ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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いつも読んで頂きありがとうございます。

この調子で毎日投稿を続けていきたいですね……。


LEVEL.33 ハウリア族と帝国兵

 

 

「――全く、勝手に話を決めやがって……」

 

 

不満げにそういうハジメに苦笑しながら、オレは言葉を返す。

 

 

「まぁ、そう言うな。何はともあれ、樹海の案内役が見つかったのは好都合だっただろう?」

 

「……そりゃそうだけどよ」

 

 

はぁ、とため息を吐くハジメ。

シアを助けるメリットは理解したが、面倒事を背負い込むことになったのが嫌なのだろう。

 

 

「あ、あの……ありがとうございます。さ、先程は一方的に要求してしまってすみませんでした……」

 

 

ウサミミをシュンとさせたシアが、申し訳なさそうに謝罪してくる。

 

 

「いや、こちらこそ、先程はすまなかった。……君のことは、シアと呼んで構わないか?」

 

 

「は、はい。……そうだ、皆さんのことは何と呼べば……?」

 

 

躊躇いがちにそう尋ねられ、オレは思い至る。

 

 

「ああ、そういえば、まだ自己紹介をしていなかったな……」

 

 

それから、オレ達は名前をシアに伝えた。

 

 

「ゼオンさんにハジメさん、ユエさんですね。すみませんが、これからよろしくお願いしますぅ!!」

 

 

シアは、もう一度オレ達に頭を下げるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「さて、出発するか。シア、他のハウリア族はまだこの峡谷にいるんだよな?」

 

 

「はい。ここからもう少し東に向かったところに隠れてます」

 

 

シアに話を聞きながら、オレ達は魔力駆動二輪に跨る。

 

当然、ユエはハジメの後ろに乗るため、シアにはオレの後ろへと乗ってもらうことになった。

 

 

「……ええと……乗るって、この乗り物は一体……? ま、跨れば良いんですかぁ?」

 

 

シアは困惑しながらオレの後ろに乗るが、手が空中を彷徨っている。まぁ、バイクなど見たことないだろうし、仕方がないか。

 

 

「シア、それだと振り落とされる危険がある。服を掴んで良いから、しっかり掴まっててくれ」

 

「な、なるほど……。わ、分かりましたぁ……!!」

 

 

そう言うと、シアはオレの腹に腕を回し、抱き着いてきた。

 

……いや、マントを掴むぐらいで良かったんだが。まぁ、もう良いか。

 

 

「出発するぞ」

 

 

「は、はい……!! ――はわぁあああーー!?」

 

 

魔力駆動二輪を起動させ、先導するハジメに続いて加速する。すると、あまりのスピードに驚いたのか、シアが奇妙な悲鳴を上げていた。

 

初めは驚いていたようだが、スピードに慣れたのか、直ぐに感嘆の声を上げるシア。

 

意外と、こういった乗り物は得意なのかもしれない。

 

 

「そういえば、先程皆さんは魔法を使ってました、よね? ここでは使えない筈なのに……」

 

 

しばらく峡谷を道なりに進んでいると、シアがポツリと質問をして来た。

 

 

「……あぁ、あれか。オレ達は、直接魔力を操れるからな。込める魔力量を増やせば、魔法を使えるということだ」

 

 

「えっ……皆さんも、そうなんですか……?」

 

 

オレの言葉に、シアは唖然とつぶやく。

 

どうやら、自分以外にも直接魔力を操作できる人間がいると聞いて、驚いているようだ。

 

ずっと自分は周りと違う、異端であると思っていたシアにとって、同じ力を持つオレ達の存在が嬉しいのだと言う。

 

 

「ずっと、心の中では独りだと思っていた部分があって。でも、同じ力を持った人がいたんですね……」

 

 

オレの背中に顔を埋めて小さくすすり泣くシアは、先程までとはまた違う、年相応の少女の姿をしていた。

 

 

オレは空気を変えるため、疑問に思っていたことを聞いてみた。

 

 

「……そういえば、何でオレのことを『王様』と呼んだんだ?」

 

 

「……ええッ!? 今、それを聞きますかぁ!?」

 

 

いや、そういえば結局そのことについて説明はしていなかったしな。

 

 

「あ、あれはその……。小さい頃に見た夢の話といいますか……」

 

 

「……夢? もしかして、さっき言っていた《未来視》の魔法が関係しているのか?」

 

 

オレの問いに、ごにょごにょと言い淀んだシアは、しばらくしてから口を開いた。

 

 

「……は、はい。小さい頃、よく見ていた光景があるんです。その中で、私は……」

 

 

シアがそこまで話した時、進行方向の先に魔物の群れが見えた。

 

そして、魔物の群れに襲われている、シアと同じウサミミを持つ人間が数十人。

 

 

「あ、あれは……!! ――ゼオンさん、あれが私の家族達です!!」

 

 

「――ハジメ、オレが先に行く!! 援護を頼む!! シア、しっかり掴まっていろ!!」

 

 

「は、はい!! って、このまま突っ込むつもりですかぁーー!?」

 

 

