本日二話目の投稿です。
前話を読んでいない方は、ご注意願います。
魔力駆動二輪を走らせ、オレ達は町の近くまで辿り着いた。
これ以上近付けばいらない騒ぎを引き起こすだろうと、オレ達は魔力駆動二輪を『宝物庫』へとしまう。
徒歩に切り替えて街へと向かう道中、オレ達はステータスプレートの内容を書き換えることにした。
ステータスプレートは、この世界では身分証明書の様なものだ。街に入る際には確認されるだろう。
実際、勇者一行として近隣の町に向かった際も、何かとステータスプレートが必要だった。
「……ふむ、こんなところで良いか」
オレは隠蔽したステータスプレートを眺めて頷く。
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ゼオン・ベル 17歳 男 レベル:30
天職:雷帝
筋力:150
体力:150
耐性:180
敏捷:200
魔力:450
魔耐:300
技能:剣術・体術[+縮地]・言語理解
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ステータスの数値は全て百分の一程度にしておいた。
技能についても、最低限戦闘が出来ると思わせる程度に減らしている。
「……ま、こんなもんで良いだろ」
どうやらハジメの方もステータスを書き換え終わったようだ。
あとは、シアの事だろうか。
オレとハジメがシアに視線を向けると、本人は何も分かっていない様に首をかしげる。
ユエはともかくとして、彼女は兎人族だ。
しかも白髪という希少性もあるため、そのまま街を出歩けば良からぬ輩に絡まれるだろう。
「――ゼオン、こういう策はどうだ?」
「……成程、それでいくか。シア、ちょっといいか?」
オレ達がシアを呼ぶと、彼女は何の疑いもなく近付いてくる。
そんなシアに、ハジメは『首輪』を取り付けた。
「……はえ? ――えええぇー!? いきなり何するんですかぁ!?」
「まぁ、そう騒ぐな。実はな……」
オレは、シアを奴隷に見せかけることで、トラブルを回避する意図があることを説明する。
「……ということだ。シアの容姿は少々目立つからな」
「えぇっ!? そ、それって……ゼオンさんは、私のこと美人だと思ってるってことですかぁ!?」
何故か、シアが大きく驚いている。
「……? そう言ったつもりだが」
「は、はうぅ……!? ズルいですよ、ゼオンさん。そんなにはっきり……」
そう、中身はともかく、シアの見た目はかなりの美少女である。
誰かの奴隷であると示さなければ、人攫いに狙われてしまうだろう。
オレ達は未だにくねくねしているシアを置いて、ブルックの町に向かって歩みを進めるのだった。
◆◇◆
あの後、オレ達は町の入り口であろう門の前に辿り着いた。
すると、門の脇に建てられた小屋から一人の男が出てきて、オレ達に質問をしてきた。
「ステータスプレートを見せてくれ。あと、お前達が町に来た目的は?」
どうやら、彼はここの門番らしい。
定型的な質問なのだろう。淡々とした口調にあまりやる気は感じられない。
「旅の途中で寄ったんだ。目的は、食料の調達だな」
ハジメの答えに納得したのか、特に言及されることもなく、ステータスプレートの確認は終わった。
因みに、ユエのステータスプレートは紛失したと報告してある。
シアに至っては、奴隷だと思われているので、そもそもプレートを見せる必要もない。
「よし、大丈夫だ。通って良いぞ」
そう言って、門番は扉を開けてくれた。
オレ達は連なって門を潜る。
門の向こうに広がる町中は、それなりに活気があった。幾つか露店などもあり、人々が行き交っている。
「……さて、まずは冒険者ギルドにいくか」
何はともあれ、金銭がないのは困るだろう。
確か、冒険者ギルドでは素材の買取等も行っていた筈だ。
オレの言葉に、三人は頷く。
オレ達は、町の大通りの先にある冒険者ギルドへと足を向かわせるのだった。
◆◇◆
「……意外と、綺麗なんだな」
冒険者ギルドへと入ると、横からハジメの呟きが聞こえた。
どうやら、ギルドは荒くれ者達の場所というイメージがあったため、もっと汚れていると考えていたらしい。
