ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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いつも読んで頂きありがとうございます。

何とか一週間連続で投稿できました……。


LEVEL.36 ハウリア族とスパルタ特訓

 

 

亜人族の国『フェアベルゲン』へと招かれたオレ達は、その発展具合に驚いていた。

 

 

「まさか、樹海の中にこれほど立派な街があるとはな……」

 

 

天然の大樹で作られた防壁に囲まれたその国は、正に自然で作られた都市というのに相応しい様相だった。

 

街の中に幾つもある大樹の中には、多くの亜人族が家を作って暮らしている。

 

 

自然と共に暮らす、という言葉がぴったり合う都市である。

 

 

「――どうやら我らの故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」

 

 

街の美しさに唖然とするオレ達に、アルフレリックは嬉しそうに話し掛ける。

 

 

「さて、来てもらって早速だが、これからお前さん達にはこの街の長老が集う会議に出て頂く。そこで、お前さん達が『資格を持つ者』であることを、皆に示さねばならん」

 

 

オレ達はアルフレリックに連れられ、街の中央に位置する大樹の中へと招かれるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

あの後、オレ達はアルフレリックに連れられて、他の亜人族の代表である長老達の待つ部屋に通された。

 

そこで、改めてオレ達が七大迷宮の攻略を目指していることを説明していたのだが、当然納得しない者も多くいた。

 

特に、熊の亜人族であるジンという長老は、今もオレ達を強く睨んでいる。

 

 

会議は中々進まず、オレ達を招き入れたアルフレリックまで批判される始末。

 

オレは、改めて亜人族と人間族の間にある深い溝を認識した。

 

 

「こんな人間族の小僧共が資格者の筈がないだろう!! アルフレリック、どういうつもりだ!!」

 

「……私は口伝に従ったまでだ。それこそが我ら長老の座にあるものに課せられた掟の筈だが?」

 

 

声を荒げるジンに、アルフレリックは冷静に返す。

 

だが、ジンは止まらなかった。

 

 

「……ならば今、俺がこの場で証明してやろう!」

 

 

突如、オレ達に向かって駆け出すジン。

 

片腕を振り下ろそうとするその動きは速く、亜人族の中でもかなりの実力者であることが伺える。……だが、オレ達にとっては遅すぎる一撃だ。

 

 

「――悪いな、手加減はするから許してくれ」

 

「なっ……!?」

 

 

次の瞬間、ジンは白目をむいて倒れ伏す。

 

オレはジンの一撃が届く前に懐へと潜り込み、腹部に一撃を食らわせたのだ。

 

 

長老達の間に、ザワリと動揺が広がった。

 

恐らく、彼らの中で今のオレの動きを知覚できたのは、やられたジン本人だけだろう。

 

 

「……図らずとも、これで実力の照明はできたな。……他に異論のあるものは、手を挙げよ」

 

 

アルフレリックが発するその言葉を、否定する者はいなかった。

 

何とも無理矢理だが、これでオレ達は正式にこの国への滞在を許可されたという訳だ。

 

 

「ついでに言ってすまないが、貴方達に一つお願いしたいことがある」

 

 

オレは、これを機にハウリアの処罰を不問にしてもらう様に要求した。

 

後ろに着いてきていたハウリア族達が、驚いた声を上げる。

 

 

「……ふむ、私はその要求に異論はない」

 

 

真っ先にアルフレリックが賛成する。

もしかしたら、彼は元々ハウリアの処罰に思うところがあったのかもしれない。

 

 

だが、他の長老達は賛成する訳がない。

 

そんなことをすれば、長老会の威厳は地に落ちる、とアルフレリックを責める長老達。

 

 

「……では、今反対のものは此処にいる彼らに半殺しにされることを良しとするのだな」

 

 

しかし、アルフレリックが放った言葉に静寂が広がる。

 

 

「もう彼らの力は分かっているだろう。ここで彼らと敵対するのは、余りにリスクが大きすぎることも」

 