オレは魔力駆動二輪に込める魔力を強め、魔物の群れに突っ込むのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

ライセン大峡谷内にて、強大な岩の陰に隠れるウサミミの集団がいた。

 

彼らはハウリアの一族。

元は『ハルツィナ樹海』に住んでいた兎人族であり、紆余曲折あって現在は国から逃亡中の身である。

 

そんな彼らは今、存続の危機に見舞われていた。

 

 

「――ひぃいいーー!?」

 

「そ、そんな……!? ハイベリアの群れに見つかるなんて……!!」

 

「おかーさん、怖いよーー!!」

 

 

彼らの隠れる岩陰は、巨大な羽を持つ魔物に囲まれていた。

 

ワイバーンのような見た目の魔物――ハイベリアは、その大きな羽を羽ばたかせながら、岩陰に隠れる獲物を睨み付けている。

 

全部で五体の群れ。

戦う力を持たない兎人族では、どうあがいても逃げ切れない数だった。

 

 

ハイベリアの威嚇に怯える彼らは、せめて女子供だけでも逃がそうと、男達が囮になることを決めた。

 

 

「…………? 何だ、あれは……?」

 

 

しかしその時、岩陰から外の様子を伺っていた一人が、視界に奇妙なものをとらえた。

 

最初は豆粒のように小さかったそれは、どんどんと大きくなっていく。

 

どうやら、こちらに近づいてくるようだ。

 

 

新手の魔物か、と警戒する彼らの耳に、聞き覚えのある声が届いた。

 

 

「――み、みんなーーっ!! 助けに来ましたよーー!! わきゃっ!? ちょっ、ゼオンさん!? 速い、速いですぅーー!?」

 

 

彼らの家族の声が聞こえたかと思うと、高速で近付いて来ていた『何か』は、もう目の前まで辿り着いていた。

 

そしてその謎の物体は、彼らが隠れていた岩の近くまで来たタイミングで、『跳んだ』。

 

 

「ええぇぇーーッ!? 飛んでるーーッ!?」

 

 

その場の皆が知っている少女の声を聴きながら、彼らは皆釣られるように視線を上に向けていた。

 

 

宙に舞った謎の物体は、そのままハイベリアに激突して首をへし折ると、そのままハイベリアの死骸を踏み台にして近くに居た別のハイベリアへと突進していく。

 

狙われたハイベリアは、自分も激突されてはかなわないと身を翻すが、ギリギリ躱したにもかかわらず、首が切断されていた。

 

そこで、ハウリア達は謎の物体の上に人が乗っていることに気が付いた。

 

謎の物体に跨る銀髪の少年は、片手に黒い直剣を握っていた。どうやら、あの剣でハイベリアの首を切断したらしい。

 

 

だが、踏み台となる物体がない空中で、少年は無防備になっている。

 

その隙を逃さず、残ったハイベリアの内二体が少年の落下地点にめがけて襲い掛かった。

 

 

しかし、ハイベリア達の思惑は外れることとなった。

ボッ、という音が鳴ったと思ったら、少年が操る謎の物体が再び浮かび上がったのだ。

 

完全にタイミングを外されたハイベリア達は、互いの体を激突させる。思わず怯んだその隙に、少年が一回転して振るった剣にて首を刈り取られるのだった。

 

 

あっという間に自分以外の四体の仲間がやられたことで、残った最後のハイベリアは怯え始める。

 

なりふり構わず逃走しようとした瞬間、突如破裂音のような音が聞こえ、空中でハイベリアの頭部が爆散した。

 

 

ぐちゃり、とハイベリアの死骸が墜落する音を聞きながら、ハウリア達はあまりの出来事にしばし唖然とするのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「……ふぅ、上手くいったな」

 

オレは無事に犠牲者なく魔物を駆逐できたことに安堵し、息を吐いた。

 

 

オレが先程行ったのは、技能の《魔力圧縮》と《天歩》を活用し、魔力駆動二輪に乗ったままジェット噴射の要領で空を飛んだというものだ。

 

魔力駆動二輪の機動力を殺さずに空中戦ができたし、中々良い戦法なのではないだろうか。

 

 

「は、はひぃ……。目が、目が回りますぅ……」

 

 

……まあ、次からは俺一人が乗っているときに限定して使う様にしよう。

 

 

 

「……あ、貴方達は一体……?」

 

 

そんなことを考えていると、困惑した声が聞こえた。

 

 

声がした方へと視線を向けると、そこには紺色の短髪にウサミミを生やした初老の男性がいた。

 

後ろには、岩陰から出てこちらを恐る恐る見てくるウサミミの集団が並んでいる。

 

 

どうやら、彼がこの団体の代表らしい。

 

 

「オレは、そこにいるシア・ハウリアさんに雇われた……まぁ、用心棒のようなものです。貴方達は、ハウリア族の方々で間違いありませんね?」

 

 

「おぉ、それはそれは……。ご指摘の通り、私達はハウリアの者です。私は族長を務めております、カムと申します」

 

 

ハウリアの族長カムが、恭しく頭を下げる。

 

 

