ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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LEVEL.40 迷宮の守護者 ミレディ・ライセン

 

 

無理矢理こじ開けた通路を、オレ達は進む。

 

この迷宮が一定時間ごとに構造が変わるのであれば、この通路が修復される前に通らなくてはならない。

 

 

「皆、もうすぐさっきのゴーレムを操っていた奴の所に着く。準備をしておいてくれ」

 

 

オレは通路を進みながら、後ろの三人に声を掛ける。

 

 

「あんなに沢山のゴーレムを一度に操るなんて、一体どんな敵なんでしょう……?」

 

 

「……さてな。ただ、《魔力感知》で感じる魔力はかなり大きい。強敵と思って良いだろう」

 

 

不安そうに呟くシアに注意するよう警告する。

 

 

そう、ここがオルクス大迷宮と同じ難易度だとすれば、迷宮の最奥には強力な守護者がいる筈である。

 

 

オレは、かつて戦ったヒュドラの事を思い出し、苦い顔をする。

 

あの時は、ハジメとユエがいてもギリギリだった。

 

だが、今のオレ達はあの時よりも強い。それに、新しい仲間のシアもいる。彼女の身体強化に特化した強さは、この迷宮と非常に相性が良い。勝機は十分にあるだろう。

 

 

 

そんなことを考えている内に、オレ達は遂にゴーレムを操っていた親玉の元に辿り着くのだった。

 

 

超巨大な球状の空間に、巨大なゴーレムが浮いている。

 

全長は二十メートル以上あるだろうか。あまりに大きいその姿に、オレ達は思わず驚愕してしまう。

 

 

「でかいな……」

 

「……あぁ。だが、どうやらあれがこの迷宮の親玉らしい」

 

 

ハジメの言葉に答えながら、オレは巨大なゴーレムを指差す。

 

そう、先程から感じていた魔力は、このゴーレムの中から発されている。

 

 

オレ達が意を決して球状の空間に足を踏み入れると、巨大ゴーレムも動き出した。

 

頭部らしき部分を一瞬赤く光らせるゴーレムに、オレ達は戦闘態勢を取る。

 

 

だが、身構えたオレ達に対し、何とゴーレムは気さくに片手を上げ、声を発したのだ。

 

 

『やほー、はじめまして。みんな大好き、ミレディ・ライセンだよぉー』

 

 

「「「「………………は?」」」」

 

 

 

オレ達は、あまりに予想外の反応をしたゴーレムを見て、揃って間抜けな声を発するのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

『――もう、まさか無理矢理この部屋まで辿り着くなんて、ちょっと強引過ぎだよぉ』

 

 

喋っている。目の前の巨大ゴーレムが。

 

まさか話し掛けられるとは思っていなかったオレ達は、思わず黙り込む。

 

 

 

『あのねぇ、挨拶されたんだから何か返そうよ。これって最低限の礼儀だよー? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ』

 

 

実にイラっとする話し方である。

 

だがそれ以上に、オレはこのゴーレムの発言が気になっていた。

 

 

「……ミレディ・ライセン、だと?」

 

 

そう、このゴーレムは、ライセンの迷宮の創始者である『ミレディ・ライセン』を名乗ったのだ。

 

 

『そだよー。って、もしかしてここまで来たのに私の名前知らないのぉ? 勉強不足だぞー』

 

 

……コイツは一々煽らないと喋れないのだろうか?

 

 

いや、そんなことより、ミレディ・ライセンは人間族だったはず。つまり、故人になっている筈なのだ。

 

 

「……おい、ミレディ・ライセンは人間で故人のはずだろ? それがゴーレムになってるなんて聞いたことがない。……お前は一体何者なのか説明しろ」

 

 

オレの疑問をハジメが質問してくれた。

 

自称ミレディ・ライセンは暫し沈黙すると、頭部の目を一瞬赤く光らせ、言葉を返してきた。

 

 

『……えー? ミレディさんは初めからゴーレムさんなんですけどぉー。何をもって人間だなんて言ってるのかな?』

 

 

オレ達はオスカー・オルクスの迷宮を先に攻略したこと、そしてオスカーの手記にミレディ・ライセンのことが書いてあったと説明する。

 

 

すると、自称ミレディは少し驚いた様子を見せた。

 

 

『オーくんの迷宮攻略者、か。……なら、キミ達の目的は神代魔法かな? それとももしかして、神殺しをしてくれるのかな? 神のクソ共についても、ある程度事情は把握してるんだよね?』

 

 

自称ミレディはこちらに尋ねてくる。

 

その声には、強い憎しみと後悔が感じられた。

 

 

「……確かにオレ達の目的は神代魔法だ。だが神の手先については、オレ達から手を出すつもりはない」

 

 

オスカーにも、迂闊に手を出すなと言われているしな。

 

 

『……ふーん? まぁ、それはキミ達の自由だからね。……それじゃあ、試練を初めようか?』

 

 

そう言うと、ゴーレムの周りに幾つもの立方体が浮かぶ。

 