「……それに、ハウリアは当初の半分以下にまで数を減らしている。私は、彼らがもう十分に罰を受けていると思う」

 

 

その一言で、長老達は完全に黙り込んだ。

 

……オレ達をだしにしたのは少々気になるが、まぁ要求が通ったから良いだろう。

 

 

 

こうして、オレ達は正式にこの街へ滞在することを許されたのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「――ゼオンさん、ありがとうございました」

 

 

長老達との会議の後、シアが嬉しそうな表情でお礼を言ってきた。

 

一族の罪が不問になったのだ。原因を作ってしまったと気に病んでいた彼女としては、一つ肩の荷が下りた気持ちだろう。

 

 

「気にする必要は無い。ここまでの案内を引き受けてもらったからな、そのお礼だ」

 

 

「本当に、ありがとうございます。私達だけだったら、この先どうなっていたか分かりませんでしたから……」

 

 

シア以外のハウリア族達も、皆口々にお礼を伝えてくる。なんだかむず痒い気持ちだ。

 

 

 

「……さて、迷宮に向かうのは今から十日後だったな。それまでの間、何をして過ごすか……」

 

 

オレがそう呟くと、ハジメが口を開く。

 

 

「――ゼオン、俺に考えがある」

 

 

ハジメの話を聞くと、シアを含むハウリア族達に戦闘訓練を実施しようということだった。

 

どうやら、オレ達がここを去った後の事を考えての事らしい。確かに、彼らをずっと連れて回ることもできないので、良い案だと思う。

 

 

その言葉を聞き、真っ先にシアが手を挙げる。

 

 

「――はい、はい!! 私、ゼオンさんに教えてもらいたいですぅ!!」

 

 

思わずその勢いに苦笑してしまう。

 

俺が了承しようとすると、珍しくユエが止めてきた。

 

 

「……ゼオンは先に他のハウリア族を鍛えて。……弱ウサギについては、私が鍛える。」

 

 

理由を尋ねると、魔力を扱えるシアは他のハウリア族とは違う訓練をした方が良く、魔力の無い人の訓練には、近接戦闘が得意なオレが一番適任であるからだと言う。

 

 

「成程な。そういう事なら、シアは任せよう。オレも時々様子を見に来るからな」

 

 

「ん、分かった。ゼオンも頑張って」

 

 

「あ、あのぉ……私の意見は……?」

 

 

 

とんとん拍子に決まった話に、シアは目を白黒させながらユエに引きずられていくのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

あれから三日が経った。

 

最初はあまり訓練に身が入っていなかったハウリア族であったが、ハジメの訓練を受けてから明らかに様子が変わっていた。

 

積極的に鍛練するようになったし、訓練中も疑問点は直ぐに確認するようになっていた。

 

 

あまり争い事に向かない性格であると考えていただけに、この結果は意外であった。

 

ハジメにどんな訓練をしたのか確認すると、『ちょっと説得(・・)しただけだ』と言っていた。流石である。

 

 

それはさておき、今オレはハウリア族に訓練を行っていた。

 

 

「――常に相手の動きを予測して動け!! 戦闘中は、如何に相手の隙を突くかが重要だ。次の行動が予測できれば、その分攻撃と防御に余裕ができる!!」

 

 

説明しながら、対面で木剣を構えるハウリア族の青年に向かって駆け出す。

 

青年はオレの動きを目で追えていたため、《縮地》を使って一気に加速した。

 

 

彼はオレの姿を見失ったのか目を見開くが、直ぐにウサミミがピコピコと動き、後ろへと回り込んでいたオレへと剣を振るう。

 

オレは水平に振るわれた剣を体勢を低くして避けると、その場で足払いをする。

 

 

予測できなかった攻撃だったのか、青年はバランスを崩して地面に倒れ込む。

 

そこへオレの木剣が首筋に添えられ、訓練は終了した。

 

 

「……お疲れ様。今のは中々良い反応だったぞ」

 

 

青年は、笑顔でありがとうございます、と答えると一歩下がる。

 

すると、オレ達の周りで訓練を観察していた人の中から、次の相手が志願してくる。

 