「この度は、我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を申し上げれば良いか……」

 

「いえ、礼には及びません。私達は、シアさんと取引をしています。約束が守られるのであれば、それで十分です」

 

 

そこまで話したところで、目を回していたシアの意識が回復した。

 

 

「はっ!? 私は何を……。って、そうだ!! お父様、皆ーー!! 助けを呼んできましたよ!!」

 

 

シアは元気よくカム達に駆け寄ると、事情を説明し始めた。……少し時間がかかりそうだな。

 

 

(……それにしても)

 

 

何だか、やけに見られている気がする。

 

ハウリア族の人達は、シアの説明を聞きながらもチラチラとオレのことを盗み見ていた。

 

 

オレの近くにはハジメとユエもいるのだが、何故かそちらはそれ程気になっていないようだ。

 

それに何というか、彼らが俺に向ける視線は、物珍しさとかそういう類では無さそうである。

 

 

微妙に居心地の悪さを感じていると、カムが近寄ってきた。どうやら、シアから事情を聞き終わったらしい。

 

 

「ゼオン殿、でよろしいかな。シアから事情は聞きました。我らの脱出について助力して頂けるとのこと、誠に感謝致します。対価は、樹海の案内とのことでしたな。謹んで引き受けさせて頂きます」

 

 

何ともあっさりと、樹海の案内を了承してもらえた。

もしかしたら人間族を連れて行くことに反感を持たれるかもと考えていたので、これはうれしい誤算だった。

 

 

上手く事が運んだため、オレとハジメが笑顔で頷き合っていると、カムが控えめに尋ねてきた。

 

 

 

「あのぅ……つかぬことをお聞きしますが、ゼオン殿は、どこかの国の王族であったりしますか……?」

 

 

「…………は? いえ、そんなことはありませんが……」

 

 

まぁ本当は、かつて魔界の王族ではあったが。

 

 

「――と、父様!? ゼオンさんにいきなり何言ってるんですかぁ!?」

 

 

「シア……私はてっきり、彼が昔お前が言っていた『王様』なのだと思ったのだが……」

 

 

「ちょっ、駄目です!! そ、その話はぁ!?」

 

 

「なんだ、隠すことはないだろう。昔のお前は、口を開けば王様、王様と言って、可愛らしかったものだ」

 

 

カムは、狼狽えるシアを放置して、懐かしみながら昔話を続けた。

 

 

「『将来は王様と結婚する』なんて言った時は、寂しくてつい涙が……」

 

 

「わーー!? だだだ、駄目です父様!? ゼオンさん、聞かないでくださいーー!!」

 

 

 

(……何だ、この状況)

 

 

ばたばたと、カムの口を塞ごうとするシアを見ながら、オレはため息を吐くのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

あの後、落ち着いたシアとハウリア族の四十二名を連れて、オレ達はライセン大峡谷の出口を目指していた。

 

四十人を超える数の兎人族がぞろぞろと揃って歩いている光景は、とてもシュールである。

 

 

道中、何度か魔物が襲ってきていたが、オレとハジメによって悉く殲滅されていた。

 

 

少々暴れ過ぎたかと心配していたのだが、ハウリア族の皆から――特に子供達からは、好意的に受け入れられているようだ。

 

 

ただ、少々気になるのは、ハウリア族の全員にオレは『王様』だと認識されていることだ。

 

 

シアの父親であるカム曰く、昔シアが『銀髪の王様』について村中に広めて回ったらしく、最近生まれた子供以外は認知している存在らしい。

 

 

というか、本当にオレがその『王様』だと決まった訳ではないだろうに。

 

何故かシアは何も訂正しないので、オレは子供達に『王様』と呼ばれているのだった。

 

 

 

そうこうしている内に、オレ達は遂にライセン大峡谷の出口に辿り着いた。

 

 

そこには、立派な階段が設置されている。

 

どうやら、この階段を登って峡谷の外まで上がるらしい。

 

 

 

「……帝国兵は、まだいるのでしょうか?」

 

 

「さてな……。ここからでは、姿は見えないが」

 

 

不安そうに呟くシアに、言葉を返す。

 

 

既に撤退している可能性もあるとは思う。だが、兎人族とは奴隷として非常に人気があるらしい。

 

わざわざ兎人族を狙って捕まえようとする輩がいるくらいには、需要があるということだ。

 

それを考慮すれば、ギリギリまで捕獲を諦めたりはしないだろう。

 

 

オレ達は、長い階段を登っていく。

 

数十分は歩いただろうか。ようやく階段を登り終えると、そこには先客が居た。

 

 

 

「――おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだが……こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

 

カーキ色の軍服らしき衣服を纏った男が驚いた表情で呟いた。

 

他にも三十人程、同じ様な服装の男達がジロジロとこちらを見つめてくる。

 

 

 

(……どうやら、予想は当たっていたらしい)

 

 

帝国兵と思わしき男達を見て、オレは小さく息を吐くのだった。

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

という訳でハウリア族と合流するお話でした。

『王様』の話については、今後どこかで掘り下げていく予定です。


では、次話もよろしくお願いします。
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