ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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LEVEL.39 ライセンの大迷宮

 

 

ライセン大峡谷の中を、二台の魔力駆動二輪が走る。

 

道中に出没する魔物達を蹴散らしながら、オレ達はライセンの大迷宮を探していた。

 

 

探索しながらの行進なので、魔力駆動二輪の速度は遅い。精々、普通に走る程度のスピードだろう。

 

 

「はぁ、全然見つからねぇな。……これは、今日中に終わらないかもなぁ」

 

 

ハジメが愚痴を溢すが、無理もないだろう。もう数時間は探しているが、一向に見つかる気配がない。

 

既に日は落ち始め、今は夕方である。

 

 

「……仕方がない、そろそろ野営の準備をするか」

 

「……そうだな」

 

 

オレの言葉に、ハジメも頷く。

 

夜になってしまえば、仮に迷宮への入口があっても見逃す恐れがある。

 

オレ達は手頃な岩陰にキャンプを作成し、今日は休むことにするのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

ブルックの町で買い揃えた食材で使ったシチューもどきを皆で食べ、さぁ就寝するかと言った時、お手洗いに行っていたシアが、慌ててキャンプに戻ってきた。

 

 

「――み、皆さん!! ちょっと来てください!!」

 

「どうした、シア? 今のお前なら、ここにいる魔物くらい一人で倒せるだろう?」

 

 

訝しげにそう尋ねると、シアはオレの手をぐいぐいと引っ張ってくる。

 

 

「違いますよぉ!! 魔物じゃなくて、迷宮の入口を見つけたんです!!」

 

「……何?」

 

 

オレ達はシアに連れられて、キャンプとは別の岩陰に案内される。

 

するとそこには、岩壁を削って作られたかの様な看板が鎮座していた。

 

 

『おいでませ!! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』

 

 

「…………何だ、これは?」

 

 

看板に刻まれた文字を読み、一瞬思考がフリーズする。何だ、この軽薄な文章は……。

 

 

「……なあ、これマジだと思うか?」

 

「……でも、ミレディ(・・・・)って書いてある」

 

 

ハジメの疑問にユエが答える。

 

確かに、『ミレディ・ライセン』という名前は、オスカーの手記にも書かれていた。

 

 

『ミレディ』という名前は、今の世界では知られていない。

 

つまりこの看板を作ったのは、かつての解放者本人か、それに近しい人物の可能性が高いということだ。

 

 

「それにしても、迷宮の入り口が見当たりませんね? ここは行き止まりですし……」

 

 

そんなことを考えていると、シアが看板の横の壁をペシペシと叩いて入り口がないか調べていた。

 

 

「シア、罠が有るかもしれん。慎重に……」

 

 

次の瞬間、ガコッ、という音と共にシアが押していた壁が回転した。

 

 

「――へぶっ!?」

 

 

そして、壁が回転したことで支えを失ったシアは、顔面から地面に倒れ込むのだった。

 

 

「……大丈夫か?」

 

「う、うぅ……。痛いですぅ……」

 

 

半泣きになっているシアを助け起こす。

どうやら、大した怪我ではなさそうである。

 

 

「……何はともあれ、これが迷宮の入口だろう。でかしたぞ、シア」

 

 

こうして、オレ達は隠されていたライセンの迷宮に突入するのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

シアが見つけたライセンの迷宮へと足を踏み入れたオレ達。

 

 

回転式の隠し扉を抜けると、真っ直ぐな通路が続いていた。

 

碌に明かりも設置されていないため、目を魔力で強化して進む。

 

そうして四人全員が迷宮内に足を踏み入れると、入り口が勝手に閉まった。

 

 

次いで、複数の風切り音の様なものが耳に届く。

 

直感に従い、剣を振るって飛んできたものを叩き落とす。

 

目線を向けると、そこにあったのは闇に紛れる様に黒い数本の矢だった。

 

 

「……成程、そういう(・・・・)迷宮か」

 

 

今のは、侵入者を感知して自動的に発動するタイプの罠だろう。

 

いきなりこの調子では、一体いくつ罠があるか分かったものではない。

 

 

オレ達は慎重に歩みを進めると、小さな部屋に辿り着いた。

 

部屋の中央には石版があり、入り口の看板と同じ文字で文章が掘られている。

 

 

『ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? ニヤニヤ』

 

『それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ』

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

オレ達は、石板の内容を見て黙り込む。

 

きっと、今のオレ達は同じ思いだろう。

 

 

ウザイ。果てしなくウザイ。

 

この看板を作成した奴は、随分と良い性格をしていたのだろう。

 

 

 

オレ達は、石板を無視して先へと進んで行く。

 

それにしても、この迷宮は非常に厄介な性質をしている。

 

一番厄介なのは、迷宮の奥へと進む程に魔力の拡散効果が強くなっており、魔法が発動させ難くなっていることだ。

 

 