 

 

(……皆、思っていた以上に成長しているな)

 

 

これが、この三日間ハウリア族に訓練を付けて思ったことである。

 

彼らは、確かに他の亜人族に比べて力はないが、危機を感知する直観的な部分が優れていた。

 

 

先程の青年も完全にオレの姿を見失っていたが、一瞬で位置を補足し、反撃を仕掛ける事が出来ていた。

 

これは、戦闘において間違いのない強みだ。

 

 

今の段階でも、弱い魔物くらいであれば倒せるだけの力を全員が身に付けている。

 

 

(――どこまで成長するか楽しみだな)

 

 

オレはそんなことを思いながら、次の相手に向かって剣を構えるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

ところ変わって、フェアベルゲンの外れにある住居のない空間。

 

 

そこで、二人の少女が向かい合っていた。

 

 

「――ユエさん、いきますよぉ!!」

 

 

「……ん、いつでも良い」

 

 

ウサミミを携えた少女――シアがその言葉を聞いて駆け出す。

 

その体は、うっすらと白い光を纏っていた。

 

 

「――せぇいっ!!」

 

 

シアが放った中段蹴りが、ユエの華奢な体に向かう。

 

普通であれば、吹き飛ばされてもおかしくないスピードで放たれる蹴り。

 

 

だが生憎、此処にいる少女は普通ではない。

 

 

「……甘い。直線的過ぎ」

 

 

ユエの体からブワリ、と黄金の光が立ち昇り、シアの放った蹴りを受け止める。

 

そして、そのまま足を掴んでシアを投げ飛ばす。

 

 

だが、投げ飛ばされたシアは空中で体勢を整えると、近くの木の幹を蹴って再びユエに向かっていく。

 

 

縦横無尽に木々の間を跳び回るシアは、ユエの背後から奇襲を仕掛ける。

 

 

とった、とシアが油断した時、ユエは一言呟いた。

 

 

「――《風壁》」

 

 

「えっ!? はわぁあああ!?」

 

 

突如ユエの周囲に吹き荒れた風によって、シアは大きく吹き飛ばされ、背後の木に激突した。

 

 

ユエは、シアがぶつかった木に向かって歩いていくと、シアの顔を覗き込んで宣言する。

 

 

「……今日も私の勝ち」

 

 

「う、ううぅ……!! ズルいですよ、ユエさん!! 魔法使うなんて!!」

 

 

シアはそういって手足をバタバタさせた。

 

そんなシアを見て、呆れた表情をしながらユエは口を開く。

 

 

「……魔法を使わないなんて言ってない」

 

 

「そうですけどぉ……ぐすん。魔法を使われたら、勝てる気がしませんよぉ」

 

 

思わず愚痴を溢すシアに、ユエは真剣な表情で問いかける。

 

 

「……貴方の覚悟は、そんなものなの?」

 

 

「え……?」

 

 

「貴方は、私達の旅に付いていきたいと言った。なら、それ相応の実力がないと無理なことは分かってる筈」

 

 

ユエの言葉に、シアは俯いた。

 

そうだ、今の自分では、連れて行ってもらえない。なら、やるべきことは一つしかないのだ。

 

 

「……私に一度でも勝ったら、貴方を連れて行くようにハジメ達を説得しても良い」

 

 

「えっ!? それ、本当ですかぁ!? 今更、嘘って言っても駄目ですからね!!」

 

 

ユエの発した一言に、やる気が満ち溢れるシア。

 

ユエは一つ頷くと、再び構えを取る。

 

 

「……ん。でも、手加減はしないから、そのつもりで」

 

 

「分かってますよぉ!! よーし、頑張るぞ!!」

 

 

気合を入れ直して、再びユエに突撃していくシア。

 

 

この日の二人の特訓は、日が暮れるまで続くのだった。

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

色々と書きたいシーンはたくさんあるのに、中々そこまで進まないジレンマがあります。
粛々と進めていくしかないですね。


では、次話もよろしくお願いします。
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