ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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何とか投稿が間に合いました。

やっぱり、毎日投稿は大変ですね……。


LEVEL.32 未来を視るウサミミ少女

 

 

「………………は?」

 

 

ウサミミ少女が発した想定外の言葉に、思わず間抜けな声が漏れてしまう。

 

 

彼女は今、何と言った?

 

明らかにオレのことを指差しながら、こう呼んだ。――『王様』、と。

 

 

「……『王様』って何のことだ?」

 

 

ハジメが困惑した表情で俺を見てくる。だが、俺には心当たりは無いのだ。

 

 

「いや、さっぱり分からん……」

 

 

「……でも、ゼオンのことを指差してた」

 

 

ユエの指摘に、それはそうだが、と返しながらも改めて目の前の少女を観察する。

 

しかし、やはり見覚えはない。

オレと彼女は、先程が初対面の筈である。

 

 

「元々知り合いだった……って感じじゃないよな?」

 

「……あぁ、オレは彼女のことを知らない。今回が初対面の筈だ」

 

 

ハジメの質問に答えつつ、分からないなら本人に聞こうと当の本人に視線を向ける。

 

 

しかし、ウサミミ少女はいまだに俺のことを指差しながら、口をパクパクと動かしている。

 

何故だか知らないが、あちらもあちらで随分と混乱しているらしい。

 

 

いや、この状況は君のせいなんだが……。

 

 

このままでは何も分からないため、オレ達はバグったようにフリーズしてしまった少女が気を取り直すのを待つのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「あ、あのぉ……。先程は、大変お見苦しいところを……」

 

 

数分後、ようやく再起動したウサミミ少女は、恥ずかしそうに頬を染め、謝罪してくる。

 

彼女の表情に釣られたように、頭の上にあるウサミミもシュン、としな垂れていた。

 

 

……ちょっと面白いな。

 

 

「……それで? 君は、オレのことを知っているようだったが……。何処かで会ったことがあるのか?」

 

 

ようやく話が聞けるようになったため、オレは彼女に尋ねる。

 

 

「――エッ!? そ、そそそそれはですね……。ひ、人違い……という訳ではなくて、ええと……会ったことはないですけれど、か、顔だけは知っているといいますか……」

 

 

すると、ウサミミ少女は視線を彷徨わせて、ごにょごにょと小さい声で返答する。

 

目線が泳ぎまくっており、どう考えても誤魔化そうとしている人間の動きである。

 

 

「顔は知っていた……? オレは、この辺りに来たことはないし、亜人族を見るのも初めてなのだが……」

 

 

そう、この世界に勇者の一員として召喚されてから、オレは王都の周辺しか出歩いたことはない。

 

ここ『ライセン大峡谷』はおろか、樹海にいるはずの亜人族と接触できるはずもない。

 

 

オレが訝しげな表情をしているのに気付いたのだろう。ウサミミ少女が手をバタバタと振りながら慌てて弁解する。

 

 

「ち、違うんですぅ!! 直接見たわけじゃなくて、あの、ええと……」

 

 

頬を赤らめながらもじもじしていたウサミミ少女が、意を決したようにギュッと目をつぶり、声を上げる。

 

 

「――わ、私!! 未来が見えるんですぅ!!」

 

 

「「「………………」」」

 

 

峡谷にウサミミ少女の大声がこだまする。

 

 

オレは、ハジメとユエに視線を向ける。すると、二人もこちらを見ていた。

 

数秒ほど視線を交わし、オレ達は頷き合う。

どうやら、考えていることは皆一緒らしい。

 

 

オレ達はウサミミ少女の横を通り過ぎると、それぞれ魔力駆動二輪を取り出す。

 

そのまま魔力駆動二輪に跨り、いざ走り出そうとした時、ウサミミ少女は焦ったようにこちらへ縋り付いてきた。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!! 何で置いていこうとしてるんですかぁ!?」

 

 

「えぇい、放せ、アホウサギ!! そんなバカな言い訳が通用するわけねーだろうが!!」

 

「……ん。流石にあれは無い」

 

 

ハジメとユエのツッコミに、うぐっ、と唸るウサミミ少女は、しかし直ぐ様負けじと言い返した。

 

 

「う、嘘じゃないです!! 本当なんですよぉ!!」

 

 

ウサミミ少女は何とか縋り付くが、ハジメとユエは取り付く島もない。

 

すると、ウサミミ少女はオレへと視線を合わせる。

 

 

「……あー、うん。大丈夫だ、オレは信じる。……だから、その手を放してくれないか?」

 

 

「全然信用してない!? 何なんですか、その温かい目は!? 絶対信じてないですよね!?」

 

 

その後も、逃げようとするオレ達三人とウサミミ少女の攻防は続き、驚異の粘りを見せる彼女にオレ達三人は根負けするのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「……改めまして、私は兎人族ハウリアを率いる長の娘、シア・ハウリアと言います」

 

 

あの後、縋り付いてまたもやギャン泣きしまくるウサミミ少女――シアに根負けしたオレ達は、彼女の事情を聞かされていた。

 

真面目な表情で語る彼女の姿は、とても先程まで涙で顔をぐちゃぐちゃにしていたとは思えない程キリっとしていた。

 

 

「……何か真面目な顔で語りだしたぞ」

 

「……ん。今更イメージ回復は無理」

 

「……まぁ、そう言ってやるな」

 

 

小声でオレ達が話していると、シアがビシッとこちらに指を差して注意する。

 

 

「――はい、そこ!! 真面目に聞いてください!!」

 

 

渋々大人しくなるオレ達に向けて、シアは自身の境遇から語り始めた。

 