迷宮の外に居た時は上級呪文を二、三発は打てそうだったが、今は一発撃てるかどうかというレベルで悪化している。

 

実戦で使用する事を考えると、中級呪文であっても多発するのは控えた方が良いだろう。

 

 

一方、身体強化であれば、体内で魔力を練るため魔力消費が少なく済むようだ。

 

そのため、基本は呪文を使わずに身体強化だけで乗り切ることになるだろう。

 

 

「――えっ?」

 

 

突如、オレの隣を歩いていたシアの足元が沈み込み、ガコッと音を立てた。

 

 

すると、壁の隙間から高速回転する刃が飛び出してくる。

 

 

「なっ……!? 皆、避けろ!!」

 

 

オレの声が響くと同時に、皆で一斉に壁から飛び出してくる刃を避ける。

 

 

「……《魔力感知》に反応が無かった。つまり、完全に物理的なトラップだ」

 

 

まさか、わざわざ魔法を使わないトラップを大量に設置しているのだろうか。事前に察知させない巧妙な罠。その殺意の高さに、やはりここもあのオルクス大迷宮と同じ七大迷宮なのだと思い知らされる。

 

 

「下手に壁は触らない方が良いな……。皆、注意して進もう」

 

 

オレ達は、この後も様々なトラップを掻い潜っていった。

 

いきなり階段が平面な坂に切り替わったり、上から大岩が落ちてきたり。何だか後半は、トラップを発動させていないのに仕掛けが作動していた気がする。

 

 

「この迷宮を作った奴は、とことん性格が捻じ曲がっているらしいな……」

 

 

思わずそんなことを呟いてしまうくらい、トラップの数が異常に多い。

 

 

 

そうして迷宮をどんどん進んで行くと、少し広い場所に出た。部屋の奥には扉があり、それ以外の壁には甲冑を纏った像がずらりと並んでいる。

 

 

「これは、扉か……? ようやく最深部に着いた、という事だろうか」

 

 

「うぅ……。でもこの場所、嫌な予感がビンビンしますぅ……」

 

 

シアのその言葉がフラグだったのか、オレ達が通ってきた入り口が封鎖され、甲冑の像――ゴーレムが一斉に動き出した。

 

 

「――なんだ、随分直接的なトラップだな。まぁ、手っ取り早いのは大歓迎だけどな」

 

「……ん、こっちの方が得意分野」

 

 

ハジメとユエが戦闘態勢に入る。

 

 

「よし、さっさと終わらせよう」

 

「今までの鬱憤、此処で晴らしてやりますぅ!!」

 

 

オレとシアがそれぞれゴーレム達に向かっていく。

 

 

「――えぇいっ!!」

 

 

シアが、巨大化させたドリュッケンをゴーレムに振り下ろす。

 

頭部に致命的な一撃を受けたゴーレムは、バラバラになって地面に散らばった。

 

 

ドパンッとハジメの銃撃が飛び交い、ユエの魔法でゴーレムが吹き飛び、オレの蹴りで頭を砕かれる。

 

オレ達は次々とゴーレムを破壊していき、あっという間に数十体はいたゴーレム達が全滅した。

 

 

「……思ったより、あっけなかったな」

 

 

ハジメの呟きが部屋に響く。

 

確かに、随分と手応えがないというか……。七大迷宮の試練にしては、簡単過ぎる気もする。

 

 

「まぁまぁ。とにかく倒せたんですから、早く先に進みましょう!!」

 

 

シアが妙にすっきりした表情でそう促す。

 

どうやら、此処までの道中で溜まったストレスは発散できたらしい。

 

 

「……そうだな、早く済ませよう」

 

 

シアの言葉に頷き、オレ達は扉へと歩みを進める。

 

 

しかし、突如カタカタという音と共にゴーレムが宙に浮かぶと、そのまま体がくっついて動き出したのだ。

 

 

「……再生するのか。面倒な……」

 

 

再び扉の前に立ち塞がるゴーレム達に、オレはげんなりとする。

 

 

その時、ふと状況を解決できる作戦が思い浮かんだ。

 

オレは再び向かってきたゴーレムと戦いながらも、ハジメに声を掛けた。

 

 

「ハジメ、あの甲冑共の材質は分かるか?」

 

 

「ちょっと待ってろ…………鉄を含む、特殊合金だな。どうやら魔力に耐性があるみたいだ」

 

 

ハジメの答えに、オレはニヤリと笑う。

 

ハジメの《鉱物系鑑定》によって、こいつらには鉄が含まれていることが分かった。であれば、あの手が使えるだろう。

 

 

「――ジケルド!!」

 

 

オレの掌から放たれた光の球体が、目の前のゴーレムに命中する。

 

ゴーレムの体が光り出すと、一斉に他のゴーレム達の動きが止まる。そして、光り輝いているゴーレム目掛けて飛んでいき、くっついた。

 

 