いきなりの戦闘態勢に、オレ達は咄嗟にゴーレムから距離を取った。

 

 

「って、まだこっちの質問に答えてねぇじゃねーか!!」

 

 

『あははっ、タダでは教えられないなー。そんなに詳しく知りたいなら、見事私を倒してみよ!!』

 

 

ハジメが文句を言うが、自称ミレディはどこ吹く風だ。

 

宙に浮いたゴーレムが腕を振るうと、周囲に浮いていた立方体がオレ達に向かって降り注いでくる。

 

 

オレ達は一斉に散開し、攻撃を避ける。

 

しかし、立方体はオレ達を追いかける様に軌道を変え、再び襲い掛かってきた。

 

 

「――ちぃっ!? 皆、恐らく奴が使っているのは、ゴーレム達を操っていた魔法だ!! 本体を攻撃しないと、これは止まらない!!」

 

 

『ピンポーン。せいかーい』

 

 

オレが立方体を避けながら皆に注意すると、自称ミレディが間延びした声で認める。

 

 

「――ザケル!!」

 

 

掌から放たれた雷がゴーレムへと向かうが、直前で間に入ってきた立方体に防がれる。

 

しかも、立方体は表面が多少焦げただけで、対して効いていない。

 

 

(……これは、オレとは相性が最悪かもしれないな)

 

 

上級呪文が使えない今のオレでは、あの立方体を越えてゴーレムにダメージを通す手段が少なすぎる。

 

 

「――ええいっ!!」

 

 

シアが、自身に飛んできた立方体をドリュッケンで弾くが、傷が付いている様子はない。

 

どうやら、物理的な強度も相当の物らしい。

 

 

『……うーん、こんなもの? 特に銀髪のキミ。さっき迷宮に穴を開けた一撃は使わないのかな?』

 

 

ゴーレムから探る様な視線を感じる。

 

どうやら、先程オレが迷宮相手に使った攻撃を警戒しているらしい。

 

まだザグルゼムの効果はバレていないようだが、それも時間の問題だろう。

 

 

『――ゼオン、メツェライを使う。援護を頼む』

 

 

そんな中、ハジメが《念話》で話し掛けてくる。

 

その声を聞いたオレは、ゴーレムに向かって駆け出す。

 

 

当然、近付こうとするオレに殺到する立方体。

 

それを《縮地》で掻い潜り、オレはゴーレムに向かって掌を突き出す。

 

 

「テオザケル!!」

 

 

先程とは比べ物にならない強さの電流がゴーレムに迫る。

 

しかし、またもや飛んできた立方体が幾つも間に入り、その電撃の威力を減衰させていく。

 

 

そして遂には、ゴーレムに届く前に電撃は消滅してしまった。

 

 

『……この電撃も、さっきほどの威力じゃない。まさか、もう魔力を使い果たしてたのかなぁ?』

 

 

テオザケルを受けきったゴーレムから、煽るような声が聞こえるが、オレの目的は既に達成できている。

 

 

「――ナイス時間稼ぎだ、ゼオン」

 

 

その声と共に、無数の銃弾がゴーレムに襲い掛かった。

 

ハジメが今使っているのは、義手に装着して使用する六砲身ガトリング砲の『メツェライ』だ。発射速度が毎分一万二千発という化け物兵器である。

 

 

ゴーレムはハジメがこんな攻撃をしてくるとは思っていなかったのか、銃弾の雨をその身に受ける。

 

土煙が上がってゴーレムの姿を覆い隠していく。

 

 

やがて全ての弾を打ち尽くしたのか、メツェライからカラカラという音が鳴り、攻撃が止む。

 

 

「……さ、流石にいまのは効きました、よね?」

 

 

シアが不安そうにこちらに声を掛ける。

 

 

「あぁ、無傷とはいかない筈だが……」

 

 

土煙が晴れると、そこには所々僅かに欠けてはいるものの、まだまだ健在のゴーレムが浮いていた。

 

 

「……アザンチウムか、くそったれ」

 

 

『せいかーい。いやー、今の攻撃は中々良かったよ。ちょっと焦っちゃった』

 

 

まだまだ余裕そうな声色でそんなことを言う自称ミレディ。

 

先程のハジメの発言から、どうやらあのゴーレムはアザンチウムという世界最高硬度を誇る鉱石で出来ているらしい。

 

 

『……どうする、ハジメ?』

 

『まだ、手はある。何とかしてヤツの動きを封じれば……』

 

 

《念話》で作戦会議をするオレ達。

 

どうやらハジメには、まだあのゴーレムに対抗する手段があるらしい。

 

 

『――動きを止めればいいんだな?』

 

『……できるのか? ゼオン』

 

『あぁ、恐らくな。だが、そのためには……』

 

 

オレは、ユエに《念話》で協力を頼む。

 

ユエは直ぐに了承し、オレ達は再びゴーレムへと駆け出していく。

 

 

『作戦会議は終わったかなー? さぁ、次はどんな攻撃を見せてくれるの?』

 

 