オレ達は受付と思わしき場所に向かい、声を掛けた。
すると、受付の女性がハジメの事を見て呆れた表情を作っていた。
「……あんた、そんな美人を引き連れておいて、まだ足りないのかい? 残念だったね、美人の受付じゃなくて」
いきなり何の話だ、とハジメの方を見ると、何やら気まずそうに視線を逸らされた。
すると、受付の女性が今度はオレの方を向いて口を開いた。
「そっちのあんたは、美人を連れている割に冷静だね。興味がないのか、ただ単に鈍いのか……。お嬢ちゃん、苦労しているんだろうね」
いきなりよく分からないことを言われて困惑していると、シアが勢い良く頷いていた。
……何なんだ、一体。
「あらごめんなさい、若い子を見るとつい口が出ちまう。……では、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」
気を取り直して、オレ達は素材の買取を依頼する。
すると、冒険者ギルドに登録していると様々な特典が受けられると説明されたので、登録することにした。
ユエとシアのステータスプレートについては、騒ぎになるのを避けるため、また今度発行することになった。
そして、いよいよ魔物の素材買取の時間である。
流石に奈落の底にいた魔物の素材を出すとどうなるか分からないため、オレ達は樹海で狩った魔物の素材を出すことにする。
どうやらこのレベルでも相当珍しい物のようで、そこそこの値段が付いていた。
一気に大金を得たオレ達は、受付の女性にもらった地図を持ってギルドを後にする。
そうして、今日泊まる予定の宿へと向かうのだった。
「いらっしゃいませー、ようこそ『マサカの宿』へ!! 本日はお泊りでしょうか?」
冒険者ギルドの受付に紹介された宿へ着くと、十五歳くらいの少女が元気よく挨拶してきた。
「宿泊でお願いします」
代表してオレがそう答えると、少女はちらりとユエとシアを見ながら尋ねてくる。
「はい、四名様ですねー。それで、お部屋はどうしましょう? 今は、二人部屋が二つ開いておりますが……」
丁度良いことに、四人分の部屋が空いていたようだ。
「では、二人部屋を二つお願いします」
店員にそう言うと、オレは三人に声を掛ける。
「皆、二人部屋が二つ開いているそうだ。男女で別れて部屋を取るから……」
「……ちょっと待って。私は、ハジメと一緒が良い」
オレの言葉を遮り、ユエが口を開く。
いや、そう言われる気はしていたが、今回は譲れない。
「……ユエ、ちょっと待ってくれ。それだとオレとシアが同じ部屋になる。それはマズいだろう」
「――そそそ、そうですよ、ユエさん!! わ、私が……ゼオンさんと、その……」
オレの言葉に同調するようにシアがごにょごにょと声を発する。おい、もっとハッキリ言ってくれ……。
すると、ユエはシアに近づくと、オレ達から離れる様に遠ざかっていく。
「ユ、ユエさん……!! 何で、こんなことを……!?」
「……ん、良いから聞いて。これは、シアにとってもチャンスの筈」
……何やら小声で話しているが、微妙に聞こえているのだが。
「……ゼオンはああ見えて、意外と寂しがりなところがある。だから、もっと積極的にアピールするべき」
「な、なるほど……!! 流石ユエさん、策士ですぅ……!!」
(いや、本人に思いっきり聞こえているんだが……)
何やらこそこそとアホなことを話している二人を見て、オレはため息を吐く。
二人は戻って来ると、シアは顔を真っ赤にして口を開いた。
「わ、わわ私は、ゼオンさんと一緒の部屋が良いですぅ!!」
いきなりの宣言に、宿屋にいる他の客がザワつく。
大声で少女が男と同じ部屋が良いと言っているのだ。それは目立つだろう。
「……いや、シア。しかしだな……」
「ゼ、ゼオンさんは、私と一緒は嫌、ですか……?」
ウルウルと瞳を潤ませて尋ねるシア。
それを見て、他の客が騒ぎ出していた。マズい、かなり目立っている。今のオレは、少女からの誘いを無碍にする男と思われているのでは……。いや、別に間違ってはいないのだが……。
「……もう良いだろ、その部屋割りで。早く休もうぜ」
ハジメが、呆れたように口を出してくる。
くそ、他人事だと思って……!!