あっという間に団子状になったゴーレム達は、ギシギシと体を軋ませるが、動く事が出来なくなっている。

 

 

「よし皆、今のうちに扉を通るぞ」

 

 

こうして、オレ達はゴーレムのトラップを抜けてさらに先へと進むのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

ゴーレム達の居た部屋を抜け、オレ達は長い通路を進んでいた。

 

数十分は歩き続けていると、ようやく通路の終わりが見えてきた。

 

 

通路の先には、小さい部屋があった。

 

部屋の中央には石板が置いてあり、その奥には一本の通路がのびている、何だか見覚えのある部屋だ。

 

 

「おい、ここって……」

 

 

ハジメの言葉を肯定するかのように、中央の石板に文字が新たに刻まれる。

 

 

『ねぇ、今どんな気持ち?』

 

『苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?』

 

『ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの?』

 

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

 

落ち着け、こんなのただの挑発だ。

挑発に乗れば、相手の思う壺だろう。そう、ここは冷静に、冷静に……。

 

 

『言い忘れていたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します』

 

『いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです』

 

『嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいんだよ!! ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です。残念でした!!』

 

 

 

……一つ、深呼吸をする。

 

 

「――よし、殺すか」

 

「ちょ、ちょーっと待ってください、ゼオンさん!? 気持ちは本当に良く分かりますけど、落ち着いて下さい!! なんか体から邪悪なものが漏れてますからぁ!?」

 

 

何故かシアに止められたので、一旦動きを止める。

 

 

(……というか、この迷宮はどうやって攻略するんだ? さっきのが出口でないとすると、他に最深部に繋がる道がある筈……)

 

 

ふと、先程戦ったゴーレム達の事を思い出す。

 

ゴーレムが動くとき、僅かに魔力を感じた。これは、この迷宮に入って初めての事だ。

 

 

基本的にこの迷宮のトラップは、魔力を使用しない物理的なトラップで統一されていた。

 

それは侵入者にトラップの存在を気付かせないためでもあるのだろうが、もう一つ考えられる理由がある。

 

 

それは、魔力を拡散する『ライセン大峡谷』の性質。

 

特にこの迷宮内は、碌に魔法も使えない環境である。仮に先程のゴーレムが魔石などに魔力を込めておいて、自動で動く形式であるならば、あっという間に魔力が尽きてしまうだろう。

 

 

要するに、あのゴーレム達は自動で動いていた訳ではない。誰か(・・)が動かしていたのだ。

 

先程の魔力を辿れれば、その誰かの元に行くことはできるかもしれない。

 

 

オレは《魔力感知》を発動する。

 

すると、先程のゴーレム達であろう反応とは別に、大きな魔力反応を感知した。

 

 

「――見つけた」

 

 

オレは小部屋の壁を見つめるが、魔力反応のあった場所とは結構な距離がある。

 

上級魔法が使えない今、一撃で無理矢理壁を破壊していくのは難しいだろう。

 

 

そこでオレは、未だに煽り文句が追加されていく石板を見た。なるほど、コイツを利用すれば壁に穴を開けられるかもしれない。

 

オレは、石板に掌を向け、呪文を唱える。

 

 

「――ザグルゼム」

 

 

バチリ、と雷の球が石板に直撃する。

 

淡く光を放つ石板にさらに呪文を唱えようとすると、石板に刻まれた文字が変化した。

 

 

『あっれー? もしかして今、攻撃したのぉ? こんな石板一つ壊せないなんて、プププ、弱すぎて面白ーい!!』

 

 

「――ザグルゼム、ザグルゼム、ザグルゼム、ザグルゼム」

 

 

 

石板を無視して、呪文を唱え続ける。

 

既に、石板には相当量の電力が溜まっているだろう。

 

 

「あ、あのー……ゼオンさん? 先程から何を……?」

 

「……シア、邪魔しない方が良い」

 

「ハ、ハジメさん? どうしてですか?」

 

「ゼオンの奴、明らかにキレてやがる……」

 

 

 

『何度やっても同じだよー? そんな弱っちい攻撃じゃ、傷一つ付けられ――』

 

 

「――ザケルガァ!!」

 

 

掌から放たれた雷の槍が、石板に当たって爆発的な光を放つ。

 

すると、元の数十倍に膨れ上がったザケルガは、石板を消し飛ばして直進し、壁に大穴を開けて消え去った。

 

 

「……さぁ、行くぞ、お前達」

 

 

「「「……はい」」」

 

 

オレが声を掛けると、三人は揃って返事をしていた。

 

 

「……分かったか、シア。一つ覚えておけ。……ゼオンは、怒らせたらヤバイ」

 

「は、はい。分かりましたぁ……」

 

 

 

何やら後ろからひそひそと声が聞こえた気がしたが、オレは気にせず進んで行くのだった。

 

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

平日に向けたストック作成のため、今日は一話だけの投稿になります。


では、次話もよろしくお願いします。
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