ゴーレムから揶揄うような声が聞こえる。

 

どうやら、《念話》を使っていたことはバレていたらしい。

 

 

だが、そんな言葉は取り合わず、オレとユエは一緒にゴーレムへと近付いていく。

 

 

「――《緋槍》!!」

 

 

一歩先に、ユエが魔法を放つ。

 

放たれた魔法は、当然の様に立方体に防がれた。

 

だが、そんなことは織り込み済みだ。オレは、ユエの魔法が防がれたタイミングで、呪文を唱える。

 

 

「――ザグルゼム!!」

 

 

ユエの攻撃とは打ち込む角度を僅かに変えた攻撃。

 

完全に防げるタイミングではない筈だが、ゴーレムは立方体を殴ることで無理矢理盾にし、ザグルゼムを防いでいた。

 

 

『惜しかったねー。ていうか、この魔法ってさっき使っていた威力が弱い魔法だよね? 何で今更こんなもの……』

 

 

オレ達はそれに構わず、次々と魔法を打ち込んでいく。

 

ユエが攻撃した直後にオレがザグルゼムを放つ。

 

 

都度五回、その連撃が防がれた時、ゴーレムから声がした。

 

 

『何度やっても同じだよー、って言いたいところだけど……。何か企んでるみたいだね?』

 

 

訝しげに呟くゴーレム。

 

……そろそろザグルゼムの効果がバレそうだな。

 

 

『……そうか、この魔法は、その後に使う魔法を強化するための布石。つまり、君はこの光が纏われた物体に魔法を当てないと、強化できないってことかな?』

 

 

得意げにそう言うゴーレムの声は、確信を帯びていた。

 

……バレたか。なら、早く呪文を当てなければ。

 

 

オレが掌をゴーレムに向けると、奴はザグルゼムを当てた立方体を、自身の後ろに下げた(・・・・・・・・・)

 

 

『――つまり、この光が纏われている鉱石で攻撃を受けなければ良いってことだね。残念でしたー、もうちょっとだったのにね?』

 

 

ゴーレムが、勝利を確信した様に声を上げる。

 

 

だがオレは、それに構わず呪文を唱えた。

 

 

「――ジケルド!!」

 

 

掌から、光の球体が放たれる。

 

それはゆっくりとゴーレムに向かって進むと、途中で消えてしまった。

 

 

『ありゃりゃ……。もう魔力が限界だったのかな? そんなんじゃ、このミレディさんは倒せないぞー?』

 

 

再びこちらを煽ってくるゴーレム。

 

だが、オレはそれが間違いだと知っている。

 

 

「……いいや、オレ達の勝ちだ」

 

 

次の瞬間、ゴーレムの体が淡く光り輝く。

 

 

『……まさか!? 攻撃は当たっていない筈……!!』

 

 

「残念だったな、先程の呪文は、発動した瞬間に効果が発揮される」

 

 

ゴーレムの放つ光に反応して、周囲のザグルゼムを当てた立方体が輝きだす。

 

互いに共鳴し合う様に輝きを増していくと、突如立方体がゴーレムに向かって飛んでいく。

 

 

 

『――えっ!? 何で……!?』

 

 

立方体は、ゴーレムを挟んで互いに引き合うように動き、ゴーレムを挟んで動きを拘束する。

 

 

「――ハジメ、今だ!!」

 

 

「あぁ、待ってたぜ!!」

 

 

身動きが取れなくなったゴーレムに向かって、ハジメが飛び出す。

 

その左腕には、巨大な杭が取り付けられていた。ハジメがブルックの町で作った新兵器、パイルバンカーである。

 

 

「――食らいやがれ!!」

 

 

ゴーレムの中心――胸部に杭を添えるハジメ。

 

次の瞬間、凄まじい轟音が鳴り響き、漆黒の杭がゴーレムに突き刺さる。

 

 

だが、あと一歩というところで、杭の進行が止まった。

 

体中にヒビを入れた状態で、ゴーレムが安堵の声を漏らす。

 

 

『……どうやら、威力が足りなかったようだねぇ? だけどまぁ、大したものだったよぉ?』

 

 

ゴーレムはこれで終わったと思っている様だが、それは違う。

 

 

「――決めろ、シア!!」

 

『――何っ!?』

 

 

オレの言葉にゴーレムが反応するが、もう遅い。

 

 

「――せえぇえええいっ!!」

 

 

シアはハジメが残していった杭に、ドリュッケンを打ち付ける。

 

途中で止まっていた杭がゴーレムへと更にめり込み、その体を粉砕した。

 

 

すると、ゴーレムの目に宿っていた光が消え、宙に浮いていた立方体も力を失ったように地に落ちた。

 

 

 

辺りに静寂が広がる。

 

 

こうして、オレ達は七大迷宮の一つであるライセン大迷宮の試練を突破したのだった。

 

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

久しぶりのがっつり戦闘回でしたが、如何だったでしょうか?
カッコ良く書けていれば良いのですが。


では、次話もよろしくお願いします。
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