「……分かった。だが、変なことはしないからな」
「…………計画通り、ですぅ」
おい待て、今聞き捨てならない言葉が聞こえたんだが。
げんなりとしながら、オレは自分の部屋へと向かう。どうやら、三階の角部屋らしい。
部屋の中は、そこそこの広さがあった。
ベットなどの調度品も綺麗に整えられており、清潔感のある空間となっていた。
流石、ギルドおすすめの人気な宿だけある。
「うわぁ、綺麗な宿ですねぇ……」
オレの後から部屋に入ったシアも、感嘆の声を上げていた。
「……本当に一緒の部屋で寝るのか……?」
オレは、当たり前の様に部屋に入ってベッドを触っているシアに、視線を向ける。
「もうっ、まだ言ってるんですかぁ? 私は気にしてません。それとも、やっぱり私と同じ部屋は嫌ですか……?」
「いや、そういうわけではないが……」
本来であれば、シアの方こそもっと気にするべきだと思うのだが。
まぁ、今更一緒の部屋はやめる等とは言えないので、甘んじて受け入れよう。
オレ達四人は宿に備え付けられた風呂に入った後、各自の部屋で就寝するのだった。
◆◇◆
――深夜。街の中の誰もが眠りについている時間、一対のウサミミがピコンと動いた。
「…………」
彼女の名前はシア・ハウリア。
生まれつき魔力を持って生まれたが為に、他の種族から迫害されてきた少女である。
彼女は、自身が眠るベッドから上半身を起こすと、隣のベッドで眠る少年に視線を向けた。
ゼオン・ベル。
つい数日前に出会ったばかりの少年で、路頭に迷っていた自分達ハウリア族を救ってくれた恩人の一人。
「……まさか、本当に手を出してこないなんて」
そう不満げに漏らすシアは、じぃっとゼオンの顔を見つめる。
「……やっぱり、似てますよね。というか、服装までほぼ同じってことは、もう間違いなく本人なのでは……?」
思い返すのは、小さい頃に見た夢の記憶。
まだ自分の母が生きていて、自身の特殊性に悩んでいた時期。
シアは、一つの夢を見たのだ。
銀髪の少年が、亜人族や人間族を従える姿を。多くの種族を従える存在は、少女の中で一つの言葉になって印象に残った。
――『王様』。その威風堂々とした姿と、美しい銀髪が心に刻まれる。
「……ついに、出会えましたよ。……ママ」
思わず溢れる言葉。
ずっと憧れて、待ち続けていた存在が、今目の前に居る。
だから、これからも頑張ろう。彼の傍に居たいから。置いて行かれない様に、もっと強くなる。
シアは、そう心に誓うのだった。
因みに、その後ゼオンの布団に潜り込もうとして、部屋を叩き出されたウサミミの少女が噂になったりするのだった。
◆◇◆
翌朝、オレ達は『ライセン大峡谷』の迷宮攻略に向けた準備をしていた。
ホテルのチェックアウトは昼なので、まだ時間に余裕はある。
ハジメとオレは新武器の作成。
ユエとシアは今後必要になる必需品等の買い物に出かけるのだった。
――数時間後、ユエとシアが返ってきたので、先程作成した武器を見せる。
今日作っていたのは、シア用の武器である。
変形する大槌であり、名前は『ドリュッケン』という。非常に重いが、身体強化が得意なシアならば使い熟せるだろう。
シアはドリュッケンを受け取ると、嬉しそうに抱きしめていた。
喜んでもらえると、苦労した甲斐があるというものだ。
まぁ、オレは簡単な設計図の作成と、魔法陣の設定位置を提案しただけで、作成自体は殆どハジメが行ったのだが。
さて、シア用の武器も完成したし、日用品の買い付けも済ませた。
そのため、旅の準備が終わったオレ達は、再び『ライセン大峡谷』を目指してブルックの町を出発するのだった。
読んで頂いてありがとうございます。
次回からは、いよいよライセンの迷宮を攻略していきます。
では、次話もよろしくお願いします。