。隙だらけだぞ」
次の瞬間、いつの間にか背後に回り込んでいたゼオンの拳によって、ハジメは大きく吹き飛ばされる。
ゼオンは吹き飛んだハジメを追いかける様に《縮地》を発動すると、再び格闘戦を仕掛けていく。
そこからは、打って変わってハジメが防戦一方になっていく。ステータスの差から、次々に繰り出される拳や蹴りのラッシュを防ぐので手一杯になっているのだ。
「くっ、流石にやるな……!!」
ハジメはこのままでは押し切られると判断し、『切り札』の一つを切ることにした。
突如、ハジメの体に光が纏われると、今まで防ぐしかできなかったゼオンの拳を弾いて、カウンターの一撃を叩き込んだ。
勢い良く弾き飛ばされたゼオンは受け身を取って着地すると、ニヤリと笑う。
「……《限界突破》か、受けて立とう。――ラウザルク!!」
一言呟き、自身も身体強化の呪文を発動すると、向かい合っていた二人の姿が掻き消える。
二つの光の残像だけが大広間を縦横無尽に駆け回り、激しくぶつかり合っていく。
ぶつかり合うたびに空気が激しく振動し、迷宮全体が揺れているかのような衝撃が走る。
やがて互いの体に纏われていた光が霧散すると、息の上がった二人が姿を現した。
しかし、その顔には笑みが浮かんでいる。
「……次の一撃で、勝敗を決めるとしよう」
「――はぁ、はぁ……あぁ、いいぜ」
ハジメは『宝物庫』から一発の弾丸を取り出し、ドンナーへと装填する。
ゼオンは右手を腰だめに構え、魔力を集中させていく。
やがて、バチバチと互いの体から雷が溢れ出し、それぞれ銃口と掌へと集中していく。
「
「エクセレス――」
互いの魔力が最高潮に高まり、解放される直前、突如二人の間を遮る様に巨大な氷の塊が落ちてきた。
ゼオンとハジメの魔力が霧散し、二人は同時に恐る恐る同じ方向を見る。
「…………二人とも、私が言ったこと、覚えてる?」
そこには、無表情ながらも怒気を滾らせている
もしもあのまま二人の一撃が衝突していたら、術式など関係なく、大広間が損壊していたかもしれないのだ。
ユエの有無を言わせぬ迫力に、二人が思わず口を噤んでいると、冷たい声が発せられる。
「――正座」
「「…………はい」」
この後、ゼオンとハジメの二人は、小一時間ユエからのお説教を受けたのだった。
読んで頂いてありがとうございます。
久しぶりの執筆なので、違和感があったら申し訳ないです。
一応今後の展開についてはプロットを作っているのですが、執筆完了までスムーズにできるかは分からないです……。
では、次話もよろしくお願いします。