 

 

シアが所属している、『ハウリア』という兎人族達のグループは、『ハルツィナ樹海』にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていたらしい。

 

 

そんなある日、ハウリア族に一人の女の子が生まれた。

 

その子供は、兎人族の特徴である濃紺の髪を持たず、青みがかった白髪を携えて生まれてきた。

 

しかも、本来亜人族には無い筈の魔力まで有しており、直接魔力を操ることができ、ある固有魔法まで使えたのだ。

 

 

その固有魔法とは、《未来視》。

 

仮定した未来を見ることができ、自身に迫る危険を事前に把握することができるという魔法である。

 

 

当然、ハウリア族の皆は大いに困惑した。

亜人族として有り得ない能力を持った子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通ならば迫害されてしまうだろう。

 

だが、亜人族の中でも一際家族の情が深い種族である兎人族は、女の子を見捨てなかった。

 

 

ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。亜人族の国『フェアベルゲン』の住人に女の子の存在が知られれば、ハウリア族全体の立場が悪くなると知っていてもだ。

 

 

だが、先日とうとう彼女の存在が国にバレてしまい、ハウリア族は国の追手に捕まってしまう前に、一族ごと樹海を出た、ということらしい。

 

 

行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。

 

しかし、樹海を出て直ぐに運悪く帝国兵に見つかってしまったことで、半数以上が奴隷として捕らわれてしまった。

 

 

全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだのだった。

 

しかし、事態は更に最悪な方向へと向かっていく。

ハウリア族を追い立てた帝国兵は峡谷の出入り口に陣取り、兎人族が魔物に襲われて出てくるのを待つことにしたのだ。

 

 

そうして、峡谷から出ることも出来ず、魔物に襲われたため、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。今は、魔物の襲撃に怯えながら峡谷の中を逃げ惑っているという。

 

 

 

「……このままでは、全滅してしまいます。――どうか、私達を助けて下さい!!」

 

 

オレ達に向かって頭を下げるシアに対し、ハジメが一歩前に出る。

 

引き受けてくれると思ったのか、シアの表情がパッと明るくなる。

 

 

だが、オレとユエは次にハジメが発する言葉に予想がついていた。

 

 

 

「――断る」

 

 

にべもなくそう言いのけたハジメに対し、シアはあんぐりと口を開けるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「――な、何でですか!? ここは、快く引き受けてくれるところじゃ……」

 

 

困惑を露わにするシアに対し、ハジメは冷たく返す。

 

 

「――アホか。お前等を助けたとして、俺達に何のメリットがあるんだよ」

 

「……えっ?」

 

 

虚を突かれたように固まるシアに、ハジメは続ける。

 

 

「そもそも、助けるってどこまでの話をしてんだ? 峡谷を抜けるのを手伝うのか? そのあとはどうする? 結局帝国に捕まるのが関の山だろ」

 

 

「うぐっ……!! そ、それは……」

 

 

ハジメがため息を吐きながら続ける。

 

 

「それに、俺達だってやらなきゃならないことがある。ずっとお前らに構ってもいられねぇんだよ」

 

 

「う、うぅ……!! でも、《未来視》で貴方達が助けてくれるのが見えたんです!!」

 

 

「知るか。そもそも、その《未来視》の話も、お前が言ってるだけかもしれねぇだろ。その話が嘘でも、俺達に確かめる方法はないんだからな」

 

 

「そ、そんな……」

 

 

悲壮な顔をしてがっくりと項垂れるシアを置いて、ハジメは魔力駆動二輪に跨る。

 

オレは、ユエを後ろに乗せて走り去ろうとするハジメを止める。

 

 

「――ハジメ、少し待ってくれ」

 

「……ゼオン? さっきも言ったが、こいつらを助けても何にもならねぇぞ。助けたところで、余計な面倒事を抱え込むのがオチだ」

 

 

オレはハジメに目線で頼む、と伝えると、ハジメはため息を吐いて魔力駆動二輪のハンドルから手を放す。

 

オレがシアと話をするのを待ってくれるらしい。

 

 

 

「うぅ……父様、皆……。私、失敗しちゃいました……」

 

 

しくしくと泣き出すシアと目線を合わせ、オレは口を開く。

 

 

「――確認だが、シア達は元々『ハルツィナ樹海』に居たんだよな?」

 

 

「えっ? は、はい。そこで暮らしてましたけど……」

 

 

シアはオレが何を言いたいか分からないらしく、困惑した声を上げる。

 

 

 

「では、『ハルツィナ樹海』までの道のりを、オレ達に案内することはできるか?」

 

 

「は、はい、多分……。私は詳しくありませんが、父様であれば道を知っていると思います」

 

 

オレは、ハジメに視線を送る。

ハジメも、俺の言いたいことを察したようだった。

 

 

『ハルツィナ樹海』は、亜人族以外では必ず迷うと言われている。そのため、兎人族の案内があれば樹海を迷わず進むことができるだろう。

 

 

「オレ達は、訳あって樹海に行く必要がある。そのための案内役を引き受けるのなら、シア達の救出を手伝っても良い」

 

 

オレの提案にシアは目を白黒させていたが、内容を理解すると、直ぐに首を縦に振った。

 

 

「わ、分かりました。ハウリア族長の娘である私が、責任をもってみんなを説得します!!」

 

 

「――契約成立、だな」

 

 

 

こうして、オレ達は兎人族の少女であるシアと暫く行動を共にすることになったのだった。

 

 

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

という訳で、残念ウサギことシアさんがメインの回でした。
結構好きなキャラなので、今話は書いててとても楽しかったです。


では、次話もよろしくお願いします。
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